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ついに登場したPS4。PlayStation Meeting 2013レポート

正体はストレス無いゲーム機? SCEが目指す次世代

名称は「PlayStation 4」

 2月20日(米国時間)、ソニー・コンピュータエンタテインメント(SCE)は、米国ニューヨークにて、プレスイベント「PlayStation Meetings 2013」を開催した。

 既報のように、本イベントでは次世代プレイステーション「PlayStation 4(PS4)」が発表された。イベントでどのような事が語られたのか。現地から、情報を整理した形でお伝えする。

ハード名は「PS4」。開発トップにマーク・サーニー氏を招聘

 会場は、Manhattan CenterにあるThe Hammerstein Ballroom。普段はコンサートなどが行なわれる場所で、収容人員も2,000人以上。ここに世界中から招待されたプレスおよびゲーム業界関係者が集められた。現地時間の午後6時からという、プレスイベントとしては少々遅めのスタート。おそらく、他の地域からのネット視聴を意識した時間帯だったのだろう。

カンファレンス会場のManhattan Center。入り口にはプレスおよびゲーム業界関係者の長い列ができた
会場内。写真は1階からのものだが、2階席・3階席も用意され、ほぼ一杯になった
イベントのオープニングとして、これまでのSCEの歩みを簡単に映像で紹介
SCEのアンドリュー・ハウス代表取締役社長兼グループCEO。今日はSCE全体の顔として、プレゼンテーション全体をまとめた

 プレゼンターとして登場したのは、SCEのアンドリュー・ハウス代表取締役社長兼グループCEOだ。

ハウス:本日は、プレイステーション・エコシステムが、ハードウェア・ソフトウエア・ネットワークが真に統合された時、いかに夢のような体験になるかをお伝えしたいと思います。いまや、プレイステーション・エコシステムにおいて、ゲームの中心は「リビングルーム」ではなく、ゲーマーそのものです。

 このような言葉から、ハウス社長はカンファレンスを開始した。モバイルも据え置きも存在し、ネットワークでつながった今、どこでどうゲームを楽しむか、体験の自由度は重要である、ということだろう。その軸として、現在SCEには「PS3」があり、「PS Vita」がある。ハウス社長も「我々はいままでで最もパワフルな携帯ゲーム機、PlayStation Vitaでこの需要に応えます。Vitaはこれからも広げていきます」と語った。

 だが、それは「今」の話。今日の話題は「今年以降」のことだ。

ハウス:現在のゲームをとりまく状況は変化しています。ゲーマーが環境を変えているのです。

 ハウス社長はそう語る。モバイルと据え置き、ソーシャルネットワークとゲーム。そういった新しい、だが、急速に当たり前となりつつある変化を受け止めるプラットフォームが求められている、という発想だ。

ハウス:我々は未来を描き始めています。それはコンソールのみならず、我々のポートフォリオ全体に関わるものです。「遊びたい」という欲求に対する、すべてのタッチングポイントを満たす、いままでとは全く異なるプラットフォームが必要です。今日は、みなさんに「ゲームプレイの未来」をちらっとお見せしたいと思っています。これが、我々のこれからの基盤です。

SCEのアンドリュー・ハウス社長が「PlayStation 4」の名称を発表。なじみ深い伝統のPSロゴだ

 そうして発表されたのが、次世代プレイステーション「PlayStation 4」だ。

 ハウス社長は、PS4を「PlayStaionを、単なるコンソールや箱ではないものにする、きわめて重要な移行」と位置づける。そして、詳細な説明を次のゲストに譲った。次のゲストとは、PS4の「リード・システム・アーキテクト」である、マーク・サーニー氏だ。

 古株のゲームファンなら、この名前に驚いたことだろう。サーニー氏は十代の頃からゲームクリエイターとして活躍、アタリの名作「マーブル・マッドネス」やセガの「ソニック・ザ・ヘッジホッグ2」、PlayStation初期の名作「クラッシュ・バンディクー」シリーズを手がけている。プログラミングの天才であり、特にアクションゲームについて、ゲーム構築の方法論を作り上げた、業界の有名人である。SCEとは縁の深い人物だが、PS4開発にあたって、プラットフォーム全体のシステム設計のトップに抜擢された格好だ。

PS4のリード・システム・アーキテクトを務めるマーク・サーニー氏。PS4は伝説的なゲームクリエイターがディレクションすることになった

サーニー:このシステムの企画は、PS3が生まれてすぐの頃にスタートしました。その頃は、まさに時代が変わろうとしていた時です。Atari2600からPS2まで、すべてのメジャーなコンソールは「専用機」でした。カートリッジやDVDを入れて「パワーオン」すれば使えるものです。それはそれで良かったんですが。

 しかし、PS3の頃、時代は移り変わりはじめていました。ネットワークに「繋がった世界」に変わっています。PS3も悪くはなかった。Netflixのトッププラットフォームになっていますしね。でも、この「革命」の前に設計されたデバイスでは、新しい世界に対応するには限界があります。

これまでのゲーム機の状況を説明。PS2までは「専用機」であったが、今はそうではなくなっている

 サーニー氏は、現在、そしてこれからの「新しい世界」に対応できるものとして、PlayStation 4を位置づけようとしているわけだ。

 常にネットワークに接続されていて、多数のデバイスと連携し、カスタマイズも共有も容易な環境。そして、そういった要素を持ちつつ、デベロッパーにとっては「開発が容易な」環境であること。これらの要素を、サーニー氏は2つの言葉で説明した。

「Nothing Between You And The GAME」(ゲームとあなたを隔てるものはない)
「Harnessing The Potential of Developer」(デベロッパーのポテンシャルを活用するものに)

 すなわち、「ユーザーにも開発者にもやさしい」という方針だ。

ゲーマーがゲームをするまでの障壁を減らすことを「ゲームとあなたを隔てるものはない」と表現
開発が容易で様々なビジネスモデルにチャレンジできる要素を強調。PS3の開発難易度を反省してのことだろう

 まず説明したのは「デベロッパーにやさしい」という部分だ。

サーニー:我々はアーキテクチャとしてPCに近いものを採用しましたが、ゲーム向けに「スーパーチャージ」したものとしました。CPUには世界でもっとも一般的な「x86」系。グラフィックプロセッサには、高度に強化されたPC用のGPUを使っています。プラットフォーム初期にはとても開発しやすいという利点がありますし、同時に、GPUは長期的な視点でも十分なポテンシャルを秘めています。システムメモリは、胸をはってアナウンスしたい点なのですが、ハイスピードな共有メモリとして、8GBを搭載しました。ゲームデベロッパーから、最も要求された部分で、コンテンツの高度化に大きな役割を果たします。そして、ローカルのハードディスク(HDD)も搭載します。

PS4のハードウェアアーキテクチャ概要。これまでのような「オリジナルプロセッサー×オリジナルアーキテクチャ」ベースではなく、「PCをゲーム向けにスーパーチャージ」したものになった

 サーニー氏の提示したハード的な特徴は、ほぼ「今日手に入る、そこそこ高性能なPC」の要件である。しかし、「ゲーム向けのスーパーチャージ」という言葉にあるよう、単純にPCを持ってきたのではなく、メジャーなPC的アーキテクチャを使いながら、ゲーム機として特化した設計を目指した、ということのようだ。この点は、会見後にSCE・ワールドワイドスタジオプレジデントの吉田修平氏に確認したところ、同様のコメントが得られた。

 なお、メモリはGDDR5規格のもので、バンド幅は「最大176GB/秒」(サーニー氏)とされている。ハードウェア的には、この帯域の広さを生かした開発を狙っていくのだろう。

 いうまでもなく、これで実現されるグラフィックスパワーは相当なものだ。CPUとGPUは「同じダイに載っている」(サーニー氏)とのことで、基板実装上は1チップ。メモリはCPUとGPUが共用し、帯域幅の広さがGPUのパフォーマンスを後押しする。

サーニー:高度に強化されたGPU、という言い方をしましたが、我々はGPUにいくらかの独自改良を加えています。GPUを汎用の演算デバイスとして使い、もっと演算を容易にするためのものです。

GPGPUのデモ。100万オブジェクトの物理演算を、PS4のGPUだけで処理。CPUとGPUで処理を分けての効率化を、デベロッパー向けにアピールする狙いだ

 デモとしても、GPUを演算デバイスとして使う(GPGPU)形のみで演算を行ない、百万のオブジェクトに物理演算で動きをつけ、表示した。こうした使い方を推進することで、ゲーム機としての価値を高めよう、という狙いだろう。

 実際、会見の中で紹介されたゲームデモの多くは、非常に印象的なものだった。後述するように、現状ではPS4について「4K」に関する言及はなく、1080Pクラスのデモと思われるし、デモの中には若干の処理落ちが見られるものもあったが、「PS3から世代が変わった」ことを印象づけるだけの差はあった、といえるだろう。

 特に印象的だったのは、PS3用ゲーム「HEAVY RAIN 心の軋むとき」の開発元であるQuantic Dreamのクリエイター、デイヴィッド・ケイジ氏のデモだ。

Quantic Dreamのデイヴィッド・ケイジ氏は、キャラクターの造作という点での技術進化を説明。350ポリゴンから始まったものが現在3万に到達、PS4ではそれの遙か先にゆく。

ケイジ:「ゲームにおいてプレイヤーの感情をゆさぶることは、すべてのゲームクリエイターにとっての聖杯です。映画が白黒の時代には、オーバーアクティングな仕草から感情を読み取っていました、次第に変わっていきました。ゲームもそうです。PS4で、ようやくそのステージに達しました」

 ケイジ氏が提示したのは、これまでのゲームに使われたキャラクターのポリゴン数である。1999年、350ポリゴンで作られていたキャラクターは、同社のPS3用最新作「BEYOND」で3万に達した。そして、そのさらに先として見せたのは、PS4で作った老人の顔である。

ケイジ:技術的な点以上に重要なのは、このレベルになると、この老人の顔や目つきから、どのような感情なのかを感じ取れるようになってきている、ということです。我々の残る限界は、我々の発想の側にあります。

 1999年にPS2が技術発表された時、やはりデモとして老人の顔が使われた。その当時とは技術レベルはまったく異なるわけだが、ついにここまで、と思わせる作り込みを許容するレベルになった、ということは感慨深い。もちろん、アーキテクチャの基本が同じである以上、同レベルのことは現在の「超ハイエンドPC」でも可能なのだが、大量に販売されるゲーム機として、このクラスを提供できることには、また別の意味があるだろう。

Quantic Dreamがデモとして公開した老人の顔。もちろんリアルタイムに動作する。皮膚の質感はもちろん、瞳の輝きや髪を透ける光などから、「感情をゆさぶる表現」を目指したものだ
Quantic Dreamがデモとして公開した老人の顔

 以下、デモされたゲームタイトルの映像を一部抜粋してご紹介する。個々のゲームについての解説は省くので、詳細を知りたい場合には、僚誌GAME Watchなどの記事を参考にしていただきたい。

SCE・ワールドワイドスタジオ・JAPAN Studioが開発中の「KNACK」。PS4らしい物量のオブジェクトを生かしたアクションゲーム。実はマーク・サーニー氏自身も関わり、日本のチームと共同開発中。「全体のデモの中で、一番最初にJAPAN Studioのタイトルが紹介されたのはうれしい」とWWS・吉田修平プレジデントも胸を張る
PSシリーズで人気のFPS「KILLZONE」シリーズ最新作「Killzone Shadow Fall」。PS4ローンチタイトルとして準備が進められているという
Killzone Shadow Fall
Evolution Studiosのレースゲーム「Driveclub」。ネットワークでチームを作り、細部まで作られた車でレースをプレイ。PS4を介し、タブレットやスマートフォンからも一部プレイ可能だという
カプコンのプロデューサー・小野義徳氏が登壇。同社の次世代技術として「Panta Rhei」(コード名)を開発中と発表
カプコンが「Panta Rhei」を使って開発中の新規タイトル「deep down(仮題)」。ファンタジー世界でのアクションゲームのようだ
カプコン deep down(仮題)
PCゲームの世界では圧倒的なシェアを持つBrizzard Entertainmentが、SCEと提携。同社のChris Metzen氏が登壇、「Diablo III」のPS3版・PS4版の投入を発表した。
PS4に参入表明したゲームメーカーの一覧。欧米だけでなく日本のメーカーの姿も相当数みかけられる

 ハードウェアアーキテクチャに関わるものとして同時に発表されたのが、新しいPS4用のコントローラー「DUALSHOCK 4」と、もう一つの周辺機器「PlayStation4 Eye」だ。

PS4用コントローラー「DUALSHOCK 4」。タッチパッドと位置認識用のライトバー、ヘッドセット端子を内蔵。SNS連携用の「SHARE」ボタンもある。
PS4の新しい周辺機器「PlayStaion4 Eye」。デュアルカメラによって、コントローラーの三次元位置を認識。リリースによれば、顔認識などの機能にも使われるという。

「DUALSHOCK 4では、ジョイスティックやボタンのフィーリングを改善し、これまでよりもっと厳しいゲームアクションにも対応できます。タッチパッドは新しい操作を、SHAREボタンとヘッドセット端子は、ソーシャルな関係を強化するために有用です。ライトバーは簡単にプレイヤーを識別するために使えます。ステレオカメラ(PS4 Eye)と連携し、コントローラーの3次元位置認識も行ないます」(サーニー氏)

 DUALSHOCK 4ではタッチパッドと従来のゲーム手法が共存できる。デモ(Unreal Engineで知られるEpic GamesのUnreal Engine4技術デモ「Elemental」)では、プレイしつつタッチパッドで視界を変えてみせる、といったことも行なっていた。

Media Moleculeのアレックス・エヴァンス氏。ゲームではなく、「クリエーション」の未来としてのPS4の形をデモ。現状では「ポリゴンの暴政」が人々を悩ませている、とまず説明した

 PS4 Eyeを使った認識はDUALSHOCK 4以外でも使われる。PS3でも使われていたPlayStation Moveとの連携だ。デモを担当したMedia Molecule(PSシリーズ向けゲーム、Little Big Planetの開発元)のアレックス・エヴァンス氏は、Moveを「クリエイティブツール」にした。

エヴァンス:デジタルでモノを作るのは実に大変です。我々は「ポリゴンの暴政」なんて呼んでいるんですが。そこで惚れたものがあります。Moveです。これを使えば「3D彫刻」を、高度な熟練者だけでなく、誰もが簡単にできるようになります。このツールは、単に彫刻してコラージュすることだけにとどまりません。私達は、すべての作る方法を変えたいんです。

 Moveは、位置や奥行きを非常に高い精度で認識できる。PS4とPS4 Moveを使うと、その精度はPS3時代よりはるかに高まる。そこでその能力を生かし、Moveをヘラやノミのように使い、空間で3Dのオブジェクトを「彫刻」するのだ。そうして作ったものは共有可能になるし、人形にして踊らせることもできる。

 現状では「デモ」だが、高い可能性を感じる遊び方だ。そして、このデモの最後に次のようなメッセージを見せた。

「PlayStation 4 THE CREATIVE CONSOLE」

Moveで空間を「彫刻する」ように3Dオブジェクトを作成。出来上がったものは共有してゲームなどにも使う構想をもっている
Moveで空間を「彫刻する」ように3Dオブジェクトを作成
Moveで作ったキャラクターを、Moveで人形のように動かしてパフォーマンス。技術的にはPS3時代からあるものだが、精度と性能の向上により印象は大きく変わった

「Simple」「Immidiate」…… ゲーム機の「つらさ」を解消せよ!

 PS4にとって、ある意味ハードウェア以上に重要なのが「システム」だ。ネットワーク接続を前提に、PS3時代とは異なる様相のゲームプレイを実現しようとしている。

サーニー:ハードウェアの次に、我々のチームに課せられたデザイン上の責務は、「ゲームをとりまく体験」をいかに作るか、ということです。

 我々は体験の軸として、5つの主要素を決めました。「Simple(使いやすさ。注:括弧内はSCEニュースリリースの訳文)」「Immidiate(サクサク)」「Integrated(様々なデバイス/サービスとの連携)」「Social(ソーシャルとの融合)」「Personalized(ユーザー体験の最適化)」です。PS4のユーザーインターフェースは、一からデザインし直しました。

PS4で狙う体験の5つのカギ。「Simple」「Immidiate」「Integrated」「Social」「Personalize」
PS4のインターフェース画面。PS3とは大きく印象の異なる「タイルベース」的なものになった。後述するが、これはソーシャルネットワーク連携とも関わっている

サーニー:システムの能力は飛躍的に高くなりました。しかし同時に、プラットフォームもプレミアムなものにならないといけません。強力な機能も「単にボタンを押すだけ」で使える必要があります。レスポンスが高速であることももちろん重要です。

 PS4ではカスタムハードウェアの力を借りて、コンテンツを呼び出すまでの様々なラグタイムの排除に取り組んでいます。例えば、ゲームのサスペンド・レジューム機能がPS4ではサポートされます。パワーボタンを押しさえすれば、システムが省電力モードに入り、待機状態になります。再びパワーボタンを押せば、短時間のうちにゲーム機をブートし、セーブデータを呼び出してプレイしていたところまで戻ります。

PS4には待望の「サスペンド・レジューム」機能が。コントローラーの電源ボタンを押すだけで、ゲームの中止・再開ができるようになり、大幅に時間と手間が節約に。

 すなわち、PS4では「ゲームのブート待ち」が激減するわけだ。「最近はポータブルゲーム機でしか遊ばなくなった」という人の中には、ポータブル機がサスペンド機能を持っていて、止めるのも再開するのも短時間で行なえるから、という人が少なくないのではないだろうか。実は筆者もそうだ。PS3、いや、PS1以降のコンソールがもっていた根本的な問題点に、ようやく解決の兆しが見えてきた。

サーニー:PS4は、「第二のカスタムチップ」を内蔵しています。このチップは、アップロードとダウンロードのマネジメントに使われるのです。

 このチップの能力により、電源がオフの時でも、ゲームのアップデートなどはバックグラウンドで行なわれます。PS4のデジタルタイトルは、ダウンロードの形でも提供されます。ダウンロードタイトルを買うと、まずは「ゲームをプレイするのに必要なだけの、データの断片」だけがダウンロードします。残りの部分は、ゲームをしながらバックグラウンドでダウンロードされます。

PS4には「第二のカスタムチップ」を内蔵。ネットワーク系をバックグラウンドでコントロールし、ダウンロードやアップロードの時間短縮に生かされる

 ダウンロードでのゲーム購入はもはや珍しくないし、それをPS4世代で軸にするのも当然だが、PCアークテクチャにはない「第二のカスタムチップ」を使い、ダウンロード時間を大幅削減しよう、というのが次の機能だ。BDで供給されるゲームの場合、サイズは数GBを越えるのが一般的。PS4クオリティともなれば、それ以上のものも多くなるだろう。そうすると、全体をダウンロードしていてはプレイまでに時間がかかりすぎる。「ゲームを買ったらDLに数時間」では、ユーザーが逃げてしまう。特に、日本ほど回線事情の良くないアメリカなどの国々では致命的だ。

 PS4には、ネットワークを扱うサブプロセッサと、そのコントロールシステムが内蔵されており、本体の電源状況とは別に、低い電力で動作するのだろう。配信用データ構造もこの仕組みを前提に作られていて、「ゲームを開始するまでに必要な時間を削減する」形になっていると予想できる。ゲームのコアシステムや序盤のアートデータだけを短時間でダウンロードし、残りはいつのまにか終わっている、という形になる。また、事前に購入予約などを行なっておけば、発売日の「解禁時間」にはすでにダウンロードが終わっていて、即座にプレイを始められる……という環境も想定している。

 そして、「第二のカスタムチップ」は、ソーシャル系機能でも生かされる。

サーニー:ソーシャル・プレイはPS4にとって非常に重要な要素です。これを我々はハードウェアでサポートします。ハードウェアで常時、動画の圧縮と展開を行なうのです。

 この機能により、シームレスにゲームのプレイ動画をアップロードできるようになります。コントローラーにある「SHARE」ボタンを押せば、過去数分間のゲームプレイをスキャンし、必要な部分を見つけ出し、コメントをつけてアップロードし、すぐにゲームに戻れます。

 我々のゴールは、ゲームのビデオを共有することが、PS4世代では一般的なものになることです。現在、ゲームのスクリーンショットの共有が一般的なものであるように、です。

 同様の機能を使い、ゲームプレイ中のライブビデオを友人に見せることもできます。友人が困っていたら、ネットワーク経由で連絡し、ゲームコントローラーを奪って、難しい部分を代わりにやる、といったこともできます。

 我々はPS4で、フレンドベースのネットワークシステムを「実際の友人」ベースに置き換えようとしています。現在のアイコンや仮名も残りますし、匿名であることの大きな価値もありますが、PS4では、実際の名前と友人同士のプロファイルを、現在存在するソーシャルネットワークと連携する形で動作します。

ゲームのプレイ動画が自動生成され、ソーシャルネットワークにアップロードされる。「SHARE」ボタンを押すだけでこのシステムに移行する、という簡単さだ
前出の「Killzone Shadow Fall」のデモプレイ後には、こういう画面が。PS4のシステム機能を使い、ここから実際に映像をアップしていた。アップされた映像は、Facebook上で実際に公開されている。https://www.facebook.com/photo.php?v=113171115535029

サーニー:ゲームプラットフォームのソーシャルネットワークはコンソールからしか見れないものでしたが、PS4のネットワークは高度に統合されていて、プレイステーション上のネットワークサービスが、他のメーカーのデバイスやサービスからも使えます。スマートフォンやタブレットやVitaから、Webプラットフォームとしてアクセス可能です。スマートフォンなどから、ゲームのビデオなどを視聴し、対戦に挑戦することもできます。タブレットやVita向けのコンパニオンアプリケーションを使うと、さらに次元の違う体験ができます。

PS4のネットワーク機能は、スマートフォンなど他の機器からもアクセス可能に。人同士のネットワークをゲーム機に閉じないようにすることで、連携性を高める

 これまで、ゲーム機においては「プレイ映像」はゲームの外の機器で用意するものだった。日本でも、ニコニコ動画などの「実況」は人気であり、キャプチャデバイスや動画編集ソフトを購入する動機のトップに位置付けられている。しかし、手軽さはない。

 PS4はシステムレベルでプレイ動画の生成機能を持ち、そのアップロードなどは「第二のカスタムチップ」が面倒を見ることで、動画によるコミュニケーションの障壁を下げている。

 ソーシャル連携が実名ベースになることは、日本のユーザーから見ると多少(もしかするとけっこう)違和感があるかもしれない。だが、Facebookなどの隆盛を考えると、SCEがそちらへ舵を切る理由もわからないではない。

パーソナライズされたPS4のユーザーインターフェース画面。情報が自分の好みでまとまるだけでなく、「ダウンロード」などの行動にも影響するという

 ソーシャル連携とは「ゲームの外部ネットワーク化」であり、そのためには、ゲーム機だけでは成り立たない。ウェブサービスとして連携する形にするのは必然であり、そうすれば、現在のPCやスマートデバイスと無理なく連携できる。マイクロソフトがXbox Liveで試み、任天堂も今「Miiverse」で試みようとしている方向性だが、SCEも本格的にこの流れに乗っていくことになる。

 最後の要素が「パーソナライズ」。ゲームのニュースやフレンドの情報などが表示され、自分だけのUIになっていく。

サーニー:システムはあなたの「好き・嫌い」を学習し、好みのタイトルを、自分が買う前に事前にダウンロードしておいてくれる、といったことも考えられます。長期的なビジョンとしては、ダウンロードタイトルの待ち時間を「ゼロ」にしたいのです。先にダウンロードしておき、プレイするときに「買う」ボタンさえ押せばもう始まる、という形になることが目標です。

 こういった要素を生かして、現在のゲームプレイの持つ「待ち時間」「めんどくささ」「わかりにくさ」「見つけにくさ」などを解消し、ゲームに触れる人を増やし、ゲームに触れた人が「いやにならない」ことを狙っているのだ。

背後で動く「Gaikai」のクラウド、PS3との互換はクラウドで実現

PS4ネットワークの中核をなすクラウド技術を担当する、Gakai・CEOのデビッド・ペリー氏

 もう一つ、PS4のシステムには重要な点がある。それが「クラウド連携」だ。SCEは2012年7月、クラウドゲーミング技術の企業である「Gaikai」を買収している。

 サーニー氏のあとに「システム担当」として壇上に上がったのは、Gaikaiの共同出資者であり、CEOのデビッド・ペリー氏だ。

ペリー:PS4とPlayStaion Networkには、Gaikaiのテクノロジーが統合されます。この技術で、世界でもっとも高速でパワフルなゲーミングネットワークを構築します。

 Gaikaiの技術の目標は、どのようなゲームもPlayStation Storeから楽しめるようにすることです。

 気になるゲームがあったら、「決定」(筆者注:スピーチでは「×」ボタンだが、これは日本での「○」ボタンにあたり。決定のこと)ボタンを押せばいいのです。ライト版のようなものを体験してもらうこともできるでしょう。Gaikaiの技術があれば、その場で自由に試してもらうことができるようになります。こうなると、ゲームの売り方も変わります。本当にそのゲームを愛した時だけ買ってもらえばいいのです。

Gaikaiの技術を使い、ゲームの「試遊」をクラウド経由で実現。ゲームを買う前に「きちんと中身を見る」ことが可能な時代が来るか?!

 Gaikaiの技術では、サーバー側でゲームを動かし、それをストリーミングすることで、様々な端末でのゲームプレイを可能にしていた。その技術を応用することで、「体験版」をクラウド化し、気になるタイトルの即時体験が可能になる。「中身がわからない」というゲーム販売の問題点が変わる可能性を秘めている。

ペリー:ソーシャルはPS4での体験のコア。最大のソーシャルネットワークであるFacebookとUstreamと連携します。Ustreamでは、たくさんの人にゲームを見てもらうことも可能になるでしょう。

ゲームの動画配信もGaikaiとの連携で。ユーザーの手持ちの外部機器でやっていたことが、PS4+Gaikaiに置き換えられ、手軽になる、というイメージか。

 これは、先ほど述べた「SHARE」ボタンの活用だ。ここでもGaikaiのクラウドを使い、PS4とクラウドの合わせ技で、ソーシャルネットワーク上へのゲーム動画公開を円滑化しよう、という狙いだ。だからこの機能は、実際には「ハード+サービス」で実現されているものなのだろう。

ペリー:リモートプレイはもっと高度になります。PS4のアーキテクチャにビルドされることで、リモートプレイの価値はあがるでしょう。タブレットなどをセカンドスクリーンとして活用可能にあります。

 もっとも良いコンパニオンはVitaです。VitaのOLED(有機EL)ディスプレイで、すべてのPS4タイトルを、美しくプレイできます。

 もちろん、ゲーム以外のエンターテインメントにも対応します。映画であろうが音楽であろうが、です。ソニーのサービスであるVideo Unlimited・Music Unlimitedもビルドインされていますし、NetflixやAmazon InstantVideoなど、他の有力サービスも利用可能です。このあたりの詳細は、年末までに公開します。

PS4とVitaでリモートプレイ。ハード側のサポートにより、リモートプレイの快適さは大幅に向上するとのこと
主要な映像系サービスは、PS3時代同様にサポート。いかに快適に見られるかが気になる。日本向けにはトルネチームの動きが気になるところだが……

 PS4はバックグラウンドで映像のエンコードを行なうため、リモートプレイは非常に容易になる。これまでのリモートプレイに加え、Gaikaiの技術が導入されることで、その精度・反応速度は増しているという。いままでは対応タイトルのみの動作だったが、PS4では基本的に「すべてのPS4タイトル」がリモートプレイに対応する。テレビの前でプレイできない時も、ゲームをあきらめなくていいわけだ。

 AV機能として気になる部分は、まだよくわからない。BDドライブはついているので映画はもちろん見られるだろうが、気になる「4K」対応なども、コメントはなかった。この辺りは明日以降に確認する。

ペリー:PS3はこの6年間で多くのタイトルを輩出してきました。PS4ではPS3タイトルの動作にネイティブでは対応しませんが、ユニークなクラウド技術で対応を検討しています。長期的なビジョンとしては、すべてのPS3用ゲームをすべてのデバイスでプレイできるようにしたいと考えています。技術が成熟すれば、PS1・PS2・PS3、そしてPS Mobileのゲームを、PS4を含むすべてのデバイスでプレイできるようになるでしょう。これは、ゲームの世界のルールを完全に変えてしまいます。考えてみてください。すべての愛するゲームを、ネット経由で数秒で、すべてのデバイスでプレイできるようになる時代を。

 すべてのものを、すべての場所で(Everything Everywhere)。これがPlayStaion Cloud Serviceチームの目標です。Gaikaiは現在、プロトタイプネットワークの開発を行なっています。

 PS4はPS3とまったく異なるアーキテクチャを採用している。そのため、PS3のゲームは「そのままでは」互換性がない。そこで出てくるのがGaikaiのクラウドゲーミングだ。すぐに完全に、とはいかないようだが、PS3向けゲームはクラウド経由で互換を採る。そして「長期的なビジョン」とされてはいるものの、すべてのPlayStationシリーズのソフトウエアを、クラウド経由であらゆる端末に提供しようというのが、Gaikaiの狙いだ。

 Gaikaiがかかわっている部分は、同社がSCEにジョインして日が浅いこともあり、まだまだ完成には時間がかかるという印象を受ける。だが、SCE(ひいてはソニー)としては、コンソールというハードの体験を生かしつつも、そこから先に「ハードも物理メディアもない時代」を明確に見据えている、ということがはっきりしてきた。

PS4の発売は「2013年のホリデーシーズン」=年末商戦だ。今回示されたビジョンのうち、どこまでがどのように実現されるか

 では、具体的にPS4の実力はどうなるのか? ビジネスの勝算がどうなるのか? そして、デザインなどは?

 発売時期は「2013年のホリデーシーズン」と明示されたものの、外観デザインも実機も、そして価格もまだ未公表だ。そして、「PS4でしかできない特別な遊び」もまだ見えない。

 極限までストレスをなくしたゲーム機で、最終的にSCEはなにをしようとしているのか? 今後はその辺りに注目だ。

 なお、明日にはSCE・ハウス社長の単独インタビューも予定している。ここで不明であったことは、可能なかぎりそちらでカバーしたいと考えている。ご期待いただきたい。

西田 宗千佳

1971 年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、週刊朝日、AERA、週刊東洋経済、PCfan、DIME、日経トレンディなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。近著に、「漂流するソニーのDNA プレイステーションで世界と戦った男たち」(講談社)、「電子書籍革命の真実未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「メイドインジャパンとiPad、どこが違う?世界で勝てるデジタル家電」(朝日新聞出版)、「知らないとヤバイ!クラウドとプラットフォームでいま何が起きているのか?」(徳間書店、神尾寿氏との共著)などがある。  個人メディアサービス「MAGon」では「西田宗千佳のRandom Analysis」を毎月第2・4週水曜日に配信中。 Twitterは@mnishi41

臼田勤哉