鳥居一豊の「良作×良品」

ソニー「FMP-X7」で4K放送を満喫。ポール・マッカートニー ライブをネイティブ4Kで

 4Kテレビを購入した人、購入しようと検討している人にとって、夏から開始された4K試験放送は、ネイティブ4Kの映像が見られる数少ないソース。気になっている人は少なくないだろう。それは今年の初めに待望の4Kプロジェクタ(ソニー VPL-VW500ES)を手に入れた僕も同様だ。

 というわけで、今回の良品はソニーの4Kメディアプレーヤー「FMP-X7」(実売価格4万円)を取り上げる。本機は、4K試験放送「Channel 4K」を視聴するために必要なスカパー! プレミアムサービス対応のチューナーを内蔵したほか、同社の4Kハンディカムで撮影したXAVC Sフォーマットの4K映像の保存・再生、ハイレゾ音源を含む楽曲の保存・再生機能が盛り込まれたもの。

FMP-X7

 「Channel 4K」が視聴できる機器には、シャープからもAQUOS 4Kレコーダー「TU-UD1000」(約8万円)が放送開始とほぼ同時に発売されている。しかし、TU-UD1000は、映像/音声出力がHDMI端子1系統のみ。HDMI2.0/HDCP2.2に対応した4Kテレビならば問題なく視聴ができるが、4Kプロジェクタ(こちらもHDMI2.0/HDCP2.2対応は必須)の場合、このほかにHDMI2.0/HDCP2.2に対応したAVアンプやシアター機器が必要になる。プロジェクタ側に直結すれば映像は表示されるが、アンプなどに音声を出すためにはもう一系統のHDMIが必要なためだ。

 つまり、筆者の環境の場合、AVアンプまで買い換えが必要になる。僕も本気でTU-UD1000の購入を考えていたのだが、この理由で断念したのだった。現時点ではHDCP 2.2対応のAVアンプはオンキヨーだけで、また、他のシアター機器においては現時点では対応機器はない。

 なお、4Kテレビならば、HDCP2.2に非対応の機器でも音声を出力できる抜け道がある。TU-UD1000のHDMI出力は4Kテレビに接続し、同時にAVアンプからの出力もHDMI接続しておけばいい。「Channel 4K」の音声は、4Kテレビでデコードした後、HDMIのARC機能でAVアンプに出力されるので心配は無用だ。

 こうした状況のため、4Kプロジェクタユーザーは、せっかくのネイティブ4K放送を見るにはハードルが高い状況が続いていたのだが、FMP-X7はHDMI出力を2系統装備。4KプロジェクタとAVアンプに独立してHDMI接続することが可能になっている。僕が購入を決めたのはまさにこれが理由だ。

FMP-X7の背面写真。スカパー! 用のアンテナ端子のほか、2系統のHDMI出力、HDD用のUSB端子、LAN端子、ACアダプタ用電源端子がある

 では、さっそくFMP-X7を見ていこう。本体は横幅250mmのコンパクトなサイズで、前面中央のイルミネーションなど、現行のブラビアと共通したテイストのデザインとなっている。前面のパネルには、スカパー! プレミアムサービス用のICカードスロットのほか、USB端子も装備しており、4Kハンディカムの映像の取り込みや、USBメモリ経由などによるハイレゾ音源の再生などが可能。

FMP-X7の前面。上下2段に別れたデザインとなっている。現行のBRAVIAのほか、PlayStation 4ともテイストの近い外観だ
下部のパネルを開いたところ。左から、電源ボタン、ICカードスロット、USB端子がある
左側にあるICカードスロット。同梱されるスカパー! プレミアムサービス用のICカードをセットする
右側にあるUSB端子。ハイレゾ音源を保存したUSBメモリーや4Kハンディカムなどの接続用
天面の右側手前には、ハイレゾ音源対応機器であることを示すステッカーが貼られている
スカパー! プレミアムサービス用のICカード。別途視聴契約を行うことで、スカパー!の視聴も可能だ

本体のほか、USB HDDなど、必要な機器はちょっと多い

ACアダプタ。多少サイズは大きいが、コードの長さも十分でラックの裏などに隠しておける

 FMP-X7はコンパクトなサイズで使いやすい印象だが、Channel 4Kの録画やそのほかの4K動画やハイレゾ音源の保存には、外付けのUSB HDDを追加する必要がある。そしてACアダプターも別体だ。この点に関してはHDDを内蔵し、ACアダプターも必要ないTU-UD1000の方が、配線がごちゃごちゃとせず使い勝手は良さそう。

 続いて、4KプロジェクタやAVアンプなどと接続していく。ここで「Channel 4K」視聴に必要な機器についておさらいしておこう。まずはアンテナ。これはスカパー! プレミアムサービス用のCSアンテナを使用する。BS/110度CSアンテナでは受信できないので注意。すでにスカパー! プレミアムサービスを視聴している人ならば同じアンテナを使用できる。ただし、1つのアンテナに対し接続できるチューナーは1機のみなので、従来のスカパー! 用チューナーを使い続けるならば、アンテナの増設が必要だ。

 HDMI接続は、HDMI1(映像/音声用)を4Kテレビや4Kプロジェクタに接続する。こちらはHDMI 2.0/HDCP2.2に対応した4K受像器が必要だ。HDMI2は音声専用なので、HDMI2.0/HDCP2.2に非対応の機器でも問題なく使用できる。

 最後にスカパー! プレミアムサービス用のICカードをセット。そして、「Channel 4K」コールセンターに電話し、視聴の申し込みを行なう。電話での申し込み後、1時間ほどで視聴が可能になる。

前面のスロットにスカパー! プレミアムサービス用ICカードをセットしたところ。カードをセットした状態で電源を入れ、視聴申し込みを行なう
スカパー! プレミアムサービス用ICカードを封入した用紙。スカパー! プレミアムサービスの受信契約についても記載されている

 あとは、FMP-X7の設定画面で、受信設定などを行なえばいい。設定画面などのインターフェースは、現行のBRAVIAとほぼ同様のデザインとなっており、ホーム画面からすべての機能へアクセスできるようになっている。動作もスムーズで操作は快適だ。

FMP-X7のホーム画面。視聴できるチャンネルの表示のほか、録画予約関連の機能や、設定画面などのアイコンがわかりやすく配置されている
付属のリモコンも、現行BRAVIAと共通のデザイン。上部にチャンネル入力用の12キーがあり、下部には再生操作用のボタンがある
上部のチャンネルボタンには、放送メディア切り替えボタンとして、スカパー! プレミアムサービスのボタンも用意されている

操作感は良好だが、スカパー! チューナーとしては少々不満も……

 さっそく4K放送を見たいところだが、その前に各機能を一通り見ていこう。番組表はシンプルで見やすいデザインだ。ただしチャンネル別の表示には対応していないので、「Channel 4K」の放送を1週間まとめて表示するといったことはできないのが残念。

 よく視聴するチャンネルは「お好みチャンネル登録」であらかじめ設定しておけば、ホーム画面にチャンネルのアイコンが追加される。これは同社のスカパー! 用チューナーなどでも採用されている機能で、本機でスカパー! 視聴も行なう人には便利な機能だ。

「お好みチャンネル登録」の選択画面。Channel 4Kのほか、スカパー!の全チャンネルがリストアップされるので、必要なチャンネルを選ぶ。上部の「契約CH選択」を選べば視聴契約を済ませたチャンネルをまとめて設定できる
ホーム画面で、お好みチャンネルから録画番組へ切り替えた状態。録画した番組がサムネイル付きで表示される

 番組表では、スカパー! プレミアムサービスの番組を含めた内容がずらりと表示される。ほとんどは有料放送なので視聴や録画には受信契約が必要となるが、毎月第1週の日曜日は多くの番組が無料で視聴できるので、気になるチャンネルがあれば、頻繁にチェックしておくといいだろう。

 お目当てのChannel 4Kは、とりあえずすべて録画予約した。現時点では、放送されるほとんどの番組はリピート放送となっているので、購入後すぐは全録状態だったが、3日も経つと新規に録画する必要のある番組はほとんどなくなってしまう。これについてはコンテンツのさらなる充実を期待したいところだが、無料放送でもあるし、あまり欲張れないところだ。来年3月のスカパー! による4K放送も加われば、コンテンツはさらに充実するだろう。

番組表の画面。すっきりとした見やすい表示で、スクロールの速度も速く番組探しは快適。ジャンル別の色分けには対応していない
番組表の表示は、9/7/4chに切替が可能になっている
番組の詳細内容を表示したところ。こちらから選局または録画予約が可能(番組表からの一発予約も可能)
録画予約設定画面。選択した番組のみの予約のほか、毎週録画などの設定が可能。録画モードはDRのみ

 ここでちょっとだけ、不満がある。本機では番組の録画先は登録した外付けUSB HDDのみとなっている点だ。Channel 4Kは仕方ないが、通常のスカパー!の番組もUSB HDDのみで、同じネットワーク上にある対応BDレコーダへ番組録画させるスカパー! 連動録画は行なえない。そのため、本機でスカパー! の一般的な番組を録画した場合、従来のようにBDレコーダで録画し、その後BDに保存するといったことができなくなる。純粋なスカパー! 用チューナとしては機能が減っているわけでその点は少々物足りない。

 画質や音質・音声設定なども項目としては用意されているが、特に高画質化のための機能や設定があるわけではなく、内容はシンプル。とりあえず一通りチェックしたが、最初に設定をすませてしまえば、後はほとんど触れることはなさそうだ。

 録画のために接続したUSB HDDの登録も設定画面で行なう。これは、薄型テレビやBDレコーダなどの外付けHDDの登録と同じ。USB HDDは複数登録が可能なので、HDDが一杯になっても別のUSB HDDを増設できる。

上部にある設定アイコンでメニューを一覧表示したところ。画質や音質設定のほか、通信設定など、一通りの機能が用意されている
画質設定の項目では、24p出力の設定のみが行える。オートと「切(強制60p出力)」が選べるが、オートのままでいいだろう
音質・音声設定の画面。音声出力ではオート/リニアPCM変換出力が選べる。接続するAVアンプやシアター機器に合わせて選択する
ネットワーク設定の画面。プロキシサーバーを使うなど特別なことをしていなければ自動で設定が済む。無線LANは非内蔵
放送受信設定には、スカパー! 用アンテナ接続時の受信感度の表示などが行なえるアンテナ設定がある
本体設定にある外付けハードディスク設定。USB HDDの登録などはここで行なう

Channel 4Kの多彩なネイティブ4K番組は、質の高いソースが目白押し

 ではいよいよChannel 4Kの番組を見てみよう。Channel 4Kは、日によって多少異なるが、基本的には昼間の時間帯を中心に放送が行なわれる。このこともあり、放送はすべて録画したものを見ている。番組をそのまま録画するDR記録なので、画質劣化などはまったくないと言っていい。

録画一覧画面。4K番組には4Kのマークが入っている。日付順の表示のほか、ジャンル別などの並び替えも可能だ
録画一覧での機能一覧。並び替えやリピート再生などが行える。編集機能はなく、不要な番組の削除と削除禁止(保護)が設定できる程度だ

 放送は、総数こそ決して多くはないが、スポーツ、ドキュメント、音楽などバラエティー豊かで、いずれも見応えのあるものが多い。プロジェクタ側で入力信号を確認してみると、当然ながら解像度は3,840×2,160でフレームレートは60fpsとなっていることが確認できる。詳しく言うと4K/60p(4:2:0 8bit)となる。

 まずはジャンル別に主な番組を紹介していこう。スポーツでは、今年に行われたFIFAワールドカップの試合が一番の目玉と言えるだろう。コートジボワール×日本やフランス×ドイツのほか、準決勝や決勝戦を中心にいくつかの番組が放送されている。多くの番組が2013年制作となっているなかで、本作だけが2014年の制作ということもあり、画質的なレベルもかなり優秀。フィールドを広く撮った画面でも、選手の姿が鮮明で、背番号どころか表情までわかるレベル。シュートを打つ直前に周囲を見渡している動作がはっきりとわかるなど、世界最高レベルのプレイが鮮やかに再現される見応えのある映像だ。

 スタジアムの客席全体を映した場面などは、興奮する観客の表情まで実に細かく見えているのが面白い。注目すべきはフィールド上の選手たちなのだが、それ以外の細かな部分までよく見えるので、いろいろなところに目が行ってしまう。

 このほか、日本のプロ野球やゴルフ、ラグビーと数々の番組がある。これらはコンテンツというよりも、使用するカメラによる画質差が少々目立つ。ズームレンズの解像度が足りないのか、選手をクローズアップすると思ったよりも解像感が感じられなかったり、全体を俯瞰するような引いたアングルでも細部が埋もれ気味になることが少なくなかった。このあたりに関しては、4K撮影のための機材の充実などが今後の課題になるだろう。

 フィギュアスケートで感心したのは、動きのなめらかさ。精細感の高さやディテール感もしっかりと感じられるが、ジャンプや回転する素早い動きでも映像のぼやけ感が少なく、より鮮明に見えること。これはスポーツ番組を楽しむ人にとっては大きな魅力と言えそうだ。

 このほかに面白かったのは、さまざまなジャンルのスポーツの美味しいところを集めた「ワールドプレミアムスポーツ」。なかでも水泳関連が印象的。それは水の動きや飛沫がきめ細かく、激しく泳ぐ選手の身体や表情まで実に良く見えたため。地デジを比較対象とするのは申し訳ないが、水泳競技は地デジで見るのは厳しい。ブロックノイズなどが目立ち、ディテールの再現どころではないからだ。

 Channel 4Kは映像は圧縮効率を高めたHEVC(H.265)で、転送レートは最大35Mbpsとなっており、アンテナの受信レベルが低いというような問題がなければ、ブロックノイズ的な明らかなノイズはほとんど目に付かない。水泳などでは多少ノイジーに感じることもあるが、それもややざらついた感じが増えるという程度で、ノイズ自体が細かいためにほとんど気にならない。こうしたノイズ感の少なさというのもスポーツ観戦では重要なポイントになりそうだ。

 ドキュメントでは、「観世流薪能」や「熊川哲也 Kバレエカンパニー『くるみ割人形』」、「Colors of Hollywood」、「富士山 四季 水の旅」など、見応え満点の番組が多い。能楽やバレエなどは僕自身も今までほとんど見たことがないタイプの番組だが、映像の生々しさに驚き、じっくりと見入ってしまった。能楽は夜の屋外を舞台とし、主な照明は松明という暗い舞台だし、バレエもステージ照明こそはあるものの、テレビ番組のようなギラギラとしたものではなく、やや暗めだ。それでいて、暗部の色やディテールが実に豊かだ。明らかに地デジやBSといった放送よりも色が豊かな印象。

 それだけにハリウッドのさまざまな場所を明るい映像でとらえた「Colors of Hollywood」や、富士山のさまざまな名所を撮ったドキュメントは、精細なディテールと濃厚な色が相まって、存在感たっぷりの映像になる。こんな映像を120インチのスクリーンに投影して見ていると、もうすぐ肉眼で見た映像と、ビデオ映像は視覚情報だけならば脳が違いを認識できなくなるのではないかとさえ思える。

 また、「大人の極上ゆるり旅」のような、地デジ放送の番組に近いドキュメントも、旅番組らしい雰囲気が濃厚に出ていてより楽しい。歴史を重ねた街並みは、古い家屋の味わいなどもしっかりと伝わるし、名産品や名物料理なども実に美味しそう。地デジのハイビジョン放送がはじまった頃に、ドキュメント番組の面白さを実感した僕だが、4K放送になると、その面白さはますます高まったと感じる。自分が行った場所ならば、そのときの記憶が鮮やかに蘇る品質だし、行ったことのない場所でもその場に出掛けたような気分になれるのはテレビ本来の大きな魅力だと感じる。

 圧巻だったのは「THE 世界遺産 4K」。世界的な名所、歴史的な建築や遺跡の数々が圧倒的な存在感で迫ってくる映像は見事だ。残念なのは、番組が「地球の素顔」1本ということ。BSデジタルでは「THE 世界遺産 4K」のハイビジョン版が定期的に放送されているので、この素材を4Kのまま提供してくれれば良いのにと贅沢なお願いをしたくなる。

 ちょっと余談になるが、本機の映像出力は当然ながら4K/60pだが、これはフルHD放送のスカパー! プレミアムサービスも同様。つまり、自動的に4Kアップコンバート出力となる。スカパー! の番組もいくつか見てみたが、超解像技術のような特別な高画質回路を持っていないとはいえ、アップコンバートの画質はノイズが倍加してしまうような破綻の少ないもので、元のソースの持ち味を活かしたストレートな画質になっている。

70歳を過ぎてなお健在!! ポール・マッカートニーの東京公演を存分に味わった!

 FMP-X7が届いて以来、放送される4K番組をほとんど録ってきたが、いくつか録り逃した番組もある。4Kドラマ「チキンレース」やアリスのコンサート、2013鈴鹿8耐ダイジェスト、ゴジラ4Kプロジェクトなどは現在は放送されていないのが残念。契約などの問題もあるだろうが、年末年始などでの再放送に期待したいところ。

ポール・マッカートニー アウト・ゼア ジャパンツアー東京ドーム最終公演(2月の試写会で撮影)

 そして、今の時期のスペシャルな番組が、「ポール・マッカートニー アウト・ゼア ジャパンツアー東京ドーム最終公演」。良品として取り上げたい番組はいくつもあるが、やはりこれが今回一番の良品だ。

 メンバーともにレット・イット・ビーを歌いながら控え室を出て、バックステージを通り抜けていく姿から映していく導入が期待感たっぷり。「もう疲れちゃったよ」とか「1曲だけ歌ったら僕は帰っちゃうよ」などと冗談を言うポールの茶目っ気たっぷりのトークも楽しい。

 そして、舞台はステージへ。東京ドームに作られたステージは巨大だが、メンバーはポール・マッカートニーのほかは、ギタリストが2人、ドラムス、キーボードの総勢5名というシンプルな編成だ。

 観客は全員総立ちでポールたちを熱狂的に迎えるが、薄暗い観客席も見通しは良好で、カメラが向けられた人々はもちろんだが、その周りにぎっしりと立つ人達の姿も鮮明に映し出されている。公演に足を運んだ人なら、自分が映っているのがはっきりと確認できるはず。

 楽曲は新譜である「NEW」の曲を散りばめながら、ビートルズやウイングスの楽曲を豊富に盛り込んだ贅沢な内容。ポールは曲によってベースやギターを持ち替え、また、ピアノやオルガンの弾き語りも交えるなど、実にバラエティ豊かなステージとなっている。2時間を超える長さの番組だが、まったく飽きることなく楽しめた。

 最大の見どころである音楽だが、音声はステレオでフォーマットはAAC。映像は4Kなのに、音声は基本的に地デジなどと同じというのは少々不満もあるし、商用の4K放送などではAAC音声だけでなく、ロスレス圧縮音声や願わくばハイレゾ音声の採用にも期待したいところではある。

 それはともかく、AAC音声とはいえ地デジなどと比べても明らかに音質は良好。これは他の番組にも共通するが、低音がかなり下の帯域までしっかりと伸びているし、ダイナミックレンジも広い。他の番組ではサラウンド音声のものもあるが、帯域に制限があるので(500kbps)、肝心な2チャンネルに十分な情報量を割り当てられるステレオ音声がベターな選択なのだろう。

 ポールの年齢を感じさせない歌声は、溌剌とした音で発音も明瞭。ベースやギターを弾きながらの歌唱も堂に入ったものだ。こうしたコンサートでは、会場の響きのせいで低音が張り出してしまったり、音がぼやけてしまいがちだが、放送での音声は会場の響きを抑えた良好なバランスで、ドラムの力強いリズムもしっかりと描くし、ベースも芯のある音色で聴き取れる。

 4Kで映し出されるその姿は、えんじ色の上着の質感はもちろんのこと、ブロンドのため目立ちにくいが案外と毛深い腕の毛まで鮮明に見える。アングルによってカメラの解像感が甘くなることもあるが、激しく明滅するライティングという厳しい撮影状況ながらも、映像の質はかなりのレベルと言える。

 暗部のノイズの少なさなど、映像の鮮明さはさすが4Kと言えるもので、舞台に組まれたステージセットや、ギタリストやポールの足元に置かれたエフェクター類やギターアンプなど、細かなものまではっきりと見える。

 ネイティブ4Kコンテンツというと、高精細で細部まで見通しがよいことが一番の特徴のように思う人は多いと思うが、その魅力はそれだけではない。ノイズが少なく鮮明であること、暗部までしっかりと豊かな色が感じられること。見たままの映像に近い感触こそが4Kの魅力だと実感できる。

 また、会場である東京ドームの広さがリアルに実感できることも、4Kの面白さと言えるだろう。会場を埋め尽くした観客がひとりひとり数えられる気がするくらい鮮明に見えることで、その広さがよくわかる。

 この番組は3時間近い長さだが、飽きることもなくじっくりと見てしまった。それはポールの歌唱力やよく練られた構成もあるだろうが、4K映像の楽しさも大いに貢献していると感じる。コンサートに足を運んだ人やビートルズ時代からの往年のファンはもちろんのこと、若い人でも存分に楽しめる内容だった。

4Kテレビや4Kプロジェクタユーザーなら不可欠!! 迷っている人も検討を

 4Kコンテンツは、Channel 4KのほかにひかりTVでの4K動画配信が10月27日にスタートするなど、今後ますます充実していく。ちなみにFMP-X7は来春のアップデートにより、4K動画配信を含む「ひかりTV」の視聴にも対応する予定だ。こうなると、コンテンツ不足の心配はもはやないと言えるだろう。

 4Kテレビなどが備えるアップコンバート機能は年々進化してきており、BDソフトなどの高品質なコンテンツはもちろん、地デジ放送などでもかなりのレベルでの4K表示が可能になってきている。解像感という点においては、ネイティブ4Kに迫るレベルと言っていい。だが、ネイティブ4Kとなると、低ノイズや色の豊かさなどアップコンバート表示では得られない新しい魅力が増えている。Channel 4Kをはじめとする4Kコンテンツは、すでに4Kテレビや4Kプロジェクタを使っている人ならば欠かせないものだ。

 そして、4Kコンテンツの登場をきっかけに4Kテレビの購入を検討している人にも力強くその背中を押したいと思う。4K放送チューナーとセットで手に入れれば、「4Kテレビにして良かった」という満足度がさらに高まるはずだ。

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鳥居一豊

1968年東京生まれの千葉育ち。AV系の専門誌で編集スタッフとして勤務後、フリーのAVライターとして独立。薄型テレビやBDレコーダからヘッドホンやAVアンプ、スピーカーまでAV系のジャンル全般をカバーする。モノ情報誌「GetNavi」(学研パブリッシング)や「特選街」(マキノ出版)、AV専門誌「HiVi」(ステレオサウンド社)のほか、Web系情報サイト「ASCII.jp」などで、AV機器の製品紹介記事や取材記事を執筆。最近、シアター専用の防音室を備える新居への引越が完了し、オーディオ&ビジュアルのための環境がさらに充実した。待望の大型スピーカー(B&W MATRIX801S3)を導入し、幸せな日々を過ごしている(システムに関してはまだまだ発展途上だが)。映画やアニメを愛好し、週に40〜60本程度の番組を録画する生活は相変わらず。深夜でもかなりの大音量で映画を見られるので、むしろ悪化している。