鳥居一豊の「良作×良品」

生まれ変わったソニーBDレコーダで、春アニメをたっぷり録って見た

 今回取り上げるのはソニーのBDレコーダ「BDZ-ZT2000」(実売約83,000円)。薄型テレビの録画機能が当たり前のものとなった今、BDレコーダを積極的に選ぶ理由は少なくなっているかもしれないが、アニメ好きな筆者にとっては欠かすことのできない存在。放送されるアニメ番組を漏れなく録って、気になるものは整理して保管、大事なものはBDにもダビングする。これらを手軽に行なえるし、BDソフトの視聴を含めて連日活躍している。

ソニー「BDZ-ZT2000」

 このBDZ-ZT2000は、内容を一新した最上位機で、3チューナ内蔵でHDD容量は2TB。3チューナ機のほか2チューナ機もラインアップされるが、すべてがWi-Fi内蔵となっており、スマホなどとの連携が快適に行なえる。一番の特長はGUIをはじめとして、内容が大きく一新されたこと。GUIは白を基調とした親しみやすいものとなっているのが新鮮だ。

 内容一新とは言っても、独自の自動録画機能である「おまかせ・まる録」をはじめとした機能は一通り継承している。従来モデルと比べて省略されたのは、放送が終了した後の番組について、番組の主要な内容などをリスト表示し見たい部分から再生できる「もくじ機能」くらいだ。ただし、これについてはスマホアプリの「Video & TV SideView」を使えば従来と同じように使用できる。このアプリは外出先でも番組を楽しめるリモート視聴をはじめ、リモート予約なども行なえる便利な代物。ユーザーならば必携のものと言える。

ボディは薄型でコンパクト。側面まで仕上げられたデザインも好印象

 ボディはすっきりとコンパクトで、艶やかな黒とマットな白を組み合わせたデザインはフロントパネルだけでなく、側面まで同様に仕上げられている。最近のBDレコーダは正面こそきれいに飾られるが、側面や天面は鋼板のパネルそのままというものが少なくない。本機の場合、側面や天面まできちんとお化粧されていて見た目にも高級感がある。個人的にはこれだけ薄型だと、ラックの一番上などに置いて使いたくなる。目立つ場所に置いても安っぽく見えないというのはうれしいところだ。

BDZ-ZT2000の外観。上部が黒、下部が白の配色でスリムさが際立ったデザインになっている
フロントパネル左側のロゴ部分がディスクトレイ。下の白い部分が引っ込んだ段差のついたデザインとなっているのがわかる
フロントパネルの右側にはディスクトレイの開閉ボタンと電源ボタンがある
右側にあるパネルを開閉したところ。B-CASカードスロットと、USB端子が収納されている
側面部分。こちらも黒と白で色分けされている。無粋なネジ穴が露出しておらず、見た目にも美しい

 背面を見ると、接続端子は一般的なBDレコーダとほぼ同等。地デジ用とBS/110度CS用のアンテナ端子、HDMI出力、USB端子、LAN端子、ビデオ入力がある。背面のUSB端子はUSB 3.0端子となっている。アンテナやHDMI、LAN接続を済ませてさっそく使ってみることにする。

背面

 GUIは視認性に優れた親しみやすいものになったが、「かんたん設定」などのおおまかな流れは従来モデルと同様だ。各種の設定画面も、見た目こそ異なるものの項目自体は従来モデルと共通しているので、ソニーの旧モデルから買い換えた場合でも戸惑うことは少ない。GUI自体がわかりやすいものになっているので、初心者でも問題なく使えるはず。クロスメディアバーを採用した以前のGUIに比べると、かなり親しみやすい印象だ。

リモコンも新デザイン。先代よりも一回り大きくなったが、ボタン数は少なめ

さっそく番組の録画予約。「おまかせ・まる録」の使いこなしがポイント

 まずは番組の予約。今回の目当てはスタートしたばかりの4月期のアニメの新番組だ。番組表でジャンル色分けを頼りにアニメ番組を探してもよいが、そのほかにも番組探しの切り口がいろいろと用意されている。「予約ランキング」では、インターネット経由でユーザーの録画予約情報を取得し、予約が多い番組をリストアップできる。すべての番組を対象したもののほか、ジャンル別のランキングも見られる。ランキング入りした番組は、番組表にも王冠マークが表示される。

ホームボタンで表示されるメニュー画面。上部に「録画する」などの機能分類があり、下段にサブ項目が並ぶ。アイコン付きでわかりやすい

 そして、「おまかせ・まる録」では、従来どおりの自動録画が行なえる。簡単にジャンルやキーワードを登録するだけでも使用できるが、複数のキーワード登録で詳細に設定することも可能だ。個人的に欠かせないのはアニメ新番組の登録。ジャンル選択で「アニメ/特撮」を選ぶとサブ項目に「アニメ新番組」があるのでそれを選択するだけでOKだ。今回は第1話の放送が集中する時期を過ぎてしまっていたが、この設定を登録するだけで、以後のアニメ新番組をすべて網羅できる。取材期間中でも放送時期の遅れた新番組を逃さず自動録画していた。独自にデーターベースを作成する「おまかせ・まる録」の検索精度の高さは従来通りのようで、3チューナ機ならば時間重複による録り逃しもほとんど起こらず、ほぼすべてのアニメ新番組を網羅できるだろう。

番組表画面。白基調のデザインとなり、より見やすくなっている。表示サイズの変更でチャンネル数と文字サイズを変更できる。
予約ランキングの画面。左にあるジャンルを選ぶとジャンル別のランキングに切り替わる。ここから番組を予約することも可能だ
「おまかせ・まる録」の画面。表示や操作は従来モデルと同様。新規登録で録りたい番組の追加が可能だ
「おまかせ・まる録」の設定画面。条件の部分でジャンルを選択し、サブジャンルを選ぶ。このほか、放送種別の選択や録画先、録画モードも設定できる
「予約リスト」の画面。予約した番組を一覧できる。自動録画の対象番組も確認できるので、録画時間帯の重複などはここでチェックしよう

 録画予約をしていて気になったのが、操作に対するレスポンスがもっさりとしていること。特に番組表の表示は少々待たされる印象になるのが残念。ただし、番組表の表示が完了すれば番組表のスクロールなどのレスポンスが鈍いということもないし、録画予約の操作などもスムーズだ。いろいろと試してみると、番組表の表示や録画リストの表示、番組編集などの機能の切り替えでやや時間がかかる。この点についてはソニーにも確認したが、ソニー側でもこうした問題は認識しているようで、具体的なスケジュールは決まっていないものの、ファームウェアアップデートによる改善も検討されているという。

 番組予約では、番組検索の活用も効果的。「おまかせ・まる録」と同じく独自のデーターベースで検索するので、人名の愛称での検索のようなあいまい検索でも目当ての番組が探せることがポイント。ここでは、「花は咲く~アニメスター・バージョン」を探してみた。これについては後で紹介するが、震災復興の一環でNHKが不定期に放送している5分ほどの歌番組。非常に良い番組なのでぜひ録画してBDに保存しておきたい。

 このような番組名はわかっているが放送日が不定期というものは、番組検索のキーワードでタイトルをそのまま入力してしまうのが便利だ。録画予約でも、不定期放送の番組は「番組名」で予約する設定にすると、放送日に関係なく番組を探して録画できる。BSなどの有料放送ではこうした不定期な放送がよくあるので便利。しかも、再放送など重複番組は録画しないので使い勝手も良い。

番組検索で、「花は咲く~アニメスター・バージョン」を検索したところ。番組表をスクロールしながら探してもなかなか見つからなかったのに、検索したら思った以上に発見された

録り貯めた番組をさっそく視聴。期待以上の画質・音質の良さに感心

 ある程度番組が貯まったところで、さっそく視聴を開始。番組リストには思った以上に番組が貯まっていて、自動録画の勤勉さに感心した。この調子ではあっという間にタイトル数が増えてしまいそうだが、BDZ-ZT2000や新モデルでは録画タイトル数が内蔵/外付けHDDともに最大1万タイトルまで管理できるので、録りすぎの心配はなさそうだ。

 容量不足が心配になるが、録画モードでは新たにEER(AVC1.5M)も加わっているので、画質よりもたくさんの番組を貯め込みたい人にはうれしい。ただし、画質的には、EERは厳しい。一般的な実写のテレビドラマで各画質モードを見比べてみたが、BDに残すならばSR(AVC 8M)まで実用範囲。LSR(AVC 4M)やLR(AVC 3M)が解像感は明らかに甘くなるものの、ノイズが少ないので案外健闘したが、一度見れば十分という番組でもこのあたりが限界だろう。ER(AVC 2M)やEER(AVC 1.5M)は、解像感の劣化だけでなく、圧縮によるブロックノイズの増加などさすがに見づらくなってくる。

 また、番組タイトルが増えてきても、ジャンル別ソートや同じタイトルを自動でひとまとめにする並び替え表示ができるので、録画番組の整理はかなり快適だ。

操作メニューの「視聴する」の画面。番組の再生や放送の試聴のほか、音楽再生や外部入力、ディスク再生などの項目もある
録画リストの画面。左側のメニューでジャンル別の分類が可能。録画リスト呼び出し時の表示はやや待たされるが、ジャンル別ソートはスムーズだ
同じタイトルをまとめる「タイトルまとめ表示」に切り替えたところ。サムネイル部分にいくつの番組がまとめられているかが表示されるのは便利

 まずはさきほども少し触れた「花は咲く~アニメスター・バージョン」。これは、作詞:岩井俊二、作曲:菅野よう子、歌:山寺宏一、水樹奈々という豪華な面々による曲。人々の心を勇気づける詩や曲も見事だが、山寺宏一、水樹奈々が抜群の歌唱力を披露しており、非常に聴き応えがある。しかも、その映像がタイトルの通りで最新のものから往年の名作まで数多くの名作アニメの場面を集めたものになっている。タイトルが膨大なので具体名は挙げないが、アニメ好きを自認する人ならばすべての作品がわかって当然というレベルの名作、人気作が集まっている。しかも感心するのは、集められたアニメのシーンが歌詞ときちんとシンクロしているところ。「花は咲く」という曲だから、花(特に桜)が咲いたシーンが主に集められるほか、印象的な笑顔などが効果的に使われている。

 「これを制作した人、相当なアニメ好きだろ!!」と言わずに居られない完成度だ。使用された膨大なタイトル数を考えると、素晴らしい仕事に頭が下がる。未見のアニメ好きの人はぜひチェックしてみてほしい。

 この番組を見ていて、BDZ-ZT2000の画質と音質がかなり出来がよいことに気付いた。バラード調の落ち着いた曲調ではあるが、伴奏の音の粒立ちも良いしなにより山寺宏一と水樹奈々の声に張りが合って聴き応えがある。サビの部分がふたりが歌い上げる場面では声の力の入り方もしっかりと再現される。放送のAAC音声とは思えない豊かな音だ。

 そして画質もなかなか良い。集められた作品によってバラつきはあるが、HDリマスターされたBDが発売されているようなタイトルは、そのHDリマスター版の素材が使われており、1960年代の古い作品でもかなり鮮明な映像で楽しめる。フィルム素材の少し沈んだ感触の色合いや、デジタル制作時代の鮮やかな発色など、特に色の再現の豊かさには感心させられる。

 Ultra HD Blu-rayという新メディアも登場した現在、BDレコーダの新製品はHD解像度であるBDの画質向上は一段落しており、ハイエンド級の高級機でもないと画質や音質で驚かされることは少ない。それだけに、BDZ-ZT2000の再現にはびっくりした。さすがにハイエンド級と比べると差があるが、10万円を切る価格のモデルとしては1ランク上の再現と言っていい。あまり期待していなかっただけに予想外の驚きだった。

 決して良質とは言えない地デジ画質でも、優れたBDレコーダで再生するとなかなかに見応えがある。コンテンツ自体が優れているとそのシナジー効果ははかりしれない。この点についてはぜひとも注目してほしい。

 ここで「画質/音声設定」について一通り紹介しよう。基本的には従来のソニーのモデルの機能を継承しており、操作項目などもほぼ同じだ。モニター種類では液晶のほか、有機EL、プラズマ、プロジェクターが選択できる。ソニーの4Kテレビに合わせた最適画質に調整する「4K BRAVIA最適画質」も選べる。これらの設定がプリセットと言えるもので、「画質モード:カスタム1/2」を選ぶと解像感や色再現といった画質の詳細設定が行なえるようになる。

画質/音声設定は、視聴あるいは再生中にサブメニューから呼び出して行う。ここのメニュー項目もほぼ従来モデルと同じだ
画質設定の画面。詳細に画質を設定できる「カスタム1/2」を選ぶと、モニター種類と4K BRAVIA最適画質は選択できなくなる
画質詳細設定の「くっきり」の項目。輪郭/精細感/超解像の3種。精細感がクセが少なく積極的に使える(最大値は6)
画質詳細設定の「すっきり」の項目。ノイズリダクション機能が一通り揃っており、フレームノイズ/ブロックノイズ/モスキートノイズの除去を調整できる
画質詳細設定の「明るさ・色」の項目。コントラスト感を高める「クリアブラック」のほか、色の濃さと色合いが調整できる
音声設定の画面。音質的な調整機能はなく、深夜の視聴に適した音質にする「ナイトモード」や外部入力音声を聴く場合の設定があるだけだ

 画質や音声の設定は再生中にサブメニューから呼び出すが、こうした操作感や項目はほぼ従来通りなので、以前の感覚で使うことができた。「くっきり」にある精細感は、輪郭周辺のフチドリが目立つような不自然さもなく、積極的に使える。超解像は細かいディテールが出てくるが、上げすぎると強調感が出るので控えめに使うほうが良さそうだ。輪郭についてはもともとくっきりとした再現なので初期値の「0」のままとした。「すっきり」のノイズリダクションは、地デジの録画番組など必要に応じて使い分けたい。「明るさ・色」では、以前ならば「クリアブラック」で黒方向の再現を調整することが多かったが、BDZ-ZT2000はコントラスト感も十分だし暗部の再現性も満足できるレベルだったので初期値のままとしている。

 こうした微調整を行なうと、さらに映像のディテールの再現性が高まり、かなり見応えのある画質になる。この状態で、録画したアニメをいくつか見てみた。今期のアニメもなかなかの秀作揃いだが、画質・音質的なクオリティで飛び抜けていると感じたのが、「甲鉄城のカバネリ」。美樹本晴彦のキャラクター原案だが、本人がこっそり原画で参加しているかと思うような作画の質も驚くし、グラデーションを多用した彩色、暗いシーンが多いながらも見づらさを感じさせない色彩設計や撮影時の特殊効果など、劇場版やOVA作品を思わせるようなレベルだ(実際、放送前に限定で劇場公開もされたが)。

「甲鉄城のカバネリ」
(C)カバネリ製作委員会

 話が長くなるのでここでは主に画質や音質に限って触れていくが、蒸気機関車の車内やゾンビ的な化け物に襲われる夜の街のシーンも、くっきりと鮮明に再現される。暗部でのディテールもしっかりとしており、気合いの入った作画のタッチまでよくわかる。なにより感心するのが色の豊かさだ。最近のアニメでは当たり前のようにキャラクターごとに肌の色も違うが、そうした色の違いがきちんと出る。女性の肌の透き通るような白さと紅潮した頬の赤みが実に色っぽい。血しぶきもたっぷりで残酷さがさらに際立つ感じもあるが、それだけに迫力はたっぷりだ。

 音質的にも、蒸気機関車の迫力のある走行音、客車に化け物たちが飛び乗るときの鈍い衝撃音、銃撃の迫力など、力強い音がしいっかりと出る。中低音~低音域が充実しており、テレビアニメとは思えない臨場感が得られる。EGOISTが歌う主題歌も聴き応えたっぷりだ。

BD「屍者の帝国」を4Kアップコンバート表示で堪能する

 EGOISTつながり、というわけでもないが、今度はBDソフト「屍者の帝国」を見てみよう。こちらでは、4Kアップコンバート表示を試してみる。BDZ-ZT2000では新機能として4Kアップコンバートに対応しており、4Kテレビなどと接続して使用する場合、4K/24pまたは30pでの表示が可能だ。設定画面にある「映像設定」で、「4Kアップコンバート設定」を「自動1/2」にすることで可能になるが、最初はなかなかうまく行かなかった。

屍者の帝国
(C)Project Itoh & Toh EnJoe/THE EMPIRE OF CORPSES

 その原因は先述の「画質設定」での「4K BRAVIA最適画質」。これを「入」にしておくと映像出力は1080p出力になるようだ。おそらく、4Kテレビ側でのアップコンバートを前提に、1080pの解像度で映像の最適化を行なっているのだろう。

 これに気がつかなかった理由は「カスタム1」で画質調整をしていたため。「カスタム」を選ぶと「4K BRAVIA最適画質」はグレーアウトして選択できないが、設定自体は生きているようで出力解像度が1080pになってしまう。一度「カスタム」以外に切り替えてから「4K BRAVIA最適画質」を「切」にすると3,840×2,160の4K出力になる。

 4K出力の場合、24pまたは30pになるので、スポーツなど動きの速い映像はコマ落ちのような現象が発生する可能性もあるが、放送や録画番組の再生でも4Kアップコンバート出力は可能。ドラマなどを見ているぶんにはさほど違和感を感じることはなかった(ディスプレイ側の動画補間等はオフ)。ソニーの薄型テレビとの組み合わせでは、「4K BRAVIA最適画質」を使うと良さそうだが、4Kアップコンバート出力の方が超解像でのディテールの再現や精細感調整の効果がより明瞭になるので、BDZ-ZT2000側で4Kアップコンバートした方が好印象であった。

設定画面にある映像設定の項目。基本的な項目内容は同じだが、新たに「4Kアップコンバート設定」が加わっている
4Kアップコンバート表示をする場合、「4K BRAVIA最適画質」を「切」にする必要がある。「入」は1080p表示固定となる

 「屍者の帝国」は伊藤計劃が病床で表した未完の原稿を円城塔が引き継いで完成したもの。さまざまな有名著作の登場人物が実在する世界での物語で、人間の遺体にプログラムを組み込んで労働力とする世界が舞台。ちなみに、伊藤計劃の長編「ハーモニー」もすでにアニメ化されており、もう1編の「虐殺器官」もアニメの制作が進行中だ。

 この作品は、奇しくも「甲鉄城のカバネリ」と同じくWIT STUDIOの制作で、劇場公開作でもあるし映像の質は極めて優秀。労働力である屍者と人間達がごったがえす雑踏や、屍者同士で凄惨な戦いを繰り広げる戦争の場面など、モブシーンが極めて多く、しかも膨大な数の人や屍者が動き回る映像は凄みがある。また、物語はイギリス、インド、アフガニスタン、日本、アメリカと世界中で展開していくが、それらの景色を美しく描いた背景美術や色彩設計が見事だ。

 もっともユニークで、しかも見どころと言えるのが日本の場面で、それまでの舞台だったイギリスなどが比較的リアルなタッチの美術だったのに対し、日本に舞台がうつるとまるで浮世絵のような雰囲気に一変する。ディテールなどは精細でリアルなタッチなのは同じだが、配色が多色刷りの版画のような感触になり、色彩の艶やかさも含めて舞台が変わったことがはっきりと理解できる。アニメならではのユニークな演出だ。こうした作り込まれた映像を、BDZ-ZT2000は十分な品質で描ききった。化学研究所の暗い室内は、アニメとしてはかなり暗いシーンだが、暗い室内でありながら暗色もきちんと再現できる。暗いシーンでは色が抜けてモノクロ調に感じがちなモデルが多いなかで、この色彩感豊かな表現は立派だ。

 そして音も十分な実力だ。この作品は戦闘場面もかなり多く、爆発や炎上などをかなり強烈な低音で表現している。最近のハリウッドのアクション映画では低音のレベルがかなりのものになっているが、本作も低音の手加減無し具合ではハリウッドレベルだ。

 BDZ-ZT2000では、そういったレベルの最低音域までは厳しいが、80Hzを下回るような低音域もただ音が出ているだけの力感の乏しいものではなく、厚みや重みを感じさせる低音感が出るので不満は少ない。セリフなどのくっきりとした鳴り方も明瞭で聴きやすいし、前後に配置された音の移動感や空間の再現性もなかなか精密。これ以上を求めるならば、BDレコーダならばDMR-BZT9600やDMR-UBZ1、BDプレーヤーでも中~高級機以上が必要になる。

 このように、BDZ-ZT2000の画質・音質は約8万円という価格を考えればかなりのレベルにある。最近は各社のモデルの画質・音質に画作りの違いはあっても、大きな差がなくなっていたが、本機は1ランク上と言える実力。これは予想外の発見だ。

番組の削除や編集、ダビングなどは使いやすさ重視の作り

 最後に、「花は咲く~アニメスター・バージョン」のBD保存をしてみる。まずは番組の編集。5分ほどの歌番組なのでほとんど編集は不要だが、番組の最初と最後に別の番組の映像が入っていたので削除する。

 番組の編集は、ホームメニューの「削除/編集」から行なう。タイトル削除は番組リストが表示されるので削除するものを複数選択し、まとめて削除する形式。編集では、消去禁止(タイトル保護設定)、タイトルグループ設定、タイトル編集、タイトル変換(画質モード変換)などが行なえる。タイトル編集はチャプターを分割して不要な部分を削除するチャプター編集と、不要な部分を指定して削除するタイトル部分削除の2つだ。決して多機能とは言えない編集機能だが、実用上は十分だろう。ソニーのBDレコーダの自慢のひとつでもあるオートチャプターの分割精度の高さもそのままなので、チャプター編集で不要な部分をカットしていくのが便利だ。

ホームメニューの削除/編集の画面。タイトル削除のほか、タイトル編集などの機能が用意されている
タイトル削除の画面。番組の一覧リストが表示されるので、不要な番組を選択すると左のチェックマークが付記される。あとはサブメニューで削除実行をするだけだ
タイトル編集を選んだところ。機能はチャプター編集とタイトル部分削除だけで、機能としては最小限
チャプター編集の画面。画面全体に再生画面が表示され、下半分に編集のための操作画面が重ねて表示される。このあたりは、従来モデルとまったく同じだ

 BDへのダビングはホームメニューの「ダビング」で行なう。ダビング機能もシンプルだが、内蔵HDDからディスクへのダビング、ディスクから内蔵HDDへのダビング(ムーブバック)も行なえるので機能は十分。USBで接続したビデオカメラなどの動画のダビングも同様だ。従来機は、本体部にワンタッチダビングボタンがあったが、本機では省略されている。ちなみに、スカパー! プレミアムサービス対応チューナとのネットワークダビング機能は、現状では非対応。秋頃のソフトウェアアップデートで実装される予定だ。

 ダビングそのものは画質モードそのままで行なう高速ダビング、等速となる画質変換ダビングが可能。高速ダビングは6倍速での書き込みに対応しているので、ダビング速度は十分に高速で、5分程度の番組ならばDRモードでもあっという間に終わった。番組に記録されたチャプターや字幕を記録することもできるなど、機能的には十分な内容だ。また、対象機種は限られるが、内蔵HDDおよび外付けHDDの番組をまとめて別のレコーダーにダビングできる「お引っ越し」機能も備える(こちらも秋頃のソフトウェアアップデートで実装)。

ホーム画面のダビングの画面。機能としてはタイトルダビングと、カメラ動画ダビングの2つだけ
タイトルダビングを選んだところ。ダビングしたい番組のあるメディア(内蔵HDDなど)を選択する。その後はリストからダビングした番組を選択するとダビングが行なえる

 BDZ-ZT2000の機能を一通り使ってみたが、動作が切り替わるときの待ち時間がやや長いことが不満な程度で、実用上は物足りなさを感じることは少なそうだ。個人的に心配だった従来モデルの機能のドロップも、映像配信サービス対応の削除など、最小限だったのが良い。ソニーのBDレコーダらしい機能をきちんと継承しながら新しいシステムへの移行を済ませたと言える。

 編集機能などの細かな機能が統廃合されているが、使いやすさ向上のために機能を整理したと感じられ、実用性への影響は少ないはず。

 収穫としては、画質・音質が期待以上に優秀だったことだ。ミドルクラスの価格帯で実力の高いBDレコーダが登場したことは大きな価値があると思う。

 動画配信サービスの普及は個人的にも注目しているし、テレビ放送の見逃しサービスも(有料であるのが悩ましいが)実用的だと思う。しかし、気になるのはやはり画質・音質で、ネット配信である以上画質・音質はある程度諦めるしかない。画質・音質を重視すると、ダイレクトに自分の見たいコンテンツをアーカイブできるBDレコーダは有効だ。最近はレコーダを買い換えていないなぁ、なんて人はこの機会に最新BDレコーダーを検討してみてはいかがだろうか。

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鳥居一豊

1968年東京生まれの千葉育ち。AV系の専門誌で編集スタッフとして勤務後、フリーのAVライターとして独立。薄型テレビやBDレコーダからヘッドホンやAVアンプ、スピーカーまでAV系のジャンル全般をカバーする。モノ情報誌「GetNavi」(学研パブリッシング)や「特選街」(マキノ出版)、AV専門誌「HiVi」(ステレオサウンド社)のほか、Web系情報サイト「ASCII.jp」などで、AV機器の製品紹介記事や取材記事を執筆。最近、シアター専用の防音室を備える新居への引越が完了し、オーディオ&ビジュアルのための環境がさらに充実した。待望の大型スピーカー(B&W MATRIX801S3)を導入し、幸せな日々を過ごしている(システムに関してはまだまだ発展途上だが)。映画やアニメを愛好し、週に40~60本程度の番組を録画する生活は相変わらず。深夜でもかなりの大音量で映画を見られるので、むしろ悪化している。