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“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

 

第420回:オッサンホイホイ2.0? イマドキの楽器練習環境を探る

〜 とうちゃんの威信を賭けた研究 〜



■ バンドブームがやってきた?

 70年代、そして80年代前半ぐらいまでに青年期を過ごしてきた人たちにとって、音楽というのは今の子供たちよりももっと深く、あこがれを持って関わるものだったように思う。男なら誰でもギターの一つも弾けるようになって女の子にモテる妄想を抱いたものだし(異論は認めない)、実際今でも宴会などでギターを持たせれば小器用に1曲披露するオジサンも、部課内に一人や二人は居るものである。

 しかし、昔は楽器を買って練習するにしても、結構子供にはキツい金額であった。例えばギターなら、ギターそのものが入門モデルでも4〜5万円、さらにはアンプ、エフェクター、弦、シールド、ピック、クリーナー、ストラップ、ギターケース、ギタースタンドなど、小物まで揃えていけば、なんだかんだでトータル10万円以上は使うことになったんじゃないかと思う。30年前の子供にとっての10万円だから、今の金銭感覚で言えば30万円ぐらいだろうか。

 さて、そういう世代の筆者も時代が一回り回って、自分の子供がバンドをやるような歳になってきた。上の娘が、バンドでベースをやることになったのである。昔取ったなんとやらで楽器指南をしてやるついでに、自分の音楽魂も再燃してしまうケースもあるだろう。今回はその魂の再燃に備えて、イマドキのバンド楽器の練習環境の話をしたいと思う。


■ 楽器産業の昨今

 筆者がエレキギターなどをかき鳴らして喜んでいたのは、今を去ること30年ぐらい前である。当時からFender、GibsonのUSモデルは頂点であったが、とても子供が買えるようなものではない。一方日本はというと、YAMAHAは早くからオリジナルモデルを出していたが、初心者が手を出すには高かった。当時入門としてポピュラーだったのは、GRECOやAria Pro IIといったブランドの、いわゆるコピーモデルである。Ibanezが新進気鋭のブランドとして、逆輸入されてきたような時代だった。

 こないだ楽器屋を歩いてみたが、いわゆる入門モデルとされる価格帯は、2万円、4万円、6万円といったステップになっている感じだ。Gibsonの子会社となったEpiphone、Fenderの廉価ブランドSquierを筆頭に、Cort、Washburnといったあたりが名を連ねているが、どれも'80年代にはそもそも日本に入ってきていなかったか、マイナーなブランドであった。

 廉価なギターは、ほとんどが韓国、中国、もしくは中南米製である。いくつか手にとって弾いてみたりしたが、昔の安物ギターほど粗悪な感じは受けない。娘に買ったのは4万円弱のベースだが、製造技術としてはもうこなれているようで、作りや塗装もしっかりしている。ただ若干木が若い感じなので、保管には気をつけないとマズいだろう。ソフトケースとシールド、ストラップはサービスで、ギタースタンドは、特価品で480円だった。

 すでに楽器を手放してしまった人、押し入れの中で腐らせてしまった人も多いだろうが、今だからこそ楽器店に足を運んでみて欲しい。Fender USAなども、大人になった懐具合からすればリーズナブルな値段に見える。


■ 今はアンプもいらない時代

 昔はエレキギター/ベースギターと一緒にギターアンプ/ベースアンプを買わないと、練習もままならなかった。しかし、今は楽器アクセサリも進化している。

ヘッドホンアンプまで搭載したチューナー、TU-88

 娘のベースと一緒に購入したのが、BOSSのチューナ「TU-88」である。単にチューニングするためのチューナというよりも、練習まで含めてオールインワンのマイクロモニターといったほうがいいだろう。実売6,000円ぐらいである。

 楽器入力端子の反対側には、ヘッドホン/ライン出力があり、ここにヘッドホンを繋ぐだけで楽器音がモニターできる。ギターなどはエフェクターを通さないと、ナマ音ではなかなか練習しずらいかもしれないが、ベースだったらそのままでも十分練習可能だ。ただ、楽器のスルー出力はないので、バンドでの練習時に繋ぎっぱなしにするという使い方はできない。

 チューニングは、液晶画面上のTUNERボタンを押す。SELボタンを押して上下キーを操作することで、クロマチックチューナやギター用、ベース用と3通りのチューナとして動作する。アナログメーターを模した表示で、チューニングが合うと赤いLEDが両方点滅し、ピピッと音が鳴る。液晶にはバックライトがないが、このLEDと音を頼りにチューニングが可能だ。

 チューニング以外の機能としては、メトロノームも付いている。単に四分音符を刻むだけでなく、裏リズムや三連符、シャッフル、クラーベといったリズムにも設定できる。これも基本的には、SELボタンを押して上下キーで選ぶだけだ。

ヘッドホン出力はライン出力兼用 機械式メトロノームのように、メーターが左右に振れる

 

外部入力を楽器音とミックスできる

 テンポの設定は、TAPボタンが便利だ。既存の曲のテンポを知りたいときは、音楽に合わせてTAPボタンを叩くだけで、テンポが設定できる。

 しかしTU-88がもっとも便利なのは、別途外部入力があって、それを本体内で楽器音とミックスできる点である。ここにiPodなどを繋げば、それだけで耳コピーや既存曲に合わせた練習などができる。TU-88のボリュームは、楽器音のみのボリュームとなっており、外部入力の音量は、そこに繋いだiPodなどの再生機で音量を調整する感じだ。



■ GarageBandを練習キットとして使う

 「GarageBand」とは、Appleの「iLife」に入っている、音楽作成用ソフトである。イメージとしてはACIDのように、サウンドループを組み合わせて音楽を作るタイプのソフトウェアだ。

 音楽の楽しみ方も、いろいろである。オリジナルの音楽を作りたいというタイプの音楽の楽しみ方もある一方で、既成曲、すなわち好きな曲に併せて弾きたいという楽しみ方もある。いきなりオリジナル曲をやる前に、高度な既成曲をコピーして腕を磨くというのは、楽器上達法として確立された方法でもあるし、なにしろ楽しい。

 「iLife '09」に含まれる「GarageBand '09」では、ギターとピアノのレッスンが受けられるようになっているが、その方法にヒントを得て、GarageBandを普段の練習に使ってみた。まずは楽器出力をMacに入力する手段が必要だ。

 USBオーディオインターフェースとしては、楽器用ではRoland/EDIROLが出しているUAシリーズがよく知られている。筆者宅ではずいぶん前に買った「UA-5」というのがあったので、これを使うことにした。発売当初はMac用のドライバがなかったが、今はリリースされている。最近ではcakewalkブランドの「UA-1G」というのが1万円ちょっとで手に入るようだ。

 インターフェイスで1万円出すのは高いよと思われるかもしれないが、アンプやエフェクターを買いそろえることを考えたら、リーズナブルである。なぜならばGarageBandでは、入力したギター音に対して、各種本物をシミュレートしたエフェクターとアンプシミュレータが使えるからである。

「Electric Guitar」でプロジェクトを開始

 ではそのやり方だ。まずGarageBand '09を起動して、新規プロジェクトから「Electric Guitar」を選択する。その際テンポやキーなどを決めるダイアログが出るが、練習用なのでここは気にせずデフォルトのままでOKである。

 メイン画面が起動したら、まず「環境設定」で、オーディオ入力と出力を決める。OS側のシステム環境設定でも、「サウンド」内にオーディオの入出力デバイスを選ぶところがあるが、GarageBand '09ではこの設定とは別に、このソフトの動作環境としてオーディオ入出力のデバイスを指定することができる。


起動直後の画面 「環境設定」でオーディオの入出力デバイスを指定

 ここでは入力をUA-5、出力を内蔵オーディオとしている。UA-5は音の入力と同時に出力もできるが、そうなるとUA-5側のモニター出力からは、楽器からの入力音とMacから返ってくる出力が一緒に聞こえてややこしいことになるので、敢えて別系統としている。MacBook Proのスピーカーでは心許ないので、ヘッドホンでモニターすることになる。

 新規作成した画面には、トラックが一つ用意されているが、デフォルトでは内部音源用になっているようだ。画面左下の「新しいトラックを追加」ボタンを押して、「エレクトリックギター」のトラックを加える。不要なトラックは紛らわしいので、削除しておく。

 このトラックの赤い丸を点灯させると、入力がONになり、Macに繋いだヘッドホンからは、すでに楽器音が聞こえているはずだ。楽器音のレベルは、レッドゾーンにメーターが飛び込まない程度に、トラック内にあるトラック入力スライダで調整する。

新規トラック「エレクトリックギター」を追加する トラック先頭の赤い小さな丸が、録音準備状態を示す

  画面右側の「ギタートラック」ウインドウでは、すでにアンプとエフェクターのセットが待機している。プルダウンメニューからは、いろいろなサウンドセットが選べるので、とりあえずいろいろなセットを楽しんで欲しい。

 あいにくベース用のセッティングはないが、マニュアルで組み合わせを作ることもできる。アンプの変更は、アンプの上にマウスを持ってくると左右の矢印が出るので、これをクリックして選択する。全部で5種類あるが、アンプのパラメータは全部同じで、特性が異なるだけである。

 エフェクターは、先ほどのプルダウンメニューの横にあった「編集」ボタンをクリックして、必要なものを下の候補から選んでドラッグする。不要なエフェクトは、下の候補欄にドラッグして戻してやる。オーバードライブ、ディストーション、ファズ、フェイザー、フランジャー、コンプレッサーなど、ギターに必要なエフェクトは一通り揃っており、それぞれパラメータも調整できる。「いかにも」的なデザインがなかなかいい。

まずは沢山のプリセットから選ぶだけでも十分 アンプは5種類から選択可能 エフェクターは一通り必要なものが揃っている エフェクターの設定も、本物っぽい

■ 曲と合わせるには

 すでにある程度弾ける人であれば、エフェクターがかかるだけで相当遊べるだろうが、これから練習する人は、既成曲と併せて練習したいはずだ。これもGarageBandで解決してみたい。

メディアブラウザで練習したい曲を選択

 まず既成曲を読み込むには、画面右下にある「メディアブラウザの表示」ボタンをクリックして、Mac内にあるライブラリから曲を選択する。例では1曲しかないが、iTunesのライブラリを読み込ませると、相当量の曲が表示されるはずだ。

 練習したい曲を選んでここで再生するだけで、とりあえず一緒には鳴るのだが、ここでの再生はあくまでもプレビュー用なので、音量の調整ができない。自分の楽器音と既成曲のバランスが取れないと、練習にならないだろう。

 そこで練習したい曲を丸ごと、画面中央ゾーンにドラッグする。するともう一つトラックが出来て、練習曲がトラックに配置されるはずだ。ここで注意する点としては、新しく作成したトラックに、例の録音準備状態を示す赤い丸が移動して、楽器音が聞こえなくなっているはずである。赤い丸は一つのトラックにしか点けられないので、楽器音を出したい場合は練習曲トラックから赤い丸を消灯させ、楽器トラックの赤い丸を点灯させる必要がある。

 練習曲をトラックに落とし込んだことで、音楽と楽器音のバランスが各トラックのスライダーで可能になったはずだ。あとは画面下の再生ボタンをクリックして曲を再生し、練習するというわけである。

 曲の一部分だけを繰り返し聞きたい場合は、画面下のループボタンをクリックする。するとトラックの一番上、時間軸を表示している部分の下に、細いトラックが現われる。繰り返し聞きたい箇所でこの細いトラック上をドラッグすると、黄色いマーカーが引かれる。あとはこれを再生するだけで、黄色い範囲だけを繰り返し聴くことができる。

音楽ファイルを丸ごと読み込ませる 画面上部にある黄色い部分がリピート範囲

 トラック上に配置された音楽は、そのままよりも特定のパートだけを強調して聞いた方が、より耳コピーも楽になる。例えばベースラインをコピーしたい場合は、音楽トラックを選択した状態で「トラック情報の表示」ボタンをクリックし、「編集」タブへ移行する。

音楽トラックにはパラメトリックEQを初めとするエフェクトが使える

 ここのビジュアルEQの絵柄の部分をダブルクリックすると、パラメトリックEQの設定画面となる。プリセットから適当なものを選んでもいいし、自分で狙ったところの音域をドラッグして上下することもできる。聞きたい部分を強調できるだけでなく、逆に自分のパートの音域を下げて、マイナスワン音源として利用するのもいい。

 この時、例の赤い丸印が音楽トラックに移動しているので、楽器音を出す場合はそちらを録音待機にすることを忘れないで欲しい。



■ 総論

 久しぶりに楽器店巡りをしたら、高校生ぐらいの女の子が沢山楽器を見に来ていて驚いた。アニメ「けいおん!」が先なのか、それともバンドブームが先にあって「けいおん!」ができたのかは知らないが、今高校生の間ではどうやらバンドブームが来ているらしい。

 昔の楽器練習は、機材にお金がかかっただけでなく、耳コピーするにもソースの音質が悪く、また操作性も悪かったのでそれは苦労したものだ。しかし最近は、ヘッドホンやイヤホンも低価格でいいものが出てきているし、音源も圧縮音源が主流とは言え、昔のカセットテープよりははるかにS/Nも良く、ピッチも安定している。

 さらにコンピュータとの組み合わせでは、同じポイントを何度も繰り返したり、EQで聞きやすい音質に調整するなども簡単だ。またアンプやエフェクターも、ステージに立つとなれば本物があったほうがいいが、練習時にいろいろ遊びたいだけというのであれば、GarageBandは良いパートナーである。

 今回はMacとGarageBandをご紹介したが、もしかしたらもっといい練習用のソフトが存在するのかもしれないし、これからも方法論をいろいろと研究していきたいと思っている。

 楽器はいつの間にか低価格化しており、練習環境もずいぶん良くなっている。今から楽器をやる子達は、幸せだと思う。願わくば打ち込みやアテブリではなく、ライブで演っても上手い若手が沢山登場してくれることを期待したい。

(2009年 7月 1日)

= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]


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