■レコーダ文化論?
DVDレコーダが出る前、世界には二種類の人間しかいなかった。いわゆる、ビデオ予約ができる人間と、できない人間である。昔のビデオ予約とは、手元のリモコンで毎週録画的なマクロを組み、それを赤外線でデッキに転送する。そんな行為は、誰にでもわかるはずもなかった。
DVDレコーダが登場し、番組表がテレビ画面で見られるようになってから、状況は一変した。そしてその見せ方、インターフェイスのあり方が問われるようになり、できることも多くなり、レコーダは各メーカーがそれぞれの文化圏を形成するようになったように思う。
シャープはもちろんVHS時代からレコーダを作り続けており、AQUOS人気でテレビと一緒によく出るという話は聞いているのだが、あまり情報がないせいか特徴がよくわからない。今回は発売されて少し時間が経っているが、久しぶりにシャープ製BDレコーダ「BD-HDW53」をお借りすることができた。
過去に遡ると、本連載では2006年の「DV-ARW25」以来のレビューである。シャープのレコーダは、どのような文化圏を形成しているのだろうか。さっそくテストしてみよう。
■ 独特のセンスのフロントパネル
以前からシャープのレコーダは、HDDと光メディアの2つを強調する2つの円を並べたようなデザインを続けてきたが、今回も例外ではない。センターには横幅の短いFLディスプレイを配置し、左右にメディアを表わす2つの円を配置して、シンメトリックなデザインとしている。
フロントパネルには何もない、といった演出 | 真ん中には大きな文字のFLディスプレイ |
左右にはミラー張りのパネルが配置されており、その内部は左側がB-CASカードスロットとUSB端子、右側がBDドライブトレーとなっている。光沢のある黒いフロントパネル上部に電源、メディアイジェクトボタンが上部にあるが、本体には映像操作系ボタン類が一切ない。全体的にツヤと反射の多いピカピカしたデザインで、最近珍しい独自のセンスである。
左側はB-CASとUSB端子 | BDドライブは右側 |
バチンと切れるエコモードスイッチ |
ただ、きっちりしたお年寄りの中には、毎日毎日寝る前にすべての電気製品の電源をがっつり切るという習慣があり、昨今の家電製品はスイッチが「パチン」と言わないから気に入らん、という人もいらっしゃるそうで、こうした「パチン」という「ガッツリ切ったぞ感」のあるスイッチが復権しているそうである。
背面パネル。シンプルだが十分な出力タイプを備えている |
背面に回ってみよう。地上波と衛星2波のRF入力、i.LINK端子も付いている。アナログAV入力2系統、出力1系統。D端子とセットになったオーディオ出力もついている。デジタル系では音声な光と同軸両方が付き、HDMI端子は1系統。LANもある。フロントパネルを大胆に割り切った代わりに、入出力端子は妥協がない。
またHDMIだけ、固定ホルダーが付いている。まあ他のケーブルを固定しても構わないのだが、それだけ接続はHDMIがメインになったという現われだろうか。
続いてリモコンを見てみよう。こちらはセンターの十字ボタン周りのみ光沢のある樹脂で囲んだデザインで、ボタン類はやや小ぶりであるが、そのぶんスマートな印象を受ける。レコーダとテレビの切り換えスイッチは、「テレビを使う」「レコーダを使う」ときっちり日本語で書かれており、起こりがちな間違いを防いでいる。
下部の白いボタンは蛍光素材になっており、暗いところでも操作ができるよう工夫されている。録画ボタンが離れた位置に独立しており、録画停止もわかりやすく別ボタンになっている。たまーに手動で録画すると止め方がわからなくて困ることがあるが、これならすぐわかる。
リモコンの裏側には、方向の違う赤外線照射ユニットがもう一つあり、レコーダにまっすぐリモコンを向けなくても操作できるよう工夫されている。
スリムなリモコン。下の白いボタンは蛍光素材 | フタを開けると各種設定ボタンが。ちょっと煩雑に見える |
■ フラットな作りのGUI
シャープ製レコーダは久しぶりなので、基本のホームメニューから見ていこう。ここは各社の特徴が一番出るところである。
本機のホームメニューは、テレビ画面を2/3ぐらい縮小しておいて、上部にカテゴリ、右側に細かいメニューが出るというスタイルになっている。普段使わないような機能にも全部フラットにアクセスできるため、ホームという考え方が妥当なのかは意見の分かれるところだが、できることの見通しはいい。見た目のビギナーっぽさとは逆に、機能がわかっていていろいろ使い倒したい人向けの構造になっている。
全機能にアクセスできる「ホーム」メニュー | 各設定項目に入ると、全画面メニュー表示になる |
録画予約の中心となる番組表は、リモコンの独立ボタンで全画面表示となる。ここもそれぞれメーカーの主張が出るところだが、本機の場合は縦型、横型、縦型+左側に予約リスト、という3パターンから選択できる。
ある意味主張がないという言い方もできるかもしれないが、他社から移ってくるユーザーも拾っていこうという柔軟性が感じられる。慣れてくると縦型+予約リストの表示が一番使いやすい。
番組表横型表示。テレビのAQUOSと同じパターン | 縦型表示。レコーダに多いパターン | 縦型+予約リスト表示 |
番組名を2度クリックすると、詳細表示に行ける |
番組の予約は、番組表内で番組をクリックするだけで、すぐに予約リストに追加される。毎週予約を行なう場合は、もう一度番組をクリックすると、細かい設定が決められるようになっている。
予約の削除は、同じ画面に予約リストがあるので簡単である。黄色ボタンを押すとリスト側に移動するので、そこで削除などを行なう。
検索機能は、機能の数はそれほど多くはないが、実用的である。類似番組検索では、現在選択中の番組と関連するものを探してくれる。番組タイトルや、番組詳細情報から探してくるようだ。
この機能は、録画してしまった番組からでも利用できる。一回試しに録画してみたが、面白かったので毎週録画にしたい、といった用途にも使えるだろう。
3つの検索方法が用意されている | 「水戸黄門」の類似検索結果。再放送まで全部見つけてくれる |
特殊検索は、ジャンル検索にもう一歩踏み込んだ検索が可能 |
本機の特徴の一つは、マルチタスク動作である。パナソニックも3月の「DMR-BW880」で2番組圧縮録画に対応したが、本機も同じく2番組圧縮録画に対応している。さらに2番組圧縮録画中にもBDの再生やBDへのダビングができるなど、トランスコーダ、デコーダがばらばらに動く設計となっている。最初からこのモデルを使っていたらありがたみがないと思うが、過去の製品でいろいろな動作制限にうんざりしてる人にはうらやましい機能だろう。
■マルチで動く録画機能、ただ一部制限も
HD画質モードのマニュアル設定。約3倍までの間で細かく選択できる |
録画モードは、DRに対して2倍、3倍、5倍、7倍、8.5倍、10倍という設定のほか、自分である程度ビットレートというか録画残量時間との兼ね合いで画質を調整できる、HD01~10の設定がある。おおざっぱな倍数設定に対して、HDxxのほうは高画質ながら細かい微調整ができる、といった感じだ。HD10が最も高画質で、DRよりもちょっと圧縮する程度、HD01では3倍ちょっとである。
録画画質設定をいろいろ試してみた。本機では高圧縮でもノイズ低減できると謳っているが、さすがに10倍ではちょっと耐えられない。しかし面白いのは、7倍とか3倍とかを選んでも、それほど画質に劇的な差がないことである。それは7倍も圧縮する割りにはそこそこということでもあるし、3倍程度でも結構荒れるということでもある。
個人的には、オールマイティに考えるなら2倍が限度のように思う。まあこのあたりはコンテンツ次第なので、録画と試しながら最適なレートを選んでいくということだろう。
ディスク側に予約情報を書き込む「マイディスク予約」 |
例えば子ども用に、ありとあらゆる「ピタゴラスイッチ」をオニのように詰め込んでおきたいといった用途に使えるわけである。おじいちゃん用にありとあらゆる「水戸黄門」でも構わないが。
このディスクは、マイディスク予約に対応した別の機器があれば、それに突っ込んでも予約録画する。BDへのダビングは、世代コピーできないダビング10の制限のおかげで皆すっかり保存欲を失ったように思うが、こういうメディアの使い方は面白いしポジティブである。元々はBD搭載AQUOSに搭載されていた機能だが、レコーダに載ることでまた意味が違ってきたのではないかと思う。
■ 外部連携も充実
「REGZAリンク」で接続機器を表示したところ。ネットワークとHDMIの両方で接続されている |
外部との連携機能もあるので、見ていこう。まずネットワーク対応だが、本機にはDTCP-IP/DLNAサーバーが載っている。そのため、DLNAクライアントがあれば、ネットワーク越しに番組を再生することができる。
DLNA接続では、筆者宅の東芝REGZAでも一応番組名だけは見えるが、DTCP-IPに対応していないので、映像の再生はできない。まあ、世代の違う機器を繋ぐとよくある話である。
HDMI CECではリモコンボタンがほぼそのまま表示されるので、操作に迷わない |
携帯電話への転送機能、「高画質 番組持ち歩き機能」も装備している。考え方としては、ワンセグを録画するというパナソニック方式ではなく、録画時にフルセグからエンコードして転送用映像を作り出すソニー方式に近い。最高640×360ドット/30fpsの映像を作成するため、ワンセグよりも高画質である。
携帯電話用の画質設定は4段階 |
また携帯電話用の動画を同時録画している時は、タイムシフト、追っかけ再生、他の番組の再生などが同時にできなくなる。マルチタスク動作にメリットを感じている場合は、そのあたりがネックになるだろう。
■ 総論
シャープのBDレコーダも、出た当初はVHSの置き換えをめざすというえらくシンプルなもので、全く別の市場を狙ってんなー、と思ったものだが、そこのマーケットはテレビのほうに吸収されてしまったように思う。現在のシャープ製BDレコーダは、機能的にも他社製品のいいとこ取りをしたような製品になっており、東芝が今ひとつBDでパッとしない中、「あれ、意外といいじゃん」というポジションに収まってきている。
やはりテレビのマーケットが大きいせいか、連携部分はいくぶんAQUOS頼みのところもないではないが、マルチタスクを徹底化したあたりは、ライトユーザーの意向を汲んだ結果、これだけの機能が必要と判断したのだろう。ダブル録画への誘導も、最初から2つあります的な表現ではなく、片方は「裏」であるというメタファを持たせたあたりも、中高年層への配慮が見られる。
ただ圧縮画質に関しては、再生時の補正技術が今ひとつパッとしない。どうも一生懸命元画像に復元しようとするため、デジタル的なギスギスしたエッジが気になってしまう。コンシューマではオリジナル画質と比較されることはほとんどないので、どちらかというと目に優しい誤魔化しの方向に振った方が良かっただろう。
HDDがテラバイトなのが主流の今、最大容量が500GBということで圧縮録画にはこだわりたいところだが、大量に溜め込んでも見る時間がなければ同じ事なので、まあDRで運用するというのが一番リッチな使い方ではないかと思う。