“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

 

第463回:6chワンセグ丸録り! 「ARecX6 チューナーレコーダー」

~ 簡単設定で見逃しなし、PCで見るもう一つのTV環境 ~



■ テレビ録画は全録標準へ?

 ダビング10の決着以来、テレビ放送に関してはほとんど政治的な動きがなくなったように思える。今動いているものといえば、SARVHと東芝の裁判ぐらいだろうか。

 とは言っても、予定通りに行けば来年7月にはアナログ放送が停波してしまうわけだから、カウントダウンに向けてこちらも粛々と用意を進めていく必要があるだろう。

 新しいテレビ視聴の形として、タイムシフト、プレイスシフトはもはや完全に定着したわけだが、全番組録画はまだ一部の製品が存在するのみで、価格面でもそれほど手軽に試せるような状況にはない。

 しかしそこに大きくハードルを下げる製品が登場した。ソフィアデジタルの「ARecX6 チューナーレコーダー」(以下ARecX6)がそれである。6チャンネルのワンセグ放送を、外付けHDDなどに録画して行くというもので、価格は34,800円。ちなみに7月13日までは特別価格29,800円だそうである。

 ワンセグながら6ch/24時間録画が可能なARecX6を、早速チェックしてみよう。


■ シンプルながら意外にやる?

6チューナーながら、かなりコンパクト

 ARecX6は、チューナ本体とソフトウェアのみのシンプルな構成の製品である。チューナとは言ってもテレビに接続するための映像・音声出力があるわけではなく、リモコンもない。設定などはすべて、PCの専用ソフトウェアから行なうという作りだ。

 まず本体から見ていこう。サイズは206×142×48mm(幅×奥行き×高さ)で、なかなかコンパクト。先週の東芝「D-TR1」のような薄さはないが、サイズ感としてはだいたい同じぐらいである。

 正面にはPower、Status、RecのLED表示があるだけ。PowerとRecは一応スイッチにもなっていて押せることは押せるのだが、今のところ機能は何もないようだ。将来のファームアップで何かしら機能が付くのかもしれない。

 背面に回ってみよう。左の小さな穴は、RF入力端子だ。ワンセグ用室内アンテナと、通常のF型コネクタへ変換するアダプタが付属する。ちゃんとした映りを期待するなら、室内アンテナよりもちゃんとしたアンテナを接続すべきだ。中央にある穴はリセットボタンのように見えるが、説明書には記載がない、謎のボタンである。

 USBと、一つ飛ばしてeSATAコネクタは、録画用HDDを接続するためのものだ。Ether端子でホームネットワークに接続し、PCからコントロールと視聴を行なう。

eSATA端子まで付いたゴージャス(?)仕様F型コネクタの変換ケーブル

 右端は電源スイッチとACアダプタ用のコネクタだ。ここに電源スイッチがあるからには、フロントパネルのPowerスイッチはいらないはずだが、もしかすると本来は何か別の機能のためのスイッチだったのかもしれない。

 設計としてはちょっと荒削りな感じはするが、eSATAまで付いているのはちょっと意外である。


■ すべての操作はPCで

専用ソフトから設定画面を起動

 次にソフトウェアの方を見ていこう。専用ソフトウェア「ARecX6 Player」は、録画番組の視聴を行なうためのものだが、ここから「録画チューナーの設定」を選ぶとWEBブラウザが立ち上がり、ARecX6の設定が行なえる。ネットワークルータと同じように、ブラウザでログインして設定を行なうというスタイルである。

 まずはチャンネルスキャンを行なってチャンネル一覧を作成する。そこから6局を選択して、録画指定を行なうという段取りになる。

 録画先は、USB HDDなどを接続している場合は「外付けHDD」を選択する。「テスト」を実行すると、HDDのフォーマットも可能だ。またNASのディレクトリが見えているのがわかるように、NASに対しての録画もできるようである。

 テストしてみたところ、NASに録画する際は「tv」というフォルダが作られ、さらにその中に日付フォルダが作られ、番組ごとのファイルが作成されていくようだ。ただマニュアルにはNASへの録画機能のことは記載されていないので、まだ正式な機能ではないのかもしれない。

 録画の開始や停止も、ブラウザから行なう。ちなみに本体のシャットダウンや再起動も、ブラウザから操作できる。

チューナー本体はブラウザから設定する録画の保存先を指定する録画開始や停止もブラウザから操作

 録画設定としては、画質などを設定することはできない。ワンセグデータのまま、DR記録するだけである。HDDの使い方としては、いっぱいになったら古い順から消しループレコーディングする方法と、ディスクがいっぱいになったら停止する方法が選択できる。通常はループレコーディングのほうがメリットがあるだろう。

 録画時間としては、1TBのHDDで約8,000時間とある。これを6チャンネルで割るわけだから、1,333時間。約55日間のテレビ番組が6チャンネルぶん記録できる計算となる。まあ2週間ぐらいは録画しておきたいよね、というのならば、だいたい250GBぐらいのHDDで足りるだろうか。さすがワンセグ、データ量が小さい。


■ 検索がキモとなる番組視聴

 ではさっそく録画と視聴をやってみよう。ARecX6は、番組途中からの録画にも対応していないので、録画をスタートさせても、それ以降に始まる番組を頭から録画することとなる。

 また追っかけ再生にも対応していないので、番組が終了してからしか再生できない。ただ、基本は録りっぱなしにすることが前提なので、録画が貯まっていく頃には、これらの制限はあまり気にならなくなるはずである。

 専用ソフトは、よく見るDTCP-IP対応のDLNAクライアントソフトによく似たGUIとなっている。時間尺度としては、日、週、月の3モードがある。「日」表示では、録画された番組が放送局関係なく順番に並ぶ。週、月の表示では、全局をいっぺんに表示させるととても枠には入りきれない。局ごとに分かれた、いわゆるテレビ番組表的なスタイルもあると良かった。

 

ジャンル分けはかなり細かい
 そういう作りなので、ジャンルやチャンネルを絞り込んで見たい番組を検索するというのが、標準的な使い方になるようだ。ジャンルは、ドキュメンタリーやバラエティというざっくりとした分け方ではなく、そこからかなり細かい分類になっている。

 観たい番組があらかじめわかっていて探すには、細かく分かれていた方が見つけやすいかもしれないが、逆にバラエティ番組全部をざーっとさらってその中から見たいものを見つける、といった使い方ができない。大枠の指定も必要である。

 この絞り込み条件は、プリセットすることができる。チャンネルの絞り込みと組み合わせて、たとえばテレビ東京の国内アニメ一覧とか、NHKの歴史ドキュメンタリーだけとか、ジャンル分けが細かいだけに、そういうマニアックなプリセットも可能だ。

 またフリーキーワードによる検索も可能だ。しかしこのキーワード検索は、プリセットできない。いつも見る番組をプリセットできると便利だったのだが、そこも改良の余地がありそうである。

絞り込みの条件はプリセット可能ケロロとサザエさんでOR検索した結果

 

番組再生画面。コントロール部は数秒経つと消える
 番組の再生は、番組名をクリックするだけである。ただワンセグ解像度なので、ノートPCであってもフル画面表示は厳しいものがある。番組を探すGUIはフル画面のほうが使いやすいが、再生を始めたら小窓にする、といった使い方になるだろう。

 番組情報の表示では、放送時間などがわかるだけでなく、関連コンテンツとして同タイトルの番組が表示される。帯番組の視聴には便利である。


■ 総論

 ARecX6は、簡易的に自前AVサーバーを立てて、ホームネットワーク内で映像配信する、というスタイルの製品である。番組の持ち出しや外出先からの視聴は想定されていないため、ワンセグの利用方法としてはだいぶ特殊と言えるだろう。

 今回ワンセグの画質を改めてPCで見てみたが、しっかりアンテナ受信をしているにもかかわらず、ビットレート不足による画質の荒れは、どうにかならないものか。ワンセグは未だビジネスモデルが確立されていないばかりか、競合もないので、画質向上などの動きもほとんどない。

 個人的にはたとえムーブになっても、番組持ちだし機能は欲しかったところではある。しかし全番組がいつでも観られる状況をそろえるには、現状もっとも低コストな選択であることには間違いない。

 以前、アナログ放送を全部録画する「SPIDER」をレビューしたことがあるが、全部そこにあるということは、テレビ番組に対する価値が大きく化ける。すなわち、その場で見なければ知らないままだったものが、取り戻せるわけである。テレビ番組を情報としてとらえるならば、「探して見つかる」という当たり前のことができるだけで全然価値が違うということは、ネットワーカーならばすぐにおわかりいただけるだろう。

 ワンセグ画質をどうとらえるかにもよるが、ネットで話題のあのシーン見たさにYouTubeで違法動画を一生懸命探すのはさすがにないわー、と考えている人には、現時点で最適なソリューションではないだろうか。

(2010年 5月 12日)

= 小寺信良 = テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「ややこしい話を簡単に、簡単な話をそのままに」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンピュータのフィールドで幅広く執筆を行なう。性格は温厚かつ粘着質で、日常会話では主にボケ役。

[Reported by 小寺信良]