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“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

第594回:中身はまるっと別物に、東芝レコーダ「DBR-T360」

〜トリプルチューナ搭載。GUI一新のTシリーズ〜


■M、Z、Cに続く新シリーズ

 昨年末頃の傾向から見ると、レコーダは今年こそ全録ブームが来ると思っていたのだが、いざ蓋を開けてみるとそういうこともなく、やはり従来型というかオーソドックスなスタイルのレコーダが主流なようである。もっとも全録ともなると価格もそれなりになってしまう事もあり、なかなかどこのご家庭でも、というわけにはいかないのが実情だ。

 以前は新製品投入が年に1回ぐらいになってしまったBDレコーダだが、今年は年に2回新モデルを投入する傾向が見られる。とは言っても、事実上レコーダを作る大手メーカーはパナソニック、ソニー、東芝、シャープ、三菱ぐらいになってしまった。

 さて、多彩なダビング機能やネットワーク機能をいち早く搭載して、その筋の人から絶大な支持を得てきた東芝レコーダだが、BDになってからは「REGZAブルーレイ」というシリーズを展開している。今年初めにタイムシフトマシンの「レグザサーバー」DBR-Mシリーズを2モデル発売したが、それ以降は小型化、低価格化なモデルにフォーカスしているようだ。

 その中でも、この秋に発売されたDBR-T360/350は、3波のトリプルチューナを備えた久々の意欲作である。外観やリモコンはもちろん、中身もガラッと変わったという。店頭予想価格は2TB HDD内蔵の「T360」が11万円前後だが、ネットの通販サイトでは、7万円代半ばのところもあるようだ。

 一体どんな風に変わったのだろうか。それでは早速テストしてみよう。




■大幅にシンプル化

 まずボディデザインだが、夏にテストしたDBR-Z250では、奥行きを抑えて薄型化を果たした。ドライブもスロットインタイプにするなど、デザイン面でもこだわった外観だった。

 今回のDBR-T360は、奥行きは209mmと短く押さえつつ、高さは4mmほど増えた程度に収まっている。BDドライブはスロットインではなくトレイ型に戻り、フロントベゼルがそのままはめ込まれているというスタイルとなった。

奥行きの短さは健在 BDドライブ周りのデザインが古くさい

 昨今はどのメーカーもドライブ部をフロントパネルで隠すデザインが主流になっているが、その方向からは外れてきた印象だ。電源ボタンも右側前面に大仰な感じで配置されており、イメージとしての高級感は大きく減退した。

 フロントパネルは下部だけが開くスタイルで、東芝機には珍しくSDカードスロットを備えた。USBポートも備えているが、以前から同社の特徴であった、番組タイトルを効率的に書き換えるためにUSBキーボードを接続できる機能はなくなっている。

電源ボタンをかなり大きく主張 SDカードスロットも備える

 内蔵HDDは2TB。実は今回のシリーズでは、以前HD DVD時代に東芝が推進していたHD Rec方式の再生ができなくなっている。以前からの東芝ユーザーにはショックな話だが、HD DVD撤退したのはもう2008年の話なので、一応4年あまり再生のサポートは続けていた事になる。

 もちろん、ユーザーにとって大切なコンテンツの再生を補償する道義的責任は東芝にあると思うが、永遠にサポートせよというのは現実的には無理筋というものであろう。もしコンテンツにコピーコントロールがなければ、他のメディアに気軽にコピーという事も考えられたのだが、それもできない状況だ。

 東芝がフォーマット変換ダビングサービスを行なうという事は、技術的には可能だろうが、著作権法的に保護技術を回避することも、私的複製を事業者がサポートすることも現時点では違法であり、これも難しい。今後はこのような消費者保護のために、著作権法の改正を求めて行くか、一時的な例外措置規定を導入するなどの法的なアクションが必要である。

背面の端子類はオーソドックス

 さて、背面に回ってみよう。夏モデルのDBR-Z250では、排気ファンを底面に配置するなど、斬新な設計が目を引いたが、今回はわりと普通である。さらに背面にまで吸気口を設けているというは、これまでありそうでなかった設計だ。

 アンテナ入力は地デジとBS/110度CSデジタル2系統で、アナログAV入出力を1系統ずつ備えている。出力はHDMI×1系統と、光デジタルのデジタルオーディオ出力を備えている。


無線LANアダプタ用のUSB端子を別に用意

 USBはHDD接続用と、無線LANアダプタ接続用の2つがある。最近は無線LAN接続機能も内蔵してしまうレコーダが多いが、本機は無線LAN接続には別売の無線LANアダプタ「D-WL1」が必要となる。

 なお、USB HDDは、同時に4台まで繋いでおけるようになった。アクセスできるのは1台だが、繋いだままで切り換えができる。録画予約もUSB HDDを指定して直接録画できる。録画時に指定したUSB HDDが認識できない場合は、内蔵HDDに録画される。

 大きく変わったのが、リモコンだ。電池収納部のみ厚みはあるが、全体的にかなり薄型で軽量になった。ボタンの配置や形状は、かなり汎用リモコンに近いレイアウトとなっている。

大幅に薄型化したリモコン ボタンレイアウトはかなり変わった
十字キー周りのデザインはオーソドックスに

 従来の特徴であった、十字キーの周りにさらに円形にボタンが配置されるスタイルはなくなり、普通の十字キー+決定キーである。クイックメニューは新たにサブメニューというボタンになり、番組ナビ、編集ナビボタンもない。

 リモコンからしても、操作系はかなり別物になっているという予測ができる。




■大きく変わったメニュー

 では実際に中身を見ていこう。これまで筆者は何度となく指摘してきたが、東芝のレコーダはRD時代から連綿といろんな機能を追加してきたため、直感的にわかりにくくなっていた。いつかは大鉈を振るって整理しないといけない時が来るだろうと思っていたが、今回がその時なのだろうか、とにかく全く違っている。

 まず「スタートメニュー」だが、画面上に大きく3×3のタイル状に機能が並ぶというスタイルで、パナソニックのDIGAに似ている。ただ左右に追加のメニューはなく、この1画面ですべて完結しているあたりは、東芝流のまとめ方だろうか。

一新されたスタートメニュー こちらはDIGAのスタートメニュー

 なおサブメニューを押すと「簡単モード」に切り替わる。DIGAの「かんたんスタート」は2ボタンしかない割り切りようだが、本機ではダビングや生視聴、番組の削除機能なども持たせており、設定画面を隠すという意図が感じられる。

簡単モードも新デザインに こちらはDIGAの簡単スタート画面

 番組表は、従来は黒バックに白文字という独特の雰囲気を持っていたが、今回は白地に黒文字と非常にオーソドックスな表示になった。ジャンルごとの色分けもなく、やけにあっさりしている。

 表示チャンネル数は3から12まで変更可能で、文字サイズも大小が選べる。関東近郊では9チャンネル表示ぐらいがちょうど効率がいいが、文字サイズが小だと遠くからは読めないぐらいのサイズである。

番組表も白を基調に一新 サブメニューから表示の変更が可能

 番組表のスクロール速度は従来機並みかと思うが、先週爆速になったDIGAを触ったばかりなので、それと比べるともたついた印象を受ける。次の時間帯に進むと、現在選択中のチャンネルだけは早く表示されるが、それ以外は一拍あって全部表示されるといった速度だ。

 従来機ではさらに、独自の予約ランキングなどの機能にアクセスできたが、本機にはその機能はなくなった。そういうネットワーク系の機能はAndroidアプリで実現し、本体機能は極力軽くしていくという方向性なのかもしれない。

 番組の予約は、番組表で録画ボタンを押すだけの一発予約を搭載しているほか、番組を選んで決定ボタンで、従来方式の録画設定もできる。以前のようにR1だR2だといった概念がなくなり、単に3つ以上重なると注意画面が出るだけになった。重複番組の管理・修正も、単に予約画面に飛ばされるだけというシンプルさである。

大幅に簡易化された予約画面 予約重複のアラートも簡単に 重複のエラー訂正は単に予約画面に飛ばされるだけ

 なお、スカパー! HDのようにEthernet経由でストリーム録画するものは、3チューナー/3エンコーダを使っていてもそのまま録れるので、トータルでは4番組同時録画を実現する。

 録画した番組を見る「見るナビ」も、えらくあっさりした画面になった。番組名がリスト表示され、選択している番組がサムネイル内で再生されるといったスタイルだ。

 「見るナビ」では、フォルダ分けする機能がなくなったのは大きな変更点だ。家族ごとにフォルダを分けるといった使い方をしていた人には、番組が探しにくくなったかもしれない。

 各番組はチャプタ表示も可能だ。CM部分はCと表示され、本編からの再生に対応するほか、サブメニューか右ボタンを押すと、プレイリスト作成やチャプター編集のメニューが出てくる。このあたりの雰囲気は若干ソニー機に似ていないでもない。

こちらもあっさりした「見るナビ」画面 見るナビからチャプタ表示、さらに編集画面へ移行する



■おまかせ自動録画と新編集画面

 録画予約機能の一つとして、「おまかせ自動録画」が搭載されている。おまかせ自動録画の記録先を内蔵HDDとUSB HDDで選択できるほか、他社があまり実装していない複数項目のand/or/not検索を実装しているのが特徴だ。

 スペースで区切ったキーワードがand検索となり、2行目はor検索、3行目はnot検索だ。ジャンルや録画先などが指定できるほか、放送波の選択、時間帯も指定できる。

複雑な条件設定が可能なおまかせ自動録画 登録した条件は修正できない

 ただ、いったん設定したものを修正できないのは痛い。あまりにも沢山見つかりすぎるのでもう少し条件を絞り込みたいとか、条件が多彩に設定できるだけに色々修正したくなるものだが、いったん全部消して最初から設定をやり直すのはしんどすぎる。ここだけ、機能として練られていないというか、非常に未熟なものを感じる。

 ダビングのためのチャプタ編集やプレイリスト機能も搭載している。チャプタ分割は、分割やチャプタ移動に4色ボタンを使うようになった。分割作業では、番組の早送りやスロー、コマ送りなどを駆使していくわけだが、以前のリモコンと違い、再生とポーズボタンの位置が逆になっていたり、スローボタンが廃止されたりと、操作系がかなり変わっている。慣れるまではちょっと苦労するだろう。

 複数チャプタ削除機能もあるが、以前のように奇数チャプタを一括削除みたいな機能がなくなり、チェックマークを付けて一度に消すというスタイルになった。

まったく新しくなったチャプタ編集画面 使い勝手は違うが、チャプターの一括削除機能も搭載

 ディスクへのダビング機能も、ずいぶん変わった。まずダビングしたいメディアを選択し、その後録画番組を選択する。画質変更などもできるが、こちらも全体的にシンプルだ。

ダビング機能はLAN上のデバイス転送や持ち出し変換なども統合 BDへのダビング機能もシンプルに



■総論

 今回取り上げたDBR-T360は、トリプルチューナ搭載なので特に廉価モデルというわけではないが、機能的には減った部分も多い。これまで微に入り細に入りといった手厚い機能が目的で東芝機を選んできた方には肩すかしだろうが、初めて東芝機を買うという人にとっては、大幅にわかりやすいのは事実である。

 とまあとぼけてここまで書いてきたが、実際に買って中を開けた人もあり、パナソニックの旧ユニフィエを搭載しているのではという話もある。そう言われると、突然のSDカードスロット装備も頷ける。

 ただ、エンジンが丸ごと違い、GUIが全然違うが、チャプタ編集やプレイリスト作成、ネットdeダビング、レグザリンク・ダビング、レグザAppsコネクト対応など、大枠としてできることはほぼ従来シリーズと同等にまとめてきたあたりは、さすがだと言えるだろう。レコーダもいよいよ垂直統合ではなく、商品企画とソフトウェアで差別化していく時代に入ってきたということかもしれない。

 ここにアプリを組み合わせて使っていくわけだが、現時点では、まだレグザAppsコネクトは、やりたいこと単位でアプリがバラバラで、東芝のタブレットでなければうまく動かない機能も多い。もちろん再生や番組転送あたりはDTCP-IP縛りがあるので、すべてのタブレットで対応というわけにはいかないだろうが、それ以外をどう対応させていくのかが、東芝の腕の見せ所になってくる。

 そもそもテレビとネットは、ユーザー的には非常に近い関係にある。さらにユーザーは、録画番組を通じた新しい体験を望んでいる。レコーダ本体のコストダウンと、できることの多様化を実現するために、東芝は大胆な道に踏み出したようだ。


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東芝
DBR-T360
(2012年 11月 28日)

= 小寺信良 =  テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「金曜ランチボックス」(http://yakan-hiko.com/kodera.html)も好評配信中。

[Reported by 小寺信良]