小寺信良の週刊 Electric Zooma!
第595回:音楽が流れる照明、“CrossFeel”を体験
“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”
第595回:音楽が流れる照明、“CrossFeel”を体験
Bluetoothスピーカー搭載のLEDシーリングライト
(2012/12/5 10:30)
あらゆるところにスピーカーを
AppleのAirPlayを使うと、対応機種がある場所でならどこでもiTunesに登録している曲が聴ける。家にはApple製Wi-Fiルータ「AirMac Express」が2個あるので、PCがある部屋も含めて3箇所で同時に、あるいは1箇所ずつ選んで音楽を鳴らすことができる。
これは結構画期的なことで、iPhoneやiPadをリモコン代わりにして、仕事部屋、ダイニング、寝室の3箇所で、シームレスに音楽を楽しむことができるのだ。あちこち移動していても常に同じ音楽が同じタイミングで鳴っているというのは、曲によってはショッピングセンターに居るような気分にもなるが、なかなか一般家庭では味わえないおもしろさである。
そんな経験があるものだから、先日発表されたNECライティングのスピーカー内蔵LEDシーリングライト「CrossFeel」シリーズのニュースには、えらい勢いで食いついてしまった。照明器具にBluetoothやスピーカー、アンプなど一式を内蔵してしまえば、電源供給も配線もいらないではないか。
タイプとしてはデザイン違いでシルバータイプとライトオーク調タイプの2つがあり、それぞれに~8畳までのと、~12畳までの2サイズがある。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は小さい方が6万円前後、大きい方が8万円前後。小さい方はネットの通販サイトでは、5万5千円前後で販売しているところもある。
単なるLEDシーリングライトの価格からすれば3倍~5倍ほど高いが、スピーカーと組み合わせていろんな機能を実装しているようだ。照明+スピーカーはどんな世界を見せてくれるのだろうか。早速試してみよう。
取り付けもまったく手間いらず
まず取り付けの前に、構造を見ておこう。サイズ的には普通のシーリングライトと同じだが、スピーカーやアンプなどがあるぶん、見た目よりも重さがある。取り付け前に引っ掛けシーリングの強度を確かめておいた方がいいだろう。
パイオニアと共同開発したというスピーカーは、天井に向く側のほうに埋め込まれている。40mmのフルレンジが2基と、77mmのウーファが1基だ。それぞれスピーカーのすぐ前に拡散板「パイオニア オムニエリア リフレクター」が取り付けられており、音を天井に沿って滑らせていくような構造になっている。
音を直接天井にぶつけると、上の部屋に振動が伝わってしまうので、それを防ぐ意味合いもあるそうだ。もちろんカバー状になっているのは、ホコリの堆積を防ぐ意味もあるだろう。案外照明の上側というのはホコリが溜まるところなので、音楽と一緒にホコリをまき散らすようではたまらない。
基板部の外周には4箇所、かなりの高さのスポンジが付けられており、これが天井に接地する格好になる。おそらくスピーカーの振動によるがたつきを防止するためだろう。
アンプはどこにあるのか外側からは見えないが、総合出力は20Wとなっており、環境音的な音響機器としては割と余裕のある設計だ。電源はシーリングから直取りするので、ACアダプタの配線などを気にしなくていいのはうれしい。
LEDは2重のリング状に配置されており、2色のLEDの組み合わせで、色温度が変えられるようになっている。LEDはカバーに覆われており、直接見たり触ったりできないようになっている。
照明の取り付けなど、5年前に引っ越して以来さっぱりやったことがなかったが、天井に引っ掛けシーリングがあるのならば簡単である。まずは付属のアダプタを取り付け、そこに本体をガチンとはめ込み、配線をしてカバーを付ければ終了だ。配線は逆挿しできないよう、左右のコネクタが違う形状になっている。
実際に取り付けてみると、普通のシーリングライトは天井に張り付く感じだが、本機は天井とライトの間がかなり空いている。もちろんこの間から音が出るからこの構造なのだろうが、下から見上げるとちょっと空中に浮いてるような感じがする。
スピーカーは基本無指向性だが、シーリングの設置位置が部屋に対して偏ってる場合は、より広い方にマーカーを向けることで、バランスが取れるという。
照明とオーディオ設定用に、赤外線リモコンが付属している。光量調整だけでなく、LEDのモードが3種類選択できるほか、音量調整や環境音を鳴らしたりすることもできる。
照明機能も多彩
本機でできることを整理しておこう。まず照明部分だが、付属リモコンを使って3モードに変更できる。2色のLEDが内蔵されているので、それのバランスによって色温度を変更する機能だ。
内蔵スピーカーを使うと、環境音を流す事ができる。音源は本体に内蔵されており、6種類の音が選択できる。
No.1 | 鳥のさえずり |
No.2 | せせらぎと小鳥 |
No.3 | サンゴ海ビーチ |
No.4 | 小川の流れ |
No.5 | 夜のビーチ |
No.6 | 虫の声 |
本機にはBluetoothのホスト機能があり、スマートフォンやタブレットとワイヤレス接続して、照明のより細かいコントロールをしたり、Bluetoothスピーカーとして音楽を鳴らしたりすることができる。なお、音楽と本体内蔵の環境音はミックスさせることもできる。リモコンでも最低限の操作はできるが、使いこなすならスマートフォンアプリがあったほうがいい。
ではまず、照明の機能から見ていこう。付属リモコンを使うと、3つのモードに切り換えられる。「アクティブ」は蛍光灯で言うところの昼白色で、白色LEDだけが点灯するやや青っぽい昼光色、「リラックス」はオレンジのLEDのみが点灯する電球色、「ナチュラル」は全部のLEDが発光し、光がミックスされることで昼白色となるモードだ。
明るさとしてはナチュラルがもっとも明るく、これの最大を100%とすると、アクティブが70%、リラックスが30%程度となる。それぞれがさらに10段階の明るさ調整が可能だ。
さらにスマホアプリを使うと、6モードに設定できる。
【スマホアプリで設定できる照明モード】
「おやすみ」モードはリモコンの「常夜灯」と一緒なので、それを別モードというかは微妙なところだが、2色LEDの点灯バランスを微妙に変えることで、6モードを作り出しているわけだ。
タイマー機能も充実している。おはようタイマーは、設定時刻の30分前から徐々に明るくなり、指定した楽曲や環境音も徐々に音量が上がっていくというものだ。音楽は1曲だけでなく、プレイリストのような格好で複数の曲が設定できる。
おやすみタイマーは、何分後に消灯するかを設定でき、その時間になると消灯して音楽や環境音も再生を停止する。付属のリモコンでは、おやすみタイマーは設定できるが、おはようタイマーが設定できない。これはスマホアプリだけの機能である。
また本機には、「ホタルック」という機能が付いている。これは照明を消しても、青緑色のライトが2~3分光るというものだ。本体内のバッテリに蓄電した電力で光るので、壁のスイッチで照明を消しても光るというメリットがある。デフォルトではONになっていて、OFFにするには本体のスイッチを切り換える必要がある。
異色のオーディオ機能
では次にオーディオ機能をチェックしてみよう。まずプリセットされている環境音だが、割と高音が多いため、スピーカーとの相性がよく、小さな音でも十分聞こえる。「サンゴ海ビーチ」など、あいにく冬場に合いそうな音がないのが残念だが、暑い夏を涼しく過ごすぶんにはいい素材が揃っている。
ただ、基本的には12秒から15秒ぐらいのループなので、長時間鳴らしていると変化がなさ過ぎて飽きるし、ループであることが耳障りに感じてくる。あまりはっきり聞こえないぐらいの音量で静かに鳴らしておくという使い方がいいだろう。
スピーカーのボリュームは、付属リモコンでは大きくなる方向にしかステップで動かせず、小さくするにはいったん最大音量を通過して最小音量に戻るしかない。緊急で小さくしたいときはスピーカーをOFFにするほうが早いが、せっかく上下左右に押せるボタンがあるなら、左右は音量を割り付けて欲しかったところだ(上下は明るさ調整)。左右には現時点では留守タイマーとおやすみタイマーが割り付けてあるが、これらは設置場所によっては全然使わない機能である。
音楽を再生するには、スマートフォンなどでBluetoothスピーカーとしてペアリングする必要がある。本機は電源を入れると10分間ペアリング待ちになるので、その間にペアリングを済ませればいい。
実際に音楽を再生してみたところ、本機側を最大音量にしても、それほど大音量で鳴るというところまではいかないようだ。製品の目的からして、大音量で聞くようなものではないということだろうが、アンプが20Wもある割には若干拍子抜けする。ただBGMとしては十分な音量ではある。
音質的にはボーカル近辺の特性が良く、声が綺麗に抜けるが、高音は若干抑え気味だ。スピーカーが小型なので、もっとチャキチャキした音なのかと思ったが、意外である。拡散板を使っているため、直進性の高い高域は拡がってしまって下にはあまり降りてこないのかもしれない。
もう一つ意外だったのは、フルレンジスピーカーはステレオ仕様になっており、左右に拡がる向きに傾斜が付けられているが、聞く位置によってはステレオ感が得られないことだ。スピーカーが縦の方向から聞くと、当然ステレオ感は減少する。
基本的にはステレオ音像を再現するというよりは、左右ともに音を拡散させて広げるという格好なので、オーディオ的というよりは、サウンドレインフォースメント(SR)的な考え方で設計されているという事だろう。部屋のどの位置に居ても、だいたい同じ聞こえ方がするところがメリットだ。ただ、上から音がしている感は否めない。
そういう意味では、起き上がった状態で聴くよりも、寝た状態で聴いた方が自然に聴こえる。この点ではやはり寝室に設置するのが一番いいという事だろう。
本機にはおはようタイマーがあるので、実際に使ってみた。設定した時間の30分前から徐々に明るくなっていくが、起きる時間帯や季節によっては、すでに十分窓からの光で明るくなっていることもある。今どきの季節では役に立つが、通年通して役に立つというのは難しいようだ。
音楽でさわやかに目が覚めるというのも一つのメリットだが、あんまり気持ちのいい音楽をセットしてしまうと、気持ちよくて余計寝てしまう。全面的に依存するのではなく、保険としてちゃんとしたアラームをセットしておいた方がいいだろう。
おやすみタイマーは、時間になると照明も音楽も消えてしまうが、タイマーをセットして先に照明だけ手動で消すこともできる。音楽が残って自動で切れるというのは、なかなか便利だ。
総論
どこにでも音楽のある生活というのは、気持ちをリラックスさせてくれるものだ。また人間集中するときには、完全に無音よりも多少のノイズがあったほうが良いという研究結果もあるそうなので、環境音がどこからともなく流れるというのは、理に適っている。
ただ、どこからともなくというのは、どこにスピーカーがあるかわからないからイイ感じなわけで、自分で取り付けちゃったら天井のライトのところから音が出てると知ってるわけだから、面白みは半減する。家族に教えないで、しばらくは一人ニヤニヤして楽しむというのもいいかもしれない。
LEDライトとしても十分に明るく、一般的な蛍光灯の照明に比べれば電気代も少なくて済む。蛍光灯タイプだと明るさが2段階ぐらいしかないが、本機は10段階もあるので、暗めにしたいときにはさらに省エネになる。
オーディオ機能としては、ステレオセパレーションを期待するとちょっとあてが外れる部分もあるが、音質も耳に付くようなクセがなく、聴き疲れしないトーンにまとめている。このスピーカー配置でマトモな音質にチューニングするのは、さぞや大変だっただろう。
意識しないでスピーカーが使えるというのは、思いのほかメリットがある。タブレットでちょっと動画を見るときなども、本体スピーカーより上に飛ばして聴いた方が、満足感が高い。
ネックはやはり値段だろう。LEDシーリングライトと、そこそこのBluetoothスピーカーを別々に買っても3~4万円程度である点を考えると、一緒になっているメリットをどこまで評価するかというところである。
ただ製品の方向性としては面白いし、ラインナップとしても今後の伸びしろがあるジャンルだと感じた。
CrossFeel シルバータイプ HLDCB0821SP(~8畳) | CrossFeel ライトオーク調タイプ HLDCB0822SP(~8畳) |
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