小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第654回

“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

NAS/PC/スマホあらゆるソースを聴く、ソニー「SRS-X9」

一番手軽で多機能なハイレゾワイヤレススピーカー

ハイレゾ、ハイレゾと言うけれど……

 ハイレゾ対応ウォークマンが人気だそうである。昨年10月にF880シリーズが、12月にZX1が発売されて以降、ポータブルハイレゾというジャンルが確立しつつある。

 これは、通勤電車でハイレゾを聴くという事よりも、家庭内でリラックスしていい音質で音楽を聴くツールとして、ウォークマンとヘッドフォンという組み合わせがリーズナブルという判断なのだと思う。

 数年前から高級ヘッドフォンはきちんと売れ続けている。ヘッドフォンはアナログ機器なので、ハイレゾ対応するために何か特別な機能が必要という事もない。再生能力の高いハイエンドモデルなら十分ハイレゾの良さを味わえるわけだが、これまでは“手軽なハイレゾの再生機”が少なかった。そこにハイレゾ対応ウォークマンがすっぽり填まったのではないかと見ている。

 その一方で、スピーカーはどうするんだという問題がある。コンポタイプのハイレゾ対応製品もいくつか出ているが、それなりの出費を覚悟する必要がある。また今さらコンポステレオを満足なポジションに設置するスペースがとれるのか、という問題もある。もうちょっと手加減した製品はないのか。

 そこで今回は、3月8日に発売が開始されたばかりの、ソニー製ハイレゾ対応ワイヤレススピーカー「SRS-X9」をテストしてみる。同シリーズとしてすでに「SRS-X5/X7」が発売されているが、それの最上位モデルで、ワンボックス型スピーカーとしては唯一ハイレゾ対応を謳うモデルだ。店頭予想価格は6万円前後だが、ネットの通販サイトでは実売5万円台半ばといったところである。

 USB DACやBluetooth/DLNAネットワークプレーヤー機能なども搭載した多機能なスピーカーとしてはリーズナブルではあるが、ハイレゾ再生機としての実力はどうだろうか。さっそくテストしてみよう。

無駄を排した美しいボディ

 まずデザインだが、ガッシリした直方体で、無駄な出っ張りは一切ない。最近ソニーのワンボックススピーカーは正面から見るとかっこいいのだが、後ろを見るとこっそり出っ張ったりしていて、なーんか騙された感があるデザインが多い中、SRS-X9/5/7シリーズは隠し事なしのキチンとした四角で、好感が持てる。

 見た目はコンパクトだが、重さは4.6kgもある。外形寸法は430×125×133mm(幅×奥行き×高さ)。持ち手や指がかりはどこにもないので、設置場所の移動は慎重さと気合いが必要だ。

 天面はガラス張りで、電源も含めボタン類はすべてタッチセンサーだ。通常は電源とボリュームボタンしか見えないが、手をかざすと入力切り換えボタンが現われる。中央部にはNFC用のポイントを示すマーク、左右には上向きにペアのスーパーツィータがある。側面はヘアライン仕上げのアルミだ。おそらく貼ってあるだけだろうが、全体の印象を良くしている。

偽りなしの直方体ボディ
ボタン類はすべてタッチ式
手をかざすと入力切り換えボタンが現われる
NFCで簡単ペアリング
上部にはペアのスーパーツイータ
側面はアルミのヘアライン仕上げ

 スピーカーグリルはそのままでは外せないが、マグネットが仕込まれた付属の治具を使うと、外すことができる。問題がなければ外して使った方が、よりクリアな音で楽しめるだろう。

付属の治具でグリルが外せる
グリルを外したところ

 スピーカーユニットは、中央部に94mm径のサブウーファがあり、両脇のパッシブラジエーターでこれを増強する。バスレフ型に比べ、スピード感のある低音を実現するという。左右には中高域用として、50mm径の磁性流体サスペンション構造のユニットを配置、その上には19mm径ソフトドームタイプのスーパーツィータがある。

小型だが強力なサブウーファ
中高域は50mm径の磁性流体サスペンション構造ユニット

 ツイータは上向きのものも加えて合計4つあるが、これは同社のハイレゾ対応スピーカー「SS-HA1」や「SS-HA3」と同じ構造だ。直進性の高い高域用ユニットを上向きにも付けることで、リスナーの聴く位置、とくに高さ方向の違いによる音質の変化を抑える効果がある。どこにでも置けるスピーカーなだけに、こういう仕掛けが必要という事である。

 背面も比較的シンプルだが、端子はなかなか面白い。USBのA端子とB端子、LAN端子にアナログオーディオ入力もある。上部には本体に綺麗に収納できるWi-Fi用アンテナも備える。電源はメガネケーブルでコンセントに直挿しするタイプで、内部にバッテリーは装備しない。

ユニークな背面端子
W-Fiアンテナもきちんとデザインされている
電源はメガネケーブル直挿し

 リモコンも見てみよう。こちらもボディに合わせた直方体で、入力切り換えほかボリューム、再生操作、ミュートなど、パネル操作と似たような機能しかない。たったこれだけで操作できるのかと思われるだろうが、本機のメイン操作は、iOSとAndroidで提供されているアプリ「SongPal」から行なうようになっている。つまりスマートフォンかタブレット、あるいはAndroid搭載ウォークマンなどから操作するのが基本的な使い方というわけだ。

ボディデザインに合わせたリモコン
コントロール用アプリ「SongPal」

多彩な再生機能

スマホのWi-Fi設定を共有という形で転送できる

 ではそのSongPalの機能を見てみよう。まず手始めにスマートフォンとX9をBluetoothで接続する必要がある。NFC搭載ならそれを使い、非対応なら本体もしくはリモコンのペアリングボタンの長押しで、ペアリングする。これでスマホ側のSongPalがX9のコントローラとして使えるようになる。

 X9のWi-FiはWPSにも対応しているが、スマートフォン側がWi-Fi設定されていれば、それをX9に転送することができる。WPSボタンなどを使うことなく、簡単にX9をホームネットワーク内に入れる事ができるのは便利だ。

 もちろん、有線で使う場合はこの設定は必要ない。このスピーカーを有線LANで使う必要があるのかという疑問もあるかもしれないが、ハイレゾ音源をネットワーク経由で鳴らす場合、ソースのビットレートによってはWi-Fiでは帯域が足りないことも考えられるので、有線接続を使う事になる。

ネット接続後に、改めてX9と接続

 SongPalの機器選択からネットワークに繋がったX9を選ぶと、入力ソース切り換えがアイコンで示される。さらにMusic Unlimited、Radiko、TuneInといったネットワークサービスのアイコンも現れる。一旦X9がホームネットワークに繋がれば、それ以降はスマホとX9はBluetoothで繋がっている必要はなく、ネットワーク経由でコントロールできる。

 これらのアイコンから使いたい音源ソースを選んで、X9に再生させるわけである。ではまず各入力で何ができるのかをまとめてみると、次のようになる。

入力 できること
Bluetooth Bluetoothスピーカーとして再生
ネットワーク DLNAサーバー内の音楽再生、ネットラジオなどの再生
USB-A USBメモリやウォークマンをMass Strageモードで再生
USB-B PCやウォークマン内のファイルを、USB DAC+スピーカーとして再生
Audio In アナログソースを再生

 わかりにくいのが、USBのAとBの違いだろう。USB-Aポートで何らかの機器と接続した場合、X9がホストとなり、接続された機器がスレーブ(周辺機器)扱いとなる。USB-Bポートで接続した場合は、X9はスレーブとなり、繋いだ機器の周辺機器として動作するということだ。1台の機器がホストにもスレーブにもなるので、1種類の端子を積むだけでは済まないのである。

SENのアカウント管理画面で、機器登録を行なう

 もう一点わかりにくいのは、Music Unlimitedなどのネットワークサービスの扱いだ。一般的なBluetoothスピーカーでは、いったんスマホで受信した音楽ストリームを、スピーカーに飛ばしている。X9がそれと違うのは、X9が直接Music Unlimitedなどのネットワークサービスからストリームを受信できることである。

 Music UnlimitedをX9で受信するには、PCを使って同サービスのサイトで、機器登録を行なう必要がある。機器登録には、SongPalを使って機器の登録用IDを確認する必要があるため、最初の設定はちょっと複雑だ。

 再生は、SongPal内から各サービスを起動する。スマホのUIとは全然違うだけでなく、レスポンスも一拍遅いのは、X9内の動作をリモートで見ているからだろう。

SongPalからアクセスしたMusic Unlimited。スマホアプリとはUIが全然違う
RadikoもSongPalからアクセスし、X9で直接受信・再生できる

あらゆる手段でハイレゾ再生

 ここまでは入力ソースごとにできることを見てきたが、今度は接続する機器ごとに使い方をみてみよう。ポイントはやはり、ハイレゾソースをどれだけ簡単に聴く事ができるかというところだ。

 現在ハイレゾ音源として流通しているソースには、WAV(リニアPCM)、FLAC、DSD(DSF/DFF)、ALAC(Apple Lossless)などがある。主に流通しているのはWAV、FLAC、DSFあたりだろうと思うが、X9は現在主要なフォーマットはほぼ再生可能で、WAVとFLACに関しては24bit/192kHzまで対応している。なお、発売時点ではDSDには対応していないが、4月のファームウェアアップデートで、2.6MHzのDSD(DSF/DFF)に対応する。

 ただ、DSDは内部でリニアPCMに変換しながらの再生なので、ダイレクトにDSDを再生できるわけではない。その点では残念だが、SACDを推進してきたソニーの製品がDSDを再生できないというのではいかにも残念過ぎるので、少なくとも聴けるようにした点は評価したい。今回は、この4月公開予定のファームウェア入りのものをお借りして、テストしている。

 ●USBメモリ

USBメモリからファイルを選んで再生。ジャケット画像などはGracenoteで検索されたものが自動表示される

 ハイレゾ再生で最も簡単な方法は、ハイレゾ音源のファイルをUSBメモリにコピーし、それを背面のUSB-Aポートに挿して再生させることである。再生する曲の指定などは、SongPalから行なう。ただ、メモリ内のフォルダを掘っていって曲を選ぶだけなので、原始的な感じである。

 ●ハイレゾ対応ウォークマン

ウォークマンを付属ケーブルでUSBストレージとして接続

 すでにハイレゾ対応ウォークマンをお持ちの方は、その中にハイレゾのファイルが入っていることだろう。これもウォークマンをUSB-A端子に繋ぐ事で、中身のハイレゾファイルを再生することができる。この時ウォークマンはMass Strageモードにしておき、曲の選択などは別途スマートフォンを使って、SongPalから操作する。

 ウォークマンのUIはまったく使わず、単にUSBメモリーとして動作させるようなものである。その点ではやはり原始的だが、その代わりウォークマンを充電することができる。

 それでは寂しいという場合は、別売のUSB変換ケーブル「WMC-NWH10」を用意すれば、ウォークマンをUSB-B端子に接続できるので、ウオークマンのUIを使ってハイレゾ再生ができる。ただしウォークマンへの電源供給はできないので、バッテリーだけで動作することになる。ハイレゾを再生するとバッテリーの減りが結構激しいので、あまり長時間の再生は難しい。

NW-ZX1/F880用ハイレゾ・オーディオ出力用USB変換ケーブル「WMC-NWH10」
USB-B接続ではウォークマンのUIを使ってハイレゾ再生が可能

 ●PC

 PC内にハイレゾファイルがあるという場合は、Windowsでは専用のASIOドライバをインストールした後、X9のUSB-B端子に接続することで、ハイレゾ再生ができる(Macではドライバのインストールは不要)。音楽プレーヤーソフトもハイレゾ対応である必要があるが、ソニーからは「Hi-Res Audio Player」というソフトが無償で提供されている。再生機能はシンプルだが、WAV、AIFF、FLAC、ALAC、DSF、DFF、MP3が再生できるので、いろんなフォーマットで鳴らしてみたいという時に便利だ。

無償提供されているHi-Res Audio Player
X9でDSDを再生するには、DSD over PCMを選択

 そのほかウォークマンの曲管理ソフトとして提供されているMedia Goでも再生できる。またフリーのハイレゾ対応ソフト、foobar2000でも再生可能だ。この場合、再生デバイスを「ASIO:Sony Audio Driver」に設定する必要がある。

 ●DLNA(NAS)

ホームネットワークからNASを指定
NASからWAVファイルを再生

 ホームネットワーク内にあるNASにハイレゾファイルがあると言う場合は、SongPalの「Home Network」からDLNAサーバを探し、アクセスする。なお、この場合はWi-Fiではなく有線LANを使うことが推奨されているが、Wi-Fiでも再生できなくはない。

 DLNAサーバとして同社のnasneを使用してみたが、nasneはDLNAサーバーとして配信できるフォーマットがWAV/MP3/AAC/WMAのみでFLACなどは対応しておらず、SongPalからも認識できなかった。一方バッファローのLinkStation miniでは、FLACのファイルは再生できるが、配信非対応のDFFだけでなく、対応しているWAVも何故か表示されなかった。DLNAサーバーのファイルの対応状況にも注意したい。

気になる音質は?

 さて最後に音質の話もしておこう。ミッドレンジが50mm径のユニットということで、ホントにこれでハイレゾ再生できるのかいなと訝かしんだが、実際にハイレゾソースを聴いてみると、非常にクオリティの高い再生が楽しめた。音量も十分で、ステレオコンポに匹敵する量感が得られる。

 アンプは小型機には珍しいS-Master HX搭載で、それをスーパーツイーターとミッドレンジ用に各1基ずつ、サブウーファ用には2基使用しているという。最大出力は154Wにもなるというから、最初からBluetoothスピーカーのレベルではない。

 ただワンボックスなので、ステレオイメージが狭いのは仕方がない。音の直進性が高いため、スピーカーから離れるほど1点で鳴っている感じが強まる。オーケストラものを聴いても、肩幅ぐらいのサイズのオーケストラが出現する感じだ。このあたりはやはり、左右分離できるステレオコンポに分がある。

 一方、80cmぐらいの距離からニアフィールドで聴くと、ステレオイメージも十分な広さを感じる。ニアフィールド用ハイレゾモニター的な使い方をすると、なかなか面白いのではないかと思う。

 音質補正機能としては、複数のサウンド調整を自動的に行なうClearAudio+、圧縮音源に対してアップサンプリングやbit拡張、高域補正などを行なうDSEE HX、プリセット6つを含む5バンドグラフィックイコライザーを備えている。

音質補正機能も充実
EQは一般的なプリセット以外に、5バンドのカスタム設定も可能

 ハイレゾソースを鳴らすぶんにはそれほど必要ではないが、Musicunlimitedや普通にBluetoothスピーカーとして使った時に、格段に差が出る機能だ。過去のライブラリも一通りX9で聴きなおしてみたくなった。

利用イメージ

総論

 単なるBluetoothスピーカーで6万円程度というのならちょっと躊躇するところだが、この音質ならばハイレゾ入門としてはベストな選択だろう。特にハイレゾソースには定番のフォーマットがなく、決まったメディアがあるわけでもない現状においては、これだけ多彩な入力ソースが使える点は魅力である。

 しかもどの接続方法で再生しても、音が出るまでたいして難しくない。例えば複数のハードウェアを、光デジタルやHDMIで接続し、非圧縮のデジタルストリームを伝送すると、音が鳴らない場合、何が問題なのかトラブルシューティングが難しい。信号として何が出ているのか、あるいは本当にハイレゾで出ているのか、解析する方法がないからだ。

 しかし本機は、USBやネットワーク経由で音楽ファイルを単体で直接再生するため、ソースの素性がわかる。鳴らないなら、なぜ鳴らないかの原因がわかりやすいのもポイントだ。Bluetoothスピーカーとしても使え、AirPlayにも対応している。とにかく、何でも鳴るのである。

 ハイレゾを含め、デジタルソースの音楽再生方法は多様化しているが、それが全部面倒見られるオーディオ装置という側面でX9を見ると、まさに今のデジタルシーンを統括する製品のように思える。

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小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「小寺・西田の『金曜ランチビュッフェ』」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。