小寺信良の週刊 Electric Zooma!

第736回

Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語

レンズ+ボディの手振れ補正と“あとからフォーカス”の威力、パナソニック「DMC-GX8」

後からフォーカスが選べる?

 パナソニックのマイクロフォーサーズ一眼であるDMC-Gシリーズは、今やかなり手広いラインナップとなっている。本連載では動画に強いGHシリーズをよく取り上げているが、スタンダードなGシリーズも7月に紹介した「DMC-G7」で4K動画撮影に対応した。その他買いやすい価格帯のGFシリーズ、女性向けにフォーカスしたGMシリーズ、機動力重視のGXシリーズがある。

 今回はGXシリーズの最新モデル、「DMC-GX8」を取り上げる。4Kフォトに対応した一眼で、発売は8月20日。発売からだいぶ経ってはいるが、今回あらためて取り上げる理由は、撮影後にフォーカスポイントを自由に決められる「フォーカスセレクト」機能を追加するアップデートが、11月25日に行なわれたからである。

 このファームアップ対応のカメラはGX8のほか、G7、FZ300がある。GH4も来春に対応予定だが、今回は触ったことがないカメラの方がいいだろうということで、GX8をお借りすることにした。ボディのみの店頭予想価格は発売当初は14万5,000円前後だったが、現在通販サイトでは11万円前後で販売されているようだ。

 ボディ内手振れ補正も内蔵したGX8を、早速テストしてみよう。

ガシッとしたオールドスタイルのボディ

 まずボディだが、シンプルな箱型で、フィルム時代のレンジファインダーカメラのような印象だ。キャノネットやリコーオート35V、ヤシカ エレクトロ35的と言えばいいだろうか。今回はブラックをお借りしているが、シルバーモデルはかなりオールドファッションなスタイルで、1周回ってかっこいい。

オールドスタイルがかっこいいボディ
シルバーモデル(右)はかなりオールドファッションなスタイル

 ボディ部材はマグネシウム合金を採用し、軽量化と堅牢性を両立。つなぎ目や操作部分はシーリング機構となっており、防塵防滴設計となっている。もちろん防塵防滴対応レンズを使わないとレンズ側がダメになってしまうが、過酷な場所での撮影には威力を発揮するだろう。

ボディはマグネシウム合金で、防塵防滴仕様

 撮像素子は有効2,030万画素にアップした4/3型Live MOSセンサーで、アスペクト比は4:3。デバイス構造の最適化と読み出し回路の低ノイズ化により、暗いシーンでの高感度撮影にも強いという。また画像処理プロセッサ「ヴィーナスエンジン」も新しくなり、最高ISO感度25600を実現している。また逆に明るいレンズ用として、ISO 100も設定できるようになった。ただし動画撮影時の感度は、200-6400の間にとどまる。

撮像素子は新開発の2030万画素Live MOS

 加えてイメージセンサーシフト方式のボディ内手振れ補正を内蔵する。レンズ側に光学手振れ補正が付いてる場合、レンズ側の2軸(ヨー・ピッチ)と、ボディ側の4軸(ヨー・ピッチ・Xシフト・Yシフト)を両方使って補正する、「Dual I.S」を搭載する。

 通常、ボディとレンズ両方に同種の手振れ補正がある場合、ヨーとピッチはレンズに任せて、ボディ側のヨーとピッチはOFFにするものだが、Dual I.S.では、センサー側で大きなブレを吸収、レンズ側は小さいブレを吸収と、役割を分けている。対応レンズとバージョンは以下のとおりで、先にレンズを購入していた場合、レンズのファームウェアアップデートが必要になることもある。

  • LUMIX G VARIO 14-140mm F3.5-5.6 ASPH. POWER O.I.S.(H-FS14140、Ver1.1)
  • LUMIX G VARIO 14-42mm F3.5-5.6 II ASPH. MEGA O.I.S(H-FS1442A、Ver1.1)
  • LUMIX G MACRO 30mm/F2.8 ASPH./MEGA O.I.S.(H-HS030、Ver1.1)
  • LUMIX G X VARIO 12-35mm F2.8 ASPH. POWER O.I.S.(H-HS12035、Ver1.3)
  • LUMIX G X VARIO 35-100mm F2.8 POWER O.I.S.(H-HS35100、Ver1.3)
  • LEICA DG NOCTICRON 42.5mm / F1.2 ASPH. / POWER O.I.S.(H-NS043、Ver1.2)

 ボディ側でDual I.S.に対応しているのは、今の所GX8のみである。

 軍艦部の操作部は、右側に集中している。モードダイヤルと露出補正ダイヤルが2段になっており、素早い露出変更が可能。マニュアルコントローラは、モードダイヤルの隣と、シャッター周りの2箇所。天面のコントローラの真ん中は、ファンクションボタンになっている。電源は3つのダイヤルに囲まれた部分にある。

操作部が右に集中する軍艦部
二段のダイヤルがアクセント
シャッター周りもコントローラになっている

 動画ボタンは右肩寄りだが、Fnボタンの近くなので紛らわしい。ただ動画撮影モードでは、シャッターボタンでも録画開始できるので、動画を中心に考えた場合は、それほど不便はない。ボディにはファンクションボタンが豊富で、グリップ部の指先のあたりにも一つある。

 背面のモニタはバリアングルで、アスペクト比3:2の3型104万画素の有機ELモニター。タッチパネルである。ビューファインダはアスペクト比4:3の236万画素有機ELで、チルト機構が付いており、90度まで立ち上げられる。ビデオカメラにはチルト式ビューファインダは多いが、デジタル一眼では珍しい。

大きなビューファインダが目立つ背面
バリアングルの有機ELディスプレイを装備
ファインダはチルト可能

 端子類は左側にまとめられており、防滴防塵に対応するため、大型の蓋で全部一度にシールするようになっている。一番上はリモートとマイク兼用端子だが、3.5mmミニプラグではないので、汎用マイクを使う場合は変換コネクタが必要になる。

端子類は左側に集中。マイク端子もリモートと兼用になった

 AV/Digital兼用端子は、USB端子も兼用。専用ケーブルが付属するが、これも特殊形状なので一般的なMicroUSB端子のケーブルは使えない。またUSB給電や充電もできない。HDMIは通常のMicro端子だ。

高感度撮影も可能な4K動画

 まず最初に4K動画を試してみよう。画素数が増えたとはいえ、操作的には以前レビューしたG7と同じだ。記録フォーマットやビットレートも同じである。レンズはいつもの「LUMIX G X VARIO 12-35mm/F2.8 ASPH./POWER O.I.S.」、「LUMIX G X VARIO 35-100mm/F2.8/POWER O.I.S.」の2本をお借りした。

レンズはいつものXレンズ
撮影モード 解像度 フレームレート ビットレート
4K/30p 3,840×2,160 30p 約100Mbps
4K/24p 3,840×2,160 24p 約100Mbps
FHD/60p 1,920×1,080 60p 約28Mbps
FHD/30p 1,920×1,080 30p 約20Mbps
HD/30p 1,280×720 30p 約10Mbps
VGA/30p 640×480 30p 約4Mbps

 画素数が増えたことで、動画での解像度が気になるところだが、特に問題は見られない。ノイズ感も少なく、全体的に抜けの良いすっきりとした絵になっている。

抜けのいいすっきりとした絵
テレ側の解像感も十分
日中撮影の4Kサンプル

 背面モニタも有機ELのため、視認性が良く、日中でも問題なく使える。ビューファインダはチルトができるため、ローアングルではまるでビデオカメラのような使い勝手の良さだ。

 高感度撮影にも強いということなので、夜間撮影もしてみた。いつものようにISO 200から6400まで順に上げていったが、ソニーの裏面照射のような特殊CMOSでもない割には、なかなか健闘している。

 ただ6400程度では目視と同程度なので、それ以上の感度ということではまだソニー「α7s II」の特殊性は揺るぎないところである。また静止画ではISO 25600まで上げられるが、細かいところを見ていくとやはりノイズリダクションしても追いつかない部分が出てくる。高感度には過剰な期待はしないほうがいいだろう。

F2.8/60fps固定で撮影(使用レンズLUMIX G X VARIO 12-35mm/F2.8 ASPH./POWER O.I.S.)
夜間撮影のサンプル
ISO 25600で撮影した静止画

 続いて注目のボディ内手ブレ補正を試してみよう。静止画の場合、対応レンズとボディ内手ブレ補正の組み合わせで、6軸のDual I.S.となる。一方動画では電子手ブレ補正との組み合わせにより、5軸ハイブリッド手ブレ補正となる。電子補正を使わなければ、通常のレンズのみの手ブレ補正だ。

 動画的には5軸ハイブリッド手ブレ補正を是非使いたいところだが、残念ながらこれが使えるのはHD解像度に限られる。4K解像度では電子手ブレ補正が強制的にOFFになるため、レンズのみの補正しか使えなくなってしまう。

 双方の手ブレ補正を比べてみた。レンズのみの補正に比べると、5軸補正は止まっている時には効果が高いように見えるが、歩き出してしまうとそれほど変わらない。

手ブレ補正の比較。HD解像度で撮影

なるほどそういうことか! フォーカスセレクト

 では注目のフォーカスセレクトを試してみよう。これは動画機能ではなく、静止画機能の1つとして位置付けられている。したがってフォーカスセレクトで撮影する場合は、静止画用のモードにする必要がある。

 設定としては、メニューの3ページ目にある「フォーカスセレクト」をONにするだけだ。これで写真を撮ると、手前から奥までフォーカスを動かしながら、撮影される。

メニューでフォーカスセレクトをONにするだけ

 操作感としては連写に近いが、実際には2秒前後の動画が撮影されている。従って電子音をOFFにしておけばシャッター音などはせず、全くの無音で撮影される。撮影自体は2秒ぐらいだが、シャッターを押してから保存が完了するまで、トータルでは6〜7秒といったところだろうか。保存の間でも次のショットは撮れるので、撮影のテンポに影響するほどでもない。

 解像度はいわゆる4Kフォーマットではなく、3,328×2,496/30pとなる。動画の長さは、フォーカスポイントがどれぐらいあるかで変わるようだ。フォーカスポイントが多数見つかった場合や、フォーカスポイントの移動が大きい場合は、動画が長くなる。

フォーカスセレクトで撮影された動画

 こうして撮影された動画の中から、好みのフォーカスポイントの部分を抜き出して静止画に書き出すわけである。したがって、ファイルとして取り出せば動画だが、カメラ内では複数の静止画の塊のような扱いになっている。

フォーカスセレクトで撮影された画像を選択し、十字キーの上ボタンを押すと、フォーカスセレクト専用画面となる。続いて十字キーを操作してフォーカスを合わせたいポイントを選ぶと、そこにフォーカスがあった画像が読み出される。ピーキング表示も併用することができるので、どこにフォーカスが合っているのかも確認できる。書き出したいポイントが見つかったのち、センターボタンを押すと静止画に書き出される。

フォーカスセレクトで撮影されたものは、再生画面でわかる
フォーカスセレクトから書き出した静止画

 従来の4Kフォト機能は、一般的な連写と似たような機能だったので、時間軸方法で絶妙なタイミングで撮影された1枚を選ぶという使い方であった。一方フォーカスセレクトは、フォーカスを手前から奥まで動かしつつ動画を撮ることで、フォーカスポイントを後から選ぶという方向に振った。

 これはタイミングに関係ないブツ撮りや風景など、奥行きが結構ある被写体の時に便利だ。特に筆者らのような取材者は、展示会や発表会で商品撮りをすることがあるが、後で記事を書いている時に、“フォーカスポイントはそこじゃなかった”ということがある。そんなことになっても後から撮り直しもできないが、フォーカスセレクトで撮影しておけば、後からポイントとなる部分にフォーカスが合った写真を取り出すことができる。これは取材者にはものすごく使える機能だ。

 ただフォーカスセレクトは、写真でありながら4K動画を併用するわけで、機能には制限が出る。一番困るのは、Dual I.S.が強制的にOFFになってしまい、レンズ補正のみになってしまうことだろう。ボディ内の補正は電子手振れ補正も併用するようで、4K動画機能がONになることで電子手振れ補正が使えず、従ってDual I.S.もOFFになってしまうようだ。

総論

 GX8注目の機能が、Dual I.S.とフォーカスセレクトであったわけだが、よくよく注意して使ってみると、この両者は排他仕様だということがわかった。残念だが、今の所どのメーカーも4K動画で電子手ブレ補正がやれるところはないので、まだ過渡期といった所だろう。来年か再来年には、技術革新が進み、両立できるようになるかもしれないが、その頃には4K/60pが主流になり、またハードルが上に上がるのかもしれない。

 ただ同時には使えないとはいえ、両者ともなかなか強力な機能だ。特にフォーカスセレクトは、“4Kフォト機能の一種”ということになるのだろうが、写真を撮るユーザーにとっては興味深い機能である。GH4にも来春ファームアップデートということで、ハイエンドモデルもしっかり対応する。

 最安でこの機能を使いたかったら、レンズ一体型のFZ300を買ってファームウェアをアップデートするという手もあるが、撮像素子が1/2.3インチとかなり小さいので、そもそも被写界深度がそれほど浅くならないかもしれない。価格と機能のバランスを考えると、このGX8かG7ということになるだろう。

 さらに一歩進めて、全部のポイントにフォーカスが合っている写真を合成できる機能があっても面白いだろう。絞りを目一杯絞れば被写界深度は深くなるが、暗い場所では撮れないというデメリットがある。どうしてもボケてしまうところを逆にするという発想も、あっていいのではないだろうか。現にオリンパスは「深度合成モード」としてこの機能を搭載している。

 デジタルカメラに4K動画撮影機能を載せることは、他社ではプレミアムな位置づけだが、パナソニックでは動画と静止画の双方を融合させることでローエンドのカメラにまで機能を搭載するという戦略に出た。ストレートに4K動画を撮影する機会はそんなにないかもしれないが、写真でも4K機能の恩恵にあずかれるのであれば、ユーザーにとっても無駄にお金を払った気はしない。

 そういった中で、深く静かに4Kが浸透していくという作戦は、なかなか見事である。

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小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「小寺・西田の『金曜ランチビュッフェ』」( http://yakan-hiko.com/kodera.html )も好評配信中。