“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”
第546回:【CES】JVCカムコーダは無線LAN標準搭載へ
~新4Kカメラ。Tablet操作のネット中継カメラも~
■2日目も大混雑のCES
2012 International CESも会期2日目である。筆者らAV Watch取材チームは米国入りして早5日目となり、時間感覚もだんだん米国に馴染みつつあるはずだが、昼間に突然睡魔が襲ってくるのは単に睡眠不足からだろうか。
相変わらず朝の会場へのラッシュは相当なものだが、2日目ともなると夕方は早くから切り上げる人も多く、人気ブースは遅く行った方がゆっくり見られるようになってきた。2日目以降はホテルを遅く出て遅く帰るという技もありそうだ。
さて2日目の今日は、JVCのカメラ製品および関連技術をレポートしたい。
■無線LAN標準搭載へ向かうEverio
セントラルホールにあるJVCブランドブース |
JVCは昨年正式に社名を「JVCケンウッド」に変更したばかりだが、ブースの方はカーオーディオ関係がノースホールで隣り合わせのブースに、映像・音響機器関連がセントラルホールでJVCブランドの一枚看板での出展となっている。
JVCのカムコーダEverioシリーズは、すでに日本で発表されたものもあるが、米国向けモデルは若干仕様や型番が違っている。米国向けラインナップは、殆どのモデルに無線LANを搭載したのがポイント。一方、日本向けモデルでは、下位モデルに無線LANを搭載したモデルが出るようだ。日本向け上位モデルは、無線LANがない代わりに内蔵メモリ容量を増やしたという。
では会場に展示されていた米国モデルを順に紹介していこう。
無線LAN搭載のハイエンドモデル、GZ-GX1 |
「GZ-GX1」は今年春のハイエンドモデル、GZ-HM890の改良版。ハイエンドモデルらしくフィルタ装着用のネジを切り、アクセサリーシューも付けた。
レンズは29.5mmスタートの光学10倍ズームレンズで、テレ端の開放F値は1.2。手ぶれ補正は光学式だが、レンズシフト方式ではなく、撮像素子全体をシフトさせる方式になっている。
撮像素子は10.6Mピクセルの裏面照射で、以前「GC-PX1」で好評だったハイスピード撮影機能も搭載している。
無線LANを内蔵しており、いろいろ面白いことができるが、そのあたりは後でまとめてご紹介しよう。
内蔵メモリはなく、SD/SDHC/SDXCカードに記録する。今年3月の発売で、価格は900ドル。
スリムタイプの新デザインとなるVシリーズが、事実上の今年の目玉といっていいだろう。「GZ-VX700」は、日本ですでに発表されたV590、V570の兄弟モデルである。
32.8mmスタートの光学10倍ズームレンズを搭載。撮像素子は3.32Mピクセルの裏面照射で、手ぶれ補正は同じく撮像素子をシフトさせる方式。
日本モデルと違って無線LANを搭載しているが、内蔵メモリはなし。米国では今年3月発売で、価格は500ドル。
角張ったスリムデザインのVX700 | Vシリーズの光学ユニット部。内部でセンサーを動かして手ぶれ補正を行なう |
「GZ-V500」はVX700と同仕様で無線LAN非搭載モデル。型番にXが付くのが無線LAN付きという法則のようだ。こちらは1月発売で、価格は450ドル。
「GZ-EX250」は無線LAN搭載で、日本で発表された「GZ-E225」とスペック的には同じもののようだ。レンズは42mmスタートの光学40倍ズームレンズ搭載。撮像素子は1.5Mピクセルの裏面照射型で、内蔵メモリーは16GB。こちらは2月発売で、価格は400ドル。
見た目はほとんど同じ、無線LANなしモデルのでV500 | 無線LAN搭載ミドルレンジ、EX250 |
「GZ-EX210」はEX250の内蔵メモリなしモデル。無線LAN搭載モデルとしては最も低価格となる。カラーはブラック、ブルー、レッドの3色展開。こちらは4月発売で、価格は330ドル。
「GZ-E200」は無線LANなし、内蔵メモリなしのエントリーモデル。カメラスペックはEX250と同じで、2月発売、価格は280ドル。こちらも3色展開だ。
内蔵メモリなしだが無線LAN付き、3色カラバリのEX210 | 無線LANなしの廉価モデル、E200 |
■無線LANで可能になる3つの機能
多彩な無線LAN機能を搭載 |
さて目玉の無線LAN機能だが、筆者が把握する限りでは、大きく3つのファンクションに分けられるようだ。1つは動体検知もしくは顔検出により、静止画を自動撮影し、自動でメール添付で送ってくれるという機能。メールアドレスは最大8つまで登録できる。これは無人動作が前提である。
2つめはビデオメールで、最大15秒のビデオメッセージを撮影し、それをメール添付で送るという機能。こちらは有人動作が前提である。
ビデオメッセージはいったんAVCHDで本体に記録し、撮影の確認や撮り直しなどができる。メッセージがOKならば、送信するときに640×360ピクセルのMP4にダウンサイズして、メールに添付する。なお圧縮後のMP4ファイルは、本体には残らない。ファイルサイズはだいたい2MBぐらいになるという。
ビデオメール撮影に向けてカウントダウンしてくれる | メッセージ撮影直後の画面。送る前に映像の確認もできる |
3つめは無線LANダイレクト機能で、カメラとスマートフォン、もしくはタブレットをアドホックで接続する。AndroidとiOS専用アプリを無償配布し、それによりカメラの映像と音声をリアルタイムでモニタリングしながら、ズームや録画開始といったコントロールがスマホ/タブレットから可能。映像は動画フォーマットのストリーミングではなく、JPEGの静止画を連続で送っている。
さらにカメラ側に記録された動画・静止画のインデックスをタブレット側に表示でき、必要な映像を選んでタブレット側に転送できる。静止画はそのまま、動画はビデオメッセージと同じで640×360のMP4にエンコードして転送される。できることはEye-Fiのダイレクトモードと同じようなことだが、自分で映像を選択できるところが違っている。
また、PCからの操作も可能で、この場合はカメラに内蔵されたWEBアプリにアクセスしてコントロールすることになる。
スマートフォンと無線LAN接続して、奥にあるカメラをコントロールしている | 動画と静止画のインデックスを読み込み、好きな画像をタブレット側に転送できる |
■4K対応の業務用カムコーダ新モデル
コンシューマ機だけでなく業務用機の新モデルとして、4K解像度で撮影可能なハンドヘルドタイプのカムコーダ「GY-HMQ10U」が正式に発表された。これまで日本ではCP+やInterBEEでアクリルケース入りの参考展示を続けていたが、これが最終仕様となった。
いよいよ製品版となった4Kハンドヘルド、「GY-HMQ10U」 | バッテリ部がかなり深く取ってあり、出っ張りが少なくて済む |
レンズはコニカミノルタ製で、ワイド端が42.5mmスタートの光学10倍ズーム、F2.8。光学式手ぶれ補正を内蔵する。
レンズはコンシューマ機と比べて若干暗いが、4Kが撮れるカメラは既にプロ機ではソニーの「F65」やREDの「EPIC」、「SCARLET」など大型機はあるので、レンズも含めて小型化を優先したという。
撮影解像度は3,840×2,160ピクセルで、フレームレートは24p、50p、60p。50pはおそらくPAL圏での利用になるので、日米では24pか60pで使うことになるだろう。CMなどでは30p撮影が多いのだが、これには対応しないのが残念だ。
SDカード4枚に分割記録する |
撮像素子は1/2.3型、1,200万画素の裏面照射CMOSで、画像処理プロセッサはもちろんFALCONBRID。記録フォーマットはMPEG-4 AVC/H.264で、ビットレートは最高144MbpsのVBR。4枚のSDHCまたはSDXCカードに1/4ずつ分割して記録する。音声はAAC 2ch/16bit/48kHzとなっている。
32GBのSDHCカード4枚で約2時間程度の収録が可能だという。製品には4つのファイルを一本化するためのユーティリティが付属する。
実機で撮影した映像を東芝のリアル4Kディスプレイで表示していたが、以前のプロトタイプで気になっていた周辺部の色収差やフリンジはかなり改善されていた。レンズの改良やプロセッシングのチューニングでカバーしているという。
出力用HDMI端子が4つ並んでいる |
映像伝送はHDMIを4本使用する。面白いのは、記録した映像の再生だけでなく、撮影中の映像もそのままHDMIから出力できることだ。すなわち生カメラとしても利用できる。音声はHDMIケーブルの1本にだけエンベデッドされる。ちなみにAVCHDフォーマットのHD解像度でも撮影できるそうである。
3月末から4月頭にかけての発売予定で、価格は5,000ドル。
なお、同様のスペックでレンズ交換式の4Kカメラも参考展示されていた。35mmフィルムレンズが装着可能。ただ撮像素子はかなり大きく、サイズ的にはフォーサーズに近いので、35mmレンズを付けた場合、焦点距離はおよそ2倍になると考えていいだろう。
マウントはニコンのFマウントとなっている。FマウントはNikon F時代のオールドレンズから現在に至るまですべて使えるので、かなりのレンズバリエーションが利用できることになる。ただ電子接点はないので、フルマニュアルでの撮影になる。
35mmフィルムレンズ装着可能な4Kカムコーダも参考出展 | 前方にあるSDI端子はゲンロック用。つまり3D撮影も視野に入れている |
まあ製品がFixすれば、勝手にサードパーティがマウントアダプタを作ると思うので、レンズバリエーションはほぼ無限と言っていいかもしれない。
こちらの発売時期は未定だが、開発陣は年内完成をめざしているという。価格はまだ決定ではないが、10,000ドル程度になるのではないかということであった。
■ネット配信に最適? タブレット操作用の電動カメラ
技術展示として興味深い製品があったので、これもご紹介しておきたい。これまで見てきた無線LAN技術を応用したライブストリーミング用のカメラなのだが、電動のパン・チルト雲台が付いており、タブレットでコントロールすることができる。
電動雲台が付いたライブカメラを参考出展 | 背面にはビデオカメラ用のバッテリも装着可能 |
もちろん映像もタブレット側に無線LANで送信される。すでに製品化されたWi-Fi Directと同じ技術で、JPEGの連番で送られてくるスタイルだ。さらに本体側にあるSDカードにHD解像度の映像を録画することもできる。
要するに今回発表の無線LAN搭載カムコーダから、本体側の操作部分を全部とっぱらってリモートコントロール化したような感じだ。光学スペックは「HM890」とだいたい同じで、光学ズームも搭載している。フレームレートは現在5fps程度だが、最終製品では30fpsまで上げたいということであった。
また電動雲台のないカメラも開発中で、こちらはワイドレンズを搭載した単焦点レンズを予定している。電動でパン・チルトしない代わりに、画素切り出しでパン、チルト、ズーム相当の動作を行なう。
コントローラとしては現在Androidアプリのみの展示だが、これが良くできている。現在は4つのカメラをスイッチングできるほか、単に映像をタブレットに送ってくるだけでなく、そこからUstreamなどへ配信できるように考えているという。
開発中の電動雲台なし単焦点モデル | コントロール用のAndroidアプリ。4カメスイッチングに対応 |
さらにカメラコントロールとしては、タブレット側のジャイロセンサーを使って、タブレットを動かした方向にカメラも向くというコントロールモードがある。現在はまだフレームレートが低いので、リアルタイム感が少ないが、30fpsまで行けば、空間に開いたバーチャルな窓のようなことになるだろう。
ただ高フレームレートで4カメスイッチングとなるとかなり負荷も高くなるので、タブレットでは難しくなる可能性もある。このためPC用のコントロールや配信アプリも開発を検討中ということであった。
発売時期は未定だが、電動パンチルトモデルの開発が先行しており、価格はだいたい800ドル前後になる見込み。単焦点モデルは500~600ドルぐらいを想定しているという。
ネット中継は日本で火が付いたソリューションだが、カメラからワイヤレスで伝送できる仕組みがなかった。このカメラが製品化されれば、ネット中継の姿も大きく変わりそうだ。