小寺信良の週刊 Electric Zooma!
第596回:動画性能の恐るべき実力、パナソニックDMC-GH3
“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”
第596回:動画性能の恐るべき実力、パナソニックDMC-GH3
永らく待たされた最上位ミラーレス。72Mbps/ALL-Intra
(2012/12/19 10:30)
ようやく実動機をゲット
今年9月のフォトキナで発表されたパナソニックのミラーレス一眼、「DMC-GH3」がいよいよ発売された。日本ではCEATEC、InterBEEでも展示はされたが、動作実機を触ることができなかったので、じれていた人も多いことだろう。
同社マイクロフォーサイズはGF、G、GX、GHがそれぞれのターゲット向けにシリーズ化されてラインナップを拡充している。中でも動画撮影にも強いハイエンドのGHシリーズは、前作GH2がすでに2年前で、永らく後継機が待たれていた。
ただレンズキットは予定通り12月13日に発売されたが、ボディ単体の発売は12月29日に延期されている。今回は「LUMIX G X VARIO 12-35mm/F2.8 ASPH./ POWER O.I.S.」が付属するレンズキット「GH3A」をお借りすることができた。
ハイエンドだけあって、お値段もGH3Aが実売22万円前後、「LUMIX G VARIO HD 14-140mm /F4.0-5.8 ASPH./ MEGA O.I.S.」が付属する「GH3H」が19万円前後、ボディ単体が13万円前後となっている。
待望の後継機ということで、静止画のレビューはこれから沢山登場すると思われるが、こちらは例によって動画しか撮らないレビューをお送りする。2年間待たされたGHシリーズの後継機は、どんな仕上がりだろうか。さっそくテストしてみよう。
かなり大型のボディ
GH2も動画としてかなりいいカメラで、コンパクトながら使いやすいモデルだった。当時は個人的にも取材用でGF1を使っていたので、スムーズに操作できた印象がある。
さて今回登場したGH3は、マイクロフォーサーズ機としてはボディサイズがかなり大きくなり、フォーサーズやAPS-Cサイズのカメラ並みという印象だ。ただそのぶん操作系も充実しており、操作ダイヤルが3つ装備されるなど、ハイエンドモデルとして妥協のない作りになっている。またボディもマグネシウム合金フレームをベースに、防塵・防滴仕様となっており、屋外での過酷な現場にも対応できるのも特徴だ。
撮像素子は4/3型、有効1,605万画素、総画素数1,720万画素のLive MOSセンサーで、ローパスフィルターも新設計となっている。近年、動画撮影時のモワレと静止画の解像度を両立させるために、ローパスフィルタの見直しを図るメーカーが増えてきている。
動画性能は、特に記録フォーマットが大幅に増えたのが最大の注目ポイントと言えるだろう。GH2はAVCHDとMotionJPEGをサポートしており、事実上AVCHDでの利用が前提だったが、昨今のデジタル一眼動画では、もはやAVCHDフォーマットの縛りが足かせになってきている。
今回のGH3は、AVCHDだけでなく、MOV(H.264)とMP4をサポート。ビットレートも大幅に向上させたほか、従来はプロ機だけで展開してきたAll-Intraフレームでの記録をサポートする。
記録 フォーマット | 記録画素数 | フレーム レート | ビット レート | サンプル |
MOV (H.264) | 1,920×1,080 | 60p | 50Mbps [IPB] | P1000176.mov (86MB) |
30p | 72Mbps [ALL-Intra] | P1000177.mov (114MB) | ||
50Mbps [IPB] | P1000178.mov (67MB) | |||
24p | 72Mbps [ALL-Intra] | P1000179.mov (101MB) | ||
50Mbps [IPB] | P1000180.mov (71MB) | |||
1,280×720 | 60p | 72Mbps [ALL-Intra] | P1000181.mov (101MB) | |
AVCHD | 1,920×1,080 | 60p | 28Mbps | 00000.mts (42MB) |
60i | 17Mbps | 00001.mts (27MB) | ||
30p (60i記録) | 24Mbps | 00002.mts (33MB) | ||
24p | 24Mbps | 00003.mts (32MB) | ||
MP4 (H.264) | 1,920×1,080 | 30p | 20Mbps | P1000173.mp4 (30MB) |
1,280×720 | 10Mbps | P1000174.mp4 (15MB) | ||
640×480 | 4Mbps | P1000175.mp4 (6MB) | ||
※編集部注:編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい
AVCHDのところは若干説明が必要だろう。本機のセンサーはプログレッシブしか出力しないが、AVCHD Progressiveで60p記録するモードと、AVCHD規格に基づいて60iに変換して記録するモードを持つ。また30pはAVCHDの規格に存在しないが、30pのセンサー出力を60iで記録するモードとなっている。それ以外のモードは、記録とセンサー出力のフレームレートは一致する。
今回新設されたALL-Intraフレームによる記録は、パナソニックのプロ機ではAVC-Intraとして以前から訴求してきた。ただこちらはビットレートが50、100、200Mbpsといった刻みで、72Mbpsというレートは初めてである。プロ機では記録メディアもプロ用のものを使うので、SDカード側の制限ということかもしれない。
またサンプリングもプロ機では10bit 4:2:2が標準なのに対して、GH3では8bit 4:2:0記録となっている。またHDMIの非圧縮出力も8bit 4:2:0だ。ビットレートは上がったものの、プロ機と同等ではないところは注意が必要だ。
MPEG-4記録は、通常はI-B-Pフレームの組み合わせでGOPを作るが、編集を行なう時はGOP単位のポイントの切れ目でカットするとは限らないので、ほとんどの編集点で、そこにひっかかっているGOPを展開、再圧縮が行なわれる。これにより、編集点だけが画質劣化するという事になる。
これをすべてIフレームで撮影すれば、編集点で再圧縮がかからないため、画質的メリットが大きいというのがAVC-Intraの基本コンセプトだ。ただ事実上AVC-Intraは、プロの間でもそれほど主流というわけではない。なぜなら相当にビットレートを上げないと、I-B-Pより画質が悪いことになってしまうからである。今回のGH3がIntra記録に対応したことで、プロ以外のところでどのように評価されるのか、注目したいところだ。
操作性だが、ハイエンドモデルだけあってボタンやダイヤル類は多い。モードダイヤルで多彩な撮影モードを提供しているのは従来通りだが、コントロールダイヤルはシャッターの後ろに一つ、親指方向に一つ。ダイヤルは押し込むことで機能が変わるタイプではなく、回すだけだ。メニュー操作のメインはリング状のダイヤルで行ない、これは上下左右キーも兼ねる。
ホワイトバランス、ISO感度、露出補正は独立のボタンがあるの加え、Fnボタンが5つある。さらに画面内から引っ張り出す形で2つのボタンがあり、合計7つのfnキーが使える事になる。Fn2はクイックメニューボタンになっており、頻繁に設定変更するパラメータを制御できる。
録画ボタンはAF/AEロックボタンの脇に配置され、かなり意識して押さないと撮れない位置だ。GH2はシャッターボタンの後ろにあり、これまでは気がつかずに押してしまうトラブルがあったのだろう。
液晶モニタは横に飛び出すタイプのバリアングルとなっている。174.4万画素の有機ELビューファインダーも搭載する。マイクはアクセサリーシュー脇に配置されており、結構珍しい位置だ。
端子類はmini HDMIに加えてアナログAV、ヘッドホン出力、マイク入力がある。HDMI出力は表示なしのクリーンフィード出力が可能だ。反対側はSDカードスロットだ。底部にはバッテリのスロットがあり、フタはレバー式のロックとなった。バッテリは大型の1,860mAhとなっている。
納得の高画質記録
では早速してみよう。今回のレンズは、キット付属の「X VARIO 12-35mm/F2.8」と、「X VARIO 35-100m/F2.8」の2本をお借りしている。どちらも光学手ぶれ補正を搭載したXレンズだ。撮影当日は快晴ではあったがかなり強い風で、マイクがフカレまくっているが、そのあたりは天候によるものである。
GH3は記録モードが沢山あるので、どれで撮影しようか迷うところだが、今回は他の機種では撮れないフォーマットということで、MOV 1,920×1,080/30p 72Mbps ALL-Intraで撮影することにした。ただ編集済サンプルとしては、現状編集ソフト側にALL-Intraで出力する機能がなく、通常のMP4 IBPとなっている点をご容赦いただきたい。
映像の傾向としては高コントラストで、メリハリのあるはっきりした絵になっている。ビットレートが高いこともあって、画面中がわさわさ動くようなカットでも破綻が見られず、モデルさんの髪の1本まで綺麗に再現できる。レンズもいいが、やはりこの解像感は記録コーデックの賜と言っていいだろう。
肌色の発色も自然で、透明感がある。色乗りに関しては、コントラストの割には若干大人しいような気もするが、そのあたりはカスタマイズでなんとでもなるので、デメリットとは言えないだろう。
AFに関しては、近づいてくる被写体に対しての追従性も自然で、ほぼビデオカメラ並みと言っていい。レンズ動作も靜かで、AF音が記録されることもない。
手ぶれ補正に関しては、昨今のカムコーダのように激しく補正するタイプではないが、自然な補正が得られる。ソニーのハンディカムのように、レンズユニットそのものを動かすのなら別だが、過剰に補正を強くしてもシフト量のせいで画質とのバランスが悪くなることを考えれば、このぐらいが妥当だということだろう。
多彩な記録モードを備えているところが動画ユーザーにはうれしいところだが、これらは記録フォーマットも含め、クイックメニューから一覧で選ぶことができる。多くのカメラは記録モードを選んだのち、フレームレートやビットレートを選ぶなど2段3段の操作になっているものも多い中で、どれでも簡単に選べるのは新しい。
しかも切り換え動作後に、いったんブラックアウトやリセット、再起動などの動作がなく、そのまますぐに切り替わる。そんなに頻繁に切り換えが必要なものではないので、使い勝手としてそれがどうした、という点ではあるのだが、パナソニックの技術力の高さを垣間見る思いだ。
ムービー派として気になるのは、録画ボタンの作りである。出っ張っていないので“うっかり押し”はなくなったが、録画したつもりが撮れてないということがたびたびあった。モニター画面を注視していれば気づくところだが、録画したあと現場の状況に集中するような撮り方の時は、要注意だ。
また手触りでボタンがある感触が得られないので、暗いところで録画を開始するのが困難だ。出っ張らせるためにボタンの上にデコシールでも貼りたい気分である。
多彩なエフェクトも装備
昨今のデジタル一眼、特にミラーレス一眼では、割と強力な映像エフェクトが付いているというのがトレンドになっている。GH3クラスのカメラでそういうチャラい機能を積むのもどうかなとも思うのだが、しっかり搭載されている。
まずクイックメニューから選択できるスタンダードな機能として、「フォトスタイル」がある。シーンモードの延長線上にあるような機能だが、これらはすべて動画撮影時にも有効だ。
効果としては、スタンダード、ビビッド、ナチュラル、モノクローム、風景、ポートレート、カスタムの7モードがある。
一方モードダイヤルで選択するクリエイティブコントロールモードは、もう少し具体的に踏み込んだ効果を加える機能だ。こちらはポップ、レトロ、ハイキーなど14種類の効果がプリセットされている。このうち、ソフトフォーカスとクロスフィルタの2つは動画撮影できないが、それ以外のエフェクトは動画も可能だ。
※編集部注:動画は編集しています編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい
特に「ジオラマ」はこれまでチルトレンズを使うか、後処理で行なうしかなかったものだが、リアルタイム処理でやれるのは面白い。フォーカスが合う場所もマニュアルで指定できる。ただ、撮影終了後にプロセッサで画像処理を行なうようで、完了まで少し待たされる。フレームレートは自動でクイックモーションになるが、これは余計だったかもしれない。
スローモーション機能も充実した。GH2でも80%スロー、160%/200%/300%クイック動画撮影はできたが、スロー撮影のほうをより拡充した。従来モードに加えて、40%と48%でも撮影できるようになった。
最近はアクションカムでもスロー撮影やタイムラプスといった特殊フレームレート撮影をサポートするようになっている。これはおそらく、スマートフォンのカメラ機能にできないことで差別化していこうとする動きだろう。
総論
こうして実際に動画撮影してみると、GH3は弱みや弱点のない、良くできたカメラだ。GH2も2年前のレベルでは十分にいいカメラだったが、GH3は今のトレンドのトレンドをおさえつつ、一歩先を行くスペックとなっており、ミラーレス小型マウントのジャンルでは、動画カメラとして当分敵なしで戦えるのではないだろうか。もちろんコンシューマから業務用の下のクラスまでの間で、という条件は付くが。
業務ユースとなると惜しいのが、記録が8bit/4:2:0で、HDMI出力も非圧縮ながらそこは同じであるところだ。クロマキー合成したり、カラーグレーディングをするとなると、ついて来られない部分が出てしまう。もっとも普通に映像を撮影して編集するだけのコンテンツでは、それほど大きなデメリットにはならないので、これで行けると踏むプロも居ておかしくない。
なによりも、十分なビットレートを確保することで、記録時の圧縮による破綻が大幅に軽減されたところは大きい。モワレ対策もうまくできており、解像感とのバランスもいいところだと思う。
まあケチをつけるならば、ハイエンドのレンズとのキットで実売20万円弱という価格だろうか。もちろんそれだけ高機能で綺麗な絵が撮れるカメラなのだが、フルサイズならともかくフォーサーズでここまでやるか、と呆れるやら感心するやらといったところである。
実は先日のInterBEEを見ても、パナソニックの業務用機の方向性がよくわからなかった。キヤノンの戦略のように、まずこっち方面を伸ばしてから勝負に出るための布石なのか、今後の業務用機の戦略も含めて、GH3のムーブメントはトータルで見ていく必要があるだろう。
パナソニック DMC-GH3 |
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