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有機ELに再注目。完全無線イヤフォン、Google Homeの波は日本にも? 50周年のCES新潮流
2017年1月12日 07:50
米国ラスベガスで1月5日~8日(現地時間)に開催された世界最大規模のコンシューマエレクトロニクス展示会「CES 2017」。1967年の初回開催から、今年で50年の節目を迎えた。
昨年は、主催者団体の名称がConsumer Electronics Association(CEA/全米家電協会)から、Consumer Technology Association(CTA/全米民生技術協会)へと変わってから最初のCESだったこともあり、「家電からテクノロジーへ」大きく舵を切ったのが話題となった。
今年もその大きな流れは続いており、AV機器を含む家電は既にCESの主役ではなく、車やIoTを含む“様々なカテゴリのうちの1つ”。ただ、そうした中でも、記者会見やブースを眺めると、AV関連で例年以上に多くの新たな話題が見つかった。
有機ELテレビが最大の注目。液晶は競合ではなく両立
AV機器で最大といえる話題は「有機EL(OLED)テレビ」。
かつて有機ELテレビを手掛けていたソニーやSamsungが撤退し、実質LGのみとなっていた状況から、昨年欧州向けに新製品を発表したパナソニックに続いて、ソニーも米国向け製品で再び参入を決定。パナソニックも欧州向けながら次世代モデルを披露するなど、再び注目され、日本での発売にも期待が高まっている。両社とも自社製パネルではなく、LG Display製パネルを使用していると思われるが、パネル以外の映像処理技術において各社の方向性が打ち出され、自社テレビとしての画質を追求して製品化されたことが興味深い。
ここ数年は1社で有機ELテレビを続けてきたLGも、今年はプレミアム路線の「LG SIGNATURE」ブランドで“壁紙並みの薄さ”をアピールした「W7シリーズ」の投入を発表。ディスプレイ部とチューナなどのボックスを分けた筐体デザインや、Dolby Atmos対応スピーカーを含む総合面で差別化を図っている。
さらに、CESでは出展されていなかったが、東芝からも4K有機ELテレビ「REGZA X910」が発表。65型90万円という価格が、国内では未発表のソニーやパナソニックに影響するのかどうかも気になるところだろう。
これまでの有機ELテレビとの違いとして注目したいのは、高付加価値モデルではありながらも、あくまで最高峰ではなく、液晶との“2枚看板”で訴求していく方向性が打ち出されている点。ソニー有機EL「A1E」には、パネルを振動させてスピーカーとする新たなサウンドシステム「アコースティックサーフェス」を搭載するなどユニークな機能も搭載されているが、画質の面では液晶のZ9Dが最高というポジショニングに変更はなく、画質に関して長年の蓄積がある液晶があくまでも主力であり、新たな選択肢として有機ELが提示されたことになる。
4Kコンテンツに関しては、Netflixなどの一部配信サービスを除き、HDR対応はまだ少ない。SDR映像からHDR映像へアップコンバートする画質の違いに注目してみても、各社に違いが表れそうだ。
大手メーカーの4Kテレビに関しては、ほぼHDR対応になりつつある中、HDR規格の種類も足並みがそろい始め、今年はソニーが液晶のZ9Dシリーズや有機ELでDolby Visionへの対応を表明。既に対応製品を発売しているLGや米VIZIOなどに続き、ソニーも対応を発表したことは大きな変化といえる。また、SDR(標準ダイナミックレンジ)のテレビではSDR画質、HDR対応テレビではHDR画質で楽しめるHLG(Hybrid Log Gamma)方式については、パナソニックやLGも対応した。
4K/HDR対応テレビの広がりに合わせて、UHD Blu-rayプレーヤーも各社が投入。昨年のSamsungに続き、ソニーやパナソニック(欧州向け)、LGなども新製品を発表。プレーヤーでもLGやOPPO digital、PhilipsがDolby Vision対応を予告しており、新たな流れの一つとなりそうだ。
イヤフォンは「True Wireless」。ハイレゾは海外にも
日本よりもワイヤレスオーディオが浸透している米国では、今回も多くのワイヤレスオーディオ製品が登場。Bluetoothスピーカーに加え、Spotify ConnectやChromecast built-in(旧称はGoogle Cast)に対応した無線LAN(Wi-Fi)スピーカーも数多く披露された。
ワイヤレスオーディオの中でも、今年のCESで数多く見かけた言葉が「True Wireless」という、左右独立型でケーブルのないBluetoothイヤフォンだ。昨年からEARINやオンキヨーなどの製品が登場したが、今年は多くのメーカーが新モデルの一つとして完全ワイヤレスモデルを展示。早くもイヤフォンの1カテゴリとしての地位を得たようだ。
ただ、こうしたイベントならではの悩みどころが、展示の方法。期間中に製品が盗難に遭うことは珍しくなく、セキュリティに配慮すると、どうしてもショーケース内での展示となる。試聴や装着感を確かめたくても、都度ケースを開け閉めするなど手間が必要となり、一般的なイヤフォンに比べると、手軽には体験しづらい印象。左右分離型イヤフォンの場合はワイヤーなどで固定するのも難しいため、展示会ではどういった形がベストになるかは、今後も模索が続くかもしれない。
完全ワイヤレスイヤフォンがトレンドであることを示す一つの例は、低反発イヤーピースで知られるComply(コンプライ)のブースにある専用イヤーピース「TRULY WIRELESS」の登場。これまでも数多くのイヤフォンに合わせたイヤーピースを製品化している同社が、いち早く完全分離型にも対応した。
通常のイヤーピースと大きく違うのは、奥行きが短いという点。完全ワイヤレスイヤフォンの多くは、耳に触れる部分にセンサーを備え、装着状態かどうかを判別しているため、センサーの動作を阻害しないように専用の形状を採用したという。
その一方で、日本が先行しているハイレゾオーディオについては、CESでも各社がイヤフォン/ヘッドフォンなどで対応製品を投入しているものの、大きなトレンドとなるには至っていない印象。そうした中でも、今回は「Hi-Res Audio Pavilion」というコーナーが設置され、メーカーや関係する団体などが協力して、業界を盛り上げていくという意向が示された。
音声操作が浸透。日本にも波は来る?
Amazon EchoやGoogle Homeが発売されたアメリカならではのトレンドが、音声操作による機器の連携。「Ok Google」と話して家のスピーカーでSpotifyやPandoraといった音楽/ラジオ配信を鳴らすように声で指示するというデモは、会場の様々な場所で、当たり前のように見られた。
スピーカーとの連携は、音声操作というトレンドのほんの一部ではあるものの、Google HomeやAlexaそのものの現地での注目度の高さは想像以上。オーディオ関連では「対応しないわけにはいかない」と考えるメーカーも少なくないようだ。大手ではソニーやオンキヨー&パイオニアなどが対応予定機器を展示していたが、実際は一般公開展示以外にも、ブースの特別な部屋で限定公開しているケースもあり、対応に前向きな姿勢を見せるメーカーが多いようだ。
日本でも、テレビなどのリモコンで既に音声操作は対応しているが、家の中で常に声を出して操作するという方法は、住宅事情や気恥ずかしさなどもあってか、今のところ、日本では浸透している印象はほとんどない。
今後Google Homeなどが日本で発売された場合、様々な機器が連携するハブとしての役割も期待され、対応/非対応が製品選びの基準になる可能性もある。まずは日本語の音声認識に、どのタイミングで対応するかが、普及に向けて重要なポイントといえるだろう。
現段階では日本でどれほど浸透が見込めるかは未知数だが、「導入が始まってから製品開発をするのでは遅すぎる」との判断で、まずは米国向けにいち早く対応を進めているところが多いようだ。また、既に自社製品同士で独自のネットワーク連携機能やアプリを提供しているメーカーも多いが、そうした既存機能と、新たな共通プラットフォームが連携するのか、それぞれ別の方向へ進むのか、各社の判断も気になるところだ。
VR/ドローン/360度カメラにも引き続き熱い視線
昨年に引き続き「VR」関連も注目され、各社ブースでは、VRヘッドマウントディスプレイを装着してゲームや疑似体験などを楽しむ姿が見られた。VR映像と組み合わせる音声制作の技術なども紹介されている。
VRゴーグルで楽しむコンテンツを手軽に作れる360度カメラや、カメラ付きドローンの種類も大幅に増加。スタートアップを含む多くの企業が注目している。
昨年よりもさらに存在感が高まったのは車関連。日本企業はトヨタの「Concept-愛i」や、自立するホンダの2輪車「Honda Riding Assist」などが注目されたほか、日産のカルロス・ゴーン氏が基調講演を務め、無人運転車の開発などでディー・エヌ・エー(DeNA)と実証実験を行なうことも発表された。
アウディ、フォルクスワーゲン、クライスラーといった欧米メーカーも広いブースを設け、コンセプトカーなどを展示。「自動運転」や「5G」(第5世代移動通信システム)、「AI」といったキーワードが、車メーカーや、同業界への進出を狙う多くの企業で見られた。
次回の「CES 2018」は、2018年1月9日~12日に開催される。