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オンキヨーのiPod/PCトランスポート「ND-S1」を試す

−iPodやPCが高音質ソースに変身。低価格に期待


iPod nanoを搭載したところ

2009年秋発売

標準価格:未定

 オンキヨーが今年の秋に発売を予定している、iPod/PCのデジタル伝送に対応するメディアトランスポート「ND-S1」。iPodやPCを高品質な音楽ソースとして活用できるようになる製品とあって、発表週のアクセスランキングでも5位に入るなど、高い注目を集めている。

 まだ発売時期や価格も決定していない製品だが、開発中の試作機をお借りできたため、気になる機能や音質をお伝えしたい。なお、試作機であるため、外装も含め音質なども製品版とは異なる可能性が高い事をお断りしておく。

 iPodのDock端子と接続し、iPod内の楽曲をデジタルデータのまま取り出し、同軸や光デジタル端子からS/PDIFのデジタルオーディオストリームとして出力。単体DACや、DAC内蔵のアンプなどに接続するという機器は、アクシスが取り扱っているWadia170の「iTransport」(62,790円)で一躍脚光を浴びた。メモリタイプのiPodから読み出せば、CDプレーヤーのような回転系機構を持たないトランスポートとなり、ロスレス音源などを入れておけば、高音質なオーディオソースとして利用できるというわけだ。

 同様の機能はパイオニアのAVアンプなどにも採用されており、iPodとUSB接続することで、デジタルデータをAVアンプ側で高音質D/A変換できるとして人気を集めている。最近では7月中旬発売のマランツ製CDプレーヤー「CD6003」(49,800円)も同機能に対応。CDプレーヤー内のDACやマスタークロックを用いてiPodのデジタルデータを処理している。今後も様々な機器で採用されそうだ。

Wadia170「iTransport」 iPodデジタル入力対応のマランツ製CDプレーヤー「CD6003」

 オンキヨー「ND-S1」の特徴は、単体のiPodトランスポートであると同時に、Wadia170「iTransport」には無いUSB端子を備え、PCと接続してUSBオーディオとしても動作する事だ。搭載したiPodをPCと同期させる事もでき、PCとの親和性の高さが売り。オンキヨーでも「iPodのデジタル出力と、PCからのデジタル出力、iPod/iTunes同期を1つの筐体で実現した民生オーディオ機器は世界初」とアピールしている。


■ 薄型筐体が特徴

 筐体サイズは205×175×34mm(幅×奥行き×高さ)と、iTransportの203.2×203.2×68.6mm(同)と比べると半分程度の高さしかない。幅が若干広いこともあり、一目見ると“薄さ”が強く印象に残る。重量は530gで、iTransportの1.1kgと比べると、こちらも半分程度。プラスチックで構成された質感と合わせ、若干安っぽい印象を受ける。天面パネルの仕上げが製品版では改良されるとの事なので、外観的な高級感はさらにアップしそうだ。

 天面の左手前に電源ボタン、右側にはモード切替ボタンを用意。iPodとPC、そして「SYNC/UNSYNC」ボタンの3つが並んでいる。「SYNC/UNSYNC」については後述するが、いずれもボタンを押すとグリーンやオレンジなど、鮮やかにライトアップされ、動作状況の視認性は良い。

高さ34mmの薄型筐体が特徴 小型デジタルアンプ、ケンウッドの「Prodino」や、ヘッドフォンアンプ「DR.DAC 2」と並べたが、薄さは同程度 背面

 Dock端子を覆う蓋はスライド式で、指でわずかに押し込み、奥にスライドさせると見慣れたDock端子が現れる。天面パネルにはそのほかに何も無く、極めてシンプルなデザインがオーディオ機器らしくもある。

 背面には光デジタル出力、同軸デジタル出力、USB端子、コンポジット出力、対応機器との動作連携用のRI端子を備えている。電源はACアダプタだ。デジタル出力は16bitで32kHz、44.1kHz、48kHzに対応。±10PPMの高精度クロックも備えており、低ジッタでの伝送を実現したという。コンポジット出力はiPod内の映像出力用。USBはPC接続用で、対応OSはWindows XP/Vista。

天面に各モードのボタンを用意。切り替えると鮮やかに光る
Dock端子の蓋は押してからスライドさせる機構 Dock端子

 前面にリモコン受光部があり、小さなリモコンが付属する。機能は本体ボタンと同じものに加え、楽曲の再生/一時停止、送り/戻し(長押しで早送り/早戻し)、プレイリスト操作、アルバム操作、シャッフルとリピートモードの変更ボタンを備えている。

 トランスポートとしての機能はシンプルで、対応iPodを乗せて、iPod本体かリモコンで楽曲を再生するとデジタル出力される。対応iPodは、iPod nano/classic/touch。なお、第5世代iPodと第1世代nano接続時はビデオ/スライドショーには非対応で、iPodのクリックホイール操作はできず、付属リモコンからの操作となる。

 なお、非対応とされているiPhone 3G/3GSの動作だが、試作機を編集部でテストしたところ、問題なく動作した。出力だけでなくアルバムやプレイリスト、リピートなどの各操作も有効である。iPhone 3G/3GSはファームウェアのアップデートで大きく機能が変化する事もあり、将来にわたって必ず動作する保証が無いため、公式にはサポート外とされるものの、実際には動作する製品が多い。「ND-S1」もそうした製品の1つと言えそうだが、製品版でもiPhoneが動作するとは限らないので注意が必要だ。

 なお、非対応機器にiPhoneを搭載すると「このアクセサリはiPhoneでは動作しない」というエラーメッセージが表示され、オーディオの干渉を緩和するために通信機能をOFFにする「機内モード」を利用するか? と聞かれる事があるが、「ND-S1」ではそうしたエラーメッセージも表示されなかった。しかし、後日オンキヨーに確認したところ、「製品版ではiPhoneを接続した場合、エラーメッセージが出る」とのことだった。

iPhone 3Gを搭載したところ。編集部のテストでは問題なく動作した 付属のリモコン。本体のボタンより機能が豊富だ
再生中のiPhone 3Gの画面表示 iPhone非対応アクセサリでは上記のようなアラートが出る


■ よく考えられたPC接続モード

PCからはUSBオーディオデバイスとして認識される
 機能的に興味深いのはPCモードだ。USB接続した状態で、iPodモードからPCモードに切り替えると、PC側で「ND-S1」が認識され、汎用のUSBオーディオデバイスとして登録される。PCの標準の音声出力先となるため、メディアプレーヤーなどで音楽を再生すると「ND-S1」からデジタルで出力され、接続したコンポから音が出る。

 面白いのは、iPodを「ND-S1」に搭載した状態でPCモードに切り替えただけでは、PC側からiPodが認識されない事だ。PCモードに切り替えてもiPodにはDock端子から通電されており、充電はされているにも関わらずだ。認識させるためには、リモコンの「SYNC/UNSYNC」ボタンを押す必要がある。すると「SYNC/UNSYNC」が赤く光り、初めてPCからiPodが認識され、iTunesとの同期が可能になる。同期/認識をやめる場合は、同ボタンを長押しする。


同期中の写真。右の「SYNC/UNSYNC」ボタンを押さなければiPodは認識されない
 おそらくUSBオーディオとして、PCとの常時接続を想定しての機能だろう。例えばiPodの出力をコンポなどで聴いた後、PCを立ち上げ、その音をコンポから聴きたい場合、「ND-S1」をPCモードに切り替えるだけで済む。その際、搭載されたiPodがいちいちPCに認識されると、同期するつもりがなくてもiTunesが立ち上がり、わずらわしく思う事もあるだろう。その点「SYNC/UNSYNC」ボタンを押して初めて認識/同期されるのは良く考えられた機能だと感じる。

 iPodとPCモードの切り替えは瞬時に行なえ、出音もスピーディーだ。また、iPodを同期させている場合でも、USBオーディオとしての機能は生きており、PCの音はちゃんと出力される。当然ながら、PCモード時にiPodを再生させても音は出ない。iPhoneでは本体のスピーカーから音が出るだけだ。

 組み合わせる機器は様々な物が考えられる。ケンウッドの「Prodino」(アンプ単体の実売は25,000円前後)など、デジタル入力を備えた超小型デジタルアンプと小型ブックシェルフなどを接続し、コンパクトだが高音質なデスクトップオーディオ環境を構築。デジタル入力を備えた「DR.DAC 2」(直販39,800円)などと組み合わせて良質なヘッドフォン再生環境を作るというのも良いだろう。デジタル入力を備えたオンキヨーのアクティブスピーカー「GX500-HD」(実売3万円程度)と組み合わせれば、非常にシンプルなシステムも構成できる。

 もちろん、本格的な単体DACや、デジタル入力を備えたCDプレーヤーと組み合わせ、ピュアオーディオ機器に組み込む事もできる。オンキヨーのアンプではDACを備えたデジタルプリメイン「A-5VL」(84,000円)などと組み合わせても、デザイン/音質共に優れたシステムになりそう。iPodデジタル入力の無いAVアンプと組み合わせる方法もあり、PCの再生音を渡すこともできるため、シアターとPCの橋渡し役にもなりそうだ。


DR.DAC 2と接続した、コンパクトなヘッドフォン再生システム デジタルプリメイン「A-5VL」(84,000円)と組み合わせたところ。カラーも良くマッチしている
デジタル入力を備えたオンキヨーのアクティブスピーカー「GX500-HD」と組み合わせれば、これだけでシステムが完成する ケンウッドの「Prodino」も光デジタル入力を備え、DACを内蔵している


■ クリアかつ重心の低い再生音

 気になるのは再生音。試作機ではあるが、軽く触れておこう。「DR.DAC 2」と同軸デジタル接続し、ヘッドフォンで試聴したところ、非常にスッキリとした見通しの良い音場が現れた。山下達郎「アトムの子」、冒頭のドラム乱舞もスティックの動きが明瞭にわかると同時に、低域の張り出しもしっかりと強い。帯域全体にストレスの無いクリアさ、高域の伸びやかさ、音場の左右への広がりは低価格なCDプレーヤーではなかなか味わえないものだ。

パイオニアのAVアンプ「SC-LX81」と接続
 比較対象としてあいにく「iTransport」が用意できなかったので、今回はiPodのデジタル接続ができるパイオニアのAVアンプ「SC-LX81」と接続してみた。LX81はiPhone非対応なのでiPod nanoを使用。LX81と「ND-S1」を同軸デジタル接続した時と、LX81のUSB端子にnanoを接続した時で、同じ曲を聞き比べてみた。

 JAZZで「Kenny Barron Trio」の「Fragile」を再生すると、ルーファス・リードの分厚いベースが、USB接続では若干素っ気ないのに比べ、「ND-S1」では中域が肉厚になり、ヴォーンと吹き付ける勢いが強くなる。全体的に音の重心が下がり、ドッシリと落ち着いた再生音になる。音場の左右への広がりも若干「ND-S1」の方が広いようだ。

 ピアノ部分の高域、「アトムの子」のシンバルのはじけ具合などに注意すると、高域は「ND-S1」の方が“まろみ”がある。USB接続の方が良く言うと“素のまま”なのか、荒々しく、バシャンと割れた音がそのままに再生されている。どちらが正しい音なのかはわからないが、個人的には「ND-S1」の方がメリハリの効いた“オーディオ的な心地の良い美音”と感じた。

SC-LX81のUSB接続でiPodを再生している画面。AVアンプのメディアプレーヤー/DLNAクライアント機能「Home Media Gallery」で再生する



■ 気になる価格だが……

 最も気になる点は、この製品が“幾らになるのか”だろう。作りや質感、手にした重量からイメージすると「iTransport」の62,790円よりも低価格になる事を期待したいが、機能面ではPC接続も可能で「ND-S1」の方が上回っている部分もある。

 しかし、後発の製品で、マランツのCDプレーヤー「CD6003」が49,800円で販売されている現状を考えると、5万円を切るのは最低ライン。同社のPC周辺機器ブランドWAVIOのUSBオーディオインターフェイス「SE-U55SX」が実売15,000円〜20,000円程度であることを考えると、3万円台を切る29,800円や、25,000円程度を期待したいところだ。

 いずれにせよ、iPodのメモリ/HDD容量が増加し、PCに次ぐメディアライブラリ化している現状において、高音質なソースとして活用できるようにする「ND-S1」の注目度は高い。PCとの親和性を高めたことで、活用の幅が広がると同時に、iPodやPCのユーザーが高品質な単品コンポに興味を持つ“橋渡し”的な役割も担える製品の登場と言えそうだ。


(2009年 8月 10日)

[ AV Watch編集部 山崎健太郎 ]


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