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気になるアクティブスピーカーを聴く【東和電子:TW-S7】

−音場と定位に優れた実売1万円の“卵型”


ノートPCと組み合わせた使用イメージ

発売中

オープンプライス

 低価格なネットブック、価格を抑えながらパワーもあるCULVなど、ノートPCが気軽に購入できる時代になり、デスクトップPCがもう家に1台も無いという人も多いだろう。だが、低価格なノートPCで不満が出やすいのは音質面のクオリティだ。

 そんな時に手っ取り早く音質改善ができるのがコンパクトなアクティブスピーカーの追加。そこで、最近注目のモデルを数回に分けて紹介していきたい。初回に取り上げるのは東和電子のUSBスピーカー「Olasonic」(オラソニック)の「TW-S7」というモデルだ。

 東和電子というメーカーを知っている人は多くないだろう。しかし、同社が手掛けたAV機器を使っている人は多いはずだ。というものも、東和電子は大手AV機器メーカーから依頼を受け、アンプやホームシアター機器、カーオーディオなどの設計を担当している、“縁の下の力持ち”的なメーカーだ。

 そんな東和電子が、自社で販売する「Olasonic」ブランドの第1弾新製品として、4月から発売しているのが、USB接続の小型アクティブスピーカー「TW-S7」。価格はオープンプライスだが、実売は1万円程度と購入しやすい価格になっている。


■ 見事な卵型

 最大の特徴は、卵型のエンクロージャだ。ボディカラーはブリリアントホワイト(W)、ノーブルブラック(B)の2色で、ホワイトは完全に卵にしか見えない。奇抜な形状だが、決して“デザインありき”のものではなく、あくまで“音響的な理想”を追求した結果、卵型になったという。

ブリリアントホワイトモデル。MacBookなどと組み合わせるとデザイン的にもマッチしそうだ

横から見たところ。完全に卵型だ 左がブリリアントホワイト、右がブラックモデル。どちらも光沢のある仕上げだが、ブラックのほうが写り込みが多い

 一般的な四角いスピーカーの場合、ユニットの背面から放出された音が、エンクロージャ内部の平行面で何度も反射する、いわゆる定在波が発生。それを吸い取るために、吸音材を入れる必要がある。だが、卵型のエンクロージャの場合、並行した面が無いため、内部で定在波が発生しない。それゆえ、TW-S7には吸音材が一切入っていないという。その結果、片手に乗るほど小さいスピーカーだが、エンクロージャ内部の“実用内容積”が大きくとれ、能率向上に寄与しているという。

 また、子供を守るために動物達が生み出した形状だけあり、卵型は非常に剛性が高い形状でもある。それを採用することで、エンクロージャの箱鳴りが発生せず、再生音に不要な鳴きが付帯音として加わらないという効果もあるようだ。

 さらに、通常の箱型エンクロージャでは、ユニットから放出した音がバッフルに反射して余計な音となって前方に広がる“回折現象”が問題となるが、緩やかなカーブを描く卵型ではそれも少なく、ユニットからの音だけが耳に届く理想的な点音源に近付き、定位が良くなるという利点もある。

 良いことずくめな形状だが、底面も平らではないため、そのままでは自立しない。そこで、TW-S7では中央がくぼんだシリコンゴム製の置き台が付属。自由な角度で設置でき、ユーザーの耳の場所に合わせた設置が可能になっている。また、シリコンゴムなのでインシュレータも兼用している。

シリコンゴムのインシュレーターに乗せて固定する インシュレーターに乗せたところ
上を向かせたところ。リスナーとの距離が近いアクティブスピーカーの場合、耳に向けた設置が効果的だ あまり意味はないが、こんなふうに固定する事もできる

 ユニットは60mm径のフルレンジ1基のシンプルな仕様。背面にまわると、パッシブラジエータがユニットと同軸上に配置されている。これにより、低域の共振を利用して低音の増強をしている。密閉型では低音を出すために大型のエンクロージャが必要で、バスレフでもポートの長さが低音に影響する。パッシブラジエータであれば、エンクロージャが小さくても豊かな低音が出せるため、コンパクトスピーカーではよく採用される手法だ。

 前面には銀色の丸いパーツがはめ込まれている。飾りのようにも見えるが、パーツを横から見ると弾丸のような形状をしているのがわかる。これは、直線的に放出される高域を拡散させるデフューザーとして機能しており、音の指向性を広げて臨場感をアップさせる工夫だそうだ。

背面にパッシブラジエータを備えている フロントの銀色のパーツがデフューザーとして高域の指向性を広げる


■ USBスピーカーながら大音量もOK

接続ケーブル。右スピーカーからUSBが伸び、左右のスピーカーをミニケーブルで接続する
 接続は右チャンネルのスピーカーから伸びるUSBケーブルをPCと接続。さらに、左右のスピーカーを繋ぐミニケーブルを接続するのみ。電源ケーブルやACアダプタが不要なのはPCまわりがゴチャゴチャしなくて嬉しい。操作も極めてシンプルで、スピーカー側にボリュームや電源などは一切無く、ボリューム調整はOS側から行なう事になる。非常に割り切った仕様だ。

 音を出す前に、このスピーカーの大きな特徴であるSCDS(Super Charged Drive System)も説明しておこう。仕様表を見ると「最大瞬間出力:10W+10W(ダイナミックパワー)」と記載されている。USBの仕様に詳しい人ならば「USBの消費電力は2.5Wまでのはず」と疑問に思うだろう。

 このスピーカーも消費電力はもちろん2.5Wなのだが、瞬間的に10W×2chの大音量も出せるようにするため、内部に大容量のキャパシタを搭載しているのだ。音楽は常に大きな音が出ているわけではなく、静かな部分と、元気のいい部分がある。静かな時にキャパシタに充電を行ない、大音量が必要な時に一気に放電することで、USBスピーカーながら瞬間最大10W×2chを実現しているというわけだ。イメージとしては、使わないときに水を貯めて、大放水するダムを思い浮かべると仕組みがわかりやすいだろう。



■ 広大な音場と明確な定位

M3とのサイズ比較。TW-S7のほうが一回り大きいが、形状のせいかあまりそうは感じ無い

 比較相手として、高級アクティブスピーカーの代名詞的なボーズの「M3(Micro MusicMonitor)」を用意した。登場は2006年3月と古いが、サイズからは想像できない重低音再生が特徴。ペアで49,980円とアクティブスピーカーとしては高価だが、何度も再販されている人気モデルで、既報の通り6月17日からは最後の再販を600セット限定で実施。当然のように既に売り切れている。

 実際の利用シーンをイメージし、ノートPCのキーボードの脇に、両モデルを設置してニアフィールドで試聴した。M3はステレオミニ入力のみであるため、ノートPC(ThinkPad X201:オーディオデバイスはConexant 20585 SmartAudio HD)のイヤフォン端子に接続している。

 「藤田恵美/camomile Best Audio」から「Best OF My Love」を再生。まずM3で聴くと、若干金属筐体の鳴きをまとった、きらびやかなヴォーカルと共に、低域の力強さで音楽を下支えする、安定感のあるメリハリの効いたサウンドが流れてくる。キーボードに手を置きながら、画面を見下ろすような姿勢で聴いていると、ヴォーカルがPCの液晶画面の中央よりやや下に定位。1分過ぎからアコースティクッベースが入ると、「グォーン」という芯の通った硬い低音が、机を揺らし、振動がキーボードから指に伝わってくる。相変わらずこの小さな筐体から出ているとは思えない低音だ。

 ここでTW-S7に切り替えると何もかもが激変する。最大の違いは音場と音像。ディスプレイの下部に横一列にわだかまっていたヴォーカルやギター音像が霧散するようにパッと消える。ヴォーカルの音像がグッと上昇し、液晶ディスプレイを抜けて、その上の何も無い空間にポッカリと浮かぶ。さらに、ぼやけていた音像もクッキリ輪郭がわかるようになり、「ここが顔で、ここに口がある」と指し示せる明瞭さだ。同時に、上下方向だけでなく、「液晶ディスプレイのちょっと後ろ」と、奥行き方向の音像定位場所もわかるようになる。加えて、左下手前にギターが定位、右奥のヴォーカルの脇にアコースティックベースと、個々の楽器が空中の別の場所に分離して定位。まるで2D映像が3D映像に切り替わったかのように、音楽が立体的に描写される。

 音像が奏でる音の“広がり”にも大きな違いがある。M3は左右のスピーカーからはみ出す程度の範囲で、横方向に楕円形の音場が広がるだけだが、TW-S7は自分の真横まで音が広がり、上下や奥にも音が広がっていく。“どこからどこまでが音場”という感覚ではなく、大玉ころがしの“大玉”のようなサイズの音場の中にクビを突っ込んで内部を見回しているような感覚だ。

 そのため、ボリュームをそれほどあげなくても、部屋中に音が行き渡る。M3で同じように音を充満させようとすると、中域の張り出しが強くなるばかりで、ちょっとうるさく聴こえてしまう。音像の分離や音の解像感が若干低いため、ボリュームを上げても団子状にくっついた音が吹きつける力が強くなるように感じてしまうのだ。

M3と並べて試聴してみる

 TW-S7の場合は、ボリュームを上げると無音空間にポッカリ浮かんだ音像の勢いが強くなるが、音と音の隙間、音の無い部分は“しっかり音が無いまま”で、生の音の聞こえ方と近い。ピュアオーディオでブックシェルフスピーカーのセッティングを突き詰めると、スピーカーの存在が消えて、音像のみが空間にポカッと浮かぶ感覚が体感できるが、あれと良く似ている。クロストークが少ないニアフィールド設置という点も有利に働いているのだろう。

 定位の驚きが薄れると、個々の音そのもののクオリティの違いがわかってくる。M3からTW-S7に切り替えた瞬間は、低域の量感が減るため、素っ気ない、悪く言うと味気ない音になる。だが、そのまま聴き続けていると音が生々しくなった事に気付く。人の声、つまりヴォーカルでわかりやすく、M3に戻すと金属的なシャラシャラとした甲高い音が付帯しているように感じる。また、M3の沈み込む中低域はピアノの左手やベースの低音の動きを覆う側面もあり、TW-S7のほうが低音の動きがよくわかる。この違いには、アナログ接続のM3と、USBのデジタル接続のTW-S7という、音の鮮度や解像感の違いも大きく影響しているだろう。ヴォーカルの口の描写も、TW-S7は口の中の湿り気がわかるような生々しさだが、M3の音はそこまで解像されない。PCとの間にUSB DACでも噛ませばさらにM3のクオリティもアップするだろう。


OS側のイコライジングで低音を増強

 M3が優っている点は低音の量感だが、TW-S7の中低域には、M3のような芳醇さは無い。だが、低音が出ていないかというとそんな事は無く、かなり芯の通った低い音が出ている。Kenny Barron Trio、「The Moment」から「Fragile」を再生すると、ルーファス・リードのベースが「ゴーン」としっかり沈み込む。

 試しに、Windows側の設定でバスブーストのイコライジングをONにしてみると、最低音はM3に若干負けるものの、それでも量感のある重い低音がズシンと吹き出してきて、キーボードがビリビリと震える。同時に、イコライジングをかけても中高域の明瞭さはあまり変わらず、きちんとヴォーカルは空中に定位し、抜けも悪くならない。“低音も出せるが、過度に強調しないバランスのスピーカー”と言えるだろう。ロックやテクノなど、低音に力強さが欲しい楽曲では、積極的にイコライジングを活用するのもアリだ。

 オーディオチェックでおなじみの、JAZZのビル・エヴァンストリオ「Waltz for Debby」を再生。TW-S7では音場の広さを活かし、観客の話し声や食器のカチャカチャという音が部屋のいたる処に定位。まるで、ヴィレッジ・ヴァンガードに足を踏み入れたようだ。


奥にある大きなスピーカーがmini pod。TW-S7のブラックを並べると弟のようだ

 現在、自宅のPC用スピーカーとして、ダルマのような形状の「mini pod」(Blueroom Loudspeakers)を使っているのだが、これも音場表現に優れ、エンクロージャの鳴きなど、スピーカーの“個性”を感じさせない音が特徴。流石にスケールは違うが、TW-S7の再生音はmini podと傾向が良く似ている。

 高い音場再生能力と、立体的で明確な定位描写、音色の色付けも無く、音量や低音もニアフィールドで聴くには十分という、完成度の高いUSBスピーカーだ。PC周辺機器には、音場を稼ぐために、バーチャルサラウンド機能的なものが入りがちだが、そもそもCDには立体的な音場が収録されており、箱鳴りや回折を抑え、点音源で再生すれば、何の信号処理をしなくても広がりのある音が楽しめるという“オーディオの基本”を再認識させてくれるモデルとも言える。

 不満点を挙げるならば、ハードウェア的なボリュームやミュートボタンが無い事だろう。思っていたより大きな音が出た時や、急に電話がかかってきた時など、OSのマウス操作やショートカットキーでボリュームを下げる事はできるが、やはり物理的なボタンがスピーカーに用意されていると素早く・直感的に操作できて精神衛生的に良い。もっとも、このシンプルな“卵型”のフォルムを壊したくないという気持ちもあるのだが……。

 ある意味通好みなサウンドであり、オーディオマニアがPC用の手頃なサブスピーカーを探しているという際はイチオシだ。売り場で目立つサウンドとは言えないが、店頭ではデザイン面で目を引きそう。女性にも受け入れられやすいだろう。「お金をかけず、とりあえずPCで良い音が聴きたい」という人にもオススメできる、可愛いけれど侮れないモデルだ。



(2010年 6月 29日)

[ AV Watch編集部 山崎健太郎]