いよいよ発売されたiPhone 4Sを触ってみた
-画角はiPhone 4とほぼ同じ。音質は3GSより向上
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iPhone 4S |
いよいよ発売が開始されたiPhone 4S。機能的な特徴は13日に公開された「iOS 5」の新機能と重なる部分が多いが、そうした新機能をサクサクと処理するためCPUにApple自社開発/設計のデュアルコアSoC(System On a Chip)「A5」を搭載するなど、ハードウェアがよりパワフルに進化したのが「iPhone 4S」と言う事もできる。
ここでは実機の写真と共に、改めてiPhone 4との変更点をチェックしていく。
■外観の違いは少なく、64GBモデルを追加
デザインはiPhone 4を踏襲しており、外形寸法は115.2×58.6×9.3mm(縦×横×厚み)と変化は無い。比較写真を撮影中にも、どちらが4で4Sなのかわからなくなる事が多々あった。
外見的に見分けやすいのは右側面で、アンテナが備わっているが、そのスリットが上下2か所(写真では左右)になっている。なお、重量は4Sが140gで、iPhone 4より3g重くなっているが、僅かな違いなので実際持ち上げてみても違いはほとんど感じられない。
液晶ディスプレイは、3.5インチ/960×640ドットの「Retina(網膜)ディスプレイ」。解像度は326ppiで、コントラスト比は約800:1、輝度は500cd/m2、耐指紋性撥油コーティングも施している。
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右側面。アンテナが内蔵されている | イヤフォン出力と電源ボタン | 底面のDock端子部 |
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左側面にホールドスイッチやボリュームボタンも備えている | 液晶ディスプレイは、3.5インチ/960×640ドット | iPhone 4と同様に、前面ガラスとディスプレイを密着させた「オプティカルラミネーション」という手法で、ガラスそのものに表示されているように見える |
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左からiPhone 4S、iPhone 4、iPhone 3GS | 左からiPhone 4S、iPhone 4 |
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左からiPhone 4S、iPhone 4 |
内蔵メモリで大きな変更点は、16GB、32GBに加え、新たに64GBモデルが追加された事。iPhone 4SではフルHD動画の撮影・再生にも対応しており、静止画の解像度も増加しているため、おのずと内蔵メモリの逼迫も予想されるので64GBモデルの追加は嬉しいポイントだ。ロスレスフォーマットで音楽をライブラリ化している場合、64GBモデル一択というも人も多いだろう。
背面には裏面照射型CMOSの800万画素カメラとLEDフラッシュを装備。iPhone 4の500万画素から向上した。動画撮影機能は、iPhone 4の720p/30fpsから、4Sでは1080p/30fpsでの撮影に対応している。また、レンズも新設計の光学エンジンを使用し、5枚構成でF2.4となっている。また、ハイブリッド赤外線フィルターを搭載しており、レンズへの赤外線の通過を抑え、より正確な色再現を可能にしたという。
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左がiPhone 4S、上がiPhone 4、右がiPhone 3GSのカメラ | 背面。左からiPhone 4S、iPhone 4、iPhone 3GS | iPhone 4Sのパッケージ |
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パッケージにiCloudのロゴマークが | パッケージを開けたところ | 付属品はiPhone 4などと同じだ |
なお、iPhone 4で見られた青かぶりの解消や、動画のビットレート、カメラアプリの起動速度の比較などは、12日に掲載した西田宗千佳氏によるレビュー記事を参照していただきたい。
■焦点距離を比較
今回は、西田氏の記事では触れていなかったレンズの画角に注目。iPhone 4と比較撮影を行なった。
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公園のジャングルジムで比較撮影を行なった |
公園のジャングルジムを被写体に、ジャングルジムのパイプの左右が、縦位置の撮影で丁度横一杯に収まる距離から、同じ三脚の上に載せ替える形で撮り比べた。結果、パイプの両端の画面への収まり具合はほぼ同じとなった。撮影データのExif情報をチェックしてみると、両モデルとも焦点距離は4mmとなっており、iPhone 4SのExif情報にのみ「35mm(換算での)焦点距離」項目に35mmと記載されていた。
被写体 | iPhone 4S | iPhone 4 |
公園のブランコ | ![]() | ![]() |
ビルの壁 | ![]() | ![]() |
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撮影した静止画を現場で表示し、比べたところ。左がiPhone 4S、右がiPhone 4。 | iPhone 3GSとも比較。左がiPhone 4S、右がiPhone 3GS。iPhone 4Sの方が広角になっているのがわかる |
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撮影画像のExif情報を表示したところ。左がiPhone 4、右がiPhone 4Sのもの。焦点距離はどちらも4mm、iPhone 4Sのみ35mm換算の焦点距離値も35mmと書かれている |
なお、比較撮影中、灰色のビル壁などにiPhoneを向けると、iPhone 4では全体的に青紫色に表示されてしまう。一方でiPhone 4Sでは若干暖色系に寄っていると感じるものの、おおむね肉眼でみる壁の色と同じ表示になっていた。ホワイトバランスは大幅に改善されたと言えそうだ。
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ビルの壁を撮影しているところ | 同じ壁にカメラを向けたところ。右がiPhone 4S、左がiPhone 4だが、色味がまったく違うのがわかる。肉眼の色に近いのはiPhone 4Sだ。 |
なお、従来は撮影時にディスプレイに表示されるシャッターボタンを押す必要があったが、iPhone 4S(iOS 5)では、ボリュームのプラスボタンをシャッターとして利用できるようになっている。
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iPhone 4Sでの作例 |
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iPhone 4Sでの作例 |
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カメラアプリにはHDR(ハイダイナミックレンジ)機能が搭載されており、明暗差の激しい被写体を撮影する場合、後処理で明暗差をバランスよく整えた画像として保存してくれる。HDR ONとOFFの画像を同時に保存する事も可能だ。左がHDR OFF、右がONの画像。左では黒つぶれしている下部の草が、右の写真では明るさアップされている |
■1080p動画再生をチェック
フルHDの動画撮影に対応したiPhone 4Sだが、自機で撮影した動画を再生するため、当然ながらフルHD動画の再生をサポートしている。仕様として公表されているのは、最高1080p、30fpsのHigh Profile(Level 4.1)のMPEG-4 AVC/H.264動画(音声は48kHz、最高160kbps、ステレオ/AAC)に対応すること。ファイル形式は.mp4と.m4v、.mov。また、MPEG-4(Simple Profile/640×480ドット、30fps、2.5Mbpsまで/.m4v、mp4、.mov)、Motion JPEG(1,280x720ドット、30fps、35Mbpsまで/.avi)というものだ。
MPEG-4 AVC/H.264の場合、ファイル形式がmp4/m4v/movであるため、AVCHDのビデオカメラやデジタルカメラで撮影したMTSファイルは転送できない。動画の転送にはiTunes 10.5を使う。試しに小寺信良氏の「週刊 Electric Zooma!」において、ソニーの「NEX-5N」で撮影したMTSファイル(1,920×1,080ドット/17Mbps/24p)をドラッグ&ドロップしても無反応で、拡張子をmovに変更してもエラーが出て転送はできない。
次に、同じくNEX-5Nで、MP4モードで撮影した1,440×1,080ドット/12Mbps/30pのmp4ファイルでは、転送・再生ともに可能。ニコンのフルHD撮影対応デジカメ「COOLPIX P100」で撮影した、1,920×1,080ドット/約14Mbps/30pのmovファイルも、転送・再生できた。
JVCの「GC-PX1」で撮影した1,920×1,080ドット/23Mbps/60pのmp4ファイルは転送不可。同じカメラで撮影した1,280×720ドット/12Mbps/60pのmp4ファイルは転送・再生が可能だった。
これらの結果から、1080pでも60pは不可、30pは再生可能というのが1つの目安になりそうだ。
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AVCHDファイルは拡張子をmovなどに変更しても転送できない | 対応形式であればフルHDの動画再生に対応した | フルHD動画を再生しているところ |
■音質をチェック
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外部アンプ(iBasso Audio D12 Hj)を接続したところ |
最後に音質もチェックしてみた。イヤフォン出力にShureのSE535を直接接続。山下達郎「ヘロン」をiPhone 3GSと比較再生してみたが、SNの改善が実感できる。中高域がクリアになり、見通しの良い音になった。
また、低域のアタックもiPhone 4Sの方がより深く刻みこむように描写されており、レンジの拡大と共に、低域の沈み込みもiPhone 4Sに軍配が上がる。同じく山下達郎「いつか晴れた日に」の冒頭アコースティックギターも、量感がiPhone 4Sの方が豊かで、ヴォーカルの響きが広がる範囲もiPhone 4Sの方が広い。
Dockケーブルを介してポータブルヘッドフォンアンプを接続してみたが、エラー表示も無く、iPhone 4やiPhone 3GSと同様にしっかり音が出る。なお、3GSよりも高音質化しているが、外部アンプ(iBasso Audio D12 Hj)を使うと、レンジはさらに拡大し、低域の描写力も向上する。
しかし、内蔵アンプの音質は色付けが無く、非常にニュートラル。低域の描写力も高く、多くの人が満足できる音質は確保していると言って良いだろう。
(2011年 10月 14日)
[AV Watch編集部 山崎健太郎]