【地デジラストスパート】今さら聞けない“地デジ”再入門
-普及率9割突破。アンテナ/CATV以外の選択肢も
2011年7月24日のアナログ停波まで、あと227日。11月26日に総務省が発表した、地上デジタル放送の世帯普及率は“90.3%”と、9割を突破した。既に多くの家庭で地デジ対応が完了している事だろう。
逆に、約10%の人はアナログ環境のままであり、7月24日までに何らかの対策を行なわないとテレビが見られなくなる。また、既に地デジ対応を済ませた人でも、家に複数のテレビが存在する場合、全ての地デジ対応が完了していないという場合もあるだろう。
アナログ停波まで、まだ半年以上はあるが、間際になるとテレビ売り場が混雑したり、アンテナや回線などの各種工事も立て込み、思わぬ時間がかかる可能性もある。早めの対応を心がけたいところだ。そんな“待ったなし”の段階に入った地デジ完全移行に備え、改めて必要なもの、対策方法の種類などの基礎知識をおさらいしていく。
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受信に必要なもの | 表示に必要なもの | メインTV以外での対応 | 光経由での受信 |
【地デジ受信に必要なもの】
デジタル放送対応機器が取得できる「DHマーク」 |
最寄りの事業者がわからない場合は、“デジサポ”(電話:0570-07-0101)に問い合わせたり、デジサポのページで検索する事も可能だ。“デジサポ”は総務省のテレビ受信者支援センターの事で、デジタル化に関する相談対応や支援等の受信者支援を行なうための組織として都道府県単位で日本全国に設置されている。
DXアンテナの弱電界エリア向けの20素子UHFアンテナ「UAX20P1」 | マスプロ電工の「SKY WALLIE」に、ミッキーマウスをデザインしたモデル。壁面などに取り付けるタイプのアンテナ | 八木アンテナのベランダ用アンテナ「e-Leaf」。伸縮マスト付ベランダ金具「のび~るマスト」を採用し、アンテナ設置高を調整できるのが特徴 |
ビル陰などで受信できず、共同アンテナなどの共聴施設を利用している場合は、その施設の保守・管理者に地デジ対応がどうなっているのかを問い合わせる必要がある。地デジに対応する場合はそれを、しない場合は、個別にアンテナを新たに立てるか、CATVなどを使って受信をする事になる。
また、CATVとは異なり、インターネット用の光回線などを用いて地デジの映像を受信する方法もある。これについては後ほど詳しく紹介する。
CATVに加入して地デジを受信する場合は、大きく2つの方式がある。1つは「パススルー方式」。これは、地デジの電波をCATVのケーブルを使ってそのまま伝送してくる方式で、地デジ対応のテレビやチューナ、レコーダにそのまま接続できるのが特徴。
もう1つは「トランスモジュレーション方式」。地デジの電波をCATV用の方式に変換して伝送する方式であるため、受信にはCATV用の受信機・STB(セットトップボックス)が必要になる。パススルー方式はテレビやレコーダに内蔵したチューナをそのまま使うため、機能的な制限は無いが、後者の場合はSTBで受信した映像をテレビに出力する形になる。放送をレコーダで画質を落とさず録画する場合はi.LINK接続などが必要になるなど、制限がある。また、近年はSTB単体で完結させるために、パナソニックやパイオニアなどから、BDレコーダ並の録画機能を備えたSTBが登場している。HDMIリンク機能などを使い、テレビとSTBの連携がスムーズになっているのも特徴だ。
パナソニックの新STB、左からTZ-LS300F、TZ-LS300P、TZ-LS200P。TZ-LS300F/Pは、USB HDD録画に対応するほか、ホームネットワーク機能を備えている | パイオニアの2番組AVC録画対応、BD搭載STB「BD-V8700R」 |
●マンションや集合住宅の場合
共同のVHFアンテナで視聴している場合、UHFに切り替える必要がある。戸建てと同様、改修については保守管理業者などに問い合わせる事になる。ビルのオーナーや管理組合の人は、改修用の助成金も用意されているのでデジサポのページなどを参照して欲しい。
共同UHFアンテナで視聴している場合も、地上デジタルの受信方向がアナログと異なる場合はアンテナの調整が必要になる。ただ、マンションなどの場合は1家庭の都合でデジタル用の向きに調整すると、デジタル対応が済んでいない家庭でテレビが映らなくなるという問題も起きるため、管理者との相談や、管理組合での決定などが必要になるだろう。
共同アンテナが地デジに対応しない場合や、対応まで待てない場合は、個別にアンテナを設置する必要がある(ベランダなどが共有施設である場合は勝手にアンテナは取り付けられないので注意)。マンションのベランダなどに取り付ける場合は、戸建ての項目で解説したような、屋外用のコンパクトなアンテナが便利だ。だが、窓の向きの問題や、電波が弱い場所では使用できないため、このあたりも業者に相談するのが良いだろう。戸建てと同様に、CATVなどを使うのも1つの手だ。
【地デジ視聴に必要なもの】
CATVのトランスモジュレーション方式の場合を除き、地デジを見るためには対応するテレビ、もしくはチューナ、レコーダなどが必要になる。
バッファローの500GB HDD搭載地デジチューナ「DTV-H500R」 | シャープの「AQUOSネットチューナー」(AN-IP100) | 東芝の「レグザチューナー」(D-TR1) |
ソニーの1TB HDD搭載BDレコーダ「BDZ-AT900」。BDXL、Blu-ray 3Dに対応している | パナソニックのDMR-BWT3100/2100/1100。BDXL、Blu-ray 3D、BDからHDDへの書き戻しに対応した多機能モデル | PS3とtorneの使用イメージ |
【見落としがち!? こんな機器でも地デジ対応は必要】
【光回線など、アンテナ以外で受信する方法】
CATV以外の再送信サービスとしては、アイキャストとNTTぷららが運営する「ひかりTV」と、スカパーJSATの子会社、オプティキャストが運営する「フレッツ・テレビ」、「スカパー! 光」が挙げられる。
地上/BS/110度CSデジタルチューナを搭載し、IP多チャンネル放送のHD番組を視聴可能なHDD内蔵STB「HD-STB」 |
一方、CATVは、ジュピターテレコム(J:COM)系や、ジャパンケーブルネット(JCN)、イッツ・コミュニケーションズ(iTSCOM)、近鉄ケーブルネットワーク (KCN)など複数地域で展開するサービスと、各地域の独立系CATV局が存在する。ほとんどのCATVサービスでは地デジサービスを展開しているが、内容や利用方法はサービスや地域によって異なるため、事前によく調べておきたい。
また、CATVサービスとして展開している「eo光テレビ」(ケイキャット、ケイ・オプティコムが運営)や、福岡・鹿児島で展開されている「BBIQ光テレビ」(九州電力グループのQTNetが運営)などのサービスも、光回線を使って送信している。「eo光テレビ」ではパナソニック製のBDレコーダ搭載STBを採用しており、市販BDレコーダに近い操作感で利用できることも特徴としている。
料金面では、いずれのサービスにおいても戸建てと集合住宅では異なる場合がある。また、地デジ再送信サービスの料金に、NHKの受信料は含まれていないことは注意しておきたい。最後に、インターネット回線を使った主な再送信サービスの特徴を紹介する。
□日本ケーブルテレビ連盟のホームページ
http://www.catv-jcta.jp/index.php
□CATV技術協会の「地デジ相談室」
http://chideji.catv.or.jp/
●ひかりTV
ひかりTVのページ |
地デジの再送信提供エリアは順次拡大中で、2011年3月15日までに19都道府県をカバー予定。BSデジタルの再送信も12月より全国で開始しており、NHKとWOWOWから提供をスタート。他局についても今後対応予定としている。なお、BS再送信はNGN回線以外でも、NTT東西の光回線ユーザーであれば利用可能。
視聴には、同社が提供するチューナを利用する。なお、テレビやPCにひかりTVチューナを搭載した製品も存在するが、それらはVODや多チャンネルサービス対応のもので、地デジ再送信には対応していないので注意。
地デジ再送信対応チューナは、単体チューナ、またはHDD録画対応モデルなどから選択可能。チューナから外付けUSB HDDへハイビジョン録画する機能も備えている(一部チューナを除く)。録画対応モデルではiPhone/iPadアプリやPCなどからのリモート予約も可能。なお、HDDからBD/DVDへの書き出しは行なえない。そのほか、接続したBD/DVDレコーダにも録画可能だが、その場合はSD画質にダウンコンバートされる。
ハイビジョンで送信されるので、できればデジタルテレビを利用したいところだが、アナログテレビでも視聴は可能。なお、1つのNGN回線で同時視聴が可能となるのは、2チャンネル分のみ。別のテレビでの視聴やレコーダへの録画等のために2チャンネル目を視聴する場合は、別途申込みが必要となる。
ハイビジョン画質であるが、サービス説明のサイトでは、電波で受信する地上/BSデジタル放送と全く同じ画質ではないことが明言されている。また、チャンネル切替などの遅延や、データ放送の画面表示内容や表示に時間がかかることがあるなど、若干の違いも存在することもアナウンスされている。
□ひかりTVのホームページ
http://www.hikaritv.net/
●フレッツ・テレビ、スカパー! 光
フレッツ・テレビのページ |
いずれもNTTのFTTH回線「フレッツ光」を使った再送信サービス。スカパーJSATの子会社、オプティキャストが運営する。「スカパー! 光」は、'04年にNTT東西の光ファイバーによる有料多チャンネルサービスとして提供開始され、'08年には、地デジ/BS視聴などに特化したサービス「フレッツ・テレビ」が開始された。
「フレッツ・テレビ」では月額682.5円(ISP利用料は別)で地上/BSデジタル放送が視聴でき、オプションで110度CSデジタルなどの番組も視聴可能。専用のルータを介して、RF端子からテレビなどに接続。CATVパススルーと同様に、手持ちのデジタルテレビや、レコーダがそのまま利用できる。
スカパー! 光のページ |
なお、一部のCATVサービスと同様に、デジアナ変換を行なうこともアナウンスしており、地アナ終了後も、2015年3月15日まではアナログテレビを使った視聴が可能となっている。ただし、デジアナ変換でBSデジタルは視聴できない。
また、スカパー! 光では「スカパー! HD」の番組もFTTHでハイビジョン伝送している。視聴には専用チューナを利用し、別途視聴料やチューナレンタル料が必要となる。対応BDレコーダ/LAN HDDにより、スカパー! HD録画も可能。対応機器はスカパー! HDのサイトで案内している。
□フレッツ・テレビの紹介ページ(NTT東日本)
http://flets.com/ftv/
□フレッツ・テレビの紹介ページ(NTT西日本)
http://flets-w.com/ftv/
□スカパー! 光の紹介ページ
http://www.skyperfectv.co.jp/hikari/
サービス名 | ひかりTV | フレッツ・テレビ | スカパー! 光 |
提供地域 (※一部地域を除く) | 17都道府県 (北海道/宮城/新潟/栃木/ 群馬/茨城/東京/神奈川/ 千葉/埼玉/静岡/愛知/ 大阪/京都/兵庫/広島/ 福岡)で提供中。 石川(2011年1月18日) 沖縄(2011年3月15日)も予定 | 13都道府県 (北海道/福島/東京/ 神奈川/千葉/埼玉/ 大阪/兵庫/京都/ 滋賀/愛知/徳島) | 13都道府県 (北海道/福島/東京/ 神奈川/千葉/埼玉/ 大阪/兵庫/京都/ 滋賀/奈良/愛知/徳島) |
利用回線 | NTT東西のNGN回線 | NTT東西の光回線 | NTT東西の光回線 |
専用チューナ | 必要 | 不要(ルータ経由) | 不要(ルータ経由) |
BSデジタル放送 | ○ (NHK/WOWOWのみ 他も順次提供予定) | ○ | ○ |
地デジハイビジョン録画 | チューナの内蔵HDD/対応USB HDD | 市販レコーダ | 市販レコーダ |
(2010年 12月 9日)
[AV Watch編集部 山崎健太郎/中林暁]