ミニトピ

スマホの映像・音楽をより楽しむ「Chromecast」の魅力。“built-in”でさらに便利

 近年、あらゆるサービスやコミュニケーションが、スマートフォン中心になっている。映像や音楽などを楽しむ場合でも、テレビや専用オーディオシステムより、「まずはスマホ」から。YouTubeやNetflixなどの映像配信、定額制音楽配信サービスなど、ストリーミングサービスの隆盛が、その流れをより後押ししている。音楽・映像配信サービスは、いずれも月に500円から1,000円程度で加入でき、動画や音楽を好きなだけ楽しむことができる。さらに、映像配信ではオリジナル映画やドラマの制作にも踏み出している。

 映像ではdTVやdアニメストア、Hulu、海外系のNetflixに加え、スポーツに特化した配信サービス「DAZN」が国内でJリーグの独占配信契約を結んで話題になった。音楽もGoogle Play MusicやApple Music、KKBOX、AWAなどのサービスに加えて、Spotifyもついにサービスを開始。定額制の配信市場は一挙に群雄割拠の様相を呈している。

 こうした映像・音楽ストリーミングサービスをより楽しめるための仕組みがGoogleによる「Chromecast」だ。スマートフォンやパソコンではどうしても画面サイズや音声品質に制限があるが、Chromecastはこれらサービスをテレビやスピーカーで楽しむことができるため、映画やドラマ、音楽をより臨場感ある環境で楽しめる。操作は使い慣れたスマホで行ないながら、より高品質で迫力ある体験をもたらすのが、Chromecastといえる。

 そして最近は、Chroemcastと同等の機能を内蔵した「Chromecast built-in」製品も増えている。今回は、テレビやスピーカーなどのChromecast bulit-in機器を例に、音楽や映像をより楽しむための方法を紹介する。

Chromecast機能をテレビや家電に内蔵した「Chromecast built-in」

 はじめにChromecastについて簡単に説明しておこう。Chromecastは、Googleが開発および販売する小型のデバイスで、Chromecastを接続したテレビやスピーカーへ、スマートフォンやパソコン向けの動画や音声コンテンツをワイヤレスで伝送できる。この伝送の仕組みは、Chromecastの名前でもある「キャスト」という用語で呼ばれており、映像や音楽をテレビやスピーカーへ「キャスト」して再生可能。製品ラインアップはHDMIを搭載した映像伝送用の「Chromecast」と、ステレオミニジャックを搭載し、音声の伝送に特化した「Chromecast Audio」という2種類が用意されている。

4K出力対応のChromecast Ultra。テレビなどにHDMI接続する
Chromecast Audio

 HDMIなどのケーブル接続に比べて、離れたところから好きなタイミングで再生できるため、映画やドラマなどはテレビの大画面で、音楽は高音質なスピーカーでという切り替えが手軽に行なえるのが最大の魅力。充実化が進む定額制の配信サービスをより活用し、臨場感ある環境で楽しむことができる製品だ。

 Googleの開発した製品ながら、スマートフォンやタブレットはAndroidだけでなくiOSでも利用可能。Androidではスマートフォンの画面そのものをキャストできるのに対し、iOSは対応アプリのコンテンツのみをキャストできるなど、細かな点で機能の違いはあるが、Chromecast対応アプリのほとんどがiOSとAndroidの両方に対応しているため、OSの違いはほとんど気にならないだろう。

 このChromecast機能をテレビやスピーカーに内蔵したのが、Chromecast built-inだ。Chromecast相当の機能を家電向けに提供する規格は、これまで「Google Cast」という名称で提供されていたが、1月からは「Chromecast builit-in」に改称しているようだ。海外ではすでにWebサイトの名称が変更されているのに対し、日本向けサイトは未だにGoogle Castの名称が残っているなど、両方の名称が混在している状況だ。

 GoogleのWebサイトによれば、1,000以上のアプリ、200万以上のテレビや映画、3,000万以上の音楽コンテンツがChromecastに対応。さらにソニーなどがChromecast built-in製品を販売している。Chromecast built-inに非対応のテレビやスピーカーでも、前述のChromecastを外付けすればほぼ同等の機能が利用可能だ。

 スマートフォンやパソコンを操作して映像や音楽を対応機器から再生する、という点では、使い方はBluetoothに似ているが、大きな違いは「動画や音楽といったコンテンツを対応機器が再生している」ということ。Bluetoothの場合はスマートフォンがコンテンツを再生し、その音を対応スピーカーにワイヤレスで出力しているが、Chomecastは対応機器がインターネット接続機能を持ち、コンテンツをストリーミングで再生しているため、スマートフォンはリモコン的な役割に留まる。また、Bluetoothは基本的に音楽のワイヤレス再生に留まるが、Chromecast built-inは音楽だけでなく動画を対応機器で再生できる点も異なる。

好きな音楽を手軽にスピーカーでワイヤレス再生

 まずはChromecast built-in対応のソニー製スピーカー「SRS-HG1」を例に、Chromecastを使った音声コンテンツの楽しみ方を紹介しよう。Chromecastは対応機器がインターネットに接続する必要があるため、あらかじめ対応アプリ「SongPal」を使って無線LANの設定を行なう。SongpalはAndroid、iOSそれぞれ対応アプリが用意されており、どちらのアプリでも初期設定は可能だ。

Chromecast built-in搭載のスピーカー「SRS-HG1」

 SRS-HG1の電源を入れた状態でSongPalを立ち上げると、アプリは自動的に付近のSRS-HG1を検出。あとは画面の指示に従ってスマートフォンをSRS-HG1に近づけ、無線LANのパスワードを入力するだけでいい。なお、SRS-HG1にはスマートフォンが接続中の無線LANを設定することになるため、家庭で複数の無線LAN環境がある場合は、あらかじめSRS-HG1に設定したい無線LANにスマートフォンで接続しておこう。

SRS-HG1のセットアップ。周囲のSRS-HG1を自動的に検出、画面の指示に従ってスマートフォンを本体に近づけ、無線LANのパスワードを入力する

 設定が完了すればあとはChromecast対応アプリからコンテンツを再生するだけ。SongPalからはChromecast対応アプリであるGoogle Play Musicが起動できるが、その他のChromecast対応アプリを直接起動してもいい。対応アプリからChromecastのマークをタップ、接続先としてSRS-HG1を選択してキャストするとコンテンツを再生できる。

Google Play Musicは画面中央下部にChromecastアイコン
アイコンをタップして接続先を選択
スマートフォンの音楽をスピーカーでワイヤレス再生
再生や早送り、早戻し、音量はスマートフォンから操作

 前述の通りChromecast built-inは対応機器がコンテンツを再生しているため、スマートフォンの操作にかかわらず音楽を再生できるのがメリット。スマートフォンをBluetoothで接続している場合、接続中はずっと音楽アプリを起動しておかなければいけないだけでなく、スマートフォンの音がすべて再生されてしまうため、せっかく音楽に浸っているのにメールの通知音で邪魔されてしまう、ということも多い。その点Chromecast built-inは音楽のみを再生できるため通知音などに邪魔される心配は無く、音楽再生中にスマートフォンは別のアプリを使う、ということもできる。

 Chromecast対応の音楽アプリはGoogle Play Musicだけでなく、AWAやKKBOXなど定額制の音楽配信サービスが多く対応している。ジャンルやムードを選択するだけで好きな音楽を連続再生できる定額制サービスと、スマートフォンからキャストした後は流しっぱなしにできるChromecastは非常に相性のいい存在。スマートフォンやパソコンのスピーカーより音質もよく、家の中でBGMを掛けたいという人にはお勧めの組み合わせだ。

AWAは画面下部のChromecastアイコンからキャストできる
KKBOXは画面右上のメニューからChromecastを選択

 なお、SpotifyはChromecast対応ではないものの、有料会員であれば「Spotify Connect」という同様の機能でワイヤレス再生できる。今回使った「SRS-HG1」もSpotify Connect対応だ。

Spotify Connect

 操作はアプリから行なうため、普段からなじんでいるアプリでそのまま操作できる手軽さも魅力。また、定額制音楽サービスは自分の再生履歴によって音楽をリコメンドする機能を備えているが、移動中などにイヤフォンで聴いている音楽のリコメンドをそのままスピーカーから再生できる。

 なお、画面全体をキャストできるAndroidに限られるが、本来はChromecastに対応していないラジオアプリ「radiko」も、スピーカーに対して画面ごとキャストすることで、ラジオをスピーカーで楽しむこともできる。この場合、Bluetoothと同様にメールの通知音などは再生されてしまうものの、わざわざBluetoothのペアリングを行なうことなく好きな時にラジオをスピーカーで楽しめるのは便利だ。

Androidの通知画面から「画面/音楽のキャスト」を選択
Chromecastに対応していないradikoをSRS-HG1で再生。ただし通知音なども再生される

 こうしたChromecastの利便性をそのまま内蔵しているのがChromecast built-inの特徴。外付けのChromecast Audioを使えば機能としてはほぼ同じことができるのだが、外付けではコンパクトで持ち運びやすいSRS-GH1のメリットが半減してしまう。また、Chromecast Audioは別途USBで電源を供給する必要があるため、電源が取れる場所でしかスピーカーを使えない、ということにもなる。

 Chromecast機能を内蔵しているSRS-GH1であれば、家庭内でネットワークにつながる場所ならどこでも持ち運び、好きな場所で好きな音楽を再生できる。リビングやキッチン、寝室など、好きなところで好きな音楽を簡単に操作できるという点で、とても便利だ。

コンテンツ充実のChromecast対応動画。4K動画も

 続いて、Chromecast built-in対応のソニーの4Kテレビ「49X8300D」シリーズを使いながら映像まわりを見ていこう。元々Chromecastは映像伝送用のデバイスとして発売されたこともあり、対応する映像配信サービスの数も多い。定額制の映像配信サービスだけでなく、レンタル制や無料など数多くのサービスがChromecastを使ってテレビで視聴できる。まだコンテンツは限られるが、dTVやNetflixといったサービスでは4K作品も用意されている。

 今回試用するX8300Dは有線LANとIEEE 802.11ac/a/b/g/n準拠の無線LANに対応しており、初期設定またはホーム画面の「設定」アプリからネットワークに接続する。OSがAndroid TVということもあり、設定方法はAndroidスマートフォンに近い。OSを問わずスマートフォンの無線LANを設定したことがあれば簡単だろう。

Chromecast built-in搭載のテレビ ソニー「49X8300D」

 操作方法もオーディオと変わらない。スマートフォンのChromecas対応アプリからChromecastのアイコンをタップし、接続先を選択すると、テレビ画面で動画を再生できる。動画の一時停止や早送り・早戻し、ボリュームなどの操作はすべてスマートフォンから行えるため、スマートフォンをリモコンのように扱える。一方で動画自体はテレビ側が再生しているため、テレビでは動画を再生したままスマートフォンでは別のアプリに切り替えて使うことも可能だ。画質もインターネットの接続スピードに合わせて自動で調整してくれるため、手動で切り替える手間も必要ない。

 Chromecast対応アプリであるdTVの場合、同一ネットワークにChromecastが存在すると「Chromecastを検知しました」という説明が表示され、Chromecastへの接続を促してくれるのがわかりやすい。キャスト中は一時停止とチャプタスキップのほか、10秒スキップ/10秒戻し、タイムバーによる再生場所の指定も可能だ。

同一ネットワークのChromecastを自動で検出
動画の操作はスマートフォンから
dTVをスマートフォンからワイヤレス再生
動画を大画面で楽しめる

 一方、dアニメストアは10秒スキップ/10秒戻しがなく早送りなど、アプリによって細かい操作は異なるものの、見たい動画をキャストするだけ、という手軽な操作は共通だ。

dアニメストアは画面上部にChromecastアイコン

 YouTubeをChormecastで視聴する時は、動画を連続で再生できるキュー機能が楽しい。使い方は非常に簡単で、Chromecastで動画を再生中に他の動画をキューへ追加すると、再生中の動画に続いて自動的に再生される。YouTubeは再生中の動画と関連した動画を表示する機能も備えており、関連動画がキューと組み合わさると動画の視聴がついつい止まらなくなる。筆者は何気なく80年代の洋画PVを再生したところ、関連動画に懐かしの洋楽PVがわんさかと表示されてしまい、ついついキューに追加していたらあっという間に数時間が経過してしまった。

YouTubeの動画をテレビ画面にキャスト
再生中に他の動画を選択すると「キュー」が表示
選択した動画を連続で再生できる

 Chromecast built-in搭載テレビの場合、好きな時にスマートフォンから動画をキャストして楽しむことも可能。テレビを見ている時にスマートフォンからキャストすると自動的に画面が切り替わるだけでなく、電源がオフの状態からでもキャストするだけで電源がオンになり、動画を再生することができる。わざわざテレビのリモコンを手にする必要もなく、スマートフォンで完結できる手軽さは非常に便利。なお、外付け型のChromecastも、テレビがHDMI CECに対応していれば同様の機能を利用できる。

 スマートフォンの操作はネットワーク経由のため、場所に縛られず操作できるのもメリット。付属リモコンの場合は赤外線で操作するため、リモコンをテレビに向ける必要があるが、スマートフォンなら家の中のネットワークが届く限りどこからでも操作できる。寝っ転がりながら、リビングから離れたキッチンから、さらには布団の中から動画を楽しむ、なんてことも可能だ。

 スピーカーと同様、外付けのChromecastを利用すればChromecast built-inとできることは変わらないが、テレビの場合は貴重なHDMI入力を使用しないですむ、ということが地味ながらも大きなメリットだ。ゲーム機やレコーダなどHDMI接続の端末がリビングに増えている現状、機器同士の取り合いともなるHDMI端子が1系統空く。HDMI入力の割り振りに悩んでいる人には嬉しい機能だろう。かくいう筆者も自宅のHDMI4入力はゲーム機3台ですでに3つが占められており、残り1つにはHDMI切替機を利用してApple TVとChromecast、スカパー!のレコーダを装着するというやりくりをしているだけに、テレビにChromecast自体を内蔵してくれるのは非常に助かる。

AbemaTVもCastできる

操作が簡単な内蔵アプリ、より多機能なChromecast

 なお、X8300DはAndroid TVを搭載しているため、dTVやHulu、Netflix、GYAO!、TSUTAYA TVといった動画アプリがプリインストールされており、本体のみで映像配信サービスを視聴できる。プリインストールされていないアプリもGoogle Play ストアからインストールできるため、スマートフォンからキャストしなくても、本体のみでこれら動画配信サービスを視聴できる。

X8300Dにプリインストールされている動画アプリ

 しかし、実際に使用してみると、同じ動画配信サービスを見るのにも使い勝手には大きな違いがある。その1つは操作方法だ。内蔵アプリの場合、操作はリモコンでおこなうことになるが、好きな動画を探すための文字入力をリモコンでおこなうのはスマートフォンに比べて手間だ。X8300Dには音声検索機能も用意されているが、目的の動画を探すにはやはりテキストのほうが探しやすい。

X8300D内蔵のdTVアプリ。操作はすべてリモコンで行なう

 また、YouTubeアプリはChromecastと動作が異なっており、前述のキュー機能は内蔵アプリでは利用できず、動画の再生が終わってから都度動画を検索して探す必要がある。スマートフォンを一切使わずリモコンだけで簡単に操作できるメリットはあるものの、より動画サービスを使い込みたい時は、アプリからキャストのほうが便利だろう。

X8300D内蔵のYouTubeアプリ。Chromecastと違ってキュー機能が利用できない

 ちなみに、X8300DでChromecastを使ってNetflixをキャストしようとすると、なぜかX8300Dにプリインストールされているアプリが起動し、スマートフォンからの操作ではなくテレビリモコンでの操作が必要になった。X8300Dの仕様かもしれないが、スマートフォンから操作を完結したいという場合には注意が必要だ。

X8300DのでNetflixへのキャストは、うまくChromecastとして利用できなかった

映像も音楽ももっと身近になるChromecast built-in

 スマートフォンから動画や音声コンテンツを対応機器へワイヤレスで伝送する、という仕組みはChromecastだけのものではない。アップルは「Apple TV」、ドコモは「dTVターミナル」、Amazonは「Fire TV」といった製品を販売しているし、Wi-Fi Allianceが策定した「Miracast」というワイヤレス伝送規格も存在する。

 しかし、これらの製品や規格と比べてChromecastが一歩も二歩も進んでいるのは汎用性の高さ。Apple TVは単体でのコンテンツ再生はできるものの、キャストの対応機器はアップル製品が中心。Fire TVも映像、音楽配信サービスのアプリは強化されているが、スマホアプリとの連携では、まだまだChromecastのほうが充実しているといえる。また、Miracastは画面全体のキャストのみで、コンテンツ単位でのキャストはできないため、テレビやスピーカーにキャストしながらスマートフォンは別のアプリを使う、ということもできない。

 ChromecastはAndroidとiOSだけでなく、ChromeブラウザがインストールされていればPCでも利用が可能。外付け型のアダプタだけでなく、Chromecast built-inのように本体に機能を内蔵した製品も増えているのが強みだ。特にChromecast機能を内蔵していれば、取り回しのしやすいだけでなく、5,000円から10,000円程度はする外付けアダプタ(ChromecastやChromecast Audioなど)の費用も不要となる。

 いつも使い慣れているスマートフォンアプリからアイコンをタップするだけというChromecastの手軽さが、テレビやスピーカーに内蔵されるとさらに使いやすく便利になる。一度設定を済ませれば誰でも利用できるため、家電に疎い家族でも簡単に使えるようになるかもしれない。映画やドラマ、音楽をもっと楽しむための製品選びの際には、「Chromecast機能」にも注目してほしい。

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h.ear go SRS-HG1KJ-49X8300D

甲斐祐樹

Impress Watch記者から現在はフリーライターに。Watch時代にネットワーク関連を担当していたこともあり、DTCP-IP周りのネット連携や動画配信サービスなどが興味分野。ライター以外にもネット家電ベンチャー「Cerevo」スタッフとして活動中。個人ブログは「カイ士伝」)