レビュー
Google Homeスピーカーの素晴らしい音楽連携と“ねえ、グーグル”が広げる可能性
2017年10月20日 09:10
Googleのスマートスピーカー「Google Home」がいよいよ日本で発売された。音声アシスタント「Googleアシスタント」に対応したスマートスピーカーで、OK, Googleと声をかけるだけで、ユーザーが知りたいこと、やりたいことをGoogleがサポートしてくれる。Wi-Fi(無線LAN)スピーカーとして動作するため、Google Play MusicやSpotifyなどのストリーミング音楽配信との組み合わせが魅力的な製品だ。価格は14,000円。
Googleによれば、主な機能は、「知りたいことを調べる」、「タスクをこなすお手伝い」、「音楽」、「スマートデバイス操作」の4種類。米国では昨年末に発売されていたGoogle Homeだが、音声アシスタントの日本語対応やストリーミング音楽配信の普及の遅れもあり、そこか1年近く遅れての日本発売となった。
奇しくも、日本のLINEがClova WAVEを8月下旬に先行発売し、10月からは一般販売も開始。さらに、米国でヒットしているAmazonのEchoスピーカーと音声アシスタントのAlexaも'17年内に日本展開予定と、日本国内においてもスマートスピーカーが続々と登場予定だ。
GoogleもGoogle Homeだけでなく、低価格版のGoogle Home Mini(6,000円)を23日より発売。さらに米国では音にこだわった「Google Home MAXX」も発表している。さらに、ソニー、パナソニック、JBLなどもGooleアシスタント内蔵のスマートスピーカーの発売を予告しており、年末から年始にかけて一気に製品が増えていきそうだ。
10月4日のGoogleの発表会では、参加者にGoogole HomeとChromecastなどをモニター配布し、「Googleも実際に体験してほしい」とアピールした。今回は配布されたGoole Homeを用いて、音楽関連機能を中心にテストした。
小さなボディと広がる音。音声だけでなくタッチ操作も
本体は、360度に音が広がるワイヤレススピーカーという基本機能を中心に、天板に操作用のタッチパッド、下部にスピーカーを内蔵する。外形寸法は96.4×142.8mm(直径×高さ)、重量は477g。同梱品はACアダプタのみ。
本体下部のスピーカー部は、「ベース」と呼ばれるメッシュ部分を交換可能。ベースを変更して、本体下部の色を変えられるようになっており、コーラル(3,000円)/カーボン(4,500円)/カッパー(4,500円)の3色を用意している。
このベースを外すと、スピーカーが現れる。2インチドライバの左右に、2インチのデュアル パッシブ ラジエーターを配置した「ハイ エクスカーション スピーカー」とのこと。ステレオの音楽などはモノラルにミックスされたあと、このドライバユニットを介し、拡散される。
背面にはマイクミュートボタンを装備。Google Homeに反応してほしくない場合や、アラーム/タイマー以外の音をだしたくない場合は、このボタンを押すと、LEDがオレンジに点灯し、音声収集を止める。
電源はACアダプタ。バッテリは内蔵していないため、ポータブルスピーカーにはならないことは注意してほしい。
設定はアプリ「Google Home」から行なう。つまり、Android/iOSスマートフォンなどが必要だ(リンク:Google Homeアプリについて)。
Google Homeを電源に接続し、Google Homeアプリで、右上の[デバイスアイコン]をタップすると、付近のGoogle Homeを検出し、続行をタップすると、Google Homeが音声で返答する。ここで、Google Homeに[リビング]や[寝室]などの名前を付けて、無線LANの設定を行なう。あとは、現在位置情報や優先的に使用するサービスなどを画面に従って選んでいくだけで、設定は完了する。スマホやパソコンで無線LANの設定ができる人であれば、迷う部分はなさそうだ。
音楽配信サービスの設定では、SpotifyとGoogle Play Musicが表示されており、いずれかを[デフォルト]に選んでおけば、音声で指示した際に優先して利用するサービスとして扱う。設定画面にはAWAも出てくるのだが、AWAは現時点では音声操作はできないようだ。ただし、スマホからのGoogle Homeへの音声主力指示“Cast”は行なえる。Castで出力指示された音楽は、スマホを介さずに直接Google Homeがストリーミング受信し、再生する。
設定が終われば、「OK, Google」、あるいは「ねえ、グーグル」と話しかけるだけで、Googleアシスタントが起動。「今日の天気は? 」、「明日の予定は?」などと話しかければ、天気予報やGoogleカレンダーの情報を読み上げてくれる。筆者はClova WAVEなどのスマートスピーカーを数十日使った結果、「天気予報は基本的に声で聴くもの」という考えに変わって、スマホで調べる機会はめっきり減った。
気に入っているのは「ニュース」。「今日のニュースを教えて? 」と話しかけるとGoogle Homeがニュースを読み上げてくれる。Clova WAVEでは音声合成ソフトによりLINE NEWSのタイトルを読み上げるので、どうしても人工的な印象が残ってしまうのだが、Google Homeの場合、NHKラジオニュースの人の声が使われているようだ。音声に違和感がなく、ニュースらしさがあるのが良い。
音声だけでなく、天板のタッチパッドでも操作が可能。音楽や対話の開始などは音声で行なう必要があるが、音楽再生中に天板に触れると再生を停止するし、アラームの停止も天板に触れるだけ。料理の待ち時間といったキッチンタイマー利用時などには、この天板タッチが重宝する。
また、音楽再生や音声対話中に、天板を右回りに円を描くようになぞるとボリュームアップに、左回りでボリュームダウンとなる。これも便利だ。
天板がタッチ操作対応のため、ペットを飼っている家庭では意図せずに触れて誤動作する心配もある。ただし、音楽再生中に猫の手で触れてみたところ、特に反応しなかったので、それほど気にしなくても良いのかもしれない。
なお、Google Homeは、Wi-Fi接続の音楽スピーカーであるが、「ポータブルスピーカーではない」。バッテリを内蔵していないので電源ケーブル接続が必要なため、屋外や持ち運んでの利用は難しい。室内で使用する場所や部屋を決めて使うスピーカーだ。
1~2万円のBluetoothスピーカーは大抵ポータブル対応なので、Bluetoothスピーカーの買い替えとして、Google Homeを検討している人は注意してほしい。LINEのスマートスピーカー「Clova WAVE」はバッテリ駆動対応なので、この点も選択時のポイントになりそうだ。ちなみにClova WAVEとサイズを比較すると、Google Homeが二回りほど小さい印象だ。
シンプルな音声操作と使いやすいアプリ連携。音量管理が不思議
今回は主にSpotifyをデフォルトの音楽サービスとして設定したが、再生方法もシンプル。「OK,Google. Spotifyで音楽をかけて」といえば音楽再生を開始してくれる。単に「音楽をかけて」でもきちんと反応してくれた。
基本的に「プレイリスト」再生を行ない、ある程度ユーザーの嗜好性を反映した選曲がされているようだが、なにが再生されるのかはよくわからない。ただ、「この曲なに? 」「このプレイリストなに?」と問いかければ、再生中の楽曲やプレイリストを教えてくれる。
SpotifyのPremiumサービス(月額980円)に契約していれば、任意の曲やアーティスト、ジャンルを指定した再生も可能だ。「ローリングストーンズの曲を再生」と話しかければ、ストーンズの曲を再生してくれる。
Spotifyの場合は無料プランもあるが、この場合再生曲数や選曲方法に制限がある。具体的にはアーティストや曲名を指定した再生ができない。Spotifyに限らず、自由に曲を選んで、再生制限が少ない有料プランで利用したほうがいいかもしれない。
「次の曲を再生」での曲のスキップやバック、「ボリュームを上げて」といった音量操作にも対応する。
気になったのはボリューム調整について。操作方法はわかりやすく、12ステップの音量調整ができるのだが、特に小音量時の一刻みごとの音量変化が大きいのだ。学習机の上において、BGM的に音楽を再生するのであれば、2~3でも大きいぐらい。特に周囲が寝静まった深夜にはかなり大きく感じられる。低域が強めで、最小の1でもそこそこ迫力があるサウンドだ。
部屋の大きな米国を基準にしているのかな? と思うほど。最大音量も本体サイズの割にはかなり出るのだが、7割を超えるとさほど変わらず、むしろ共振が気になってくる。使える音量の幅が結構小さく感じる。地味ながら、少々不満に感じたポイントだ。
なお、音楽再生中でも「OK, Google」と話しかければ、すぐにミュートして、音声操作の待機状態になってくれる。距離や再生音量によって反応の差はあるものの、かなり大きな音量でも、こちらの命令をきちんと聞き出してくれるので、安心して利用できた。よほどの大音量再生時でなければ、5~6m離れていても、きちんと認識してくる。
音質については、一言でいうと低域が強い。音はしっかり広がり、やや低音が強めだけれどバランスも悪くないように感じるのだが、聞きなれた曲を聴くと、高域が細く、ボーカルにあと一息伸びが欲しいとか、少々不満が出てくる。ただ、迫力を強く出すようなチューニングなので、バスドラやベースが強めの楽曲などがハマる曲もある。ふと流れてきた「スマッシング・パンプキンズ/1979」のベースラインは、より太く重く感じられ、聞きなれた曲の印象とはやや違うものの、「これはこれでイイな」と感じられた。
ステレオで本格的に音楽を楽しみたいという人には、あまりお勧めできないものの、BGM的に音楽を流す、1.5万円のワイヤレススピーカーとしては十分な音質だと思う。
とても優れているのがスマートフォンやPCとの連携だ。Google Homeの音声操作で呼び出したプレイリストや楽曲を、スマホやPCアプリから確認でき、さらに選曲操作が行なえる。音楽再生開始だけを音声操作で、あとはアプリからコントロールできる。
当たり前に思えるかもしれないが、LINEのClova WAVEではこれができなかった。音楽を積極的に選択したい場合は、Google HomeとSpotifyやGoogle Play MusicなどCast対応サービスの組み合わせのほうがはるかに優れている。
Google Homeは、ChromecastとSpotify Connect対応のWi-Fiスピーカーとして動作するので、Cast(Chromecast)対応の音楽や映像配信サービスとの連携がとてもよくできている。すでに数年間の市場の蓄積があり、そこにGoogleアシスタントによる音声操作機能が加わってたようなものだ。一般的なワイヤレススピーカーの利便性の上に、音声操作もできるという形なので、文句無しに使いやすい。
音声操作に対応していない「AWA」などのサービスも、アプリからCastボタンでGoogle Homeを選べば、普通にWi-Fiスピーカーとして動作する。Sound CloudからCast機能を使って音楽やPodcastを再生するのもなかなか良い。音声対話のためのスピーカーらしく、人の声が聴きやすいので、ラジオやPodcastとGoogle Homeの愛称は良さそうだ。
Cast対応(Chromecast built-in)のWi-Fiスピーカーは、ソニー「h.ear go(SRS-HG))」など相当数が発売されているが、1.4万円という価格はかなり魅力的だ。
また、音質にこだわるのであれば、ソニーやパナソニック、JBLなどが発売を予告している製品を待つのもいいだろう。加えて、後述するようにGoogle Home経由でほかのスピーカーに音楽をCastできる。例えばGoogleアシスタント連携のソニー サウンドバー「HT-ST5000」などを組み合わせれば、本格的に音楽を聴きたい時にそちらを出力先に選べばいい。
なお、Google Home自体の対応コーデックは、HE-AAC、LC-AAC+、MP3、Vorbis、WAV、FLACで、ハイレゾ音源のストリーミングにも対応するという。ただし、10月20日現在日本国内でハイレゾ音源に対応したストリーミング音楽配信サービスは存在しない。
今後は、auのうたパスやビデオパスに加え、radikoも年内にGoogle Home対応予定。radikoに対応すれば、ラジオ好きにとってもかなり魅力的なスピーカーになりそうだ。
なお、Google Homeは、本体で音楽やニュースを受信したり、[キャスト]を受けて再生する“Wi-Fi”スピーカーだが、Bluetoothも搭載している。「OK, Google Bluetoothをペアリング」と話しかけるとペアリング待機モードになり、スマホなどからGoogle Homeを選択すればよい。Apple MusicなどCast非対応の音楽配信サービスやスマホのメモリ内の楽曲なども出力できる。
意外に便利なChromecast連携
また、音楽出力だけでなく、メディアプレーヤーの「Chromecast」や「Android TV」との連携も可能。この連携動作も間違いなくGoogle Homeの大きな魅力だ。照明やロボット掃除機などの対応も予定しているが、今回はChromecastをテレビ(東芝REGZA 50Z10X)に接続したテレビ連携動作を紹介する。
Chromecastをテレビに接続し、Google Homeアプリの[デバイス]にChromecastを登録する。この登録名称が、Google Homeでの呼び名になるので、今回は[テレビ]という名前を使った。これだけで、対応の映像配信サービスなどをGoogle Homeから音声操作可能になる。現時点ではNetflixとYouTubeが対応サービスとなっているが、今後ビデオパスなども追加される予定だ。
あとは、「OK, Google Netflixでナルコスを再生」と話しかければ、ナルコスが再生された。シーズン3の1話目の途中まで視聴していたためか、その続きから再生されたようだ。再生開始だけでなく、[一時停止]や[再生再開]、[30秒飛ばして]、「前の動画」といった指示にも対応する。
また、Netflixのアプリを開けば、視聴中の番組の再生時間がタイムシークバーで表示されているので、これを見ながらスキップしたり、番組を再生しながら、次に見たい番組をスマホやタブレットで探す、といったことも可能。音声での指示と、アプリからの操作や検索の連携がよく出来ていて使いやすい。
ただ、番組によっては認識してくれないこともある。配信中なのを確認したうえで、「Netflixでキングダムを再生」と指示したが、「キングダム」は見つからないという回答が返ってくることもあった。日本のコンテンツのほうが見つからない場合が多い印象を受けた。
加えて、YouTubeにも対応。「YouTubeでImpress Watchの動画を再生」とすれば、Impress Watch関連チャンネルの動画が再生できる。なお、Google Home単体で、Chromecastを接続していない場合、映像出力機器がないためにYouTube再生はできない。また、YouTubeの音だけをGoogle Homeで再生といったことも非対応だ。
予想外に便利だったのが、テレビの電源ON/OFF。ChromecastはHDMI CECに対応しており、テレビの電源と連動動作が可能。今回はChromecastの名前を[テレビ]にしたので、「OK, Google テレビをつけて」といえば、テレビが起動し、Chromecastのトップ画面が表示される。そして、「テレビを消して」で、テレビの電源がOFFになる。特に電源OFFはとても便利だ。
Clova WAVEも、赤外線通信によるテレビの電源ON/OFFやボリューム操作、チャンネル切り替えに対応していた。Google Homeでは、ボリュームやチャンネルは変えられないものの、Wi-Fiとなり、設置場所にも依存しない(赤外線の場合は、テレビの赤外線受光部に近い場所に設置する必要がある)ため、実用性と安定性に優れている印象だ。
Google HomeとChromecastの連携がとても実用的で、NetflixやYouTube以外の多くのサービスにも対応をお願いしたい。Chromecastもいいのだが、個人的には起動後に、アプリだけでなくテレビリモコンでも操作できるAndroid TVでも利用したい。もっとも、ソニーもテレビへのGoogleアシスタント対応を予告しているので、今後はテレビでも音声操作対応が進むのかもしれない。
また、Philipsの「Hue」などのスマートデバイス連携も可能。照明の明るさを変えたり、消灯したりといった操作が音声で行なえる。さらに11月にはロボット掃除機の「ルンバ」などにも対応する予定で、今後の家電連携の幅はさらに広がっていきそうだ。
充実の機能と安定性。声で操作するという体験を
ChromecastやGoogleアシスタントなどの技術が、先行して市場投入されていたこともあるが、それらの技術を集約したGoogle Homeは、第1弾ながらとても完成度の高いスマートスピーカーになっている。1.4万円という価格も、市場のBluetoothスピーカーやWi-Fiスピーカーより安く感じるし、音声対話の完成度も高い。
先日紹介したClova WAVEは、対話時に“イラッ”とすることもあったが、Google Homeはできないことは「できません」とシンプルに回答してくれるので、その点不満はない。ただ、Clova WAVEを使った後にGoogle Homeを使うと、なにか物足りない印象も受ける。“クセ”の少ない素直な回答を望んでいるのだが、少しだけClova WAVEが懐かしくなるのは不思議だ……
とはいえ、音声操作とアプリ操作の統合という点では、Clova WAVEよりGoogle Homeのほうが明らかに優秀だ。ChromecastやCast対応アプリにより、数年にわたる下地があるので、勝手知ったる操作に音声操作が追加されているため、戸惑いがない。音声で操作できることはまさに付加価値、と実感できる。
スマートスピーカーの話をすると「日本人は音声対話を望まない」という声がよく聞かれる。だが、「単に便利さが伝わっていないだけ」だと筆者は思っている。音楽スピーカーだけでも、声で操作できることで使いやすさを実感するシーンは多く、例えば、再生を止める為だけにスマホを探さなくていい。また、天気予報でもニュースでも、キッチンタイマーでも、“声だけでできる”ことを自分が経験として理解すると、「こんなことはできるだろうか? 」と積極的に話しかけるようになるし、Google Homeはかなりの程度その期待に応えてくれる。
筆者はまだ、乗換案内系のサービスを思ったように使いこなせていなかったり、特に日本語と英語が混じった文章では、誤認識もそこそこにあるとは思う。それでも日々着々と「声でできることが増えている」と実感する。Google Homeも日々進化しているが、人間側も使い方を覚えて、時代に合わせた進化を続けているような印象もある。
対話のレスポンスも良く、セットアップさえ終えてしまえば、インターネットやハードウェアの技術に明るくない人でもいろいろ活用できるだろう。
Google Homeとその基盤技術のGoogleアシスタントには、さらなる発展が見込めそうだ。今後各社が投入予定のGoogleアシスタント内蔵スマートスピーカーにも期待したい。個人的には、ソニーのグラスサウンドスピーカー「LSPX-S1」がスマートに進化してくれると魅力的だな、と思っている。