プレイバック2015

遂にウッドコーンまで!? 自作スピーカーでオーディオ環境一新 by 小寺信良

 “レビューしたものを自分でも買ってしまう”という、いわゆる“自爆”現象に毎年翻弄されているわけだが、今年は自爆がほとんどなかった。製品的には例年と違わず優れたものが多かったのだが、たまたま「持ってないタイプのもの」が少なかった。

7月にElectric Zooma!で作ったバックロードホーンスピーカー。これはこれで良いのだが、付録ではなく自分でエンクロージャを作りたい欲求がフツフツと……

 今年の記事の中で心残りだったのが、夏休み恒例の自作シリーズである。今年も月刊Stereo紙のユニットと別冊のエンクロージャを作ったわけだが、例年ならばそのほかに自分で何か作っていた。あいにく今年はそこまで時間が取れず、若干不完全燃焼といった格好だった。

 そこで翌月、時間を見つけてトールボーイ型のエンクロージャを自作してみた。方式はバックロードホーン。このために新たに電鋸も購入。次々に大工道具が増えていく。設計は月刊Stereo紙掲載のものを参考にしたが、同じ厚みのMDFが見つけられなかったので、多少寸法を調整した。

いわゆる「サブロク板」(1,800×900mm)サイズのMDFを購入
電鋸でカットしていく
切り出した部材

 MDFはいわゆる圧縮合板で、反りや歪みが少ないため加工しやすいのだが、大きな1枚板では店頭での保管状況により、自重で微妙に反っていたりする。一応平たいものを選んだつもりだったが、トールボーイサイズの長いままで使うと、やはり微妙な反りがあり、なかなかピタリとはいかない。微妙に合わない部分はカンナで削ったりと、結構時間がかかってしまった。

木工用ボンドで接着していく
微妙に合わないところはミニカンナで調整
3日ほどかかって完成

 Stereo誌別冊のエンクロージャは小型軽量ゆえに、ある程度の音量を出すとスピーカーの振動を吸収しきれず、ビビりが出る周波数があった。だが自作したものは片側だけで重量が8kgもある。10cm程度のドライバが暴れても、全くビクともせず、綺麗な特性となった。

 だが所詮は10cm。いくらバックロードで頑張っても、低域の伸びには限界がある。そこで新たにサブウーファを追加してみた。かつてホームシアターブームの時は、単品売りのサブウーファなどいくらでもあったように思ったが、今はほとんど製品がない。少ない選択肢の中ではあるが、比較的リーズナブルで評判も良かったソニーの「SA-CS9」を購入した。

低音が欲しくてサブウーファまで購入

 カットオフ周波数を100Hz前後にして、ほんの少し加えると、小音量でも低域まできちんとバランスが取れるニアフィールドシステムとなった。

 そうなるとまた欲が出るもので、10cmドライバで以前から気になっていた、ウッドコーンユニットを試してみたくなった。そこでPARC Audioの「DCU-F121W」というフルレンジを購入、今はそれに付け替えている。初めてウッドコーンの音をじっくり聴いたが、中高域の素直さと抜けの良さは、独特のものがある。そもそもは付録ユニットをうまく鳴らすために作り始めたのに、いつの間にかユニットまで変わっているという……。工具やら材料やら、新規購入のユニットやDAコンバータなど諸々含めると、このプロジェクトに掛けた金額はおよそ8万円。これを沼と言わずになんと言おう。

最終的にはユニットも変えちゃうほど泥沼化

 そんなわけで、これまで仕事部屋のオーディオはソニーのワイヤレススピーカー「SRS-X9」オンリーのシンプルな環境だったのだが、今年はガラッと変えて、自作中心のセットに戻った。他の人が聴いたらそれほど大したことない音かもしれないが、自分的には大変満足している。

小寺 信良

テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「金曜ランチボックス」(http://yakan-hiko.com/kodera.html)も好評配信中。