プレイバック2016

スマホを拡張し、超えるもの。OSMO MobileとVRにみる可能性 by 西田宗千佳

 今年なにが面白かった? と聞かれると、やっぱりどうしても「スマホ以外」と答えたくなってしまう。正確には、「スマホはあるのが当然だけれど、その外でスマホだけじゃできないことをするもの」が面白かった。数年前から傾向は見えていたが、特に今年はそんな感じが強かった。

圧倒的に面白かった「DJI OSMO Mobile」

 今年買ったもので一番面白かったものはなにか、と問われると、「PlayStation VRか、DJI OSMO Mobileか」で迷う。まあ、PS VRは来年以降もっと面白くなると期待したいので、あえてDJI OSMO Mobileにしておきたい。

DJI OSMO Mobile。スマートフォンの撮影能力を向上させる「スタビライザー」(ジンバル)だ

 小寺さんのレビュー記事もあるので詳細は省くが、要はスマートフォンを搭載して撮影を安定させるスタビライザーだ。でも、安定させることそのものは、そんなに重要ではない。スマートフォンのアプリと連携し、「人を追いかけて撮影する」「安定した高解像度のパノラマ写真を撮る」といったことが簡単にできる、という点が優れている。

 撮影機能としてはスマホのものなのに、そこに「安定」という価値を追加することで、スマホだけではできないことを得られる。

DJI OSMO Mobileで撮影したパノラマ写真のひとつ。解像度が高く上下にも幅がそれなりにあるものを、ワンタッチで撮れるのは魅力

 今重要になってきている製品は、そういう付加価値を提供する製品ではないか、と思う。

 スマホのカメラはどんどん進化している。iPhone 7 PlusやHUAWEI P9クラスになると、大抵のシーンでは問題がなくなってきている。実際、今年10月以降の取材では、スマホだけで済ますシーンも増えた。

 その中で、「スマホで出来ないこと」をデジカメ市場は考えてきたわけだが、単純な性能軸で、どこまで戦えるだろうか?

 戦い方の軸を変える、という意味では、スタビライザーというのは面白い方向性だ。この方向性にそこまで大きな市場性はないだろうが、「軸を変える時はこのくらいの発想がいる」という実例として考えると、新しい「対スマホ」(ここでの対は、「つい」と読んでもいい)製品のヒントになるのではないか、と思った。

全世界をディスプレイにするVRの魅力

 そしてなにより、取材も多く、個人的にも面白いと思ったのは、やはりPS VRに代表されるVRである。

PlayStation VR。巷ではまだ入手難が続く。来年こそ潤沢な供給を期待したい

 もちろん、まだまだ始まったばかりの市場で、キモズムのだいぶこっち側にいる。画質ももうふたがんばり必要だと思うし、付けたり外したりするのも面倒だ。なにより、家の中でかさばる。

 でも、VRは「ディスプレイのあり方を変える」革命だ。ディスプレイが目の前の四角い枠の向こうにあるのではなく、視界全体がディスプレイになってしまうと、ここまで色々なことができるのか、という新鮮な体験ができる。

 Oculusではぜひ「Mikulus」を体験して欲しいし、Oculus Touchを手に入れて、立体造形ソフト「Medium」も体験して欲しい。

GOROman氏が開発中のVRデスクトップ「Mikulus」

 PS VRでは、「Rez Infinite」は必須だと思うし、スターウォーズファンなら「Star Wars バトルフロント ローグ・ワン: Xウイング VRミッション」は100点中10億点を与えてもいい、と思うだろう。

Rez Infinite トレイラー
Star Wars バトルフロント ローグ・ワン: Xウイング VRミッション トレイラー

 VR関連は、来年さらに大きな動きが考えられる。マイクロソフトが2017年春には、Windows 10をアップデートして「Windows Holographic」を標準搭載するし、Android向けの「Daydream」規格に対応する製品も増えるだろう。

 その中で、コンピューティングの未来的に、ビジュアルの未来的にどこまで面白いものが出るのか。ぜひそこに注目していきたいと思っている。

Amazonで購入
DJI OSMO Mobile

西田 宗千佳

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主に、取材記事と個人向け解説記事を担当。朝日新聞、読売新聞、日本経済新聞、週刊朝日、AERA、週刊東洋経済、GetNavi、デジモノステーションなどに寄稿する他、テレビ番組・雑誌などの監修も手がける。
 近著に、「顧客を売り場へ直送する」「漂流するソニーのDNAプレイステーションで世界と戦った男たち」(講談社)、「電子書籍革命の真実未来の本 本のミライ」(エンターブレイン)、「ソニーとアップル」(朝日新聞出版)、「スマートテレビ」(KADOKAWA)などがある。
 メールマガジン「小寺・西田の『金曜ランチビュッフェ』」を小寺信良氏と共同で配信中。 Twitterは@mnishi41