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大河原克行のデジタル家電 -最前線-
パナソニックの年末商戦戦略とは
-「ブルーレイシネマ」で映画視聴を軸に提案




年末商戦施策の「ブルーレイシネマキャンペーン」

 10月1日のパナソニックへの社名変更を控え、VIERA、DIGAなどの主要AV商品による年末商戦向け施策が具体化してきた。パナソニックが打ち出したこの年末商戦キーワードは、「ブルーレイシネマはじめましょう」。

 8月までの北京オリンピックキャンペーンから一新させ、年末商戦向けの訴求ポイントとして、映画コンテンツの視聴におけるパナソニックの優位性をアピールするというものだ。同社では、過去にも、「映画を見るならプラズマ」として、映画コンテンツの視聴においては、パナソニックの薄型テレビが優位であることを訴求してきた経緯がある。

 だが、今回の「ブルーレイシネマキャンペーン」は、それとは違う意味合いが込められている。ひとつは、プラズマだけでなく、液晶テレビも含めて映画コンテンツ視聴の優位性を訴求しようということだ。過去の訴求では、プラズマテレビは、黒の表現力に優れていることで、映画コンテンツの表現には最適としてきた。だが、今年の訴求では、液晶テレビも含めて、映画画質を再現できることを訴えている。

 「パナソニックは、約15年前から、ハリウッドにPanasonic Hollywood Laboratory(PHL)を設立し、ハリウッドの映画スタジオと一緒なって、高画質技術に関する研究を行なってきた。ここで培った高画質技術をVIERAとブルーレイDIGAに惜しみなく注ぎ込んだ。これが、パナソニックのAVC商品の差別化点になる」(パナソニックマーケティング本部・西口史郎本部長)とする。特にこの技術は、Blu-ray Discレコーダにおいて明確な差別化ポイントとする考えだ。

パナソニックマーケティング本部本部長 西口史郎氏 ハリウッドにあるPanasonic Hollywood Laboratory(PHL)

 昨年のブルーレイDIGAでは、ハリウッドクリアカラーとして、色信号を忠実に再生し、ブルーレイの映画コンテンツが本来持つ色を再現した。だが、今年のハリウッドカラーリマスターでは、圧縮された色を高色域化し、HDTVにおいて120%の色域を達成するシネマライブ画質を実現した。

 「パナソニックだからできるハリウッド仕込みの高画質を実現した」というのが、この訴求メッセージとなる。



■ 「新・シネマ三種の神器」によるリンク提案

「新・シネマ三種の神器」によるリンク提案

 そして、もうひとつの違いは、リンク機能を前提とした訴求である。パナソニックでは、VIERA、DIGAに加えて、ラックシアターを含めた3製品を、「新・シネマ三種の神器」と位置づけ、映画視聴に最適化した組み合わせとしてのセット提案を行なう。

 「VIERAの映像だけでなく、ブルーレイDIGAの画質、ラックシアターによる音質との組み合わせによって、シネマの楽しさを味わっていただきたい」と、西口本部長は語る。

 イメージキャラクターには、小雪さんと綾瀬はるかさんを起用。小雪さんは、ワイヤーアクションにまで挑み、映画さながらの雰囲気を醸し出したCMを制作して、VIERAにおける映画コンテンツの視聴のメリットを提案している。

□関連記事
【9月2日】松下、小雪と綾瀬はるか出演「ブルーレイシネマ」新CM
-VIERA/DIGA/ラックシアター「新・シネマ三種の神器」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20080902/pana.htm



■ 大画面に加えて、小型モデルにも力注ぐ

 年末商戦におけるシェア目標も意欲的だ。37インチ以上の薄型テレビでは、30%のシェア獲得を目標とし、この分野でのトップシェアを目指す。さらに、「プラズマが優位性を発揮できる42インチ以上の領域では、40%以上のシェアを目指したい」(西口本部長)とする。

 加えて、32インチ以下の領域においても、「最低でも20%のシェアを維持。できれば25%を視野に入れたい。特に、20インチ以下の領域でも存在感を発揮したい」と、従来の大画面中心の戦略から、小型テレビ領域も視野に入れた施策を明確化してきた。

 一方、Blu-ray Discレコーダでも、「ダントツのナンバーワンを目指す」として、「8月末からの新製品投入以降、40%台のシェアを維持している。年末商戦では、40~45%のシェアを狙いたい」と意欲を見せる。

 現在、同社のレコーダの出荷構成比のうち、約7割がBlu-ray Discレコーダになっており、「今後、こうした目標シェア、製品構成比をベースとした生産体制を敷くことで、安定的な供給を実現していく」と語る。

 春商戦から夏商戦にかけては、供給を上回る需要に品薄状態が続いただけに、年末商戦での安定供給は、トップシェア維持に向けた大きな課題だといえよう。


■ デジタル一眼でどこまで市場を開拓できるか

LUMIX DMC-G1発表会の模様。樋口可南子さんをプロモーションに起用する

 そして、パナソニックが今年の商戦で新たに挑むのが、デジタル一眼カメラへの取り組みだ。LUMIXシリーズとして新たに投入した、LUMIX DMC-G1によって、本格的にこの市場に参入する。

 G1シリーズは、マイクロフォーサーズ規格準拠した初めての製品であり、コンフォートブラック、コンフォートレッド、コンフォートブルーの3色をラインナップするという異例のカラー展開も注目を集める。「既存のデジタル一眼レフカメラと真っ向から勝負するのではなく、新たな市場を創造するカメラと位置づけている」と西口本部長は語る。

 かつて、パナソニックが、コンパクトデジタルカメラ市場に参入した際には、デジカメはマニア層のもの、あるあいは男性層のものだった。そこに後発だった同社が、浜崎あゆみさんをキャラクターに採用し、20~30代の女性層にフォーカスした訴求を開始。それが功を奏して、新たな需要層を開拓し、同時にシェアを徐々に引き上げてきた。

 さらに、きみまろズームが記憶に新しい高年齢層向け製品ラインアップを追加投入して、シェアを拡大。2007年には月間シェアでトップシェアを獲得するポジションにまで上り詰め、今年に入っても、2月に発売したDMC-FX35では、25週間連続トップシェアを達成した。


DMC-FX35、25週間連続トップシェアを達成

 牛丸俊三副社長は、「当時は、なぜ、パナソニックは、いま頃デジカメ市場に参入するのか、あるいは参入しても勝ち目はあるのかと言われた。だが、結果として、新たな市場を開拓しながら、コンパクトデジカメ市場でトップシェアを獲得した。今回のデジタル一眼カメラでは、これまでの一眼レフカメラの常識であった、重い、大きい、難しいというイメーシを打破し、女性層に使っていただける製品を目指した。まさに新市場を創出する製品だ」とする。

 コンパクトデジカメ市場への参入時と同じように、デジタル一眼市場においても、新市場開拓によって、シェア獲得を目論む考えだ。西口本部長は、「デジタル一眼カメラ市場において、10%のシェア獲得を目標にしている。できれば年内に達成したい」と、意欲を見せる。



■ 変化するパナソニック

 そして、10月1日のパナソニック株式会社への社名変更は、従来からのパナソニックブランドの商品についても、変化をもたらすことになる。同社では、年末に向けて、過去最高となる10万本のテレビCMを放映する予定で、これにより、パナソニックへの社名変更、ブランド統一による新たなイメージづくりに乗り出す。

 西口本部長は、「社名変更をきっかけに、パナニック商品においても、変化のきっかけを作りたい。社内では、Change Panasonicをキーワードに、新たな提案を積極化してほしいということを言ってきた。1月の社名変更の発表から半年以上を経過し、そうした意識が浸透してきた。いよいよこれらの提案が、年末商戦において実践フェーズに入ることになる」とする。

 新生パナソニックのスタートが、商品、マーケティング、サービスにどんな形で、影響するのか。その片鱗が、この年末商戦で見えることになるだろう。


□松下電器産業のホームページ
http://www.panasonic.co.jp/index3.html
□VIERAのホームページ
http://panasonic.jp/viera/index2.html
□DIGAのホームページ
http://diga.jp/
□関連記事
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http://av.watch.impress.co.jp/docs/20080826/pana4.htm
【8月25日】松下、2層BDに24時間録画可能な新「ブルーレイDIGA」
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http://av.watch.impress.co.jp/docs/20080825/pana1.htm
【8月25日】松下、VHS内蔵の3 in 1 Blu-rayレコーダ
-2層BD-R/REに24時間録画。VHS→BDダビングも
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20080825/pana2.htm

(2008年9月25日)


= 大河原克行 =
 (おおかわら かつゆき) 
'65年、東京都出身。IT業界の専門紙である「週刊BCN(ビジネスコンピュータニュース)」の編集長を勤め、2001年10月からフリーランスジャーナリストとして独立。BCN記者、編集長時代を通じて、15年以上に渡り、IT産業を中心に幅広く取材、執筆活動を続ける。

現在、ビジネス誌、パソコン誌、ウェブ媒体などで活躍中。PC Watchの「パソコン業界東奔西走」をはじめ、Enterprise Watch、ケータイWatch(以上、インプレス)、nikkeibp.jp(日経BP社)、PCfan(毎日コミュニケーションズ)、月刊宝島(宝島社)、月刊アスキー(アスキー)などで定期的に記事を執筆。著書に、「ソニースピリットはよみがえるか」(日経BP社)、「松下電器 変革への挑戦」(宝島社)、「パソコンウォーズ最前線」(オーム社)など。

[Reported by 大河原克行]


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