日立、TVを含むコンシューマ事業の分社など構造改革

-“営業主導型”事業運営に。4月に社長交代


左から庄山会長、河村新会長兼社長、古川社長
3月16日発表

 株式会社日立製作所は16日、業績の早期回復と収益性の改善、今後の成長に向け、薄型テレビなどを手掛けるコンシューマ事業グループと、オートモーティブシステムグループを分社する事業構造改革を決定した。

 また、4月1日付で古川一夫現社長が副会長に、庄山悦彦現会長が取締役会議長に退き、新社長に現日立プラントテクノロジー会長で日立マクセル会長の川村隆氏が就任する人事も発表されている。

 今回の構造改革は同社が策定した経営体質改善策「基盤強化08-09」に基づくもの。具体的には2008年度に対し2009年度において、人件費などの固定費を約2,000億円、資材費などを約3,000億円削減する。加えて、設備投資の原則全面凍結なども含まれている。

 こうした方針に基づき、他社との連携加速を視野に入れて事業競争力の強化推進を目的とし、カーオーディオ/ナビなどを手掛ける「オートモティブシステム」と、薄型テレビなどの「コンシューマ事業グループ」を分社。抜本的な事業構造改革を強力に推進し、収益改善を図るとする。


■ コンシューマ事業は分社とともにマーケティング強化へ

 コンシューマ事業については、日立プラズマディスプレイで生産していたガラスパネル部材を、新モデルからパナソニックからの調達に切り替えるほか、人員の最適化を進めるなどの改革を推進している。これらの改革が進展しており、「ローリスク経営体質への転換にめどがついた」、としており、2009年7月をめどに新設分割により分社する。

 分社を機に注力事業への経営資源集中や、パートナーとの戦略的協創の深化などを軸にす抜本的経営施策を展開し、黒字経営体質への早期転換を目指す。新会社の社名は未定で、代表者には日立製作所 コンシューマ事業グループ 副グループ長の渡邊修徳氏が就任する。事業規模は約1,600億円(2010年3月期見込み)、従業員数は約750名。

 新会社は、国内の薄型テレビと業務用液晶プロジェクターの開発、製造、販売を行なうとともに、光ディスクドライブや携帯電話などの製品について、パートナーとの協業を最大限に活用した事業を展開するという。また、マーケティング力の強化と事業運営の効率化に向け、日立コンシューマ・マーケティング(HCM)との連携を強化。マーケットニーズに直面する営業主導型事業運営体制への転換を図るべく、デジタルメディア製品と白物家電に関する商品別戦略立案機能などをHCMに移管し、マーケットニーズにあった商品の供給をより機動的に行なうという。

 また、日立リビングサプライと連携し、日立のエンジニアリング力を生かした日立ブランド製品の外部調達機能を強化する。日立グループでは、白物家電事業を含めたコンシューマ事業全体を視野に入れた事業効率の向上に向けた組織再編成などを進めていくとしている。


 ■ 自動車関連事業も分社化

 オートモティブシステム事業については、環境の激変に伴う大幅な作業減に対応した、人員適正化施策や生産拠点の整理、統合などを推進するとともに、7月1日をもって分社化する。社名は未定。事業規模は約2,800億円(2010年3月期見込み)、従業員数は7,600名。

 新会社により、収益責任体制の明確化や、意思決定の迅速化、経営効率化、自動車技術とエレクトロニクス技術の融合を積極的に推進するという。特にハイブリッド自動車向けのリチウムイオン電池や、小型コンバータ、小型モーターなどを強化していく。国内外の設計、製造拠点の再編にも取り組んでいく。


■ 分社化により「日立を社会インフラにシフト」

川村隆 新社長兼会長

 庄山悦彦会長は、「2009年は戦後初めて、日、米、欧のすべてがマイナス成長になると予測している。日立製作所も2008年度は大きな損失を見込んでいる。改善のための様々な方策を実施しているが、2009年度も非常に厳しく、予断を許さない状況が続いている」と現状について説明。一方で、「古川社長には、液晶やHDD事業などの課題事業について、収益への道筋をつくっていただいた。また、環境事業の成長基盤の確立や、中国など新興市場の取り組みなどが行なわれた。これからは、副会長として会長、社長をサポートするとともに財界活動にも取り組んでほしい」と古川現社長の功績を語り、今回の社長交代については、「グループ求心力を高め、次の100年の成長のためには、日立だけでなく、グループ各社の経営も行なってきた川村次期社長にやってもらうのがベストだ。必ずや再生を成し遂げてくれると期待している」とした。

 古川一夫現社長は、「“協創と収益の経営”を掲げ、環境経営の成長基盤確立に取り組んだ。また、液晶における協業や、HDDの収益改善、テレビ事業の構造改革をすすめるなどで、課題事業の解決につとめてきた」と、これまでの取り組みを説明。今回のオートモティブシステム事業、コンシューマ事業の分社化もそれらの構造改革の一環とし、「日立の強みを生かして、経営リソースの戦略的再配分を行ない社会イノベーション事業を中心とした日立のグローバルな成長を実現しようとしている」と訴えた。

 社長退任の理由については、「2006年の社長就任以来、2009度の営業利益率5%を掲げてやってきたが、今の経営環境下では達成は極めて厳しい状況だ。こうした状況を踏まえて日立が新たな目標にむかうためには、人心を一新し、新体制で臨むべきと考えた」と説明した。

 4月に新社長/会長に就任する現日立プラントテクノロジー会長で、日立マクセル会長の川村隆氏は、電力事業を中心に取り組んできた略歴を簡単に紹介。「日立には100年の歴史で蓄えた、厚い信頼、卓越した技術力、価値創造力がある。日立の再生は、私ひとりでなしうるものではないが、日立の財産を何倍にも活用することで可能となる。強力なグループの潜在力を120%発揮するのが私の使命だ。庄山会長が“ベテラン”というように若くはないですが、気持ちは若々しく、慎重なる楽観主義者です。元気を出してやっていきます」と意気込みを語った。

 コンシューマ、オートモティブ事業の分社化について古川社長は、「迅速な意思決定」、「能動的な事業運営」、「他社との協業の可能性」などの様々な運営面のメリットがあると言及。また、河村新社長は、両事業の分社化について、「(日立)製作所本体を社会インフラ、社会イノベーションに少しシフトしていく、集中していくという方向性に基づいている。急いでやっていかなければならない」と述べ、日立製作所として社会インフラ事業を中核に位置づける姿勢を示した。

 

庄山悦彦会長古川一夫社長


(2009年 3月 16日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]