義務化直前、シャープの薄型TVリサイクル拠点を訪ねる

-三重県伊賀市の関西リサイクルシステムズ第2工場


関西リサイクルシステムズ第2工場

3月18日発表


 シャープは、4月1日から薄型テレビのリサイクルが義務化されるのに伴い、三重県伊賀市の関西リサイクルシステムズ第2工場内に、薄型テレビの専用リサイクルラインを設置。義務化開始を前に、報道関係者にその様子を公開した。

 関西リサイクルシステムズは、1999年12月に設立。シャープが43.3%、三菱マテリアルが40.0%、三洋電機が3.3%、ソニーが3.3%、日立アプライアンスが3.3%、富士通ゼネラルが3.3%、三菱電機が3.3%を出資。エアコン、テレビ、冷蔵庫・冷凍庫、洗濯機の家電4品目のリサイクル拠点として、2001年から稼働している。

 対象地域は大阪、京都、和歌山、香川、徳島の2府3県で、2007年度実績で84万6,000台を処理。2008年3月には、累計500万台のリサイクル処理を達成している。

 大阪府枚方の第1工場に続いて、今後のテレビの処理台数増加に着目し、2006年12月には、三重県伊賀市にテレビ専用のリサイクル工場として、第2工場を建設。回収が義務化されているブラウン管テレビのリサイクルを行なってきた。

 今年4月から、新たに薄型テレビが回収の対象となることで、新たに薄型テレビのリサイクルラインを第2工場に設置。液晶テレビとプラズマテレビを対象にリサイクルを行なう。

 現在設置しているのは1ラインで、大型テレビ1人、小型テレビ1人の2人体制と規模は小さい。

関西リサイクルシステムズ(KRSC)のロゴ

KRSCの会社概要

KRSCにおける家電4品目の処理台数推移

KRSC第2工場のフロアレイアウト

薄型テレビのリサイクルラインのレイアウト

薄型テレビの解体フロー

関西リサイクルシステムズ・中山和博社長

 「圧倒的に、ブラウン管テレビの回収が多く、薄型テレビはまだ少ないだろうと見ている。2011年まではこの状況が続くことになる」(関西リサイクルシステムズ・中山和博社長)としている。2009年度には、年間3万台の処理能力を計画しており、今回の投資金額は3,000万円。今後、リサイクル台数の増加にあわせて、ラインを強化することになる。

 シャープでは、2002年度から液晶テレビリサイクル委員会を設置し、液晶テレビのリサイクルに関する研究を開始。2004年度には、液晶パネルリサイクルガイドラインを策定してきた経緯がある。また、2008年度には、「リサイクル処理作業者の安全・安心」と「大画面薄型テレビを誰にでも解体できる」をコンセプトに、効率的で安全な大画面薄型テレビ用傾斜・反転作業台および搬送装置を開発し、第2工場に設置して、解体実証実験を重ねてきていた。


大型テレビ移載装置の利用シーン

 また、関西リサイクルシステムズ第2工場は、シャープの液晶パネルの主力生産拠点である亀山工場、三重工場がある亀山市および多気市と、技術拠点である天理と、それぞれ30分程度の立地にあり、製造、研究部門と連携しやすい環境にある。

 「ブラウン管テレビは、ビスが1台あたり約50本。それに対して、薄型テレビは約200本。解体しやすい状況ではないのは事実。最近では、月に一度程度の割合で、亀山や天理の技術者が関西リサイクルシステムズに訪れ、設計段階から解体しやすい構造への見直しを進めている。地の利を生かすことで、リサイクルしやすい商品設計や材料開発にも取り組むことができる。液晶テレビの基板を多層化し、ビス1本で両方が外れるようにするといった工夫もその成果」という。

 では、薄型テレビのリサイクルラインの様子を写真と動画で紹介しよう。なお、実際に稼働するのは4月1日からであり、今回の公開で使用されたものはデモストレーション用に用意されたものとなっている。


薄型テレビのラインは2階に設置されているまずは、インナーコンテナでラインに配送コンテナには指示書を搭載。照合システムを利用して一台ずつ管理する
薄型テレビのラインで利用される照合システム薄型テレビは大型のものもあるため、大型テレビ移載装置を利用
作業できる重量の制限は体重の40%まで。65kgの作業者は26kgまでとなる。37インチを超えると作業できないため、この装置を使うことで解決するラインに投入されたあと、まずは台座を取りはずすその後、表示部の解体に入る。ビスの数が多い
独自開発の大型テレビ傾斜反転作業台を利用。傾斜をつけることで腰に負担がなく、ネジ穴にまっすぐドライバーを当てられる液晶モジュールの分離作業。ひとつずつビスをはずしてから作業する
ビスは年々減っているというが、ブラウン管テレビに比べるとまだまだ多い外された薄型テレビの枠部分。材質ごとに分類される

基板もこのように分類されている

液晶ユニット部から取り外されたフィルター小型の液晶テレビのリサイクルライン。32インチ以下の薄型テレビはこちらのラインで解体する
バックライトユニット部は、バックライト回収作業台に移動するバックライト回収作業台では、バックライトを効率的に安全に取り外せるようにしている本体から切り離されたバックライト。微量の水銀が含まれているため、安全性を重視。風を流して、万が一割れた場合でも作業者に影響がないようにしている

安全対策に関する設備のレイアウト

水銀吸着設備。左側のバグフィルターを通したあと、右側の水銀吸着塔で浄化下後に屋外排気するドラム缶保管室。割れたバックライトをここで管理する
安全を確保するため、作業者はヘルメットなどの重装備

水銀の水準を常にチェックしている

 


■ ブラウン管テレビのリサイクルラインも公開
 
 一方、2006年12月から同第2工場で行われているブラウン管テレビのリサイクルの様子も公開された。1日に約1,800台のリサイクルが可能で、ライン方式を活用した効率的な解体、再生が行なわれている。
 こちらも、写真でその様子を紹介する。
 

ブラウン管処理ライン。左が1階、右が2階

第2工場に運び込まれたリサイクルされるブラウン管テレビリサイクルを待つブラウン管テレビの山

ブラウン管リサイクルラインの全景

多くの人数を割いている手解体工程。ラインに入る前には、パルスエアーを使ってホコリやゴミを除去し、作業環境の悪化を防ぐ。また、作業員はひとつの場所だけを担当するのではなく、随時ローテーションを行ない、多能工化を図る。隣の人の遅れた作業をお互いに助ける仕組みも導入している

異なったサイズ、異なったメーカーのブラウン管が混在で処理される

作業員が使用している手袋など。安全対策は万全だ
材料ごとに仕分けされる。混ざればゴミ、分別すれば資源になるこのように部品ごとに細かく仕分けされている進捗状況が逐一確認できる。この日は1,805台のリサイクル処理が目標
キャビネットの破砕ライン。金属探知機で異樹脂や金属を除去したあとに粉砕する

ラインに運び込まれるキャビネット

2階フロアにあるCRT処理ライン

1階からはCRTリフターで移送される

自動ブラッシング工程。CRT表面の異物を除去する
この奥で前面ガラス(パネル)と背面ガラス(ファンネル)に分離されるカレット精製工程。ラインへの投入からここまでで1台14分程度で終わるリサイクルされた素材から試作開発された46インチ液晶テレビの背面キャビネット

ハンガーフック、建築用擬木材、ブックスタンドなどにも再生される

 
 


(2009年 3月 18日)

[Reported by 大河原克行 ]