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ドローンやVRゴーグルなど「SnapdragonでIoT」を加速させるクアルコム
2017年8月24日 18:33
クアルコムは24日、モバイルSoC(システム・オン・チップ)「Snapdragon」のIoT向けの展開に関する説明会を開催。クアルコムCDMAテクノロジーズ 副社長の須永順子氏は、同社が持つモバイル向け技術のIoTへの展開を加速する方針を示したほか、協業するサンダーソフトとともに、Snapdragon搭載のドローンやVRゴーグルなどの採用事例を紹介した。
スマートフォンやタブレット、スマートウォッチなど数多くのモバイル機器で採用されるSnapdragonシリーズ。クアルコムでは現在、IoT向けに1日あたり100万個以上のチップを出荷しており、少量・長期販売などIoT業界に即した販売体制も強化してきたと説明。
IoT業界はスマホなどのモバイル業界と比べてメーカー数が多く、少量多品種で機種当たりの生産個数が少ない、ライフサイクルが長期にわたるといった違いがある。そのため、IoT向け製品にはクアルコムの直接販売ではなく、米Arrow Electronicsなどの販売代理店を利用して「Snapdragon 600E/410E」やSnapdragon 410搭載のマイコンボード「DragonBoard 410c」の販売、サポートを行なっている。
IoT市場にスマートデバイスの開発経験が無い企業が多く参入し、多種多様な製品開発が求められるため、IoTの製品化を加速する体制を強化。中国サンダーソフト(Thundersoft)などと協力して、25種類のリファレンスモデルを用意する。ウェアラブルデバイスやスマートスピーカー、IPカメラ、ドローン、VRヘッドセット、IoTハブなどで、「モバイル、コンピューティング、オートモーティブ以外のすべて」(須永氏)をターゲットに、SoCとソフトウェア、プラットフォーム、エコシステムを整えてメーカーが短期間・低コストで製品を商用化できるようにしている。
サンダーソフトは中国・北京に本社を置く企業。2009年頃からスマートフォンなどモバイル機器開発においてクアルコムと協力関係を築き、サンダーソフトジャパン代表取締役社長 今井正德氏は「Snapdragonを知り尽くした企業」であると強調する。現在はIoT分野にも協業の範囲を広げ、’16年2月にはクアルコムとのジョイントベンチャー企業「Thundercomm」を設立。少量多品種の開発を支援する「TurboX SOM」ソリューションをIoTメーカーに提供している。
TurboX SOMは、Snapdragonシリーズをコア演算モジュールに採用した“SoM(System on Module)”と、OSやアプリケーション、SDKなどを含むソフトウェアで構成。これを用いて開発したIoTデバイスは、スマホと同等のスペックを備え、同じアプリを動かすといったことも可能になる。
現在のラインナップには、スマホを使わず単体で動作するVRヘッドセット向けの、Snapdragon 835+Android Nカスタマイズ版を採用したモジュールや、Snapdragon 801+Linuxで4K/30fps動画の撮影が行なえるドローン向けモジュールのほか、スマート監視カメラや、ロボット向けのものを用意。VRヘッドセットに関しては、VRコンテンツの制作を手がける企業の開発環境としての活用も見込んでいるという。
ハードウェアは、IoTメーカーのニーズに合わせて、派生モジュールの提供やカスタマイズが可能。TurboX SOMの採用事例として、4K自撮りドローン「Hover Camera」(Zero Zero Robotics製)などがある。
TurboXをベースとした製品開発プロセスの特徴は、リファレンスモデルの提供にとどまらず、ハード・ソフトの評価やカスタマイズ、試作機の開発、工場量産やODM供給までを、サンダーソフトが一貫してサポートする体制を持つことがとアピールしている。
サンダーソフトでは今後、IoTデバイスが増えて既存のクラウドコンピューティングに一極集中することを避けるため、デバイス側の処理能力を向上させてデータ処理を効率的にする取り組みについても紹介。Amazon Web Services(AWS)の機能をIoTデバイスに持たせる「AWS Greengrass」を使ったソリューションや、クアルコムのディープラーニング用ソフトウェア開発キット「Snapdragon Nueral Processing Engine(NPE)」を用いてIoTデバイスのローカル環境で実行できる画像認識アルゴリズムを開発している。