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日本にストリーミングを定着させる。Amazon Musicは“ボイス”で成長する

11月1日。スマートスピーカー「Amazon Echo」の日本上陸から一周年を迎えた。あわせて一周年を迎えたのが、Amazonの音楽配信サービス「Amazon Music Unlimited」だ。

Amazon Music Unlimitedは、定額制で5,000万曲以上が聴き放題の音楽配信サービス。Echoのユーザーは月額380円。個人プランの通常価格は月額980円で、プライム会員は月額780円で、年間プランやファミリープランなども展開する。Amazonの音楽配信サービスといえば、プライム会員(年間3,900円/税込)であれば無料で使える「Prime Music」が人気だが、配信楽曲を大幅に拡充した「音楽ファン向け」のサービスと位置付けられるのが、Amazon Music Unlimitedだ。

数年前から欧米各国では、Spotifyに代表されるストリーミングミュージックが拡大傾向にあったが、日本はその流れにやや乗り遅れた格好になっていた。しかしこの1年、AmazonやGoogleらのスマートスピーカーの登場と歩を合わせるように、日本にもストリーミングが根付きつつあり、2018年上期にはストリーミングがダウンロードの売上げを上回った。そうした状況下で、「Amazonの音楽配信」はどこを目指していくのだろうか? 9月にAmazon Music デジタル音楽事業本部長に就任したレネ・ファスコ(René Fasco)氏に聞いた。

Amazon Music デジタル音楽事業本部長のレネ・ファスコ氏

日本のAmazon Musicは好調。ボイスを最重視

1年前に始まったAmazon Music Unlimited(AMU)、そして約3年前に始まったPrime Musicのサービスの現状をどう分析しているのか。会員数や利用者数などのデータは非公開だが、「Amazon Music Unlimitedは、我々の計画を上回り成長している」と、その手ごたえを強調する。

日本での着任以前は、ドイツ、オーストリア、スイスのAmazon Musicディレクターとして、AMU立ち上げに関わり、「6週間前に日本に来たばかり」というファスコ氏。「日本とドイツには、どちらもフィジカル(CDなど物理メディア)の市場ががしっかり残っている。ドイツは今年ストリーミングが最大の音楽売上となったが、日本はまだフィジカルが大きい。それゆえ大きな機会がある」と語る。

また、日本の利用者は「より音楽が好き」で、音楽聴取時間がドイツより30%以上多く、音楽への情熱を持っているという。

「日本のストリーミングマーケットは、他国に比べるとまだ発展中。それゆえに大きな成長機会がある。我々の目標は、アーティスト、レーベル、パートナーと協力し、来週、来月、来年と常に、アプリ、楽曲数、Alexa、Echoなどの改善を続けて、最高のサービスを作ること」と語る。

では、そのAmazonがいま重視している音楽体験とはなにか?

ファスコ氏に尋ねると「ボイス(音声操作)」と即答した。

「ボイスは音楽産業を大きく変えている。ユーザーは、EchoやAlexaスピーカーに自然にリクエストして、音楽を楽しんでいる。これはCDを買う、ダウンロードして聴くという体験とは大きく異なるものです。この体験を高め、ユーザーを理解し、改善し続けます。『Alexaがよく聴いているアーティストの新しいアルバムを流してくれる』、など、対話のなかで自然に音楽を楽しめる。そうした仕組み作りに力を入れている。ディスプレイ付きのスピーカー(Echo Spot/Show)の登場も、新しいより良い体験を目指したものです」

実際に、AMUでは「Echo」を含むデバイスでの再生が増加傾向で、29%のユーザーがAlexaを利用し音楽を聴いているという。「Echoの本格展開から間もないですが、ボイスの体験を受け入れ、積極的に使われています」とファスコ氏は語る。

Prime MusicとAmazon Music Unlimitedの関係は?

Amazonの音楽配信サービスは、月額980円(税込)のAmazon Music Unlimited(AMU)だけでなく、プライム会員向けの「Prime Music」も存在する。会員数は公表していないが、Amazonプライム会員=Prime Musicユーザーなので、利用者数はとびぬけて多いとみられる。Amazonでは、Prime MusicとAMUの位置づけをどう考えているのだろうか?

「日本では、まだストリーミングを試していない方が多い。そうした中で、Prime Musicは新しいテクノロジに触れる機会、より多くの人の親しみやすいサービスとして、新しい音楽体験のスタイルとして提案しています。AMUは、月額780円(プライム会員/税込)で、5,000万以上の楽曲を楽しめます。Echoだけで再生するプランは380円で、ファミリープランなども充実させています。違いは“楽曲数”で、さらに音楽を楽しみたい、音楽ファンのためのサービスです」

では、音質や機能面で、AMUとPrime Musicに差をつけていく予定はあるのだろうか。

「いえ。同じアプリ、同じ音声リクエストで動作して、違いは“コンテンツ”。楽曲数です。5,000万曲と150万曲という差だけでなく、(プレイリスト等)キュレーションも異なっています」という。ハイレゾ対応の予定もない。

Prime MusicとAMUの好調の理由については、「Prime Musicはもちろんですが、音楽CD販売でも15年以上の歴史があり、そこにファンがいる。音楽ファンとの長い関係があり、そのファンの顧客体験を高めることを常に考えてきました。Amazonのブランドを磨き、信頼していだたいている」と分析する。

実はダウンロードが伸びている。日本における成長機会とは?

日本でもストリーミングサービスが盛り上げる一方、音楽CDやダウンロード型の音楽配信は厳しい局面を迎えている。Amazonでは、CD販売、そしてダウンロードのサービスも展開しているが、その関係性をどう考えているのだろうか?

「ダウンロードも、音楽CDも“選択肢”です。我々は選択肢を用意し、そしてユーザーに選んでいただく。特に日本においては、CDはマーチャンダイズ(関連グッズ)とも結びついてます。Amazonがユニークなのは、音楽流通における、すべてのオプションを提供できること。ストリーミングに移行が進んだとしても、それぞれのチャネルがすぐになくなるということはありません」

ファスコ氏が「私も驚いたのですが……」と語るのは、ダウンロードについて。

「ダウンロードが伸びています。ほかの国ではストリーミングの伸長とともに減少傾向ですが、日本はダウンロードも伸びています。おそらく、日本ではストリーミングに参加していないアーティストが多いから、でしょうか。しかし、フィジカルからデジタルへの移行期は進んでいます」

となると、Amazonの音楽配信サービスで今後強化するのは、まだストリーミングに参入していないアーティストの獲得ということになる。どのようなアーティスト、ジャンルを強化していくのだろうか。

「全てですね。J-POP、演歌でも、幅広いセレクションを提供したい。いまは音楽にフォーカスして、音楽ファンに満足してもらえるサービスを目指していきます」

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