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恋愛感情を味で表現した「恋AIパン」。ABEMA恋愛番組と約100万曲の歌詞を分析
2024年1月17日 14:03
日本電気(NEC)と木村屋總本店(木村屋)、AbemaTV(ABEMA)の3社は、ABEMAの恋愛番組「今日、好きになりました。」の出演者の会話とフルーツやスイーツが登場する曲の歌詞を、NECのAIで分析し、恋愛感情を味で表現したという蒸しパン「恋AIパン(れんあいぱん)」5種を開発した。木村屋が2月1日より関東近郊のスーパーや、直営店舗、オンラインストアで順次販売する。価格は各200円。
5種の内訳は「運命の出会い味」「初めてのデート味」「やきもち味」「涙の失恋味」「結ばれる両想い味」で、涙の失恋味と結ばれる両想い味は2月1日から、やきもち味は3月1日から、運命の出会い味、初めてのデート味は4月1日から、それぞれ期間限定で販売する。
AIで恋愛感情と食品を紐づけ。最後は木村屋の職人が選定
今年で創業155周年を迎える木村屋による、若年層を対象とした商品開発への挑戦としてプロジェクトがスタート。若者とのつながりを作るために、彼らの日常やリアルを調査したところ「若者の恋愛離れ」が進んでいることがわかったという。
一方で、若者の中には自ら恋愛する「する恋」と、恋愛リアリティ番組などを観る「見る恋」のふたつが存在しており、「恋をしている若者は減っているけど、恋をしたい若者は減っていないのではないか」と考え、若者の恋愛を応援するパンの開発を決めた。
そして、AIを使った商品開発実績を持つITベンダー大手のNEC、現役高校生が参加して話題を呼んでいるABEMAの「今日、好きになりました。」と協力してプロジェクトを進めることになった。
開発にあたっては、NECの最先端AI技術群「NEC the WISE」の音声認識技術を活用した「NEC Enhanced Speech Analysis -高性能音声解析-」を使って、「今日、好きになりました。」のセブ島編、プーケット編、沖縄編の計3シーズンにおける出演者の会話データ15時間分をテキストとして抽出。
その後、「NEC the WISE」のデータ意味理解技術を活用した「NEC Data Enrichment」を使って、出会いや告白、初めてのデートといった恋愛シーンごとの会話文に32個の感情ワードとの相関を表した感情スコアを付与して、恋愛シーンごとの感情の傾向を可視化した。
さらに約100万曲の日本語の歌詞データベースから、183種類のフルーツやスイーツなどの食品を含む約3.5万曲を抽出。「NEC Data Enrichment」を使って、こちらも感情スコアを付与し、食品のイメージが持つ感情の傾向も可視化した。なお、この歌詞データベースには昭和など令和以前の楽曲も含まれるという。
そして、これらふたつの感情の傾向が似ている恋愛シーンと食品を紐づけて、恋の感情を表現するという食品上位50種をリストアップ。ここから、過去に多くの蒸しパンを開発してきた木村屋の職人が、相性の良い食品の組み合わせを選定して、恋を味として表現する「恋AIパン」を作り出した。
商品パッケージや特設サイトで用いられる商品解説文についても、NEC開発のLLM(大規模言語モデル)「cotomi」を活用して作成している。
「恋AIパン」5種の特徴
バレンタインデー時期となる2月1日発売の涙の失恋味は、生地にサイダー、マーブルにぶどう、トッピングにドライりんごを使用。「青い季節に『サイダー』の泡のように消えた恋。「ドライりんご」の甘くてやさしい香りも、「ぶどう」の涙と一緒にこぼれて、甘酸っぱい想い出になった味」という。
結ばれる両想い味は、生地にもも、マーブルにドラゴンフルーツ、トッピングにはちみつを使用。「太陽のような『ドラゴンフルーツ』の君に、頬を赤らめた「もも」が寄り添う。甘くとろける「はちみつ」が祝福し、ずっと一緒にいたい気持ちが膨らむ味」という。
ホワイトデー時期の3月1日発売のやきもち味は、生地に紫芋、マーブルにずんだ・トリュフオイル、トッピングにレーズンを使用。「『紫芋』と『ずんだ』が混ざった心はマーブル模様。素直になれない自分が嫌い。『トリュフ』と『レーズン』の香りが胸の奥で絡まって不安な気持ちがとまらない味」とのこと。
このやきもち味は「パンで表現するには斬新な色。チャレンジングだったのと同時に、しっとり感を出すなど工夫を行なった」といい、デンプンも加えてモッチリとした食感も表現している。
新学期・新生活が始まる4月1日発売の運命の出会い味は、生地にわたがし味、マーブルにりんご、トッピングに青クランチを使用。「『りんご』の甘い香りが『わたがし』の風に乗って心をくすぐった。これって偶然? 運命のいたずらを『クランチ』が感じさせ、これから始まる恋を予感させる味」とする。
初めてのデート味は、生地にライム、マーブルに柿、トッピングにオレンジピールを使用。「『ライム』と『柿』が初めて一緒になった2人分のワクワクドキドキ。『オレンジピール』のほのかな甘みが2人の距離を縮め、未来への一歩を後押しする味」としている。
「恋AIパン」5種を試食。見た目よりも味は上品
1月17日に行なわれた記者発表会では、発売に先駆けて恋AIパン5種の試食会も行なわれたので、それぞれの味をレポートする。
2月1日発売の結ばれる両想い味は、口に入れると、ほのかなももの香りと甘みがフワッと広がる。飲み込むとハチミツ独特の甘さが鼻に香る。
涙の失恋味は、口に入れるとサイダー独特のややケミカルでひとクセある香りが口いっぱいに広がるが、トッピングされたドライりんごの甘さやシャリッとした歯ごたえがアクセントとなって、ブルーとパープルのマーブル模様の見た目ほどのしつこさは感じない、あっさりとした仕上がりだ。
3月1日発売のやきもち味は、今回の5種のなかでもっともクセを感じた一品。口に含むと、紫芋やトリュフオイル、ずんだの独特な香りが広がるほか、食感もモチモチとしていて、噛むと少し粘り気のようなものも感じる。この5種の中では一番口の中に残る味わい。
4月1日発売の運命の出会い味は、生地にわたがし味が使われているものの、甘さはしつこくなく程よい印象。ほんのりと甘みを感じる後味も特徴だった。初めてのデート味は、トッピングされたオレンジピールの酸味が効いていて、5種のなかでは一番さっぱりとした仕上がりだった。
やきもち味や涙の失恋味など、蒸しパンとしては独特な色合いのものが多かったが、食べてみるとどれも特徴がありながら、甘さや味は上品。このあたりは創業115年の歴史を持つ木村屋ならではの商品だと感じられた。