10月はエコポイント減額前の“TV特需”。BCN発表

-台数で前年比3.2倍。「iPadの元気が無い」


BCNの道越一郎アナリスト

 BCNは10日、12月のエコポイント減額前に起きている駆け込み需要の“テレビ特需”について、市場調査と分析結果を発表。10月の薄型テレビ販売状況が前年同月比、台数で3.2倍、金額で2.3倍と、いずれも過去最高の伸びを記録したという。

 この市場分析は、家電量販店など全国24社、2,356店舗(2010年10月現在)のPOSデータを集計したBCNのデータをもとに行なっている。なお、Amazonなどを中心としたネット店舗のデータも加味した形で前年同月比などを算出している。発表データ内の金額は全て税抜きとなる。




■10月はテレビ特需。11月も過去最高へ

 2010年の薄型テレビ市場は、4月1日から施行された新エコポイント制度で、ポイントの対象外になる製品が増える事に関連した“エコポイント切り替え特需”が3月に起こり、販売台数が前年同月比255.3%、金額ベースでは208.5%と、どちらも過去最大の伸びを記録した。

薄型テレビの販売台数・金額前年同月比グラフ

 しかし、10月の伸びはこれをさらに超えており、台数で前年同月比320.5%、金額では232.2%となった。BCNの道越一郎アナリストは「購入を待っていた様子見の人達が一気に動き出した。11月はこの調子でいくと、台数・金額ともに過去最大になる見込み」とする一方、懸念材料として売り場に欠品が目立ちはじめている事を指摘。「既に11月下旬、12月に入らないと商品が揃わないという状況もある。流通側の状況により、11月の伸びは左右されるだろう」と分析する。

 また、販売店の売り方については、「台数としては3月の状況とほぼ同じであり、3月のような売り場の混乱は少ないようだ。これは、3月の特需でお客さんが殺到するシミュレーションができて、今回の本番で、うまくさばけているのではないか」とした。


左が消費者態度指数。右が薄型テレビと乗用車の販売代位数指数

 なお、12月以降の動向については、「エコポイントの減額により、12月は台数で1~2割減少するのではないか。もともと12月はテレビが一番売れる月であり、その分を踏まえて予測している。1月以降だが、1月は毎年売り上げが落ちる期間であり、来年も同じように1月に一旦落ち込み、そしてエコポイント終了の3月にまた盛り返す形になるだろう」と語った。

 さらに道越氏は、エコポイント以外の要因として、内閣府が発表している消費者態度指数が依然として高い水準で、消費者の“暮らし向きに”対する意識が高いこと、そしてエコカー補助金が終了し、車の販売台数が半減する中、テレビの売り上げが伸びている事から「車を諦めた人が、テレビの乗り換えたという動きも考えられるのではないか」とした。




■テレビ特需の中身

 売れているテレビのサイズは、エコポイント減額を受け、前年同月比で30型台が339.7%、40型台が346.9%と急伸。一方で、20型未満も同342.3%と伸びており、サブテレビの市場が急激に立ち上がっている事がわかる。また、金額で見ると30型台が231.4%、40型台が247%であるのに対し、20型未満は273.9%と伸びが大きく、値崩れが大きい大型に対し、小型は値崩れが比較的少なくなっている。

 大型サイズの価格下落は止まらず、30型台は1年間で3割程度下落。10月の時点で30型台の平均単価は64,500円となっている。

 台数ベースのメーカーシェアにもこうした状況が影響しており、小型モデルで稼ぐ東芝が好調で、ソニーやパナソニックも伸長。それに対してシャープのシェアが若干下がってきている。10月時点のシェアはシャープ37.3%、東芝20.9%、ソニー17.1%、パナソニック14.6%。

サイズ帯別の前年同月比メーカー別台数シェアと、サイズ・消費電力のグラフ

 最も売れているテレビのメーカー&サイズは、台数ベースではシャープの30型台で、2位は同じくシャープの40型台、次いで東芝の30型台と続く。金額ではシャープの40型台が1位に、30型台が2位となり、30型台の値崩れ具合がわかる。

 なお、平均画面サイズと平均消費電力の関係はこれまで連動する傾向にあったが、今年の4月からはサイズが大きくなる反面、平均消費電力は横ばいの状態が続いている。これはLEDバックライト採用モデルの販売が鈍くなっているためで、LEDとCCFLの台数比率は8月の時点でLED 43.3%、CCFL 56.7%までに近づき、年内で逆転すると見られていたが、10月になっても変化が無い。

 道越氏は「価格下落が大きいため、コストが高くなりがちなLEDバックライトテレビは(販売価格が高価で)売れにくいという状況が一部で起こっているのではないか」と分析。年内の主流バックライトのLEDへの切り替わりは「微妙になってきた」という。

最も売れているテレビのメーカー&サイズは、台数ベースではシャープの30型台LEDとCCFLバックライトの台数比率
メーカー別の、3D対応、および3Dレディモデルの伸び率

 3Dテレビの動向では、3Dメガネや同期用トランスミッタを付属しない、いわゆる“3Dレディ”モデルが好調。10月の時点で、各メーカーで売れたテレビにおける3Dモデルの割合を見ると、メガネなどが付属する3D対応モデルがシャープで1.6%、東芝で0.3%、ソニーで1.8%、パナソニックで2.2%といずれも低い。しかし、ソニーの“3Dレディ”モデルは9.6%と高くなっている。

 道越氏は「購入する時は安い方が良いし、3Dコンテンツも少ないので、“(後で対応できるので)あまり慌てなくても良いな”というユーザーの心理をついたのではないか」と見る。一方で別売3Dメガネの販売も好調であり「レディモデルを購入しても、やっぱり3Dが観たいと、さっそくメガネを購入する人も多く、テレビの“分割買い”のような状況も起きている」という。




■レコーダ

 エコポイント対象商品ではないが、テレビの影響を受けてか、レコーダも好調。10月の前年同期比は台数で195.6%、金額で163%といずれも過去最大の伸び率を記録している。平均単価の下落も大きく、8月は61,100円だったが、9月で58,500円、10月で56,200円と5万円台に突入している。

レコーダの販売台数・金額前年同月比左が平均単価のグラフ

 新たなトピックでは、ハイエンドモデルを中心に各社で対応機種が増加してきたBDXLが存在感を増している。レコーダ全体における販売台数構成比は10月の時点でBD 63.1%、BDXL 20.8%、その他が16.1%と、2割を占める。金額でも30.4%となり、急速に拡大している。

 メーカー別の販売台数シェアでは、単価が安いシャープが10月時点で39.7%とトップ。パナソニック26.4%、ソニー20.3%と続き、東芝は9.5%とまだ1割には届いていない。

 なお、録画対応テレビの増加はレコーダの市場を奪うものだという懸念もあるが、メーカー別で録画対応テレビ(HDD内蔵型を指す)とレコーダの販売台数構成比を見ると、各社で状況が異なるのがわかる。HDD搭載テレビが少ないシャープは、10月時点でレコーダが90.7%、HDD搭載テレビが9.3%とレコーダでほぼ占められている。

 パナソニックは10月時点で68.9%がレコーダ、31.1%がテレビ。ソニーはレコーダが45.7%、テレビが54.3%と半分程度。東芝は外付けHDDを後から接続するタイプが多いため、テレビが33.7%、レコーダが66.3%と低い数字になっている。

レコーダのメーカー別販売台数シェアメーカー別の、録画対応テレビとレコーダの販売台数構成比。左からソニー、東芝左からシャープ、パナソニック



■その他

 レンズ交換型のデジタルカメラでは、ミラーレスタイプの新モデルを多数投入しているソニーが好調。キヤノンとニコンの2強がデッドヒートを繰り広げるのは例年通りだが、9月時点の台数シェアではキヤノンが36.3%、ニコンが24.4%、ソニーが21.2%と、ソニーがニコンに数%まで接近。10月はニコンが27.7%に対し、ソニーが15.4%と差が開いているが、道越氏は「“2強とその他”から“3強時代”突入も十分考えられる」とした。

 地デジチューナ搭載PCは、台数・金額ともに2月以降前年同月比2桁増が続いており、夏以降は同2倍の伸びを維持しているという。チューナの搭載や画面サイズが大きい事などで、単価も高いという。

右がレンズ交換型のデジタルカメラにおける、メーカー別台数シェア地デジ対応パソコンの販売台数・金額前年同月比/販売台数構成比

 スマートフォンの販売台数構成比は、1月時点の12.4%から10月には33.1%と伸長。キャリア別のスマートフォン構成比では、ソフトバンクが10月時点で71.9%と、7割以上がスマートフォンになっている状態。ドコモは23.6%、auは6.3%となっている。

 10月時点のメーカー別の台数シェアでは、アップルが63.9%、ソニー・エリクソンが14.7%、GALAXY Sを投入したサムスンが13.9%と迫る。発売7日間の累積販売台数指数の比較では、在庫不足で伸びがゆるかったiPhone 4に比べ、GALAXY Sが若干上回っておりBCNアナリストの森英二氏は「GALAXY Sの初速はiPhone 4に勝ったと言えるのではないか」とまとめた。

スマートフォンの構成比スマートフォンのメーカー別/販売台数指数。右のグラフは発売7日間の累計販売台数指数を比べたもの

 また、タブレット端末について森氏は「iPadの元気が無い。アーリーアダプタを中心に話題になったが、結局はPCが無いと使えなかったり、iTunesのアカウントやクレジットカードなどが必要になることなどが販売を伸ばせない要因と考えられる」と原因を分析。今後もAndroid OSを採用したタブレットが増加していくが「製品数が揃ってくるのである程度の市場は確立できると考えている。ネットブックに近い動きをするのではないかと見ており、PCを100とした場合、最大で20%程度のシェアを得るのではないか」と語った。


(2010年 11月 10日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]