ファイナル、8mmドライバ採用イヤフォン「Adagio」3種

-実売約3,980円~12,800円。音質レビュー付き


右下から時計回りに「Adagio V」、「Adagio III」、「Adagio II」

 ファイナルオーディオデザイン事務所は、8mm径のダイナミック型ユニットを採用したカナル型(耳栓型)イヤフォン3機種を、12月2日に発売する。シリーズ名は「Adagio(アダージョ)」。価格は全てオープンプライスで、店頭予想価格は「Adagio V」(FI-AD5DSS)が12,800円前後、「Adagio III」(FI-AD3D)が5,980円前後、「Adagio II」(FI-AD2D)が3,980円前後。

 カラーは「Adagio III」が、RED & WHITE(RW)、BLACK(BL)の2色。「Adagio II」がCREAM(CR)、INDIGO(IN)、BLACK(BL)の3色を用意する。なお、発売を記念し、12月5日からプレゼントキャンペーンも実施予定。詳細はホームページで発表するという。


 3機種のいずれも、8mm径の新開発ダイナミック型ユニットを採用しているのが特徴。このユニットはファイナルが2年かけて開発したというもので、8mmではあるが「小型ユニットではどうしても出せなかった力強い音を実現した」というもの。3機種に内蔵しているユニットの仕様はほぼ同じ。

「Adagio II」のカラーはCREAM(CR)、INDIGO(IN)、BLACK(BL)の3色
「Adagio III」のカラーはRED & WHITE(RW)、BLACK(BL)の2色

 「Adagio III」と「Adagio II」は、筐体にABSを使用しており、筐体のデザイン自体は共通(カラーは異なる)。2機種の違いは、「Adagio III」にのみ、筐体内の空気の流れを最適化するBAM(Balancing Air Movement)機構を採用している。これは、同社のバランスド・アーマチュアユニット採用モデルで開発された技術をベースに、ダイナミック型用に応用したもの。これにより、余裕のある低域が再生できるとする。なお、BAMではないが、「Adagio II」でも、筐体内の空気の最適化は行なわれているという。

 上位モデルの「Adagio V」は、ステンレス削り出しの筐体を採用しているのが特徴。こちらのモデルもBAMは採用していないが、筐体内の空気の流れは最適化されており、「立体的に空気を感じられる音になっている」という。

ステンレス削り出し筐体の「Adagio V」

 全てのモデルにS/M/L、3サイズのイヤーピースが付属。イヤーピースにもこだわっており、「ゴムの音が再生音に乗らないよう、素材や厚みなどを試行錯誤したものを採用している」という。また、「Adagio V」にのみ、キャリングケースが付属する。

 そのほかの仕様は下表の通り。

モデル名Adagio VAdagio IIIAdagio II
店頭予想価格12,800円前後5,980円前後3,980円前後
ドライバ8mm径
ダイナミック型
8mm径
ダイナミック型
8mm径
ダイナミック型
筐体素材ステンレス削り出しABSABS
感度100dB
インピーダンス16Ω
ケーブル1.2m
重量16g10g



■ファーストインプレッション

3機種を試聴した

 短時間ではあるが、3機種を試聴してみたので印象をお伝えしたい。試聴機材は「iPhone 4S」と「第6世代iPod nano」を使い、「ALO AudioのDockケーブル」+「ポータブルヘッドフォンアンプのiBasso Audio D12 Hj」を使っている。

 価格の安い順から聴いていく。実売3,980円前後の「Adagio II」を手に持つと、ABS筐体という事もあり、非常に軽量だ。また、イヤーピースが薄手で、感触も通常のピースと若干異なる。


イヤーピースが薄手で、感触も通常のピースと若干異なる

 再生音は“ダイナミック”の一言。8mm径ユニットとは思えないほど、量感のある中低域が押し寄せてくる。「藤田恵美/camomile Best Audio」から「Best OF My Love」を再生すると、1分過ぎからのアコースティックベースが「ヴオーン」と大迫力で迫ってくる。大口径ユニットで、大量の空気を動かしているイヤフォンに負けない、細身の筐体からは想像できないダイナミックさが持ち味だ。

 特筆すべきは、中低域がこれだけ力強いにも関わらず、全体的にモコモコした音になっていない。ヴォーカルや高域に、低い音がかぶさり、明瞭度を下げそうなものだが、そこだけポッカリ穴が空いたように綺麗にヴォーカルの高域が飛び出してきて、しっかりと聴きとれる。低域の心地よさや迫力を味わうモデルだが、中高域の抜けもある程度確保した、バランス感覚を備えたモデルと言えるだろう。

 実売5,980円前後の「Adagio III」は、バランスを重視したハイファイ調の音作り。低域の主張は「Adagio II」ほど強くはないが、ダイナミック型ユニットならではの量感の豊富さはシッカリと感じさせてくれる。低域が抑えられた事で、中高域の見通しがグッと良くなり、音場の広がりに意識が向き、音が広がる空間が立体的に感じられる。高域の抜けの良さも「Adagio II」よりもアップしており、幅広い人にオススメできるバランスの良さだ。

 ステンレス削り出し筐体で、実売12,800円前後の「Adagio V」に交換すると、音場の静けさがアップ。音像の輪郭がクッキリ見え、音がある部分と、音が無い部分がキッチリ判断できるようになる。低域の分解能も向上し、ベースの弦の動きが容易に見える。中高域の抜けの良さも向上し、付帯音の少ない、クリアで抜けの良い高域が味わえる。

 個々の音にメリハリがあり、音場に金属的な静粛さが漂うため、予備知識無しで一聴すると、バランスド・アーマチュア(BA)だと思う人もいるだろう。ダイナミック型ならではの低域の量感と、BAのような精密さ、クリアさを感じさせる音作りのイヤフォンだ。大口径ユニットを採用したダイナミック型イヤフォンに対して、「低域が過多だ」と感じている人や、シングルユニットのBAイヤフォンなどで、低域に量感不足を感じている人などに聴いて欲しいモデルである。



(2011年 11月 25日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]