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ドコモ定額音楽配信「dヒッツ」、年度内500万曲へ。Facebook連携など強化
(2015/7/24 18:58)
NTTドコモとレコチョクは、共同で展開する定額音楽配信サービス「dヒッツ powered by レコチョク」など、ドコモの音楽配信サービスの戦略に関する記者説明会を24日に開催。音楽市場の現状や、両社のこれまでとこれからの取り組みについて説明した。
楽曲数ではなく、主要アーティストの配信数
NTTドコモのコンシューマビジネス推進部長を務める前田義晃氏は、これまでのドコモの音楽配信について振り返り、'01年~'04年の「M-stage Music」(PHS向け/個別課金)、'06年からの「着うたフル」(フィーチャーフォン向け/個別課金)、'06年~'10年のナップスター(うた・ホーダイのコンテンツとしても展開。PC/フィーチャーフォン向け、定額制)、'10年以降のdミュージック/dヒッツ(スマートフォン向け、個別課金/定額制)のそれぞれで、時代やデバイスの変化に合わせてサービスを展開してきたことを説明。
最近はApple MusicやAWA、LINE MUSICなどが話題になっているが、同社は2010年より前を“配信黎明期”、2010年以降を“成長期”と定義。dヒッツは、開始から約2年8カ月で300万契約を突破し、そのうち300円のプランと500円のプランの比率は1:2程度だという。アクティブユーザー数は非公開だが、31日間の無料期間後も半分強が使い続け、登録初月で音楽を実際に再生してるのは6割ほどだという。
レコチョク執行役員の板橋徹氏は、世界や日本の音楽市場と、同社を含む配信サービスの歩みについて説明。国際レコード産業連盟(IFPI)や日本レコード協会(RIAJ)の調査結果などを例に、CDや配信を含めた全体の市場は減少傾向が止まらない中で、デジタル音楽配信に限れば、スマホの普及に伴い定額音楽配信サービスを中心に成長を続けている。
定額配信サービスの数が国内外で増えていく中、dヒッツの優位性として挙げたのは「ラジオ型をベースにした唯一のサービスモデル」という点。「ラジオ型」は、チャンネルを選ぶと曲が順番に流れるもので、好きな曲を指定して聴けないものの、アーティスト側にとってはプロモーションとしての効果が見込めることから、曲を検索して再生できる「オンデマンド型」に対し、配信の許諾が得やすいのがメリットとされる。これによりサービスごとで楽曲のラインナップが異なり、例えば安室奈美恵や福山雅治、槇原敬之、Perfumeなど一部のアーティストは、dヒッツのみで配信している楽曲もあるという違いが出ている。
dヒッツは、ラジオ型のようにチャンネル(プログラム)を選ぶが、これまでのサービス改善により、曲のスキップが可能になったほか、お気に入りの曲をいつでも聴ける「myヒッツ」を1カ月に10曲まで登録できるようにした点などを改めて説明。
利用者数獲得の上で欠かせない、ライトユーザーを取り込むための要素としては、邦楽、特にJ-POPの人気曲のラインナップを押さえる重要性を強調。一例として、レコチョクでダウンロード配信している楽曲の上位300アーティストを100%として他サービスと比べると、dヒッツを含む「定額制ラジオ型」は85%、Apple Music/AWA/LINEなどを含む「定額制オンデマンド型」は55%だという。
タワーレコードの取締役でもあるドコモの前田氏によれば、音楽ファンが数多く訪れるタワーレコードでも、オーディオCDのうち洋楽の割合は20%以下だという。「テール側(洋楽などJ-POP以外)のラインナップも必要だが、まずは流行りのアーティストがいるかどうかで判断される。(ドコモとタワレコが共同展開した)ナップスターも1,000万曲あり、インディーズ系も豊富だったが、幅広いユーザーを集めるのは難しかった」と日本市場の特徴を説明。前田氏は「単なる楽曲数ではなく、主要アーティストの配信数を高める」方針を示した。dヒッツ配信曲数としては、現在の約200万曲から、年度内に500万曲までの増加を目指す。
dヒッツのFacebook連携強化は9月上旬開始
新しい取り組みとしては、'15年夏に開始と予告していたdヒッツ/dアニメストア/dマーケットのFacebook連携強化を、7月31日より順次提供することを発表した。
9月上旬には、iOS/Android用のFacebookアプリのタイムラインにおいて、dヒッツで聴いている曲のシェア(リンクの投稿)が行なえ、友人の投稿を見て、その曲をFacebookアプリ上で試聴(約30秒)したり、dヒッツの再生画面にジャンプする(サービス加入者の場合)ことなどが可能になる。dアニメストアは8月1日、dマーケットは7月31日より連携を強化する予定で、詳細は既報の通り。
高音質化にも前向き。「dヒッツからヒット作る」
年末には、dヒッツのアプリUIもリニューアル予定。“音楽好き”といっても年齢などによって志向がバラバラであることから、様々なユーザーにとって使いやすいレコメンド機能などを実装していくという。このほかにも、CDに先駆けてのアルバム先行配信や、インタビュー動画映像の配信なども計画。「dヒッツからヒットを作っていく」ことを目指す。
dヒッツの音質は現在AACの128kbps。これは「(電車などでの)通勤時にも途切れないように、データボリュームを大きくしない」との意向によるものだが、今後は通信網の改善などに合わせて音質も上げていく方向であることも説明した。
前述した通り、配信許諾が得やすいという優位性を持つラジオ型だが、今後オンデマンド型の定額配信サービスが普及した場合、両者の差が縮まっていく可能性もあることから、新たな差別化として「音楽を生み出す仕組み作り」への取り組みも紹介した。
ドコモが現在Web上で展開している「Eggs」プロジェクトは、アーティストが音源などを登録すると、ユーザーが曲を無料で聴いたりでき、SNSのような交流の場にできるサービス。現在タイアップ中の“音楽の甲子園”とされるライブイベント「未確認フェスティバル」では、勝ち残ったアーティストにdヒッツでの配信や、タワーレコードでのCD販売を予定している。
このEggsをiOS/Androidスマホで使えるアプリを8月末に提供する予定で、メールアドレスまたはTwitterアカウントで登録でき、アプリ上のタイムラインから曲を聴いたり、曲へのコメント投稿などが可能。アーティストのアカウントをフォローして最新情報なども得られるほか、今後はユーザーがCD化を支援するといったサービスの実現も検討している。