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JVC初、ハイレゾ対応オーバヘッド型ヘッドフォン「SIGNA」。リケーブル/グランド分離対応
(2015/9/10 11:00)
JVCケンウッドは、JVCブランド初のハイレゾ対応オーバヘッド型ヘッドフォン「SIGNA(シグナ) 01」(HA-SS01)、「SIGNA 02」(HA-SS02)を9月中旬に発売する。価格は「01」が45,000円前後、「02」が30,000円前後。
シリーズ名の「SIGNA」は、ラテン語で「旗印」、「基準」という意味で、「新潮流となるヘッドフォンを創るという想いで開発した」という。“本質と心地よさを追求した”としており、型番付与の考え方もリニューアルされている。
どちらも密閉型で、軽量で高強度な新開発のハイレゾ対応PEN振動板を採用している。再生周波数帯域は8Hz~52kHzで、共通。
ハウジングの内部に、中高域用のインナーハウジングを備えているのが特徴。ハウジングの素材は、グラスファイバーを配合した高強度ポリアミド樹脂で、ハイレゾ対応ユニットの表現力を引き出せるという。JVCではこのハウジングを「シーケンシャル・ツイン・エンクロージャ」と名付けている。
01と02の大きな違いは、ユニット前後のマグネット構造。01は、ユニットの背後に2枚のマグネットリングを配置、その後にユニットフレームが入り、さらにもう1枚マグネットリングを搭載している。02には、ユニットフレームの後のリングが無い。つまり01は「トリプルマグネット」、02は「ダブルマグネット」構造となる。
複数のマグネットリングを組み合わせる事で、必要な部分の磁力を高めているのが特徴。これにより、01では「音の輪郭を細部まで再現」でき、02では「キレの良いサウンドを実現」するという。
01のみの特徴として、バッフル面にアンチバイブレーションリングも搭載。バッフルの不要な振動を抑制し、ドライバの能力をロス無く引き出せるとする。
どちらのモデルにも、ユニットのセンタープラグの背後に「クリアサウンドプラグ」というネジのようなギザギザを備えたパーツを搭載。ユニット背面の空気の動きをコントロールするためのもので、低域をパワフルに再生する際はこのプラグが空気穴を適度に塞ぐ栓のような役目をし、繊細な高域を再生する際は空気を背後へとスムーズに流し、ユニットが動きやすくなるという。
ケーブルは着脱式。プラグをハウジングに接続する部分には、プラグとの接触を安定させ、不要な歪を最小化する「アンチバイブレーションジャック」が用いられている。
- | SIGNA 01 | SIGNA 02 |
音質関連 | トリプルマグネット | ダブルマグネット |
シーケンシャル・ ツイン・エンクロージャ | シーケンシャル・ ツイン・エンクロージャ | |
アンチ・バイブレーション・リング | - | |
クリアサウンドプラグ | クリアサウンドプラグ | |
L/R独立グランド&ケーブル | L/R独立グランド&ケーブル | |
快適性 | ハイレゾ仕様コンフォータブル イヤーパッド | ハイレゾ仕様 イヤーパッド |
ソフトPUレザー | PUレザー |
なお、ケーブルは片出しだが、L/Rのグランドを分離した接続に対応。付属のケーブルは、ヘッドフォン側が4極のステレオミニ、入力側が3極のステレオミニでグランド分離接続用のケーブルではない。ケーブルの長さは1.2m。しかし、対応するプレーヤーやポータブルアンプと見合わせる事で、グランド分離接続や、バランス駆動が可能。グランド分離&バランス駆動用のケーブルを、JVCからオプションとして販売する事も検討しているという。
2機種でイヤーパッドやヘッドバンド部分の素材や仕上げが異なる。01は、ハイレゾ仕様のコンフォータブルイヤーパッドと、ソフトPUレザーを使用。02は、ハイレゾ仕様のイヤーパッドで、PUレザーを使っている。
デザイン面では、01はハウジングまわりにゴールド、02はシルバーのラインを。プラグの付け根部分もそれぞれゴールドとブラックになっている。02のみ、ハンガー部分がシルバーで、01はブラック。
出力音圧レベルは01が99dB/1mW、02が98dB/1mW。インピーダンスは56Ω。最大許容入力は1,000mW。ケーブルを省いた重量は01が約245g、02が約220g。
“本質”や“洗練”がテーマ
JVCでは通勤時などでもハイレゾ音楽をしっかりと、良い音で楽しみたい20~30代の男性音楽ファンなどを、ターゲットとして想定。ビジネスファッションにもマッチするシンプルかつスマートなデザインを追求。“本質”や“洗練”をテーマとしながらも、つけ心地良さにもこだわったという。
プロモーションでも上質さをアピールした展開を予定。「CLASS-S」をキーワードに、上質なサウンドライフのイメージビジュアルなどを交え、SIGNA 01/02を訴求していく。
さらに、そのイメージにマッチするアーティストとして、家入レオを起用。PVやYouTube動画広告、街頭ビジョンでのPV上映なども予定されている。
音を聴いてみる
モバイル用だけあり、オンイヤー型ではあるがハウジングは薄め。個人的にはJVCのモニターヘッドフォン「HA-MX10」をなんとなく連想した。側圧はさほど強くないが、イヤーパッドはしっかりと耳のまわりにフィット。ハイレゾの細かな描写も聴き取りやすそうだ。
JVCのポータブルヘッドフォンアンプ「SU-AX7」や、ポータブルハイレゾプレーヤー「AK380」と接続して試聴した。
どちらも付帯音が少なく、クリアな描写。全帯域に渡って分解能は高く、弦楽器の高域や、ベースの弦の動きなど、ハイレゾの細かな描写が聴き取りやすい。価格だけを見ると、上位モデルの01の方がモニターライク、下位の02は個性的なサウンドになるのかなと予想しながら聴いていたが、実際は逆で、02の方がモニターライクな優等生サウンド、01は低域の量感がより豊かでパワフルな印象だ。
02は高域から低域までバランス良く出ており、中低域の張り出しはさほど強くない。空間表現が得意な方向。高域も滑らかで、カリカリに解像度を出す方向ではなく、しなやかな描写だ。
01は、前述の通り低域の音圧が豊かで、フロア型スピーカーを聴いているような迫力がある。「藤田恵美/camomile Best Audio」の「Best OF My Love」から、アコースティックベースで02と01を聴き比べると、01の方が量感が豊かで、響きも多いが、それに埋もれずに弦が「ブルン」と震える細かな描写も良く見える。
高音の音像のエッジは01の方が立っており、02と比べると“カリカリ感”がある。かといって顔をしかめるほどキツい音にはなっておらず、音が破綻しない一歩手前で踏みとどまっている。
おそらく、02の方が多くの人が気に入る音、01は、ポータブルヘッドフォンでも音圧と高解像度を兼ね備えた本格的な中低域が楽しみたいという人にマッチするだろう。