“Zooma!:ズームレンズ、ズームすること、ズームする人、ズズーンの造語”

第568回:夏が待ち遠しくなる一台、ソニー「HDR-GW77V」

~単体で水中撮影。ハンディカム初の防水~


■ハンディカム初!?

 ビデオカメラの役割が次々とデジカメに食われていく中、ビデオカメラの意味ってなんなの? という答えを各メーカーが出し始めている。ビデオカメラ界で最大手のソニーがたどり着いた最初の解は、異常によく効く手ぶれ補正だったわけだが、これもレンズ+センサーごと動かす空間光学手ぶれ補正の登場で、行き着くところまでいっちゃった感がある。

 そして次なる解として登場させたのが、防水モデル「HDR-GW77V」(以下GW77)なのかもしれない。意外なことに、防水モデルはハンディカム史上初なんだそうである。過去マリンケースに入れて水中撮影ができるモデルはあったが、裸のままで水中に入れられるモデルは初めてということだ。

 発売は丁度今週金曜日(25日)からで、ソニーストアではすでに先行予約発売が始まっているようである。店頭予想価格は7万円前後となっているが、ネットでは既に6万円を切っているところもある。

 防水モデルは過去三洋Xactiが得意としてきた分野で、それが今はPanasonicに引き継がれている格好だ。米国ではヘビーデューティな防水モデルは受けるのだが、日本ではあまりヒット商品とならない傾向にあるようだ。そんな中、初めての防水モデルに挑むソニーGW77を、さっそくテストしてみよう。




■久々の縦型機

 GW77は、ホワイト(W)、ブラック(B)、ブルー(L)の3色カラーバリエーションがある。今回はホワイトモデルをお借りしている。

 ソニーとしては久々の縦型機だ。シンプルな箱形で、スタイルとしてはオーソドックスである。グリップ部には滑り止めのシボ加工があるが、手に持ってもサラッとした手触りだ。重量も軽く、バッテリー込みで220gしかない。

久々に登場した縦型機グリップ部はシボ加工が

 サイズもコンパクトで、AVCHDフォーマットのカメラとして考えたら、相当小さい部類に入るだろう。三洋Xactiとその後継のPanasonic WAシリーズのほうが小さいが、こちらはMP4カメラという分類に入る。まあ記録フォーマットなど、今となってはどうでもいいので、この分類にはあまり意味がなくなってきた。

レンズ部のみちょっと出っ張っている

 正面の光学部は、ボディからやや前方に出っ張っている。表面は1枚ガラスで覆われているのかと思ったが、よく見るとフラッシュ部のところで分かれている。それでも内部は防水加工されているのだろう。

 レンズは29.8~298mm(35mm換算)/F1.8~3.4の光学10倍Gレンズで、他のGレンズ搭載モデルと同じく金の輪がデザインされている。エクステンデッドズームを使えば、最大17倍のズームが可能。

 手ぶれ補正は光学のアクティブレンズ方式で、レンズユニットごと動く空間光学手ぶれ補正ではない。一世代前のハンディカムとだいたい同じ性能と考えていいだろう。

 撮像素子は裏面照射の1/3.91型 "Exmor R"で、総画素数は543万画素。動画撮影時の有効画素数は502万画素となっている。

 液晶モニタは3型、92.1万画素のエクストラファイン液晶で、コントラスト感も上々だ。タッチパネルになっており、操作のほとんどをタッチのGUI上で行なう。映像の明るさ、フォーカス、ホワイトバランスといった調整はマニュアルでも可能だが、フルオートでは自動的にシーンモードを変えてくれるので、そっちのほうが便利というカメラである。

液晶モニタが横に展開する液晶モニタの周囲にはボタンは何もない

 液晶の周囲や内側にはボタン類は何もなく、操作ボタンは背面に集中している。電源ボタンもなく、液晶を開くとONになるだけだ。

シンメトリックに配置されたボタン群

 背面ボタンは、中央に大きく録画ボタンを配置し、左に大きく写真用のシャッターボタンを設けた。ズームレバーはPHOTOボタンと対照のデザインで、上下のシーソーボタンとなっている。一番上は動画と静止画のモード切り換えだ。

 背面には充電池蓋がある。底部のロックを外したのち、蓋を下にスライドさせたあと、上に跳ね上げるという方式だ。蓋の裏側には、バッテリほか端子類をカバーするための樹脂製の内蓋が付けられており、開けるときに若干吸い付くような手応えがある。この蓋で中味を完全密封するようだ。


蓋を開いたところ底部のロックを外して蓋を開ける樹脂製内蓋内部を密閉

 内部にはミニUSB端子があり、充電はここから本体で行なう。HDMIマイクロ端子もここだ。テレビに繋ぐときは蓋が開けっ放しにせざるを得ないが、まあ防水モデルなのでやむを得ないだろう。

 内蔵メモリは16GBあり、最高画質の1080/60p/28Mbpsで記録すると、約1時間の撮影が可能。外部メモリースロットは、メモリースティックマイクロとmicroSD/SDHCカードの兼用となっている。

バッテリーはサイバーショットで採用が多い平形のGタイプである。他にサイバーショットを持っていれば、それが予備バッテリになるというメリットがある。スペックによれば、連続撮影で1時間半、実撮影時間で約45分となっている。普通のハンディカムに比べると短いので、これ1台で旅行を撮ろうとすると、予備バッテリはあと1~2個は必要だろう。

 なお、この裏蓋以外には開口部はない。マイクは本体上部、スピーカーは底部に付けられている。

電池はデジカメと同じGタイプマイクは上部に

 防水性能としては水深5m、同時に防塵性能もあり、耐衝撃として1.5mからの落下に耐える。見た目はスマートだが、案外タフなスペックを実現している。



■撮影機能としては標準的

 ではさっそく撮影してみよう。型番のGWはゴールデンウィークではないと思うが、丁度ゴールデンウィーク時に貸していただいた事もあり、いつもの公園ではなく、子どもを連れて群馬県の保養施設でいろいろ撮影してきた。

発色はなかなかクリアでよく写る被写界深度はかなり深く、風景はパンフォーカス的に撮れるマクロは最短でレンズ前1cmまで寄れる

 とは言っても、本機は防水であるといったこと以外には至って普通のカメラなので、画質云々というよりも使い勝手の方を重点的に見ていこう。

 まずサイズ感だが、本当にシンプルな縦型なので、持ち運びに邪魔にならない。専用ポーチに入れればしっかりガードもできるが、そもそも1.5mの落下に耐える作りなので、そのままバッグに直入れで問題ない。

別売のケースは色も揃う
たぶんこう持たないと操作できない

 グリップは滑り止め加工のために滑りにくいが、背面のボタン類がかなり上の方にあるので、これを親指で押そうとすると、人差し指をボディ上に載せて、中指を中心にホールドする事になる。若干不自然なグリップだ。

 これだと人差し指がどうしてもマイク部に触れてしまったり、指が下がってくるとレンズにかぶったりと、ちょっと快適とは言えない撮影スタイルになってしまう。この点では、Xactiのようなガンスタイルに軍配が上がる。

 防水モデルということもあって、ボタンの作りもかなりしっかりしているが、逆に言えばちょっと硬めだ。ズームレバーは、上がワイド、下がテレになっているが、Xactiが逆だったのでつい間違ってしまう。普通身体から離れる方向がテレ、身体に近づく方がワイドだと思うので、感覚的に逆のような気がする。

 以前からソニー機には画面内にもズームボタンがあり、それも上がワイド、下がテレになっている。画面内操作の場合は、WやTといった文字表記も一緒に見ているわけだから間違わないが、手触りだけで操作するボタンもこの表記に合わせたら変な感じになった、ということだろう。

 ズームレバーは、スピードが2段に可変するようになっている。緩く押し込めばゆっくり、強く押し込めば速くズームする。ボタンには二段押しの感触はないが、ボタンが硬めなので、操作的には難しくない。

 モード切り換えボタンは、後ろから前方向に押し込むのかと思っていたが、よくよく見ると上から下に押すボタンであった。押し下げるにしてはボタンがあまり出っ張っていないので、正直押しづらい。

【動画サンプル】
zoom.mp4(57.9MB)
【動画サンプル】
sample.mp4(169MB)

ズームレバーは2スピードで動作する。前半がゆっくり、後半が速め動画サンプル。発色はかなりいい
編集部注:編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい


■かなりクリアな水中撮影が可能

【動画サンプル】
water.mp4(148MB)

水中撮影もテストしてみた
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 では肝心の水中での撮影を試してみよう。デザイン的には本当に普通のカメラに見えるので、これをこのまま水中に入れて大丈夫なのか一瞬躊躇があるが、試してみたら全く問題なく撮影する事ができた。何も装備がいらず、地上からそのまま水中に突っ込めるというのは、インパクト絶大である。

 画質的にも非常にクリアで、水中が濁っていなければかなりよく撮れる。「おまかせオート」モードに設定しておけば、自動的に水中モードに切り替わるため、色味がすっきりした映像が撮影できる。

 あいにく撮影日は前々日に振った豪雨の影響で、水自体の濁りはなかったが、かなりの水流があった。そもそも水道などからの勢いのある水流を直接当てないようにという但し書きはあるが、川もそれなりに水流はある。

 この点で懸念されるのが、液晶のヒンジだ。撮影スタイルまで液晶を開いた状態では、かなりの水の抵抗を受けることになり、ここの強度が心配になるところだ。いくら1.5mの落下に耐えるとはいえ、それは液晶を内向きに閉じた状態での話なので、開いた場合の強度は別問題である。

 水流が強い場合はモニタリングは諦めて、液晶を裏返しにしてボディにくっつけた状態で撮影するしかないだろう。液晶を内向きにすると、録画中でも電源が切れてしまう。何度か水中撮影してみたが、水流に負けて液晶が閉じてしまう事もあり、それが原因で途中で録画が止まっていたこともあった。

 水から引き上げても、レンズ面のガラスは水をよくはじくので、水滴が付いたままになるケースは少なかった。ただ、水中は温度が下がるため、引き上げてしばらくするとガラス面が曇ることがある。


【動画サンプル】
flare.mp4(43.7MB)

カメラが冷え冷えだと内部が曇り、なんでもないところでフレアが出やすくなる
編集部注:編集部では掲載した動画の再生の保証はいたしかねます。また、再生環境についての個別のご質問にはお答えいたしかねますのでご了承下さい

 表面の保護ガラスは、通常のカメラよりも1枚多くガラスがはまっている状態なので、ガラス面の曇りと重なると、フレアが出やすくなる。本機は菱形絞りだが、その形が顕著に表われる。

 音声収録だが、水中でもそのまま音が拾えるのはなかなか面白い。マリンケースを使うと音が入らないので、なかなか新鮮だ。ただ水中から引き上げたときの水はけがよくないようで、中が乾くまで耳に水が詰まったような音になってしまうのは残念である。

 水中撮影の場合、リストストラップの装着は必須だ。うっかり手を滑らせて流されたり沈んでいってしまったらシャレにならない。付属のリストストラップは紐製の標準的なものだが、これは防水モデルとしてはいけてない。

 なぜならば、これが水を含んでいつまでも手首にべちゃべちゃまとわりつくので、気持ち悪いんである。また色もホワイトグレーだが、これは水を含んで汚れやすいのではないだろうか。できれば手首がきゅっと締まるような中間リング付きで、ビニール製のもののほうがよかった。

 別売品としては、手を離しても浮くような素材のフロートストラップもある。水深の深いところに行くのであれば、これはあったほうがいいだろう。




■総論

 GW77は防水モデルというハンデがあるため、空間光学手ぶれ補正付きの最新上位モデルよりは機能的に劣るのは致し方ない。ただ普段使いのビデオカメラとして使うのであれば、価格としては結構安く、サイズ的にもコンパクトなので、選びやすいモデルだ。

 そうしょっちゅう水中撮影なんかするかという問題もあるだろうが、そもそも水に濡れても大丈夫なカメラということを考えれば、雨に濡れるなどしても全然平気なわけである。夏場に限らずレジャーに持ち出す時には、強い味方となるだろう。

 残念なのは、バッテリがあんまり保たないことである。1日撮影するには数回バッテリの交換が必要になるだろうが、その時に水や砂が内部に入らないよう気をつけなければならない。風がある浜辺などにいるときには、注意したいポイントだ。

 ただ、装備が何もいらずそのまま水中まで入っていけるというのは、魅力的だ。GoProのような丈夫さはないが、その代わり画質は全然こちらのほうが上である。

 ワイド端も広いので、ファインダーレスで水中を撮るならば、とりあえずカメラを向けた先のものは大まかには映っているという強みがある。液晶は高コントラストではあるが、水面に近い拡散した光の中で、そうそうちゃんと見えるものでもないからだ。

 水中撮影に特化したわけではないが、既存の技術を使ってうまく防水仕様に仕上げている点で、綺麗にまとまっているカメラだと言えるだろう。

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(2012年 5月 23日)

= 小寺信良 = テレビ番組、CM、プロモーションビデオのテクニカルディレクターとして10数年のキャリアを持ち、「難しい話を簡単に、簡単な話を難しく」をモットーに、ビデオ・オーディオとコンテンツのフィールドで幅広く執筆を行なう。メールマガジン「金曜ランチボックス」(http://yakan-hiko.com/kodera.html)も好評配信中。

[Reported by 小寺信良]