プレイバック2014
宇多田、ひばり、尾崎……ハイレゾを聴きまくった1年 by 編集部:一條
(2014/12/25 09:00)
2014年を振り返ると、昨年に増してハイレゾ対応機器や楽曲が出揃ってきた1年だったと感じる。特に、2013年10月にmoraがハイレゾ配信を開始してから、J-POPやアニソンなど普段聴いているジャンルのハイレゾ化が一段と進み、個人的にもたくさんのハイレゾ楽曲を購入した。moraとe-onkyoの購入分をざっと計算したところ、1年間にハイレゾ楽曲だけで約8万円ほど使ってしまった。
今年購入したハイレゾ楽曲の中で最も印象的だったのは、やはり宇多田ヒカル「First Love」だ。ハイレゾが配信され始めた当初は、SACDなどと同様にクラシックやジャズの作品が多く、若者向けのポップスなどはなかなか揃わなかった。そのような状況の中、誰でも知っている宇多田ヒカルのようなメジャーなアーティストが、いち早くハイレゾ配信に踏み切ったことは、その普及において大きな意味があったと思う。「ハイレゾ楽曲を聴いてみたいけど、聴きたい曲がない」と感じていた多くのユーザーに、購入を後押しするきっかけになったのではないだろうか。12月には2枚のシングルコレクションもハイレゾ配信され、ファンには嬉しいクリスマスプレゼントとなった。
また、美空ひばりのジャズアルバム「ひばりジャズを歌う」と「ひばりとシャープ -虹の彼方-」の2枚もとても良かった。両方とも1960年代に録音されたアナログマスターテープをハイレゾ化したもので、「そんな古い音源をハイレゾ化して意味があるの?」と半信半疑だったが、聴いてみてそんな疑いはどこかに飛んでいってしまった。日本コロムビアのSSS(Super Stereo Sonic)録音技術を駆使した音源は、ややステレオ感が強調された感じはあるが、音の立体感が素晴らしく、美空ひばりのボーカルも生々しい質感が感じられ、CD音源よりもずっといきいきとした躍動感が感じられた。とても約50年前の音源とは思えないほどの素晴らしさで、ハイレゾ音源のポテンシャルの高さをあらためて実感できた。
筆者が物心ついたときには既にレコードがCDに置き換わっており、アナログの音はノイズが多くデジタルに劣るという固定概念が染み付いていたが、ひばりのハイレゾ音源がアナログを見直すきっかけになり、今度はレコードの音を聴いてみたくなった。
このほか、尾崎豊の「ALL TIME BEST」やDreams Come Trueの「ATTACK25」、aiko「明日の歌」などなど、数え上げればキリがないほど、音質も内容も素晴らしいハイレゾ音源がたくさんリリースされ、嬉しい半面、金銭的にはやや苦しい1年だった。2015年はハイレゾ配信がもっと盛り上がり、購入する人が増えて価格が安くなってくれることを願いたい。