レビュー

ゼンハイザー、ソニー、JBL、Noble。'24年春に気になる完全ワイヤレスを編集部で聴き比べ

2024年も5月となり、新年度に突入。新生活がスタートしたタイミングで心機一転、“生活必需品”と言っても過言ではなくなりつつある完全ワイヤレスイヤフォンを新調したいという人も多いのではないだろうか。そこで今回も注目の最新機種や定番モデルなど、4機種の完全ワイヤレスをAV Watch編集部が独断でチョイス。編集部員4人で聴き比べを実施した。イヤフォン選びの参考になれば幸いだ。

今回ピックアップしたのは、以下の4モデル。

  • ゼンハイザー「MOMENTUM True Wireless 4」 オープン/直販49,940円
  • Noble Audio「FALCON MAX」 オープン/直販44,000円
  • ソニー「WF-1000XM5」 オープン/直販41,800円
  • JBL「JBL Tour Pro 2」 33,000円

ゼンハイザー「MOMENTUM True Wireless 4」

3月1日に発売されたゼンハイザーの完全ワイヤレスイヤフォン最上位モデル。従来モデルから音質やアクティブノイズキャンセリング(ANC)、外音取り込み機能に磨きをかけたほか、次世代オーディオコーデックのLC3もサポートするなど、あらゆる面で“魅せる進化”を果たしたという。カラーバリエーションはBlack GraphiteとWhite Silver。

搭載ドライバーは、自社開発の7mm径のTrueResponseダイナミックドライバー1基。緻密なチューニングで高域のレスポンスに磨きをかけたといい、3~5kHzの帯域がクリアになり、8kHz付近のピーキーさも改善。中音域の解像度がよりクリアとなり、広大なサウンドステージを提供する。

バッテリー持続時間は、イヤフォン単体でANC OFF時で最大7.5時間、ケース併用で同30時間となり、ケース併用時の駆動時間は前モデルから2時間強化された。約8分の充電で約1時間使えるクイックチャージも利用できる。

Noble Audio「FALCON MAX」

Noble Audio「FALCON MAX」

2023年12月29日に発売されたモデルで、低域用に10mm系のダイナミックドライバーを搭載。そして高域用にNoble Audioとして初採用となるxMEMES製「Cowell」MEMSドライバーを搭載した、ハイブリッド構成となる。カラーは1色のみ。

MEMSドライバーは、パソコンのCPUなどと同様に、シリコンウェハーで作られる半導体。シリコンウェハーから切り出したシリコン振動板に電圧をかけることで音を生み出す圧電(ピエゾ)方式のスピーカードライバーで、材質の硬さや軽量さを活かすことで、特に高域の再生周波数帯域が広く、歪みが少ないのが特徴。また、製造誤差が少ないことから左右の位相特性も優れ、従来製品では難易度が高かった空間表現にも優れるという。

Noble Audioは、そんなMEMSドライバーを手掛ける米xMEMS Labsと戦略的パートナシップを結んでおり、この最先端技術をいち早く製品に採用。ほかのNoble Audio製品と同じく、“Wizard”ことジョン・モールトン氏がチューニングを担当している。

Bluetooth SoCはQualcomm製「QCC5171」を採用することで、最新コーデックに対応しつつ、シリーズ最高クラスの接続品質と高効率化を実現。コーデックはSBC、AAC、aptX、aptX Adaptive、LDAC、LC3をサポート。もちろんANCも利用できる。

イヤフォンの連続音楽再生時間は、ANC OFF&音量60%時で約5.5時間、ANC ON&音量60%時で約4.5時間。充電時間は約1.5時間。急速充電は15分の充電で約1時間の再生が可能。充電ケースは4回イヤフォンを充電でき、有線接続での充電に加え、ワイヤレス充電にも対応する。

ソニー「WF-1000XM5」

2023年9月1日に発売されたソニーのTWS、WF-1000XMシリーズの最新モデル。“世界最高ノイズキャンセリング”を謳い、前モデルからノイズキャンセリング性能と装着性、新ドライバー搭載によって音質も強化された。カラーバリエーションはブラックとプラチナシルバー。

統合プロセッサー「V2」と、高音質ノイズキャンセリングプロセッサー「QN2e」のデュアルプロセッサー設計となり処理能力が向上。ノイズキャンセリングは、前モデル比でさらに20%ノイズを低減できる。

音質を司るドライバーは、従来の6mm径から8.4mm径に大型化された新開発の「ダイナミックドライバーX」を搭載。この新ユニットと上述の統合プロセッサーV2による24bit信号処理、高品質DACアンプでもあるノイズキャンセリングプロセッサーQN2eの組み合わせにより、「信号処理から変換、再生まで高品位な処理で低歪みの高い音質再現」ができるという。

そのほか、素材感やデザインを一新して装着性を高めたイヤフォン形状となったほか、付属イヤーピースにはSSサイズも追加するなど、装着性も追求されている。

連続再生時間はNC ON時で最大8時間、NC OFF時で最大12時間。ケース併用でNC ON時で最大24時間。ケースはワイヤレス充電にも対応する。

なお、同モデルには4月3日にLE Audio対応機器の拡張とBluetooth接続安定性を改善する最新ファームウェア「3.2.1」が提供されているが、今回の聴き比べはこのファームウェア提供前に行なっている。音質に影響するアップデートではないが、この点はご留意いただきたい。

JBL「JBL Tour Pro 2」

2023年3月10日に発売されたJBLの完全ワイヤレスイヤフォン最上位モデル。同社の完全ワイヤレス最上位モデルとしては3年ぶりのフルモデルチェンジで「究極とも言える装着感を実現するためにゼロから設計を行ない、JBLが育んできた音響技術のすべてと様々な革新的機能が凝縮されている」という。カラーバリエーションはブラックとシャンパンゴールドに加え、日本限定の「聴色(ゆるしいろ)」もラインナップする。

最大の特徴は充電ケースに1.45型のスマートタッチディスプレイを搭載していること。イヤフォンや充電ケースのバッテリー残量を、スマホを見ずに確認できるほか、音量調整や再生制御、NC機能の設定なども、ケースのディスプレイからタッチ操作できる。

筐体はコンパクトなショートスティック型。ダイナミックドライバーを搭載しており、振動板には剛性の高いPEN(ポリエチレンナフタレート)を採用。その表面に、伝搬速度も速く非晶質構造により適度な内部損失を持つことで素材固有の音も少ないカーボン素材「DLC(Diamond-Like Carbon)」をコーティングしている。サイズは10mm。

ハイブリッド式ノイズキャンセリング機能を搭載。リアルタイムで周囲のノイズ成分を監視し、ノイズキャンセリングをかける周波数帯とその度合いを調整する「リアルタイム補正」機能も備えている。「JBL Headphones」アプリを使い、7段階でノイズキャンセリング効果を調整する事も可能。

Bluetooth 5.3に準拠し、コーデックはSBC、AACに加え、アップデートでLC3にも対応予定。連続使用時間はANCオン時、イヤフォン本体で約8時間。充電ケース使用で約24時間。急速充電に対応し、15分の充電で約4時間再生可能。

4機種をAV Watch編集部全員で試聴

試聴は、それぞれ手持ちのスマートフォンを使い、各自が普段づかいや音質チェックに使っているサービス/楽曲を聴いている。また、共通の課題曲として「YOASOBI/アイドル」を設定しており、この曲のみ全員が試聴している。

ゼンハイザー「MOMENTUM True Wireless 4」

「MOMENTUM True Wireless 4」(Black Graphite)
AV Watch編集部 野澤佳悟

Pixel 6aにaptXで接続。強調されている帯域がなく、フラットで見通しの良い印象がありつつも、低域はタイトなアタック感だけでなく程よい量感も感じられるので、「YOASOBI/アイドル」Bパートの重い低域で沈むシーンもしっかりと迫力を感じられる。曲によっては、若干ボーカルの帯域の解像度が足りなく感じるシーンもあるが、ギターやピアノの弾き語り系の楽曲を聴くと、楽器の音と声の広がりが心地良い。とくに音場の広さは今回のラインナップでは随一だと思う。

さすがフラッグシップと言いたいところなのだが、今回のラインナップでは価格が頭一つ飛び抜けすぎていて、音質や性能もその金額とのバランスを考えると首をかしげてしまうところはある。

AV Watch編集部 酒井隆文

「YOASOBI/アイドル」では、ikuraのボーカルの伸びがもう一声欲しいところ。全体的な解像感も、もう一歩というところだが、低域がズシンと深く沈み込みつつ、全体的なバランスも整っているので、楽曲の迫力を味わいつつ、心地よく浸ることができた。

男性ボーカル曲として「米津玄師/月を見ていた」を聴いてみても、低域の沈み込みが印象的。それでいて全体的なバランスも整っており、女性ボーカル・男性ボーカルを問わず、そつなく鳴らしてくれる印象だった。

オフボーカル曲として「ブライアン・タイラー/Formula 1 Theme」などを聴いてみたが、やはりのドラムの低域が量感たっぷりで魅力的。タイトさも兼ね備えているので、弦楽器やブラスの音を邪魔しないので、迫力ある聴き応え。

今回試聴した4機種の中では、もっとも解像感に少し物足りなさを感じたものの、全体的なバランスが整っていること、なによりタイトで量感ある低域が楽曲を盛り上げてくれるので、トータルバランスは整っている1台に思えた。

AV Watch編集部 阿部邦弘

味付けを抑えたナチュラルサウンドが特徴。低域や高域の描写に特色ある3機種に比べると突き出るものがないが、ハイファイな音が楽しめる。「YOASOBI/アイドル」はボーカルが最も電子音っぽい聴こえる一方で、「ダイアナ・クラール/月とてもなく」では艶のある声をダイレクトに伝えてくれた。

もう一歩なのが音の明瞭さ。どのジャンルを聴いても、他機に比べてやや甘い印象でパッとしない。中低域の厚みや締まりは好みなので、もう少し音の解像感があがると、より質感が鮮やかにイメージできると思う。

AV Watch編集部 山崎健太郎

「ダイアナ・クラール/月とてもなく」を再生。「さすがゼンハイザー」と言えるワイドレンジな音で、特に中高域が非常にシャープ。カリカリに強調した高域ではなく、質感描写丁寧で、女性の声やピアノの艶や響きの美しさがしっかりと伝わってくる。音に硬質さもなく、ナチュラルで、ダイナミック型の良さが良く出ているサウンドだ。

技術としては枯れたダイナミック型だが、MEMSドライバーのFALCON MAXに迫る解像度を実現している。「緻密なチューニングで高域のレスポンスに磨きをかけた」言うだけあり、ダイナミック型にこだわるゼンハイザーの面目躍如という印象だ。

低域は「迫力満点」というタイプではなく、どちらかと言えば中高域寄りなバランスだが、低音にしっかり肉厚さがあり、満足度は高い。特筆すべきは音場の広さだ。後述するソニーWF-1000XM5や、Noble AudioのFALCON MAXよりも一回り音場が広く感じられ、開放感がある。

「YOASOBI/アイドル」を聴いても、ソリッドな描写だが、サ行がキツいとは感じない。快感を感じる精細さがありながら、描写が破綻しないという絶妙なチューニングだ。ベースラインは細めだが、重量感はあり、音楽を下支えする安定感はある。

Noble Audio「FALCON MAX」

AV Watch編集部 野澤佳悟

Pixel 6aにLDACで接続。LDAC対応ということが大きいが、全帯域の解像感が飛び抜けていて、モニターヘッドフォンのような見通しの良さがイヤフォンで味わえるような感覚。とくにボーカルのクリアさが顕著なのだが、堅さのない自然な広がりで心地良く、男性女性問わずボーカルメインの楽曲をじっくり楽しみたいと思えるイヤフォンだ。

低域はタイトでアタック感重視ながら、程よい量感も備えているので、個人的には満足できたが、迫力を重視したい人には物足りなく感じそうだ。気になる点は外観。装着してしまえば目につかないし、音は好みではあるのだが。

AV Watch編集部 酒井隆文

MEMSドライバーの本領か、中高音域の解像感は4機種のなかでトップクラス。ただ「YOASOBI/アイドル」では、ikuraのボーカルが少し耳に刺さる印象で「サ行」では。その印象が特に顕著だった。また、そんな鋭い中高域に対して、低域の量感が足りず、すこしアンバランスな印象もあった。

男性ボーカルの「米津玄師/月を見ていた」に切り替えると、ボーカルの刺さりはなくなり、YOASOBIよりも聴きやすい印象。「ブライアン・タイラー/Formula 1 Theme」でもイントロの低域が軽く感じられたが、イントロから流れるブラスサウンドが伸びやかに聴こえてきた。

どの楽曲もキレ味鋭い中高域が印象的だった反面、そのパワフルさと比べるとどうしても低域の迫力に少し物足りなさを感じてしまった。またFALCON MAXはANCや外音取り込みが利用できるのだが、このうち外音取り込みモードにすると全体的に音が上擦って聴こえるような印象もあった。

個人的にイマイチだなと思ったのはケースの作り込み。筐体は光沢感ある仕上げなのだが、高級感よりもチープさを感じてしまう印象。またケースからイヤフォンを取り出すときも、イヤフォンの飛び出しが少ないため指がかりが悪く、取り出すのに少し苦労することが多かった。このあたりは第2世代での改善を期待したいところ。

AV Watch編集部 阿部邦弘

透明感のある、クリアな中高域が特徴。S/Nもよく、ボーカルの音像がクッキリと浮かび上がる。ヴァイオリンやピアノなどの音色も美しく、ホールでの響きや空気感まで伝わってくる。現状数少ないMEMSドライバー搭載機ということもあって、試聴前は勝手に“硬くシャープなサウンド”というイメージを持っていたが、実際の解像感は程よく、過度な印象は受けなかった。

一方で気になったのは、ポップスやロックを聴いた時に感じる、タイトで押しの弱い低域。良くも悪くもキレイな音になりすぎてしまって、低音を多用したアップテンポな音楽を好むユーザーは量感に物足りなさを感じてしまうだろう。

AV Watch編集部 山崎健太郎

「ダイアナ・クラール/月とてもなく」を聴いてすぐにわかるのは、高域の分解能の高さだ。ベースの低音の中にある弦がブルブルと動く様子や、ピアノの鍵盤をタッチする力の強弱など、細かな音が非常に高精細に描写される。まさに「今まで聴こえなかった音が聴こえる」イヤフォンだ。

これだけ高精細な中高域描写だが、BAユニットのように音が硬質、金属質になる事はなく、色付けも少ない。切り込むような鋭さを持ちながら、人の声もナチュラルという、イヤフォンの新時代到来を感じさせる描写だ。

「YOASOBI/アイドル」でも、ボーカルのクリアさ、音像のクッキリ感は、これまでのイヤフォンで聴いた事がないレベル。打ち込みの電撃音も鋭さが鮮烈だ。また、それらの音の響きが、背後の空間に広がって消えていく様子もしっかり聴き取れる。

一方で、楽曲によってはMEMSドライバーの高域と、ダイナミック型の低域の融合感が今ひとつだと感じる。MEMSドライバーの描写が鮮烈過ぎるので、どうしてもダイナミック型の音がゆったり、悪くいうとボワッと膨らんだように聴こえてしまうのがちょっと残念だ。

ノイズキャンセリング性能は標準的という印象で、効果の強さよりも、音質を追求したバランスになっている。

ソニー「WF-1000XM5」

「WF-1000XM5」(プラチナシルバー)
AV Watch編集部 野澤佳悟

Pixel 6aにLDACで接続。ANC性能がこのラインナップでは頭一つ抜けていて、それだけでも強烈な個性なのだが、WF-1000XM5は音も個性的。LDACの解像感の良さと、パワフルで厚みのある低域で、ANCの静けさと相まって、1音1音が身体に響いてくるような感覚になる。今回の「YOASOBI/アイドル」や、「Reol/感情御中 - WANT U LUV IT」のようなさらにアップテンポでEDM調な楽曲は聴いていて気持ちいい。

全体的に低域に寄っているようで、ボーカルも少し重めに感じるのだが、声の低い男性のボーカルにも厚みがあって、「King Gnu/SPECIALZ」などはより迫力マシマシかつ不気味な印象をより強く感じられる。一方で、ボーカルを重視した楽曲や弾き語り系は、やや重めに響く部分に若干ミスマッチな印象がある。

AV Watch編集部 酒井隆文

MEMSドライバーのFALCON MAXと比べると、解像感は少し物足りないが、それでも他の3機種を上回るクリアさ。「YOASOBI/アイドル」ではikuraのキレのあるボーカルと程よい量感の低域がバランス良く、気持ちよく音楽を楽しめた。

「米津玄師/月を見ていた」も同様で、ズンと心地よい低域と米津のボーカルのバランスが良く、曲の雰囲気をしっかりと感じられる。オフボーカルの「ブライアン・タイラー/Formula 1 Theme」も弦楽器、ブラス隊、ドラムのバランスが良く、音楽の世界に浸ることができた。

AV Watch編集部 阿部邦弘

鮮明な高域と迫力のある低音が特徴で、今回試聴した4モデルの中では最も派手な音色だろう。「YOASOBI/アイドル」のような最近の打ち込み系は、明快な鳴りで相性が良いソースの1つ。量感のあるゴージャスな低域だが、決してブーミーにはならず、はぎれの良さは聴いていて気持ちが良い。本機の高い人気は、このキャッチーな音作りも関係しているのだろう。

個人的には、時折耳に刺さる高域をもう少し抑えたいところ。ボーカル音は繊細さよりも声の鋭さが際立ってしまったし、弦の音などにもカサつきを感じた。

AV Watch編集部 山崎健太郎

音質の前に、特筆すべきはNC性能の高さ。装着して音を出す前に、音の無い空間がメチャクチャ静かだと感じる。その無音空間に、スッと音楽が流れ出すため、小さくて繊細な音も聴き取りやすい。これはWF-1000XM5ならではの強みと言える。

「ダイアナ・クラール/月とてもなく」を聴くと、冒頭のアコースティックベースが肉厚で、かなりパワフル。沈み込みも深く、全体としてかなり低域寄りなバランスだ。前述の通りNC性能が高いので、ベースの低域も高解像度に描写され、低い音の響きの中に、弦の細かな動きが見える。

音の色付けは少なく、ソニーらしいニュートラルなサウンドだ。ただ、前述の通り低域がパワフルであり、それに負けないように中高域もクリアに飛び出す描写になっているため、全体的に音圧は高めで、「ピュアオーディオっぽい音」というよりも「パワフルなややドンシャリ系」とも感じる。しかし、SN比が非常に良いため、解像度も高いという印象だ。

そのため、「YOASOBI/アイドル」のような打ち込み系で音数が多い楽曲とマッチする。最初のドラムが「ズガーン」と響き、背後のコーラスやボーカルもクッキリとクリアに描写。電子音の粒立ちも良い。

低域も低重心でパワフル。ベースラインもパワフルに描写してくれる。全体的には「良くできたドンシャリサウンド」なのだが、例えばクラシックやジャズを自然な音で楽しみたいという場合はちょっとミスマッチだと感じる。

JBL「JBL Tour Pro 2」

「JBL Tour Pro 2」(ブラック)
AV Watch編集部 野澤佳悟

Pixel 6aにAACで接続。適度な量感と締りのある低域、解像感があってキレの良い高域、クリアで後ろに抜けていくのが気持ち良いボーカルのバランスの良さもそうなのだが、注目したいのが価格。今回のラインナップでコスパを考えると頭2つくらい抜けているのがこのTour Pro 2だと思う。

ケースに画面がついている色モノ枠に思われそうだが、「こういう音が良い!!」という強いこだわりを持っていなければ“まずこれを買っておけば間違いない”という枠をしっかりと押さえている感じ。様々なジャンルの音楽をひたすら聴き続けるのに向いていそうだ。

AV Watch編集部 酒井隆文

ズンと適度な量感がありつつ、ボワボワと膨らまない低域と、ikuraのキレのあるボーカルがスッと飛び込んでくる絶妙なバランス感。少し高域がシャリシャリとするような感覚もあるが、不快感を感じるほどではなかった。「米津玄師/月を見ていた」も、適度な量感があるの低域と、しっかり解像感のあるボーカルのバランスが良好。

また今回の4機種では唯一のスティック型イヤフォンということもあり、装着時の圧迫感も少なく、長時間の装着でも負担感が少なそうに感じられた。

一方で、ANC ON時と外音取り込み時で大きく音質が変わる印象で、外音取り込みモードにすると、全体的にシャリシャリとしたサウンドになりつつ、低域の沈み込みも少し浅くなるような印象だった。

AV Watch編集部 阿部邦弘

快活でノビのあるサウンドが特徴。“ソニーの音色に近いがソニーほど厚化粧ではない”、絶妙なさじ加減のモデルだ。「YOASOBI/アイドル」では、切れ味のある高域と明るく鳴りっぷりのよい中低域が好印象。若干低域がボワ付く瞬間も感じるが、キラキラと伸びる高域はボーカルや楽器を華やかに再現してくれる。

友人から「手頃で音のいい完全ワイヤレスを教えて」と言われたら、4モデルの中ではJBL「Tour Pro 2」を推すだろう。

AV Watch編集部 山崎健太郎

「ダイアナ・クラール/月とてもなく」を再生。一聴してわかるのは、非常にニュートラルで、バランスも良好だという事。バランスとして一番近いのはゼンハイザーのMOMENTUM True Wireless 4だろうか。ソニーのWF-1000XM5と比べても、WF-1000XM5のような低域モリモリ感は無く、TOUR PRO 2の方が自然な音であるため、音楽のジャンルを問わずに聴ける万能さがある。

比較した4機種の中で、最もオーソドックスなサウンドと言え、多くの人が気に入るだろうなと思う。低域が主張しすぎず、高域にも解像感がありつつ、カリカリ過ぎない。そして音楽の気持ちよさをしっかり届ける。美味しいところをしっかりわかった、JBLらしい音作りのうまさが光る。

逆に言うと、凄まじい高解像度だとか、低域が超パワフルといった特別な個性は無い。地味に感じる人もいるかもしれないが「個性が無いのが良い個性」というイヤフォンだ。

「YOASOBI/アイドル」も、中高域はクリアに気持ちよく聴かせてくれるが、目の覚めるような鋭さ……というほどではない。低域には迫力が適度にあるが、中高域の明瞭さを低下させるほどは主張しない。多くの人が「こう鳴って欲しい」と思うであろう音が出ている。ハイクオリティな完全ワイヤレスイヤフォンの“お手本”のようなモデルだ。

AV Watch編集部