ソニー、13型フルカラー有機ELディスプレイの試作に成功


2月7日発表



 ソニー株式会社は、有機ELディスプレイの大型化技術「TAC」の開発に成功したと発表した。駆動方式は低温ポリシリコンTFT アクティブマトリックス。2003年を目処に量産化を目指すとしている。

 今回発表されたのは、有機ELディスプレイ技術と低温ポリシリコンTFT技術を組み合わせることで、大画面化、高輝度化、高精細化を実現する「TAC」(=Top emission Adaptive Current drive)技術。これにより、ブロードバンド時代におけるテレビなどの動画表示用途として開発を進めていくという。製造プロセスが低温ポリシリコンTFT技術と似ているため、製造コストは同等以下を目指すという。

 有機ELディスプレイは自発光方式で、広視野角、高コントラスト、高輝度、高速応答性といった優れた特徴をもつため、次世代表示デバイスとして有力視されている。しかし、輝度のばらつきが発生しやすいため中・大画面には向かず、携帯電話用ディスプレイといった小面積のもののみが試作されてきたという経緯がある。

新技術の特徴は以下の3点。

  • 画素回路を従来の2TFT構成による電圧書き込み方式から4TFT構成の電流書き込みに変更したことにより、全画素の駆動TFT特性の均一化を実現。駆動TFT特性がばらついても、1画素内における2TFTの特性が揃っていさえすれば、画面内の輝度を統一を保てるという。これにより、10型以上の大画面化が容易になるとしている。色変換はRGB。

  • TFTガラス基板側に送っていた光を、基板の上側に送る「Top Emission」構造を新たに開発。これにより、発光部に対する開口率が従来より向上し、高輝度化が可能になった。また、輝度を維持しながら画素の微少化が行なえるため、高精細化も実現するいう。

  • 有機EL素子は水分や酸素で発光が劣化するという特性があるが、基板全体を中空部分のない密閉構造にすることで、この問題を解決した。中空部分がないため、薄型化にも貢献している。

発表会場で表示デモが行なわれたが、薄型ディスプレイとは思えない高輝度だった
 展示された試作品は13型で解像度800×600ドットのもの。画素ピッチは0.33mm。300cd/m2という、CRT並の高い輝度を実現している(ソニーによると一般的なノートPCでは100cd/m2、PC用CRTディスプレイは200cd/m2程度)。

 4TFT構成のため高精細化は難しいが、「家庭用の動画閲覧を主な目的としており、ブラウン管に取って代わる、中、大型領域での高画質を目指した」(CNCカンパニー 中村末広NCプレジデント)という理由から、高精細化はそれほど重視していないという。

 従来の低温ポリシリコンTFT LCDも引き続き開発を続け、LCDは電力消費量の少ないモバイル用途で、有機ELは中、大型用途で、といった棲み分けを行ないたいという。

 なお、同社が米キャディセント社と共同開発を行なっている自発光の薄型ディスプレイ「FED(Field emission display)」についても、ポストCRTの1つとして開発を続けていくことが発表された。ソニーは2000年5月に開催されたSID 2000において、13.2型カラーFEDパネルを出展している。

□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.world.sony.com/JP/News/Press/200102/01-007/
□「ソニーとキャディセント、FED共同開発を継続」のニュースリリース
http://www.world.sony.com/JP/News/Press/200010/00-1024/index.html

(2001年2月7日)

[orimoto@impress.co.jp]

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