NHK、放送技術研究所を一般公開
~ 走査線2,000本以上のカメラなどを展示 ~


5月18日~20日開催



 日本放送協会(NHK)は、NHK放送技術研究所の一般公開を18日から20日にかけて行なっている。時間は午前10時~午後5時まで(最終日は午後4時まで)。入場は無料となっている。

 同イベントは毎年行なわれており、NHK放送研究所の研究活動と成果を視聴者に公開するもの。今年は「進化するデジタル放送」をテーマに据え、44項目の展示を行なっている。

 「ISDBの高度化」と名付けられたコーナーでは、サーバー型放送サービスのデモを行なっていた。前回まではホームサーバーにコンテンツを蓄積し、必要なときに視聴するという提案を行なっていたが、今回はインターネットとの連動を強調。放送局側のサーバーにアクセスして放送中の番組関連情報を取り込み、同時に視聴するというスタイルを提案。会場ではコンテンツとして2000年の紅白歌合戦を使用し、利便性をアピールしていた。

 また、放送局が番組ごとに用意しているWebページを、テレビ視聴時に連動して閲覧できる「cha@ねっと」を出展。パソコン上にリモコンを模したインターフェイスを表示させ、現在放送中の番組のWebページにアクセスできる。なお現在、実験的に稼働している。

サーバー放送サービスの例 インパクのch@ねっとページ

 来場者の注目度が高かったのが「地上波デジタルハイビジョン放送」コーナー。2003年に関東、中京、近畿で開始され、その後全国で放送される予定。1chにつき個別の伝送方式や伝送量を設定できるため、受信端末に合わせたコンテンツが送信できる。このため、会場では携帯電話や車載テレビなどへの同時送信を解説していた。

 端末ごとにMPEG-2とMPEG-4を使い分けたり、レイアウトを変更している。また、移動体受信の1つとして、ウェアラブルモニタでの受信を提案していた。実際に表示できる眼鏡型モニタを出品し、来場者の人気を集めていた。解像度は320×240ドットで、背景が透過して見える。

 また、「地上波デジタル音声放送」のデモも行なわれた。これは、CD並の音質とデータ放送を同時に行なえるもので、2003年前半に東京と大阪で実験放送が開始される見込み。

端末ごとに表示を変更できる ウェアラブルモニタ 地上波デジタル音声のデモ

 撮影カメラの分野では、800万画素CCD3枚を使用した、走査線2,250本の高精細カメラを展示していた。走査方式はインターレースで、アスペクト比は16:9。CCDサイズは32.2×17.2mm(2.5インチ相当)となっている。水平総画素数は4,400画素。「その場にいるような臨場感のある大画面映像や、グラビア印刷並のきめ細かい画像が得られる」としている。

 ただし、撮像には約600MHzのクロック周波数が必要で、会場には専用の設置面積2畳ほどの巨大な信号処理装置が設けられていた。また、表示できるモニタが今のところ存在しないため、今回は2,480×1,856の液晶モニタ2枚をミラーで合成し、備え付けのルーペで確認するという展示だった。

 ディスプレイでは、FED(冷陰極ディスプレイ)を出品。グラファイトナノファイバーで作られた冷陰極を画素ごとに並べ、蛍光体と向かい合わせた構造をとったもので、高発光効率と低消費電力に有利だとしている。現状ではまだ画素数の少ないものしか実現していないが、大画面・超高精細ディスプレイへの展開を考えているという。

走査線2,250本のカメラ NHK独自のHARP素子も展示 冷陰極ディスプレイ

 記録メディア分野では、ブルーレーザーを使用した光ディスクへの大容量高速記録が紹介されていた。取材用ハイビジョンカメラにこの光ディスクドライブを搭載するのが開発目的。DVDに比べて記録速度で10倍(200Mbps)、記録容量で5倍以上(ハイビジョン映像で2時間以上)をめざすという。現在、同所が開発に成功しているのは100Mbpsのもので、再生系の信号処理も新しいものを開発したという。

 また、「100円玉サイズに、デジタルハイビジョンを2時間以上記録する」ことを目標に、垂直磁気記録ディスクとそれに組み合わせるTMR(Tunneling Megnetoresistance)再生ヘッドnの開発も行なっている。今回の展示では、2.5インチタイプの垂直磁気記録ディスクが展示された。

100Mbit/秒の書き込み実験 ブルーレーザー用ディスク 垂直磁気記録ディスク

 レコーディングの分野では、「ニュース音声認識システム」が紹介されていた。NHKのニュース番組で使用されており、アナウンサーの音声を認識し、漢字かなまじりのテキストにして文字放送で送信する。認識率は9割ほどで、現在、1日2回の放送が行なわれている。将来的には中継現場からのレポートや複数音声など、展開を広げていきたいという。

 また、MPEG映像と音声を同期させ、映像と音声の同時可変を可能にする再生装置や、映像と音声のズレを、話者の唇の動きを解析することで自動的に補正する「リップシンク補正システム」なども紹介されていた。

音声認識を現場中継で実験 リップシンク補正システム

 身近なところでは、ハイビジョンデジタルFPUの展示があった。マラソン中継などで使用されるFPU(番組素材用無線伝送装置)をハイビジョンに対応させたもの。800MHz帯を使用し、変調方式として受信状態の変化に強いOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing)方式を採用している。現在は実験中の段階にあるという。

□NHK放送技術研究所のホームページ
http://www.strl.nhk.or.jp/
□「2001技研公開」のページ
http://www.strl.nhk.or.jp/open2001/index.html

(2001年5月18日)

[orimoto@impress.co.jp]

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