シャープ、2D/3D切り替えが可能な液晶ディスプレイ
~3Dディスプレイのコンソーシアムを設立


3D液晶ディスプレイのロゴ

9月27日発表


 シャープ株式会社とシャープ・ヨーロッパ研究所は、専用メガネが不要な3D液晶ディスプレイの実用化に成功し、2002年度内に量産を開始する。搭載製品も2003年春より発売される予定。価格について具体的な数字は示されていないが、同サイズの通常の液晶よりは高くなる。

 今回発表された「3D液晶ディスプレイ」は専用メガネが不要で、平面表示(2D)と立体表示(3D)を切り替えて利用できることが特徴。文章作成などの時は2Dで、CGやゲームなどで3D専用コンテンツを利用する時には3D表示に切り替えて利用できる。

 技術的には古くからある「視差バリア方式」を採用しているが、従来のTFT液晶に、電気的にマイクロ視差バリアを制御できるスイッチ液晶を組み合わせることで立体視を実現した。3D表示時には、視差バリアにより左右の目に異なる光が届くように分離、左目用と右目用の画像を足し合わせた画像を液晶上に表示することで、立体的に見える。2D表示時にはスイッチ液晶により視差バリアを制御、光を通過させることで左右の目に同じ光が届き2D画像に見えるようになる。

3D液晶ディスプレイの解説 3D表示時にはスイッチ液晶にて、マイクロ光学視差バリアにより左右の光を分離する 2D表示時の概念図

 なお、立体視にはスイートスポット(最適視聴位置)があるため液晶下部に、最適位置を確認するためのビジュアルインジケータを備えている。ほぼ正面から視聴距離70cm程度の位置から見ると液晶下部の赤色のカラーバーが黒色に変わるポジションがあり、その位置が3D視聴の最適ポジションとなる。また、視差バリアにより光の分離を行なうため、3D表示の際の解像度は2D表示の半分になる。

会場に展示された3D液晶搭載のテレビ
液晶下部のビジュアルインジケータで黒の比率が高い位置から見ると立体的に見える(右)。角度をずらすとインジケータが赤くなり、あまり立体的に見えない(左)

 また、3D液晶ディスプレイは、従来のTFT液晶ディスプレイとスイッチ液晶の組み合わせで構成されるため、パネル構造と制御方法が簡単で、低コストで3D化を実現できるという。なお、2Dの画質については「従来製品と同等レベルを実現できる」という。

片山幹雄 モバイル液晶事業本部本部長

 発表会では、同社モバイル液晶事業本部本部長の片山幹雄氏が3D液晶ディスプレイについて解説し、「全く新しい2D/3D表示の切り替えが可能な液晶ディスプレイであり、今後新しい応用商品やソフトを開発し、事業の柱にしていきたい」と意気込みを語った。

 また、「印刷の世界から今までのディスプレイまでは平面しか扱えなかったが、今回の技術で立体視を実現できる。現在、液晶ディスプレイでは、動画の再生などリアルなものを再現することが求められているが、3Dディスプレイにより、より臨場感のある高画質立体画像が実現できる」と3Dディスプレイが市場に受け入れられる状況が整っている旨を解説した。また、特殊なメガネが不要で、2D/3Dが同じディスプレイで利用できるため、3D市場を大きく飛躍させる可能性があると説明した。


 片山本部長は、応用例についても解説し、車や家のバーチャルショールームや、電子図鑑などを挙げたほか、「特に有望なのはゲームだろう。コンテンツ自体は3Dで作られており、それをブラウン管などで表示するため、2Dに戻している。3Dディスプレイの利用により、リアルで迫力があるゲームができる」と述べた。

 シャープ・ヨーロッパ研究所のStephen Bold(スティーブン ボウルド)社長は、'96年にビジュアルポジションインジケータを考案し、最適ポジションを簡単に見つけれるようになったことや、2001年に2D/3Dを電気的に切り替えることに成功したことなどを挙げ、「3Dディスプレイの実用化は、単にディスプレイ技術だけでなく、ハードウェア、ソフトウェア、人間工学の成果である」と解説した。

 また、片山本部長は、3D関連の市場の拡大に向けてコンソーシアムの設立を年内に予定していることも明らかにした。現在、マイクロソフト、富士写真フイルム、東芝、ソニー、三洋電機、コダック、オリンパス光学工業など13社の参加を予定しており、今後も3D関連の技術や製品を有するメーカーに協力や連携を呼びかけていくという。

 3D液晶の量産化は今秋からで、同社の天理工場や奈良工場などで生産される予定。既に他社からの注文も受けており、3D液晶を搭載した製品は「遅くても来年の春には出る(片山本部長)」という。

 また、液晶サイズについては、技術的にはどのサイズでも可能で、AV/PC向けの15型や携帯/PDA向けの8型や4型などを同時期に出荷する予定だという。価格は「市場に受け入れられる値段で提供していきたい」とし、具体的な価格帯については明らかにされなかった。

 70cmという視聴距離については、解像度やサイズにあわせてコントロールできるため、モバイル機器向けに最適な距離に設定することも可能だという。

 また、立体視に個人差があることについても言及したほか、眼の疲れについても「最初のうちは疲れるかもしれないが、何回か見ることで疲れは軽減する。慣れないうちは長時間使わないよう呼びかけていくが、そのあたりの安全基準などについてもコンソーシアムなどで話し合って決めていきたい」と解説された。

 発表会場では、ゲームや電子図鑑への応用例など、3D液晶ディスプレイを使った製品例が多数展示された。個人差が大きいようで、よく見えるという人もいれば、あまり3Dに見えないという人もいた。

会場に展示された3D液晶搭載のテレビ
3D液晶ロゴの3D版 3D液晶を用いたバーチャルショールーム例 Webサイトも3D化
プレイアブルなシャープ製3Dゲームも展示 3D電子図鑑 アミューズメント向けの応用例

□シャープのホームページ
http://www.sharp.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.sharp.co.jp/corporate/news/020927.html

(2002年9月27日)

[Reported by usuda@impress.co.jp]

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