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【2003 International CES】
ソニー安藤社長基調講演レポート
24型有機EL、メモリースティックPROを公開


ソニー 安藤国威社長兼COO

1月9日(現地時間)

標準価格:Las Vegas Hilton Theater


 AV機器/デジタル家電関連の総合展示会「2003 Internatioal CES」初日となる9日に、ソニー社長兼COOの安藤国威氏による基調講演が行なわれた。

 講演は、「ブロードバンドフロンティアに向けたUの世界」と題して行なわれた。同社の目指す「ユビキタスバリューネットワーク」の新展開や、1GBを超える容量が実現可能な新ストレージデバイス「メモリースティックPRO」、200万画素カメラを備えた新クリエなどが紹介された。

 プレイステーション 2やバイオ、スパイダーマンなどソニーグループを代表する製品の模様がビデオで伝えられたあと、安藤氏が登場。「テクノロジーとコンテンツをシームレスに統合し、エンターテインメントを再定義するソニーの取り組みを説明する」と切り出しした。

ドリュー・バリモアと安藤社長

 「映画“スパイダーマン”を見るのは楽しいが、より高品質なホームシアターシステムがあれば、その魅力は一層増す」などの例を挙げ、ハードウェアとコンテンツの協調が必要であることをアピールし、ソニーピクチャーズエンターテインメントの制作の映画「チャーリーズエンジェル2 フルスロットル」のプロデューサで、女優のドリュー・バリモアが登場した。

 バリモアは、映画におけるテクノロジーの重要性や、「DVD化によりさまざまな時代/種類の映画を高品質で見られるようになった。とてもエキサイティングなことだ」などと語った。

 続けて安藤氏は、「ハードウェアとコンテンツは、新たなライフスタイルの実現にむけて互いに依存しあっている」とし、「DVDビデオやホームシアターといったホームエンターテインメントシステムによって映画の魅力は飛躍的に向上するし、携帯電話も音声だけでなく、インターネットコンテンツや様々なエンターテインメントを楽しむことができる」と解説。

 加えて、「次の大きな波は“イメージング”」。「携帯電話やインターネットは、“いつでもどこでも”エンターテインメントをできるポテンシャルを持っている。インフラストラクチャも変化しており、ナローバンドからブロードバンドになっている。ブロードバンドにより、コンテンツとハードウェアは今まで以上に接近する。新しいビジネスの機会が拡大し、ハードウェアだけでなくコンテンツやサービスまでそれは広がっている」と述べた。

 こうした新時代におけるソニーのビジョンを、“ユビキタスバリューネットワーク”というおなじみのキーワードでまとめた。「それは、デジタルデバイスがシームレスに接続される世界ということだ。人々はコンテンツやサービスをいつでもどこでも享受できる。ソニーは、このバリューをいかに使っていくかということにフォーカスしている。このバリューとは、生産性という意味ではなくエモーショナルで琴線に触れるような、人々を力づけるようなものだ」と語り、その実現に必要な3つのキーファクターを挙げた。

  • TV Reborn(TVの再定義)
  • オープンスタンダードの準拠
  • ユーザー中心の価値創造
ユビキタスバリューネットワーク(UVN)のロードマップ UVNの3つのキーファクタ AV/家電向けLinux「Advanced Linux」のフォーラムメンバー

 このキーファクターを、「ナローバンドなネットワーク社会では、PCがネットのゲートウェイだった。しかし、シンプルな受像機にすぎなかったテレビは、ブロードバンド時代には、デジタル化によりホームネットワークの中心になる。人々は、自分の好みに合ったコンテンツの選択などが行なえるようになり、実際に自分の嗜好にあわせてメディアをコントロールできる喜びというのを感じつつある。HDTVは、すばらしい映像やサウンドが実感できる」と説明してみせた。

さまざまなオープンスタンダードをサポート

 また、「相互接続性の実現には、LinuxやJVTコーデックなどのオープンスタンダードに準拠していくことが必要」と述べ、12月に松下電器と共同発表し、中心になって推進しているデジタル家電向けのLinux共同開発についても言及した。Philipsと共同で買収したIntertrustのセキュア配信技術などの利用も積極的に行なってくという。

 そして同社は、「A World About U」というキーワードを掲げ、様々な「U」に適合する製品を送り出する。「U」は、userやunique、ubiquitous、unlimited、ultimate、universal、unfogetable、Youなどの意味が込められている。


左が24型有機ELディスプレイ。右側の13型と比べるとその大きさが際立っている。

 その後、グランドWEGAやWEGAエンジンなどの解説に続き、24型の有機ELディスプレイを紹介した。12型パネルを4枚組み合わせて画面を構成しており、24型有機ELディスプレイは世界最大。すぐに電源が切られてしまったため、近くによって見ることはできなかったが、遠目にも非常に高精細な表示が行なわれていると感じられた。

 そこで、ブロードバンド時代の「A World About U」を実現するものとして、日本では発売済みのHDDレコーダ「コクーン」を紹介した。まず、自動アップデートやパーソナライズ化などのインテリジェント機能、インターネット対応によるユビキタス化の実現など、コクーンの長所を挙げ、オープンなLinuxベースであることに言及した。また、mycast GUIと呼ぶインターフェイスによりムービーや音楽などをシームレスにコントロールできることを説明した。

 なお、高いセキュリティを実現可能なJVTコーデックと呼ばれる新コーデックに対応し、今年の後半に日本で同コーデックを使って、コクーンを利用したストリーミング配信サービスを行なうという。


米国では初お披露目となるコクーン コクーンの3つの特徴コンセプト

 ステージ上には、女性ボーカルグループ「MaryMary」が登場し、コクーンやエアボードの紹介や、バイオに搭載したデジタルコンテンツコントロールソフト「VAIO Media」によるリモコン操作を行なった。

 スクリーンでは、プレイステーション 2用のエバークエストのデモも行なわれ、安藤氏は昨年9月のSony Dream World 2002でも公開された「バイオE.Q」を取り出した。

 「バイオE.Q」は、さまざまなセンサーを装備した小型のセンシング・コンピュータで、センサーでユーザーの経験や思考を自動的に収集、蓄積する。たとえば、「顔は覚えているけど名前は覚えていない」という人に出会うと、過去の情報から、その人が誰で、いつどこで会い、なにをやったかなどを教えてくれる。安藤氏は、「パーティに来たときに話しかけられて、あれだれ? っていうとEQが教えてくれるのだ」というと会場からは笑いがおこった。なお、「バイオE.Q」は「Wintelベース」とのこと。

バイオE.Q DCR-DVD200

 また、8日にカンファレンスで公開した8cm DVD-R/RW対応のデジタルビデオカメラ「DCR-DVD200」のデモも行なった。再び、ドリュー・バリモアが登場し、チャーリーズエンジェル2のメイキングなどの編集や、その場で撮影したDVD-Rを再生して見せた。

 続いて、メモリースティックを次の世代につなげていくとし、メモリースティックPROを発表した。

 転送速度160Mbps(理論値)、容量1GBの実現が可能な次世代メモリースティックで、将来的に32GBまでの拡張がアナウンスされている。詳しく説明されなかったが、プロトタイプの小型ビデオレコーダを披露し、メモリースティックPROの登場により新たなタイプの録画機器の登場を予告した。


メモリースティックPROを発表 プロトタイプの小型ビデオレコーダ。詳細は不明

「PEG-NZ90」。従来モデルと同様に回転式のディスプレイを採用している

 また、200万画素カメラを装備した新クリエ「PEG-NZ90」も紹介。「NZ90」は、Palm OS搭載のPDAで、高画素化に加え内蔵フラッシュの採用によりカメラ機能を大幅に強化した。

 液晶は現行機「PEG-NX70」と同様の320×480ピクセルで回転式ディスプレイを採用している。CPUはXScale 200MHz。メモリースティックスロットと専用IEEE 802.11b無線カード用のCFスロット(コミュニケーションスロット)を装備、Bluetoothを内蔵している。店頭予想価格は約800ドルで2月末より発売される予定。

 また、バッテリが着脱式になっており予備バッテリを利用した連続駆動も可能となる。バッテリ駆動時間は未定とのこと。

バッテリは着脱式 ボディカラーも一新されている 背面

 また、新しいエンターテインメントと、コミュニケーションの共同は、HDにより最終的に実現されるとして、HD映像の時代が近づいていると説明。

 HD対応のデジタルカメラ「CineAlta」について、「タイタニック」などの作品で知られるジェームズ・キャメロン監督が、「この10年の進化と、デジタル化によるメリットは大きく、End to Endのデジタル化は非常に刺激的である」とビデオでコメントを寄せた。また、Blu-rayの実現により、2時間30分のHD映像が収録できようになるなどと、映像製作現場からコンシューマーに向けてHD化が徐々に進んでいることをアピールした。

ジェームズ・キャメロン監督がビデオでコメント Blu-rayレコーダ

MaryMaryと競演したSDRに会場からは歓声が挙がる

 安藤氏は、「われわれが、いかにユビキタスバリューネットワークを実現していくかということを説明できたと思う。まだまだトランジットの段階であり、異なる業界の人とも一緒になって協力していく必要がある」と、聴衆への協力を呼びかけた。

 最後に、2足歩行ロボット「SDR」が登場し、日本語や英語で挨拶を交わし、MaryMaryの演奏にあわせてダンスを踊ると会場は大きな拍手で包まれた。



 その後のQ&Aセッションでは、まずBlu-rayの立ち上がり時期についての質問があがったが、安藤氏は「たぶん日本が先だろう。Blu-rayが軌道に乗るには2005年が重要になるだろう」と述べ、「我々はいろいろなライセンス問題について話し合っている段階だ。また、ハリウッドのスタジオなどと話し合っているが、DVDに熱心で次世代についてはさほど力が入っていない」という。

 また、講演で強調していたLinuxについては、「シンプルなビデオオンデマンドの端末などであれば、Linuxが最適だが、オフィスなどでの利用であればWindows OSの利用が妥当である」とし、PCについての大きな方針転換ではないことを強調した。

 AIBOやSDRなどのロボット事業については、「いくら金になるかと、どれくらい夢があるかの2つの方向がある。なぜ、AIBOなんかにそんな金を使えるんだという声もあるだろう。しかし、トヨタがF1に投入する金額などを見れば、大きな投資を行なって、さまざまな蓄積を得ている。人々の感情に訴えるというビジョンを体現するものということでもいい。2、3年といった短い期間のビジネスではなくて、もっと息の長いビジネスだ」と回答した。

 また、東芝が今回のCESで実動機のデモを行なっている、DVDのHD映像収録規格「HD-DVD」については、「とても理解できることだと思う。しかしわれわれはもっとドラステイックな変化を望んでいる。いろいろタイミングを考えているが、今はこれ以上は話さない」と回答を打ち切った。

□2003 International CESのホームページ(英文)
http://www.cesweb.org/
□CES基調講演のページ(英文)
http://www.cesweb.org/conferences/keynote.asp
□ソニーのホームページ
http://www.sony.co.jp/
□関連記事
【1月9日】2003 International CESレポート【ソニー編】
―8cmDVDカメラ、DVD±R/RWレコーダなど新製品多数
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030109/ces04.htm
【2002年9月12日】ソニー、Sony Dream World 2002で
“未来バイオ”2機種を公開
~バイオノートの試作モックアップなども展示
http://pc.watch.impress.co.jp/docs/2002/0912/sony.htm

(2003年1月10日)

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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