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ピクセラ、世界初の3セグ対応地上デジタルラジオを発表
-2004年7、8月頃を目処に商品化を予定


世界初の3セグ対応地上デジタルラジオチューナはPCカードタイプ
9月30日発表


 株式会社ピクセラは30日、株式会社エフエム東京と合同で記者発表会を開催した。世界初の3セグメント受信に対応した地上デジタルラジオチューナを発表した。試作機はPCカードタイプで、2004年第1四半期にサンプル出荷を開始し、2004年7月、または8月を目処に商品化を目指すという。価格は未定。

 エフエム東京が富士通に2002年4月に製作を依頼した、3セグメント受信対応のOFDM(Orthogonal Frequency Division Multiplexing:直交周波数分割多重)復調LSIを採用。ピクセラが富士通と協力し、同LSIとカードバスコントローラの1チップ化に成功したという。チューナユニットは松下製。

 PCと接続し、PCのスピーカーを使ってデジタルラジオを聴取する製品。専用のソフトウェアをインストールし、ソフトウェアを使って選局したり、文字情報や静止画、簡易動画の表示が行なえる。対応OSはWindows 2000/XPだが、Macintoshへの対応も検討中とのこと。

試作機でも実際に音声、動画、文字情報などの受信が可能だった

 発表会場には製品のモックアップだけでなく、実際に稼動する試作機も展示された。現時点での細かい仕様は未定。試作機には録音機能はないが、製品化までに録音機能の搭載も検討していくという。

 また、会場には3.5インチの液晶ディスプレイを搭載した、ポータブル受信機のモックアップと、試作機も展示されていた。実用化サンプル出荷は2004年の第1四半期を予定しており、デジタルラジオのほか、MP3プレーヤーやMPEG-4などの動画ファイルビューワーとしても利用できる。

PDAタイプのポータブル受信機のモックアップ ポータブル受信機の試作機。ポータブルMP3プレーヤーとしての機能も装備している

 ピクセラの藤岡浩社長は、地上デジタルラジオ受信機を開発した理由について、「何か新しい分野にチャレンジしようと考えていた。そこに、放送のデジタル化を計画していたエフエム東京と、OFDMを開発した富士通が現れ、やってみようという話になった」と、開発の経緯を説明。

 また、今後の製品展開については「PCカードタイプはCFカードサイズになっていく予定。市販のPDAでも利用できるようにしたい」と話す。また、単体タイプには、IPテレビ電話機能や、デジタルカメラ機能などを搭載することも検討しているという。

 さらに、車や携帯電話、オーディオ機器に地上デジタルラジオ受信機能を搭載するための、組み込みモジュールの開発も進めており、2004年より順次発表する予定。

ピクセラの藤岡浩社長 今後の製品展開


■ 簡易動画放送は3セグメント放送局が配信

地上デジタルラジオの内訳。3セグメント放送はTOKYO FMとニッポン放送、JFNCの3社が実施する

 地上デジタルラジオは、4月に試験電波の発射が開始され、10月10日に実用化に向けた試験放送が東京・大阪で開始。実証実験などを経て、本放送が開始される予定。CD並の高音質でラジオ番組を放送できるほか、簡易動画放送や文字情報などのデータ放送も可能になる。

 送信場所は東京が東京タワー、大阪が生駒山(NTT西日本)。放送サービスエリアは、出力300Wの場合、東京で16号線内側の約1,500万世帯、大阪は大阪平野一帯の約420万世帯。ただし、2003年の放送開始時の出力は1セグメントあたり100Wになるため、上記よりもエリアは狭まり、東京で約500万世帯が聴取可能。なお、出力は放送開始後、速やかに増力を予定しているという。

 放送開始当初はVHFの7chを8つのセグメントに分割し、東京は1セグメント放送×5、3セグメント放送×1の計6グループ。大阪では1セグメントのみ計8グループが放送される。3セグメント放送は、TOKYO FMとニッポン放送、JFNCの3社が実施する。

データ容量の問題で、3セグ放送以外での簡易動画放送は難しい

 使用するセグメントの数により、放送番組の最大データ容量も異なる。具体的には、1セグメントあたりの伝送帯域幅は432kHzで、伝送容量は330kbps。3セグメントの場合は1,296kHzの帯域を使い、990kbpsの伝送が可能。

 使用される音声フォーマット(AAC)でCD並の音質を実現する場合、144kbps以上が必要となり、簡易動画は256~384kbpsのデータ量となるため、1セグメント放送では高音質音声と静止画、文字情報放送のみになる見込み。

 一方、3セグメント放送では、複数のチャンネルで異なる高音質音声を放送したり、高音質音声と文字、データ、簡易動画などを織り交ぜた放送が行なわれるという。


■ コピーガードは放送局や番組、楽曲によって異なる

エフエム東京のデジタル放送プロジェクト・リーダーの小針俊郎氏。小針氏はDigital Radio 98 The Voiceの代表も兼任している

 発表会では、エフエム東京のデジタル放送プロジェクト・リーダー、小針俊郎氏が3セグメントを使った放送内容や提供サービスを、具体的な例を交えて解説した。

 まず、受信用ソフトウェアのインターフェイスは大きくわけて「簡易動画表示エリア」、「番組表(EPG)」、「文字情報/静止画表示エリア」、「コントロール部」で構成されている。

 簡易動画表示エリアでは、放送中の番組に簡易動画が含まれる場合、放送中のスタジオの様子や、オンエア中の楽曲のプロモーションビデオなどが流れる。

 文字情報/静止画表示エリアには、パーソナリティーが話している内容についての詳細情報や、番組の補足情報(お便りの宛先やプレゼントの申し込み方法など)が表示される。さらに、プル型のサービスだけでなく、プッシュ型のコンテンツも用意。他チャンネルで放送中の番組紹介や、ニュース、天気予報、交通情報などにも任意にアクセス可能。例えばプロ野球中継の音声を聞きながら、スコアボードを文字/静止画で見るといった使い方もできる。

 また、データ放送はBMLで記載されており、PCのWebブラウザなどとの連携も可能。オンエア中の楽曲をクリックするとWebブラウザが立ち上がり、有料のネットワーク音楽配信サイトで、目的の曲をすぐに購入できるサービスも実施するという。

 なお、コピーガードに関しては、「各放送局によって異なる上、詳しいことは未定だが、楽曲については基本的にコピーワンス。ただし、例外とする曲もあるし、トークの部分などは何度もコピーできる状態で放送することも考えている」(小針氏)という。

画面左上が「簡易動画表示エリア」、左下が「番組表(EPG)」、中央が「文字情報/静止画表示エリア」、右側が「コントロール部」 他のチャンネルの放送内容や、ニュース、天気予報などが、放送中の番組と関係なく、任意に表示できる 有料音楽配信サイトへのリンクが表示され、放送中の楽曲の購入も行なえる

スロットマシーンなどのゲームも用意。また、有線のように音楽のみを流し続けるチャンネルや、1つ番組を複数の言語で放送するといった案もあるという お店の紹介番組を放送しながら、その店舗で使える割引クーポン券を配信するといった番組も製作もできる CMでは、製品紹介映像が表示されるほか、購入可能な通販サイトへのリンクも表示される。また、通販番組の情報量も格段に増えるという

 地上デジタルラジオで実施される新しいサービスについて小針氏は、「ラジオは聞くだけのものではなくなり、“知る”、“使う”メディアになる」と表現。今後は、新しい機能を使った番組企画、サービスだけでなく、「楽曲配信や蓄積型サービスも取り入れた、新しいビジネスモデルを早急に作り上げたい」(同氏)と今後の抱負を語った。

 また、小針氏は3セグメント放送局(TOKYO FM、ニッポン放送、JFNC)の3社が、提供する放送サービスの総称として「Digital Radio 98 The Voice」という名称を採用したことも明らかにした。

 これは「3セグメント放送局」という言葉が一般の人にわかりにくいためで、「98」はデジタルラジオにおけるチャンネル番号、「The Voice」は、「デジタル化して動画や静止画のサービスを得たとしても、基本は“声”から始まっているというメッセージを込めた」(小針氏)という。

発表会の司会を務めたのは、TOKYO FMでパーソナリティーとして活躍中の手島里華さん デジタルラジオの機能紹介で使われた放送は、発表会のために作られたオリジナル番組。パーソナリティーはニッポン放送の上柳まさひこ氏と、TOKYO FMの柴田玲さん。どちらも朝の看板番組の人気パーソナリティーで、まさにAM、FM、放送局の枠を超えた夢の共演だ

発表会が行なわれたのは、エフエム東京の最上階にある「ジェットストリームラウンジ」。城達也氏や小野田英一氏が深夜0時の人気番組「ジェットストリーム」を放送していた場所だ。通常は会員制の高級クラブである

□ピクセラのホームページ
(9月30日現在、この件に関する情報は掲載されていない)
http://www.pixela.co.jp/
□エフエム東京のホームページ
http://www.tfm.co.jp/
□社団法人デジタルラジオ推進協会
http://www.d-radio.or.jp/
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【5月23日】NHK、技術研究所で地上デジタルラジオ受信機などを公開
-リクエストやテレビエージェントなど、新サービスも提案
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030523/nhk.htm
【2002年4月9日】富士通とTOKYO FM、地上デジタルラジオの受信チップを開発
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20020409/digiradi.htm

(2003年9月30日)

[AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]


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