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【11月30日】 【11月29日】 【11月28日】 |
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米国No.1番組情報サービスのTiVoは、今年も順調なソリューション展開を見せている。今回のCESで行なわれたプレスカンファレンスの情報をお伝えする。
TiVoをご存じない方のために簡単に説明しておこう。TiVoの基本は、ネットワークや電話回線を使った番組情報サービスで、レコーダにソフトウェアが組み込まれる。もっともベーシックな製品には自社ブランドのHDDレコーダがあるが、自社ではハードウェアを製造しておらず、OEM供給を受けている。
■ 圧倒的に低価格なTiVoレコーダ 上記の表にあるHDDレコーダの価格を見て頂ければおわかりのように、非常に安い。録画ビットレートなどは明らかになっていないが、HDD容量としてはせいぜい40GB、80GBといった程度だろう。 TiVoマシンのセールスは、HDD容量よりもむしろ、録画可能時間で語られる。なぜならば、TiVoユーザーの指向を学習して、常にHDDがいっぱいになるよう自動録画を行なう。従って、やたらと何時間分もプールできるものが優れているということにはならない。映像の指向が狭ければ、少ない録画容量でも十分役に立つのである。TiVoの絶対的なアドバンテージは、この自動ユーザーカスタマイズ機能にあると言ってもいい。 今年のTiVoの動きとして、ハードウェア面では新たにセットトップボックス(STB)などで大手の韓国HUMAXとライセンスを締結した。HUMAXからは、HDDレコーダ2機種、HDD+DVDレコーダ1機種が2004年後半に登場する予定。また東芝も今年新モデルを投入するとしている。さらにHughesからは、今年3月をめどにDIRECTVのHD放送が録画可能なチューナ兼HDDレコーダがリリースされる。 またTiVoでは最もハイエンドモデルをリリースしているパイオニアも、CATV STBタイプのHDレコーダを出展していたので、もしかすると同じラインでTiVo対応モデルをリリースする可能性もゼロではない。
■ 「Home Media Option」に新機能を追加 TiVoにはいくつかの機能拡張オプションがある。その中でも、新機能として加わった、家庭内LANでコンテンツを楽しめる「Home Media Option」が注目だ。まずネットワーク面では、新たなコンテンツホルダーとの連携が実現した。米国にはXMとSerius2つの衛星ラジオがあるが、今回XMとの協力が決定した。TiVoは、LAN上のPC内に格納されたコンテンツを再生する機能が以前からあったが、さらにLAN内の別の部屋にあるXMラジオをTiVoから聴くこともできるようになった。 チャンネルなどの選曲操作もTiVoのリモコンとGUIを使って、PC内のファイルを操作するような感覚で扱うことができる。家族の誰かの部屋にXMラジオのユニットがあれば、家族全員がTiVoのある場所でXMの音楽を楽しむことができるというわけだ。ただしXMの音楽はTiVoに録音することはできない。
家庭内LANでデバイス同士を繋ぐような技術は、今回のCESでも沢山発表されている。これらは技術的には見るべきものはあるが、具体的にコンテンツホルダーそのものを巻き込んで、サービスを実現した例は少ない。 ソフトウェア面での提携もいくつかある。デジタルカメラなどの画像管理ソフト「Adobe Photoshop Album」に、新たな機能が追加。好きな写真を選んで「Publish to TiVo DVR」機能を使うと、その画像をTiVoからアクセスできるようになる。TiVo側では、その写真をスライドショーにしたり1枚ずつ見たりできる。
■ PCへのコンテンツ転送を可能にした「TiVo to Go」 今年の最注目は、「TiVo to Go」という機能だ。今までは、TiVoで録画した番組は、同一LAN上にある別のTiVoに転送して視聴する、というところまでは可能だった。これはTiVoがコンテンツを暗号化して記録するという、セキュアなシステムだからである。だが今度のTiVo to Goでは、コンテンツをPCにも転送できるようになった。ただしコピープロテクションを破るわけではなく、そのPCに対して認証を与えるため、TiVoコンテントセキュリティキーと呼ばれるUSBの暗号解読キー(ドングルのようなもの)を取り付ける。ノートPCなどにコンテンツを転送して、このキーをさしていれば、どこでも再生することができる。
転送に使用するソフトは、Sonic(日本ではソニックソルーションズ)の「MyDVD」。TiVo用にカスタマイズされたバージョンで、トップメニューに「Get TiVo DVR Shows」というアイコンがある。これをクリックすると、TiVo内に収録されたコンテンツを一覧してPC内に転送することができる。 MyDVDは基本的にはDVDオーサリングソフトなので、PCに転送したコンテンツを、PCを使ってDVDに焼くこともできる。もちろんそのときにも、さきほどのUSBキーをさしておく必要がある。 PCに転送したコンテンツは、同じくソニックソルーションズのソフトウェアプレーヤー「CinePlayer」で再生する。再生中にUSBキーを抜いてしまうと、瞬時に再生画面が消え、USBキーを刺すようようダイアログが出るなど、セキュリティに穴がないよう配慮されている。
TiVoの面白いところは、既存の規格を全部チャラにして新規格や新技術に期待するのではなく、手元にある技術でどんどん先へ進んでしまうパワーだろう。USBキーは高価なソフトウェアのコピープロテクションとして枯れた技術だが、コンテンツプロテクションにも十分機能する。こういう仕組みを考えるのがうまい会社なのである。 家電組が作るレコーダには、中身がPCでもそれを隠して使わせようとする風潮があるが、TiVoの場合はそれを敢えて隠そうとしない。例えばソフトウェアのアップデートも、オンラインで自動的に行なう。リブートが必要なときには、真夜中に誰も使っていない時間を見計らって、自動的に再起動する。エンドユーザーは何も知らずに、最新のソフトウェアを使うことができる。 TiVoのSeries2は約2年前から販売されているものだが、ソフトウェア的には最新のTiVoと全く同じだ。このような発想は、筆者が以前から提唱している「進化する家電」を具現化したものである。 TiVoの創設メンバーは、SGIをスピンアウトしたメンバーが中心となっている。今PC技術と家電の融合の波が押し寄せているが、まだハードもソフトもギクシャクしているソリューションが多い中、現実の技術を使って非常にうまく全体を回転させている、希な例と言えるだろう。 □2004 International CESのホームページ (2004年1月10日)
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