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2004 International CESレポート 【サラウンド規格編】
Dolbyは「プロロジック IIx」を中心に展開
DTSは新デモディスクを配布


開催期間 : 1月8~11日(現地時間)

会場 : Las Vegas Convention Center
     Las Vegas Hilton Hotel
     Alexis Park Hotel



■ Dolbyブースは、「プロロジック IIx」を中心に展開

Dolbyブースの一押しはやはり最新技術である「プロロジック IIx」だった

 Dolbyブースの目玉は、2003年9月に発表したばかりの新サラウンド技術「ドルビープロロジック IIx」。ブースでは、この新技術が体験できるデモンストレーションが行なわれていた。

 プロロジック IIxは、ヤマハの「CINEMA DSP」、ソニーの「Digital Cinema Sound」と同じ7.1ch音場拡張システムの1つともいえるが、ドルビーが7.1ch化の模範解答を示したということもできるだろう。

 プロロジック IIxはDolbyの新サラウンドフォーマットというわけではなく、あくまでマルチch化技術のとして捉えるのが正しい。従来のプロロジックIIは2chのステレオサウンドを5.1ch化する技術だったが、プロロジック IIxは2chステレオに加え、5.1/6.1chサラウンドを6.1chあるいは7.1chに拡張して再生する技術だ。

 基本はプロロジックIIと同じで、音声ストリームをマトリクスエンコード(複数chの音声信号を1つのchに入れ込んでエンコードする技術)されたものとしてみなし、デコード処理ではこれを分離していく。

 例えば5.1chから6.1chへは、リアの左右2chから共通に鳴っている音声情報を抽出してこれをリアセンターに割り当てる。6.1chから7.1chへは、リア左右2chとリアセンター1ch、合計3ch分から4chを作り出す。5.1chから7.1chの場合は、5.1ch→6.1ch→7.1chと段階を踏んで処理する。もちろん「5.1ch→7.1ch」は「6.1ch→7.1ch」よりも、演算に用いられる情報量が少ないために品質は落ちることになる。

ドルビーデジタルやDTSに代表される、最も基本的な5.1chサラウンドサウンドシステム(DOLBYのプレスキットより転載。以下同様) ドルビーデジタル EX、DTS-ESに代表される5.1chにリアセンターが追加された6.1chシステム プロロジック IIxによる7.1ch再生では、このように、リアスピーカーを聴者を取り囲むようにして配置することを奨励している

 日本国内メーカーをはじめ、2003年末より各社から徐々にプロロジック IIx対応AVアンプ製品は登場している。Dolbyブースには以下のような製品が展示されていた。

ヤマハ「RX-Z9」4,499ドル 「Meridian 861:Reference Surround Controller」14,740ドル パイオニア「VSX-59TXi」4,500ドル

オンキヨー「TX-SR502」 マランツ「SR8400」299.95ドル

「Arcam DIVA AVR3000」1,999ドル 「TAG-McLaren AV32R」7,499ドル

□関連記事
【2003年9月3日】Dolby、ステレオ/5.1chを7.1ch化する「Dolby Pro Logic IIx」
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20030903/dolby.htm

■ DTS、新デモディスクを配布

 対するDTSは、最新DTSデモディスクをブース内の特設シアター内で上映し、来場者全員にプレゼントしていた。なお今年は、新技術の提示はなかった。

 今年のデモディスクの内容は、以下のとおり。

  1. DTS Logo:The Digital Experience
      -The Lord of the Rings:The Two Towers
  2. Marshes/DTS:ES 6.1 discrete
  3. Deeping Wall/DTS:ES 6.1 discrete
      -Pirates of Caribbean:The Curse of the Black Pearl
  4. Storm/DTS:ES matrix
  5. Battle/DTS:ES matrix
  6. X2/DTS
  7. Daredevil/DTS
  8. Gangs of New York/DTS
  9. Casper/DTS
  10. Chicago/DTS
  11. Medeski Martin and Wood:Univisible/DTS:ES 6.1 discrete
  12. Heart:Mona Lisas and Mad Hatters/DTS

今年のDTSブースは整理券を配布しての入場制限付き、完全入れ替え制だった 今回配布のデモディスクは、通算8枚目でVolume.8となった

■ SRS、Circle SurroundエンコーダのAVアンプ組込み計画を発表

SRSブース。昨年紹介した平面スピーカーは、今年は姿形も無し。残念。ちなみに、日本での販売は断念し、米国では店頭での販売はなく、インターネット通販に継続しているとこのこと

 SRSは、2chのステレオサウンドを5.1ch化して再生させる音場拡張技術「Circle Surround」を持っている。コンセプト的にはドルビープロロジック IIや、DTS:NEO6などと競合する技術だ。これは2年ほど前から実用化されており、今ではAVアンプのローエンド機からハイエンド機まで搭載されている。

 CircleSurroundは、一般的な2chステレオサウンドに対して適用しても5.1chサウンドが楽しめる。しかし、ディスクリートな5.1chマルチオーディオ音源をCircleSurround理論に基づいてマトリックスエンコードして2ch化したサウンドに適用した方が、当然だがよりよい再生結果が得られる。

 SRSでは、このCircleSurroundエンコード技術を民生品に組み込む計画を推進中だという。この機能を活用すれば、一般ユーザーレベルでマルチchサウンドを2ch化して保存することができるようになるわけだ。

 一見なんの意味もないように思われるアイディアだが、その活用の筆頭として考え得るのは、SACDやDVDオーディオなどのマルチchオーディオの私的複製用途だろう。CircleSurroundエンコーダはアナログ入力をエンコードするので、デジタルコピープロテクションの問題もない。

 DVDオーディオをCircleSurroundエンコードして2chのMP3化。SRSのバーチャルサラウンド技術「TruSurround」と組み合わせれば、CircleSurroundエンコードしたマルチchオーディオを携帯MP3プレイヤーで楽しむことも夢ではない。

 デジタル録画(録音)ができないデジタルTV放送の5.1chサウンドの番組も、CircleSurroundエンコードしてアナログ2chとして録画することができる。アイディア次第ではいろいろとユニークなことができそうだ。

 ちなみに、TOKYO FMで2月8日(日)19:00~19:55に日本国内初のCircleSurroundエンコードした5.1chサラウンドサウンド放送を試みるそうだ。ただし、5.1chサラウンドサウンドとして楽しみたい場合は、CircleSurround対応のデコーダAVアンプが必要になる。

下から2番目が、既に放送業向けに販売されているCircleSurroundエンコーダユニット。SRSはこれと同等の機能を各種AV機器に組み込んでいくソリューションに、今年は力を入れていく アナログのマルチchオーディオ信号をそのままCircleSurroundエンコーダに入れれば、CircleSurround化された2chのオーディオストリームが出力される。普通のステレオ機器で再生すれステレオサウンドとして、CircleSurroundデコーダ機能付きAV機器ではマルチchオーディオとして再生できる

■ ゲーム業界を重視し始めたTHX

 DVDの映画ソフトなどでTHXロゴの付いたタイトルを見かけたことがあるだろう。映像制作や音声制作を、THXの規定する環境条件で、THXが推奨する機材を使って完成させたという証であり、端的に言えば「THXお墨付きの高画質、高音質」ということになる。これがTHX認証プログラムだ。

 THXは、2003年9月より、このTHX認証プログラムを、ゲーム業界にも広げた。このプログラムを採用した第1号がエレクトロニックアーツ(EA)だ。

 現在、THX認証がとれたのは、以下の5タイトル。「JAMES BOND 007」以外は既に発売中だ。
THX認証プログラムをパスした最新ゲームタイトル

  • NEED for SPEED:UNDERGROUND
  • SSX3
  • MEDAL OF HONOR:RISING SUN
  • LORD OF THE RINGS:THE RETURN OF THE KING
  • JAMES BOND 007:EVERYTHING OR NOTHING

 THX認証が取れたタイトルは、パッケージにTHXマークが付加されるほか、ゲーム起動時にTHXのトレーラーが流れるため、すぐにそれとわかる。

 THXでは、この認証プログラムをEA以外のゲーム配給元、ゲーム開発元にアピールしていきたいとしている。

 またTHXは1月8日に、THX Ultra2準拠のAV再生環境にて、ゲームサウンドを高品位に再現するための音場プログラム技術「THX Games Mode」を発表した。

 これは、THXが特許を持つ、4スピーカーを使った音場定位技術「Adaptive Speaker Array」を活用して、プレイヤーをゲーム世界の仮想空間のまっただ中にいるように音響空間を作り上げるもの。

 具体的には、THX Ultra2の7.1ch再生システムに対応したAVアンプに対する新音場プログラムとして提供されることになる。AV機器メーカーによってその対応は、ファームウェア更新で対応できる機種や、次期モデルに新機能として追加されるなど、まちまちになることが予想される。

 THX Games Modeは、表向きには「THX認証プログラムをパスしたゲームタイトルで特に効果を発揮する」ことになっている。しかし、実際には一般的な音場プログラムの1つであるため、どんなゲームタイトルにも適用できる。

 ちなみに、THXがこんなにゲーム業界に入れ込んでいるのは、同社の調査で「ホームシアターシステムを所有している人の50パーセントが、その環境でゲームも楽しんでいる」ことが判明したからだという。

THX認証プログラムの流れ。これは映像ソフトでの認証の流れだが、ゲーム版のプログラムもほぼ同様の流れになる THX開発の音場プログラムは「THX Games Mode」以外に、「THX Cinema Mode」、「THX Music Mode」がある

□2004 International CESのホームページ
http://www.cesweb.org/
□関連記事
【2004 International CES レポートリンク集】
http://av.watch.impress.co.jp/docs/link/ces2004.htm

(2004年1月13日)


= 西川善司 =  遊びに行った先の友人宅のテレビですら調整し始めるほどの真性の大画面マニア。映画DVDのタイトル所持数は500を超えるほどの映画マニアでもある。現在愛用のプロジェクタはビクターDLA-G10と東芝TDP-MT8J。夢は三板式DLPの導入。
 本誌ではInternational CES 2004をレポート。渡米のたびに米国盤DVDを大量に買い込むことが習慣化している。僚誌「GAME Watch」でもPCゲーム、3Dグラフィックス、海外イベントを中心にレポートしている。


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