パイオニア、NECのプラズマディスプレイ生産会社を買収 －パネル生産シェア世界1位に。NECはPDP事業から撤退

　パイオニア株式会社と日本電気株式会社(NEC)は3日、NECが保有するNECプラズマディスプレイ株式会社(NPD)をパイオニアに譲渡することで基本合意に達したと発表した。3月の統合後、パイオニアのプラズマディスプレイパネル(PDP)生産枚数は110万枚規模となり、世界シェアは1位の22％になる見込み。

左からNECプラズマディスプレイ徳山賢二社長、NEC金杉明信社長、パイオニア伊藤周男社長、同新島昭専務取締役

　譲渡内容は、NPDの全株式およびPDPに関する知的財産権。3月を目処に統合する。買収価格は明らかにされていないが、400億円前後と見られる。

　NPDの売上高は約500億円で、資本金は100億円。NPDは現在、鹿児島県出水市で自社向けの業務用ディスプレイとテレビ向けOEMパネルを生産している。

　パイオニアは、統合によるメリットとして生産枚数の増加と技術力の統合を強調。具体的には、パイオニアの高輝度・高効率技術、テレビシステム化技術、デジタルチューナ技術に、NPDの多面取り技術、内製化技術、CCF(Capsulated Color Filter)などの精密生産技術が加わることになる。その結果、「液晶にも打ち勝てる」(パイオニア伊藤周男社長)とする、世界トップレベルの生産力および競争力を実現するという。

　両社の技術を融合させた新製品については、「投入時期などこれから決めたい」(伊藤社長)とした。

　販売面では、NPDが得意とする民生向けOEM販売力や業務用販売ルートを吸収することで、PDP事業の拡大につなげる。民生機では40型以上世界シェア1位、OEM事業ではモジュール販売で世界1位を目指す。パネルのOEM供給については「第4ライン(山梨)ができたらOEMにも力を入れたいと考えていた。NECのOEMチャネルは魅力。(展開としては)多面取りをうまく使ったインチ別の生産なども考えられる」とコメントした。

統合前と統合後のパネル生産世界シェア(パイオニア推定)

　今回の統合は、2003年10月末からのパイオニアからの働きかけで実現した。パイオニアは、'98年に制定した中期経営計画を実現するため、PDP事業の拡大が最も重要な経営課題と判断。最新の第4ラインに続く第5ラインの建設計画を見直し、生産技術的に親和性の高いNPDの買収に踏み切ったという。

　パイオニアグループの生産拠点は、第1ライン(山梨)、第2ライン(静岡)、第3ライン(同)。生産会社はパイオニアディスプレイプロダクツ株式会社。第4ラインは従来、DVD-R、DVD-RWといった光ディスクの量産工場だった。2005年よりPDP生産に転換する。第4ラインを入れて60万枚の生産能力を有し、2005年における生産枚数世界シェアは第4位、12%と見られる。

　一方NECは、PDP事業を2002年に分社し、NPDを発足。しかし、投資額が高まる中、他社との提携を検討していた。今後はIT・ネットワーク統合ソリューションと半導体ソリューションをコア領域とし、事実上、PDP事業から撤退することになる。

　NECの金杉社長は提携について「PDPはセットメーカーとの垂直統合モデルがベターだと考えた」と理由を語った。なお、液晶ディスプレイ(LCD)事業については、産業用・ハイエンド向けを中心に存続。ただし、パソコン用LCDについては、上海広電(集団)有限公司(SVA)と合弁で6月に生産会社を設立、今後はライセンス収入にビジネスモデルを変更する。

　記者会見でパイオニアの伊藤社長は、Samsung SDI、LG Electronicsといった韓国勢について「市場が拡大するのはこれから。まだ勝った負けたの段階ではない。韓国メーカーも一緒に大きくなれば良い」と話す。また、大型液晶テレビについては「そんなに心配していない。大きなサイズは応答性の問題が残る。40～60型はPDPにとって一番良い大きさ」とした。生産設備への投資が続いていることを指摘されると、「ホームエンターテイメントの中心はディスプレイ。PDPも液晶も見ないケースは考えられない」と強気の姿勢を見せた。

[AV Watch編集部/orimoto@impress.co.jp]

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