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日本電信電話株式会社(NTT)は12日、1GBのデータを記録できる切手サイズのプラスチック媒体「インフォ・マイカ(Info-MICA)」を発表。試作のメディアとドライブを用いたデモも実施した。半導体ROMとの置き換えや、携帯電話、ポータブルオーディオ/ビデオプレーヤー、音楽や映像を記録する媒体としての利用も想定。2005年中の製品化を目指す。
インフォ・マイカ(Info-MICA:Infomation-Multilayered Imprinted CArd)は、「薄膜ホログラム原理」を用いて、プラスチック樹脂媒体に大容量のデータを記録したもの。 最大の特徴は、25×25×2mm(縦×横×厚み)という小型・薄型の媒体に、1GBという大容量のデータを記録できること。なお、2006年までには同サイズで10GBの記録が可能なモデルも実現可能で、研究所レベルでは25GBモデルの動作も確認しているという。
大容量を実現したのは「薄膜ホログラム」と呼ばれる原理。デジタルデータを二次元符号化し、それをもとに計算機ホログラム(CGH)の像を算出。光を当てると、そのホログラム像が結像するような凹凸パターンを、厚さ10ミクロンの層内に成形する。これを重ねて作られる。 再生時には媒体の側面から半導体レーザー光を入射する。すると、凹凸で散乱した光が重なり合い、レーザー光入射に対して垂直方向にホログラムの再生像が結像する。その像をCCDの映像素子で撮像し二次元複合、元のデジタル情報を復元するというもの。
会場での試作機を使ったデモでは、データの転送速度は1.5Mbpsだったが、これは携帯電話などでの利用を想定したためで、原理的には高速化も可能だという。なお、書き込み可能なメディアやドライブの研究も進められているが、現在のところ具体的な製品化の予定はない。 小型・大容量以外の特徴としては、CDやDVDドライブのような回転機構が不要なため、消費電力が少ない。また、ホログラムを撮像する時にだけレーザー光をパルス的に発光すれば良いので、レーザーを常時発光させている必要もない。消費電力は1Wを切る数百mWとのこと。なお、CDドライブの消費電力は最小で約2,000mW、CFカードは100~150mW程度。 また、素材が「ごく一般的なプラスチック」(同社)であり、凹凸パターンの形成にはDVDなどと同じ原版転写プロセスが利用できるため、低コストで大量生産可能。同社は量産時のコストを1枚あたり100~200円と試算している。なお、素材のプラスチックはリサイクルも可能なため、コスト面と合わせて雑誌の付録やチラシのような大量配布にも適しているという。 また、物理的に媒体の層を剥がし、凹凸をコピーすることが極めて困難なため「偽造は不可能に近い」(同社)と話す。さらに、原版を描画するアルゴリズムも独自のものを使用しており、「非常に高度な技術が必要な作業」(同社)だという。
■ 音楽や映像を記録・販売するメディアとしての利用も想定 想定される用途は、大容量ROMとの置き換え用。半導体ROMは1GBを超えるとコストが高くなるため、電子辞書やパチンコ、カーナビなどへの組み込みが想定されている。 さらに、ゲーム、音楽、映画、電子出版などのリッチコンテンツへの使用も想定。特に消費電力が低いため、SDカードと互換性のあるインフォ・マイカ用のドライブを開発し、携帯電話用の媒体として売り込んでいく。そのために「メディアはSDメモリーカードと同程度のサイズを意識した」という。
また、音楽や映像の記録媒体としての普及させるため、国際レコード生産連盟(IFPI)や日本レコード協会(RIAJ)が主催する技術系フォーラムを通して、各レーベル、レコードメーカーに技術的な解説・意見交換を行なっている。
実用化の目処についてビジネスソリューションプロデュースチーム 担当部長の阪本秀樹工学博士は、「複製の難しさから、音楽業界からは大きな反響を得ている。映像分野ではブルーレイやHD DVDなどに注目が集まっているが、今後も各社との話し合いを重ねて行きたい」と、普及への意欲を見せた。
■ 光ファイバの技術を使って課題を克服
「ホログラムメモリ」という概念は40年ほど前から存在しており、映画「2001年宇宙の旅」に登場するコンピュータ「HAL」のパーツとしても、体積ホログラム原理を用いた立方体のメモリが登場している。 しかし、体積ホログラム原理は実用化が難しく、平面的に記録する薄膜ホログラム原理にも大きな課題があり、記録層を積層すると、レーザーを当てた際に各層の像が入り混じって再生され、分離できない。 そこで同社は、光ファイバーなどに利用している、光を閉じ込めたまま進行させる「積層導波路構造」を採用。任意の層のみ選択的にホログラム像を再生できるようにしたという。 さらに、像と撮像用のCCDの間に、液晶を用いたフィルタを設置。複数の画像を同じ領域に多重に記録しても、選択された画像のみを結像・撮像できるようにした。これには「開口多重アクセス技術」が使われており、CCDが撮像する際は、レンズを絞ったような状態になる。
これにより、焦点深度が深くなり、受光部のフォーカス調整をせずに像を撮影できる。なお、像が若干ぼやけるという弊害が起こるが、「もともとのホログラム像のデータが膨大なため、画素密度の荒いCCDで撮影する分には問題ない」(同社)としている。
□NTTのホームページ
(2004年2月12日) [AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]
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