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メモリーテック、DVD互換のHD DVD製造ラインを公開
-約5分でHD DVD/DVDを切替。第2世代では2.5秒/枚を実現


メモリーテックつくば工場

8月18日開催


 メモリーテック株式会社は18日、つくば工場(茨城県つくば市)のHD DVD/DVD互換生産ラインの報道関係者向け見学会を開催した。

 メモリーテックは、パッケージDVDビデオや音楽CD、CD-ROMなど、主にパッケージメディアの生産を行なっている。HD DVDについては早い段階よりサポートを表明しており、5月には量産体制を確立したと発表している。

 つくば工場では、平時はパッケージDVDソフトの生産を行なっているが、新たに導入したHD DVD/DVD互換ラインでは、5分程度でスタンパ切り替えなどを行ない、HD DVDの生産が可能となっている。

メモリーテック 川崎代治代表取締役社長

 同社の川崎代治代表取締役社長が、HD DVDへの取り組みを解説。「なぜメディアメーカーなのに、HD DVDに力を入れるのか? と質問されるが、生産時にDVDとの互換性が高いということが最大の要因」という。

 同社では、つくば工場で5月にHD DVD/DVD共用ラインを立ち上げ、8月には甲府工場でも2ラインを稼動開始した。現在の生産枚数は3.5秒/枚(DVDは3秒/枚)で、フル稼働するとHD DVDで月産200万枚を達成可能という。さらに、9月に甲府でもう1ライン、10月につくばにもう1ラインを立ち上げる。つくばの新ラインは第2世代のHD DVD生産ラインとなる予定で、「3秒/枚を切り、2.5秒/枚程度で製造可能となる見込み。そのため、10月時には月産300万枚体制となる」という。

 現在、HD DVDのパッケージメディアは立ち上がっていないため、現段階ではDVDの量産ラインとして利用される。HD DVD自体はまだ立ち上がっていないが、「DVDの市場も拡大傾向で、年末にはDVDの逼迫が予想されている。新メディアが見えて始めている段階で、新たなDVDへの投資は難しい。兼用ラインが実現できるということは、メディアメーカーとしては大きなメリット」とはなす。

 なお、同社は現在ROMメディア生産に特化しており、記録メディアの製造などは行なっていない。しかし、今後は記録メディアメーカー向けのスタンパ製造などで協力していく予定。

NEC 第一ストレージ事業部 統括マネージャー 早津亮一氏

 NEC 第一ストレージ事業部 統括マネージャーの早津亮一氏は、HD DVDの見通しを、「来年には事業の立ち上げが見えてきている」と紹介。

 また、「ブルーレイは13社で運営されているが、HD DVDは215社のDVDフォーラムの規格。大きなグループで動いているし、BDメンバー10社もフォーラムに参加している」と、HD DVDがDVDフォーラムのメンバーに支持されている旨を説明。ブルーレイ陣営については、「いまさら別のもの作らなくても、と思わなくもない」とコメントした。


7月のHD DVD説明会で早津氏が提示したHD DVDの規格化ロードマップ

 DVDフォーラムでの規格承認作業については、「今後6カ月で全ての規格ができる予定」という。すでにROMの物理仕様はVer.1.0が策定されており、書換型の-RWが9月に承認される見込み」。

 追記型の-Rについては「8月にラウンドロビンテストを実施し、結果も十分なものとなっている。Ver.0.9を(DVDフォーラムの最上位組織)Steering Committeeに提案する」という。あわせて、「ファイル規格やビデオ規格などの論理系の規格も進んでおり、この6カ月で全ての規格が出揃う」と強調した。

 「既にキーパーツも準備が整っており、来年は量産がスタートする。そのベースとなる再生専用HD DVDをの現状を見て欲しい」と、すでに生産準備が整ったHD DVDの優位性をアピールした。



 メモリーテック製造技術統括補佐の日下裕氏は、実際の製造工程について紹介した。基本的にはDVDと非常に近く、マスターテープを納入し、ビデオエンコード/オーサリングやデータ検証、エミュレーション、品質チェックの後、カッティングマスターを完成させる。

HD DVD製造ライン

 カッティングマスターから、スタンパ(ディスク基板に凹凸を転写するための型)製造を行ない、スタンパを利用して複製を作成する。今回公開されたのは、この量産プロセスであるレプリケーション工程。

 射出成型したディスク基板を冷却/クリーニングした後、反射膜を形成。接着剤を塗布して張り合わせ、紫外線を照射し硬化した後、チェックに入る。DVDと異なっているのは、この後BCA(Burst Cutting Area)領域のカッティング作業が伴うこと。


ディスク基板を射出成型して出力

スパッタリング工程で反射膜を形成

ボンディングテーブルで張り合わせ 紫外線照射により硬化するボンディングUVテーブル BCAカッティング工程

 HD DVD ROMでは、コピーコントロール技術に「AACS(Advanced Access Content System)」を採用しており、BCAを使って固有のID管理を行なうという。そのため、コピー保護を前提としたパッケージメディアについては、BCA領域のカッティング作業が必要となる。

全工程の処理が終わった後、スタンパを交換するだけで、DVD/HD DVDの切り替えができる

 BCAカッティング工程以外は、DVDと共用するため、DVD用ラインを新設するのに比べ、5~10%程度のコスト増でHD DVD共用ラインを実現できる。そのため同社では、今後新設するラインについてはHD DVD/DVD共用ラインとするという。

 メディア単価については、現行DVDの10%増程度となる見込み。メディアの製造コストよりは「特にオーサリングやエンコードの工程でのコスト増が立ち上げ当初2年ぐらいは高くなるため(同社)」としている。

 実際にHD DVD用に稼動していたラインを、DVDに切り替えるデモも行なわれた。基本的には射出成型用の機械を一度ストップし、スタンパを入れ替えるだけで、切り替えた後に10枚程度のディスクを試し打ちした後、DVDの生産に切り替えられた。説明を交えながらも、切り替えは10分弱で終了し、DVDの生産が開始された。通常は5分程度で切り替えが可能という。


作成したHD DVDをチェック 東芝のHD DVDプレーヤーを用いた再生デモも行なわれMPEG-4 AVC 12MbpsのサンプルをPDPに出力した

□メモリーテックのホームページ
http://www.memory-tech.co.jp/
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-東芝は2005年中にプレーヤー/レコーダを投入
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040726/hddvd.htm

(2004年8月18日)

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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