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主催者のひとつである社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)の会長を務める安藤社長は、CEATEC開催初日に3人目のキーノートスピーカーとして登壇。デジタル社会が大きな転換期にあることをイベントの栄枯盛衰を引き合いに出して講演を始めた。 「毎年、秋に開催されていたコンピュータのトレードショーの米COMDEXが今年は中止になった。その一方で、コンシューマ・エレクトロニクス機器を一堂に展示するCESは、年々盛り上がりを増している。当協会が主催者の一角を担うCEATECは、デジタルの最先端技術の動向を見ることができものであり、ここに来れば、そのすべてがわかるイベントだ。その点でも世界的視野から運営していく必要があるだろう」とし、「日本のAV、IT業界が、デジタルネットワークの時代において特異性を発揮し、リーディングカンパニーとしてどう地位を高めていくか、そのためには何をしていくかということを考えなくてはならない」と位置づけた。
今回の基調講演で安藤社長がテーマとしたのは、「ブロードバンド・コンバージェンス」。まず、自らの自宅の様子を写真で公開し、プラズマの大型テレビやDVDレコーダーなどのデジタル機器を、自分自身でセッティングしたことを明かしながら、「デジタル機器の接続端子の数が少なく、1ユーザーとして悩ましい問題」などと語った。 そのなかで、安藤社長は、「オーディオ、テレビ、モバイルを連動した使い方がより身近になる中で、ブロードバンド・コンバージェンスが起こっていることを実感する。幸いにも日本は、世界で最も優れたブロードバンド環境がある。このアドバンテージをどう生かすことができるか。ここに業界のチャレンジがある」と提言した。
米国は、パソコンとインターネット、半導体といったインフラと技術を背景に、'90年代に大きな飛躍を遂げた。米国経済の景気回復を牽引したのもIT産業だといえる。それらは、マイクロソフトやインテルはもとより、ヤフー、eBay、アマゾンといったネットを活用して大きな成長を遂げたベンチャー企業の創出につながったことからも裏付けられる。 これに照らし合わせながら、今後10年において、日本のデジタル産業が、日本の景気回復の原動力にしていくべきというのが、安藤社長の基本的な考え方のようだ。 では、どんな点で日本の優位性を発揮できるのか。安藤社長は、「ジャパンユニーク」として、いくつかのポイントをあげた。1つめは、AVとITの融合である。生産性の道具として成長を遂げてきたパソコンを、エンターテイメントの道具として機能を付加し、新たな利用環境を提案したのは、ソニーのバイオシリーズの功績が大きい。 結果として、現在、国内で出荷されるデスクトップパソコンの80%にテレビチューナー機能が搭載されるなど、パソコンでテレビが簡単に見られるようになっているのは周知の通りだ。米国では、まだこうした機能を搭載したパソコンは少なく、「日本から世界に向けて、AVとITの融合製品が広がっていくことになるだろう」と話す。だが、安藤社長は、「PCかAV化したことが重要なのではなく、それによって、新しい使い方を創出できる点が重要である」ことを訴えた。 2つめの特徴は、モバイルの世界での優位性だ。携帯電話では、欧州、韓国勢が高いシェアをとっているが、「日本は、第3世代になって本格的に全世界に打って出られるようになる。全世界で6億台という圧倒的な市場に対して進出できることは大きい。リッチコンテンツの活用やカメラ機能の活用など、日本は、アプリケーション分野では先行しており、この点での優位性を発揮することができる」という。 日本の携帯電話では約9割がカメラ付きといわれているが、全世界で見ればまだ2割強。日本のメーカーが打って出る余地はまだまだあるというわけだ。 また、「これからは、モバイルとAV、モバイルとゲーム、モバイルとコンテンツが融合するが、これらに共通しているのはネットワーク。オンライン機能がこの結びつきを加速させることにつながる」とした。 そして、安藤社長は、日本にはデジタル家電の技術が多く蓄積されていることの優位性についても言及。「日本はデジタル家電に関わるキーコンポーネントを数多く有している。デバイスから最終商品に至るまでの垂直統合の仕組みがある。垂直統合すると付加価値の大きさが圧倒的に違う。デジタルカメラでは内製率が50%を超えており、小型カメラに使われるCCDでは日本のメーカーが90%のシェアを持っている。ただ、この状況に安閑としているわけにはいかない。メガコンペティションの時代において、よりスピードをあげていく必要がある」とした。
一方、講演内容はソニー自身の話にも及んだ。ソニーでは、ユビキタスバリューネットワークという言葉を使っていることを示し、「ユビキタスの世界で勝ち抜くためには、本質はなにか、そして価値はなにかを追求する必要がある。だからこそ、ソニーではバリューという言葉を組み込んでいる」と説明した。 安藤社長は、価値(バリュー)には大きく2つの意味があるという。ひとつは、経済価値である。いかに効率性をあげるか、スピードをあげるか、多様性があるかという点で評価されるものだ。「ITは、経済的価値での満足度が高いことで価値が判断される」というのがその最たる例だ。
もうひとつは、感動価値である。AV機器やコンテンツなどはこの感動価値で推し量られることが多い。リアリティのある映像を提供したり、使いやすい、自分にあっているという感動を与えることで、「これはすばらしい」と判断されるものだ。 ユビキタスバリューネットワークでは、この2つの要素を組み合わせることが重要になるという。「最初は経済価値が優先されるかもしれないが、ある段階から急激に感動価値が高まることになるだろう」とその進化を予測する。 ソニーは、現在、ハイビジョンを軸にした展開を開始している。「いままでになかったリアルに近い映像を、あらゆる領域からトータルシステムとして提供しようというものだ。普及には時間がかかるだろうと思われていた第3世代携帯電話が短期間に普及したように、ハイビジョンも一気に普及することになるだろう。すでにレディ・トゥ・ゴー段階にあり、ここでも日本発の新しい流れが作れる」と指摘。講演の最後の締めくくりの言葉として、「変化の時代は、まさにチャンスである。デジタルネットワーク、ブロードバンド・コンバーシェンスの時代は、まさに変化のタイミングだ。恐れるのではなく、ビジョンを発信し、それを実行していこう」と呼びかけた。
(2004年10月6日) [AV Watch編集部/Reported by 大河原克行]
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