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松竹、木下恵介DVD-BOXを2005年1月から順次発売
-「二十四の瞳」や、「楢山節考」など全49作品をDVD化


木下恵介DVD-BOX
2005年1月28日から順次発売

標準価格:各35,000円


 松竹株式会社は、「二十四の瞳」や日本初のカラー映画「カルメン故郷に帰る」など全49作品を収めた「木下恵介DVD-BOX」を、2005年1月28日から順次発売すると発表した。

 第一集~第六集の6つのBOXに、それぞれ7~9作品ずつ収められ、価格は各BOXとも35,000円となっている。BOXは布張り仕様。第二集は2005年3月下旬、第二集は2005年5月と隔月で順次リリースされ、2005年11月発売の第六集で完結する。

松竹株式会社 映像事業部 取締役 関雅彦氏
 同社の映像事業部取締役関雅彦氏は「松竹110年記念プロジェクトとして、数年ぐらい前から準備を進めてきたが、今回やっと発表できる運びとなった。木下監督は日本で初めてカラー映画を撮られたり、映画界からテレビに移られた天才であるが、世間の技能に対する評価は低く、改めて業績を確立したい。今回のDVD-BOX化は、より多くの方に見ていただく、スタートだと考えている」と、DVD-BOXをリリースする意義を説明した。

 収録される49作品の中で「楢山節考」、「笛吹川」など12作品が初ソフト化。東宝作品の「なつかしき笛や太鼓」、「スリランカの愛と別れ」も収録している。また、特典としてワイド版の二十四の瞳、カルメン故郷に帰るの黒白版、22タイトルの予告篇集、NHK-BSで'90年に放送された「対談~監督・スターが語る懐かしの大船映画」、'88年テレビ東京放送の「私の履歴書」に加え、「ドキュメンタリー~天才・木下恵介」が製作され収録される予定。

収録作品リスト

 カルメン故郷に帰るは、日本初のカラー映画として有名だが、当時はまだカラーフィルムの技術が安定しておらず、劇場もカラー対応しているところが限られていたため、全編をカラーに加え、モノクロフィルムでも撮影されていた。だが、モノクロ版のフィルムはすべて消失したと思われていた。しかし、数年前に京都で木下監督が保存していた16mmモノクロフィルムのオリジナル版が発見され、それが特典として収録されている。なお、モノクロ版とカラー版、それぞれ一方にしか存在しないシーンもある。

「カルメン故郷に帰る」カラー 「カルメン故郷に帰る」モノクロ
(C)1951 松竹株式会社

 今回のBOXでは、HDCamでVTRマスターが作られている。最初に、オリジナルネガの存在する20作品については、ローコンポジ(テレシネ用/ニュープリント)を作成。また、白黒作品でオリジナルネガがある場合は、映写用ノーマルポジ(ニュープリント)、白黒作品でオリジナルネガ原版がない場合は、白黒のマスターポジが直接使用されている。

 その後、各カット毎に色調整(カラーコレクション)をして、そのデータを基にHD VTRに24P(23.98P)で収録。米MTI製の自動画像修復ソフト「CORRECT(コレクト)」を使用して、1作品あたり6~10日かけて自動パラ消し、キズ消し、汚れ消しなどを行ない、HDDに収録する。

松竹株式会社 製作担当 五十嵐真氏
 さらに、英Quantel製「iQ」にるノンリニア編集で、画像修復の最終作業をし、リニア編集により巻つなぎ作業や、音戻し作業、CORRECTで消せなかったパラ消しを行なっている。MA作業も、整音や、ノイズリダクションなどをHDD上で行ない、最終的にハイビジョンマスターが完成する。このマスターから、DVD用マスターとしてD-Bcam/SDのVTRテープへダウンコンバートしている。

 同社の製作担当五十嵐真氏は、「一番古い作品は昭和18年('43年)製作で、60年以上経過している。現存しているフィルムは、決していい状態ではなかったが、昨年発売して高評価を受けた、小津安二郎DVD-BOXに負けない品質を目指した。映像資産として、後世へ忠実に継承するのを使命として作業にあたった」という。

実際の作業風景

「二十四の瞳」修復前 「二十四の瞳」修復後
(C)1954 松竹株式会社

左から楠田浩之さん、楠田芳子さん、田村高廣さん、井川邦子さん、木下忠司さん、山田太一さん
 また発表会には、木下監督の作品に出演している女優 井川邦子さん、俳優の田村高廣さん、木下監督のデビュー作から43作までを担当した撮影監督の楠田浩之さん、実弟で音楽監督の木下忠司さん、実妹で脚本家の楠田芳子さん、木下組門下生の脚本家 山田太一さんが出席。当時を振り返った。

 楠田浩之さんは、日本初のカラー映画を撮影した時のエピソードとして、「一番困ったのは、フィルム感度の低いことで、ASA6だった。カラー用のどうらんもなく、どうらんの中で目ぼしいものを探して、それに色々なものを混ぜて使った。そもそも、上高地にロケハンに行ったのだが、樹木などの色が時間によった変わってしまい、それを仕上げる技術が足りないので中止になった。結局、恵介さん(木下監督)が1週間で新しい脚本を書き上げた」と語った。

 山田太一さんは、木下監督の脚本執筆方法について、「旅館で口述筆記してました。よどみなく、しゃべるのを書き留める。書き終わると読み上げるんですが、そこで直そうとすると箇所は1、2箇所ぐらいしかなかった。天才だと思った」という。

 田村高廣さんは、木下監督から言われて心に残った言葉を披露。「俳優はその役の心がしっかり腹に座っていれば、余計なことはなんにもしなくてもいいんですよ。いや、しない方がいいんですよ」。田村さんは、「後になればなるほど、難しい言葉。今でも、いただいた脚本を何度も読んで、役の心を噛み砕いた上で、できるだけ簡素に演じるようにしている」と語った。

発表会場にはポスターや、スチール写真も飾られた

□松竹ホームビデオのホームページ
http://www.shochiku.co.jp/video/

(2004年10月13日)

[AV Watch編集部/furukawa@impress.co.jp]


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