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ヤマハ、壁や天井に音を反射させる5.1chシステム
-音波のビームを放出し、1筐体で5.1chを実現


写真は内部のユニットが見えるようにネットを一部切り取ったもの

12月上旬発売

標準価格:157,500円

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 ヤマハ株式会社は、薄型テレビの下部などにフィットするコンパクトな一体型筐体ながら、音の反射を利用し、5.1chサラウンドを実現するというサラウンドシステム「YSP-1」を12月上旬に発売する。シリーズ愛称は「デジタル・サウンド・プロジェクタ」。価格は157,500円。カラーリングはシルバーとなっている。

 外形寸法1,030×113×194mm(幅×奥行き×高さ)という横長、薄型の筐体に、デジタルアンプと40個の小型フルレンジスピーカーユニット、2個のウーファユニットを内蔵した5.1chサラウンドシステム。薄型テレビとの組み合わせを想定しており、筐体は42型のテレビとベストマッチするサイズだという。

4cm径のユニットを40個搭載している 奥行きは113mmと薄く、壁掛けも可能。壁掛け用金具も2005年2月に発売予定となっている

 最大の特徴は、指向性の高い音をビーム状に放出し、部屋の壁や天井などに反射させ、5.1chサラウンドを実現するという「デジタル・サウンド・プロジェクタ・テクノロジー」を採用したこと。例えば、センターチャンネルの音は正面に向けて真っ直ぐに放出、左右のフロントチャンネルはYSP-1と視聴者の間にある左右の壁に反射、リアの左右チャンネルは視聴者の真横あたりの壁に一旦反射させ、その音をさらに視聴者後ろの壁で反射、背後からの音を実現する。

音を2回反射させ、リアチャンネルを再現する 上から見た概念図 壁だけでなく、天井にも反射させることができる

 ビーム状の音波は、点音源を近接配置すると、互いの放出する音波が干渉し合い、指向性の強い音波が生まれる現象を利用。4cm径のコーンユニットを40個近接配置し、指向性が極めて高いビーム音波を作り出している。また、音波を放出する角度は、各ユニットをディレイ制御することで実現している。

点音源を近接配置すると干渉が発生し、前方へ強い音波が発生する。その原理を応用し、40個のユニットで指向性の極めて強いビーム音波を作り出す。ビームの角度はディレイで制御する

再生モードは5.1chに加え、ステレオ+3ビームや、3ビーム、ステレオなどを用意。視聴者の数や再生するソースにより選択できる

 デジタル・サウンド・プロジェクタには、このビーム音波を複数本、同時に制御する技術を導入しており、5.1chサラウンドを実現している。なお、サブウーファとして本体左右に11cm径のコーン型ウーファを2基搭載。ドルビーデジタル、DTS、AACのデコーダも搭載しており、DVDプレーヤーなどとデジタルケーブル1本で接続するだけでサラウンド環境が構築できる。また、デコーダ部はドルビープロロジック IIに対応しており、2ch音源も5.1ch再生が行なえる。

 なお、ビーム音波の角度などの設定は、「6畳から16畳の部屋、本体を壁の中心置き」、「6畳から16畳の部屋、壁のコーナー置き」、「横長12畳より大きな部屋、壁の中心置き」の、3種類のプリセットから選択可能。さらに、部屋の形状、設置位置、部屋のサイズを用意された項目から個別に選択するモードや、設置高さ、壁の長さ、聴取位置までの距離、ビームの上下左右角度、ビームの到達距離などをマニュアル設定できるモードも装備。「一般的な部屋なら、ほぼすべてで5.1chサラウンドを実現できる」(ヤマハ)という。

 このため、例えば「反射したい壁にカーテンと窓がある」、「片方の壁がなく、オープンテラスのようになっている」などの特殊な条件下でも、片方の音波だけを天上に反射させるなどの工夫で対処できる。再生モードとして、5ビームモード(5.1モード)以外に、ステレオ+3ビーム、3ビーム、ステレオなどが、視聴者の人数や環境によって選択可能。さらに、深夜の小音量再生時でも音のニュアンスが崩れ難いという「ナイトリスニングモード」も備えている、

底面の端子部

 デジタルアンプの出力は、2W×40ch、20W×2ch。エンクロージャは密閉・防磁型。音声入力は、アナログ、光デジタルを各2系統、同軸デジタルを1系統用意。出力はサブウーファプリアウトとコンポジットの映像出力を各1系統。コンポジット出力はOSDで設定などを行なう時に利用する。重量は13kg。テレビやDVDプレーヤーも操作できるリモコンが付属する。

 なお、オプションで、同システムをはめ込める専用ラック「YLC-SP1」や、壁掛け用の取り付け金具なども販売予定。ラックが2005年1月、金具は2005年2月の発売を予定している。

付属のリモコン 発表会では試聴も行なわれた。音波を反射させることで、一部のバーチャルサラウンドで見られる位相の変化など、不自然さのないサラウンドが印象的だった。エンクロージャーの容積からサブウーファが若干弱く感じたが、サブウーファプリアウトを備えているため、別途ウーファのみを追加することもできる 同システムをはめ込める専用ラック「YLC-SP1」も2005年1月に発売予定


■ 1つのジャンルとして2007年までに100億円規模を目指す

ヤマハの前嶋那啓常務取締役

 ヤマハの前嶋那啓常務取締役は、今回の製品について「音、音楽を原点に培った技術と感性で、新たな感動と豊かな文化を作るというヤマハグループの企業理念をカタチにしたようなモデルだ」と表現。

 さらに、「サラウンド・プロジェクタは、成長著しい薄型、大画面テレビとの組み合わせ想定した新しいジャンルの商品」とした上で、今後のシアター事業の戦略として「フルサラウンドシステムとして独立したスピーカーを使ったマルチチャンネルサラウンド、その下にデジタル・サウンド・プロジェクタ、簡易サラウンド製品としてフロントスピーカーだけを使ったバーチャルサラウンドシステムという商品構成になるだろう」と語り、サラウンド・プロジェクタがYSP-1だけに留まらず、今後もシリーズ化する1つの製品ジャンルになることを強調した。

薄型、大画面テレビでの利用を想定している

 なお、前嶋常務はこのサラウンド・プロジェクタの事業規模について「今期は残りが4カ月ほどしかないので、台数で4,000台程度、売上で4億円程度を見込んでいる。しかし、今後はラインナップを拡充するほか、薄型テレビメーカーへのOEM供給という形も検討しており、2007年頃には100億円規模に育てたい。その頃にはOEMは半分程度を占める事業になっているだろう」と語った。

 続いて、サラウンド・プロジェクタをヤマハと共同開発した、英ワンリミテッド社のプレジデント、トニー・フーリー氏が技術面を解説。フーリー氏は「人間の耳は、音の方向を約5度という高精度な間隔で感じることができる。これは両耳に届く音の時間差や、レベル差、体や頭に当たったことで生じる周波数特性の変化をもとに感じている」としたうえで、「人間の聴感はまだ完全に解明されていない。また、バーチャルサラウンドは頭部のモデルを平均化したり、頭部の位置に依存するなど、問題点が多い」と語り、音を壁に反射させ、実際に後ろや横から音を出しているサラウド・プロジェクタとバーチャルサラウンド技術の違いを説明。「実際にそこから音が出ているので、極めて自然なサラウンドが作り出せる」と、利点を述べた。

英ワンリミテッド社のプレジデント、トニー・フーリー氏

 なお、サラウンド・プロジェクタのシステムでは、ビームの角度などを含めて、付属のマイクなどを使って自動的に音場を補正する機能などが有効と推測されるが、この点についてヤマハでは、「今後の製品ラインナップは未定だが、自動音場補正機能も“搭載したい機能リスト”に入っている」とし、検討を進めていることを明らかにした。


□ヤマハのホームページ
http://www.yamaha.co.jp/
□ニュースリリース
http://www.yamaha.co.jp/news/2004/04111601.html
□関連記事
【9月22日】A&Vフェスタ2004【会場レポート1】
ヤマハ、フロント1スピーカーで5.1ch対応の新システムなど
-デノン/マランツは新AVアンプなどを出展
http://av.watch.impress.co.jp/docs/20040922/avf02.htm

(2004年11月16日)

[AV Watch編集部/yamaza-k@impress.co.jp]


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