◇ 最新ニュース ◇
【11月30日】
【11月29日】
【11月28日】
【Watch記事検索】



 パソコンのビデオキャプチャを楽しむ人の多くは、HDDにそのまま蓄積するか、録画した映像ファイルを編集/オーサリングした後、DVD-Rなどの記録型DVDメディアに保存していることと思う。

 しかし、平均4MbpsのMPEG-2フォーマットで録画した場合、DVDメディア1枚に保存できる時間はおよそ150分。30分番組なら5本分で1枚に収まる程度。VHSテープなどと比較した場合、標準録画より長時間である反面、3倍速録画には遠く及ばない。勿論低ビットレート設定を利用すれば、更に長時間の映像を保存できるので、手動で録画設定を行う場合、自分で録画する番組の重要度を考えて画質設定を変更すればよい。

 しかし、PCでも「おまかせ録画」などキーワードを元に自動で録画可能な機能を備える製品が増えている。こうなってくると、どの画質設定を使うかが悩ましくなる。低画質設定でおまかせ録画をしていて、もしその中に永久保存版にしたいお宝映像が紛れ込んでいた場合に、低画質設定にしていたことを後悔することになるからだ。かといって何でもかんでも高画質設定で録画していると、HDDの消耗も激しいし、保存時にも1枚のDVDメディアに収められる時間が短くなってしまい、コストパフォーマンスが悪くなってしまう。

 そこで今回は、アイ・オー・データ機器が新たに発売したハイエンド向けビデオキャプチャカード「GV-MVP/GX」を試してみることにした。特徴はMPEG-2のハードウェアトランスコード機能を搭載すること。トランスコードとは一度録画した映像の圧縮率を再変換する機能で、これを利用すれば常に高画質で録画しておき、あまり重要でない映像はトランスコードすることで1枚のDVDメディアにより長時間の映像を詰め込めるようになる。

 これまでトランスコードの機能はオーサリングソフトに搭載している機能を使って補ってきたが、GV-MVP/GXではこの機能をハードウエアで処理することで、ソフトと比べて高速にトランスコードが可能だという。

##小見出し

複数枚接続にも対応する標準サイズのカード。新採用のXCode IIエンコードチップ。

##本文

 カード本体は他のキャプチャカード同様のレイアウトで、見た目には特に目新しさは感じられない。カードのサイズはそれほど大型ではないものの、決して小型ではないので、ケース内にゆとりがあった方がいいだろう。

 松下製のチューナーユニットを備え、外部入力端子にはS映像/コンポジット入力を備える。高画質化機能は3D Y/C分離や3Dノイズリダクション、フレームシンクロナイザーやゴーストリデューサーなど、高画質化の機能を一通り備える。搭載するMPEGエンコーダチップはViXS Systems製「XCode II」。ソニーのPCベースの多チャンネルHDDレコーダ「VAIO type X」でも採用されていたエンコーダチップだ。

 また、同製品の複数枚同時接続による最大6番組の同時録画にも対応している。

##小見出し

##本文

 録画用のアプリケーションには同社の開発する専用ソフト「mAgicTV5」を利用する。キーワードを設定して自動で録画する「おまかせ録画」機能や、HDDの残り容量を管理し、新規の録画にHDD容量が足りなくなった場合は、自動的に古い番組を消去する「自動容量確保機能」を備えている。その他にトランスコード機能を使用するための専用ソフト「GVEncoder」、DVDオーサリングソフトの「PowerProducer 3 for I-O DATA」、ビデオ編集ソフト「PowerDirector Express」、ケータイムービー活用ツール「VideoToolBox 2」、携帯電話で外部から録画予約できるようにする「resermail」がバンドルされる。

 mAgicTV5はメインのアプリケーションで、複数番組の同時録画にも対応している。まずテレビ視聴を試したが、直感的な操作感なので、使い勝手はよい。ただし、チャンネルの切替や録画開始時の動作がややもっさとしており、チャンネルを押して1テンポ待たされてから切り替わるので使っていてややストレスを感じた。

 おまかせ録画機能やiEPGによるテレビ番組表を使う場合には、別途「mAgicガイド」が起動する。最近では録画用アプリケーションの画面内にEPGの番組表が表示される製品も多いが、テレビ映像を横目に番組表をチェックするような用途も考えると、単体アプリケーションとして動く方が使い勝手がよい。別ウィンドウなので、[Alt]+[Tab]のショートカットを使えば切替も簡単だ。現在の時刻とリンクして番組表内にタイムラインが赤色で表示されたり、予約設定を行った時間には別途印が付けられているので、重複録画などを避けやすい作りになっている。

 おまかせ録画はキーワード以外にも同ジャンルの番組全て予約対象にしたり、時間帯で絞ったりと1つのおまかせ設定で細かい調整が可能。ただし、一度予約を完了してしまうと、手動の予約設定と自動予約設定の違いが判別できないので、おまかせ設定を誤ると不要な予約が一気に増えてしまい判別するのが難しくなってしまう。おまかせ設定による予約は何かのマークを設けるなどの工夫がほしかったところ。

※要確認

 予約録画時間の1分前にmAgicTV5を起動して視聴していると、アプリケーションの終了を促す警告が現れる。ここで終了をしない選択をすると予約録画は開始しないので注意が必要だ。警告に従うと、今まで視聴していたmAgicTV5が終了し、予約待機状態のまま待たされる。この間はテレビの視聴は行なえない。警告を無視していれば録画開始時にmAgicTV5が自動で終了する。

 複数のmAgicPlayer

 予約録画開始後には手動で「mAgicPlayer」を起動することで録画中の番組の視聴が可能となる。予約録画が終了すると、そこでmAgicPlayerは停止。その後もテレビを見続けたい場合にはmAgicPlayerを閉じて、再度mAgicTVを起動する必要がある。再生や編集のメニューが多く並ぶ中で録画中の番組を視聴するのは、今表示されているものが録画中のファイルなのかどうかが分かりにくいので、イマイチ落ち着かない。また、手動で録画を開始した場合にはこういった動きはせず、mAgicTV上で視聴しつつ録画を行うので統一感に欠ける。アプリケーションの頻繁な起動/終了は何となく使っていて落ち着かないので、録画に関してはできれば単一のアプリケーション内で解決してほしいものだ。

 

##小見出し

MPEG-2トランスコードは高速。携帯との連携も魅力

##本文

 トランスコード機能は付属のソフトウェア「GVencoder」で行なう。売りとなっているハードウエアによるトランスコードが対応するのはMPEG-2フォーマットのみ。つまり前述のように一度高画質設定で録画したファイルを低ビットレートに再変換するといった用途に使うのに向く。また、片面1層/2層のDVDメディア容量に合わせてトランスコードのビットレートを自動で設定する機能を備えるので、まとめてトランスコードすれば、メディア容量に対して最適なビットレートに変換できる。

 また、これは余談になるが、PSPなどの携帯プレイヤー向けに動画を変換する際に、あらかじめファイルサイズを小さくしておくことで、変換時間を短くする用途にも使うことができる。

 例えば再生時間が1分間の15MbpsのMPEG-2ファイルをPSP専用の変換/転送ソフト「Image Converter2.1(プレビュー版)」で変換を行うとおよそ25秒の時間がかかるのに対して、1MbpsのMPEG-2ファイルなら15秒程度で完了する。1分のファイルでこれだけの差が出るのだから、この効果は映像の時間が長ければ長いほど大きくなる。また、ソフトウエアによるトランスコードになるが、携帯電話用の動画フォーマットである3GPPや3GPP2への変換も可能なので、対応携帯電話を持っているならかなり便利に活用できる。なお、PSPの「」やプレイやんで利用されているSD-Video形式で直接変換する機能は備えていない。

 特にmAgicTVの予約設定のメニューには録画終了後にトランスコードを実行するように設定することも可能なので、これを設定しておけば夜中に録画した番組を録画終了時に自動でトランスコードを行い、朝には変換済みの動画ファイルが出来上がっているという使い方もできるので、朝の通勤時に寝てる間に録画した番組を視聴するといった使い方もできる。

 ただし、対応携帯電話に関しては注意が必要だ。特に同社のGVEncoderに関する情報サイトでは、対応端末は掲載されているが、端末固有のファイルサイズについての情報などが書かれておらず、これに関しては別途確認をする必要がある。著者の持つ携帯電話はauのA5502Kで、GVEncoderのサイトには対応端末として掲載されていたため、嬉々としてGVEncoderを試してみたが、どんなファイルを変換しても正常に再生されない。おかしいと思いあちこち検索してみると、Uleadのwebサイト上に、携帯電話の再生可能ファイルサイズの上限に関する情報を発見。A5502Kでは最大512KBまでのファイルしか再生できないことが判明した。

 どちらかというと、怒りの矛先はA5502Kに向けられたわけだが、こういった例もあるので、自分の携帯電話の対応に関する情報集めはこれらのページを参考に、慎重に行った方がいいだろう。

 また、これは同社の保証対象外の行為となるが、GVEncoderでは、本機で録画した映像以外のファイルでもトランスコードできるので、携帯電話と連携して使いたい人にとってはかなり魅力的なソフトウエアだろう。設定にもよると思うが、携帯用の動画変換を行うフリーソフトなどと比較しても変換速度は遜色ない。

アイ・オー・データ機器のGVEncoderの携帯端末対応のページ

http://www.iodata.jp/prod/multimedia/tv/gvencoder.htm

Ulead Video Tool Box 2.0の携帯端末の再生対応のページ

http://www.ulead.co.jp/product/videotoolbox/compatibility6.htm

##本文

 画質については、著者の環境では、元々ゴーストが出にくいため、残念ながらゴーストリデューサーの恩恵を感じることはなかった。だが、3Dノイズリダクションはかなり明確に効果を感じることができた。特に地方局の放送録画時に起こるざらついた感じの映像がすっきりした映像になったのはうれしい点だ。ただ、これは好みの問題かもしれないが、ノイズリダクションをONにしていると、OFFの場合と比べてやや画が眠くなってしまうようので、ノイズが気にならない局の番組を録画する際には、OFFにしておく方がいいかもしれない。こうした個別の映像設定を局単位で調整ができるのは便利だ。

 また、1Mbpsや2Mbpsなどの低ビットレートMPEG-2については、確かにブロックノイズが気になる箇所もあったが、全体的には4Mbpsの映像と比べてもそれほど遜色のない映像になっているように感じた。VHSを使っているときに3倍速録画を多用していた人に対してなら、これらの低ビットレートのMPEG-2には意味があると思う。逆にMPEG-1による録画が行えないのは残念だが、それを補うのがこうした低ビットレートのMPEG-2なのだろう。

##映像サンプルについて

DVDプレイヤー「DVX-500」で再生したCREATIVECAST Professionalの映像を外部入力からGV-MVP/GXに入力し、各モードでHDDに録画した(c)CREATIVECAST。ソースの質がよくないので、各ビットレート間の比較にのみご利用下さい。

##小見出し

トランスコードに魅力を感じるなら買い!複数枚接続はコストパフォーマンスが悪い

##本文

 GV-MVP/GXは、同カードの複数枚接続にしか対応していないようなので、単価の高い本機を複数枚購入するのはちょっとコストパフォーマンスが悪い。低価格カードのGV-MVP/RX2Eなどと併用できればよかった。

 実勢価格が2万3000円前後とやや高めだが、搭載する高画質機能とハードウエアによるMPEG-2トランスコード機能に魅力を感じたなら買っても損は無いだろう。GVEncoderによる携帯用動画への変換機能も非常に使い勝手がよく、付属ソフトとしての完成度は高いのも見逃せない点だ。

 ハードウエアMPEGエンコードチップを搭載するビデオキャプチャカードもずいぶん定着してきた感があるが、今後はこういった携帯電話や携帯AVプレイヤーなどとの連携機能が製品の売りとして充実していくのかもしれない。


□アイ・オー・データ機器のホームページ
http://www.iodata.jp/
□ニュースリリース(GV-MVP/GX)
http://www.iodata.jp/prod/multimedia/tv/2005/gv-mvpgx/index.htm□関連記事
【1月12日】アイ・オー、「XCode II」搭載のTVキャプチャカード
-従来比6倍のトランスコードを実現http://av.watch.impress.co.jp/docs/20050112/iodata1.htm

(2005年2月9日)

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


00
00  AV Watchホームページ  00
00

Copyright (c) 2005 Impress Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.