◇ 最新ニュース ◇
【11月30日】
【11月29日】
【11月28日】
【Watch記事検索】
次世代光ディスク用オーディオ、DD+/DTS HDを解説
「AES東京コンベンション2005」でセミナーを開催


会場の科学技術館

会期:7月12日から14日

会場:北の丸公園 科学技術館


 プロフェッショナルオーディオ関連企業を集めた「AES東京コンベンション2005」が7月12日から14日まで開催される。入場料(当日)は、学生が3,000円、AES会員が8,000円、一般が12,000円。

 コンシューマ/プロフェッショナルオーディオメーカーの参加に加え、プロスタジオやエンジニア、サウンドデザイナーなどを対象とした最新の業界動向報告や、情報交換などが行なわれ、マルチチャンネルオーディオや、放送、マスタリング、制作環境などに関する最新動向が報告された。

 2日目となる13日には、Blu-ray DiscやHD DVDで採用が予定されている次世代オーディオフォーマットの「ドルビーデジタルプラス」や「DTS HD」についてプロダクトセミナーが開催された。


■ ドルビーデジタルプラス対応アンプは2006年末以降

ドルビーラボラトリーズ 日本支社の白柳亨氏

 Dolbyのプロダクトセミナーでは、ドルビーラボラトリーズ インターナショナルサービスインク日本支社の白柳亨氏が次世代コーデック「ドルビーデジタルプラス」について解説を行なった。

 ドルビーデジタルプラス(DD+)は、ドルビーデジタル(DD)の拡張版と位置づけられており、聴覚心理に基づいたLossy(不可逆)なコーデックという点では従来のDDと共通。チャンネル数はDDより多く、7.1chが基本となる。


DDとDD+のビットレート比較

 DD+のビットレートは32kbps~6Mbps。DDのビットレート96~640kbpsと比較すると、上下に広くなっているが、「高いビットレートは複数チャンネルや高音質などを目的として、次世代光ディスクの開発陣からの要求で取り入れた。一方、低ビットレート側は、放送局などから、限られた帯域で多くのプログラムを導入したいという、要求が高かったため」という。

 DD+では、低ビットレートでの高音質化も図られており、「DD+32kbpsで、DD96kbpsとほぼ同等の音質を実現できる」という。低ビットレート時の高音質化については、4つの拡張(New coding Tools)により実現されている。

  • Spectral extensions(SPX)
  • Transient Pre-noise processing(TPNP)
  • Adaptive hybrid Transform(AHT)
  • Enhanced coupling(ECP)

最大13.1chに対応

 また、サポートされるチャンネル数も最大13.1chまで拡張された。これは、将来のデジタルシネマに対応するためで、SMTPEのデジタルシネマ規格「D-CINEMA」の推奨スペックに則っているという。D-CINEMAはデジタルシネマ用の規格で、フロントスピーカーの上側に3チャンネル、天井に1chと、垂直方向のスピーカーを追加。さらに、フロント3chの間に2chを追加することなどが検討されているという。

 D-CINEMAでは最大16chに対応予定だが、ヒアリングインペアード(聴覚障害者用チャンネル)、ナレーション(視覚障害者用チャンネル)を用意するため、サラウンド用途に利用するのは13.1chになる。

 DD+では、5.1ch以上のチャンネル数を実現するため、サブストリーム構成を採用。Independent Substream(IS)と呼ばれる、単独でデコード可能なサブストリームと、ISの追加チャンネル情報となるDependent Substream(DS)を用意。各ストリームで最大5.1ch/6Mbpsのデータを格納可能で、ISをDD、DSをDD+という構成も可能という。

Substream構成を採用 7.1chデコードの概念図

 また、5.1chから2chへのダウンミキシング機能も強化され、ドルビープロロジックII互換となったほか、新たにLFE成分をダウンミックス時に収納可能となった。さらにHD DVDやBlu-ray Discでは、複数のオーディオデータを同時に再生するオーディオミキシングの機能も搭載予定で、DD+でもオーディオミキシングをサポートする。

 なお、DD+のデコーダはDDのデコード互換となるが、従来のドルビーデジタル対応デコーダではDD+のデコードを行なうことはできず、DD+に対応したAVアンプなどが必要となる。

 ただし、DD+デコーダにはDDへのコンバータの搭載が必須になるため、DD+対応のプレーヤーなどでは、プレーヤーのS/PDIFからAVアンプにDDで出力できるという。出力されるDDのビットレートは640kbps固定となる。一方、DD+のビットストリームはHDMIもしくはIEEE 1394のみで出力可能で、S/PDIFからは出力できない。

 なお、DD+に対応したAVアンプについては、「5.1chはなく、最初から7.1chを予定している。2006年末から2007年にかけて、対応機器が発売されると予測している」という。

DDとDD+の互換性 HDMIもしくはIEEE 1394でビットストリーム出力が可能に

 また、現在DVDオーディオで採用されているMLPについての将来計画が発表された。MLPの開発元はMeridianだが、Dolbyがライセンスと技術サポートを行なっている。HD DVDでは2chのMLPサポートが必須となっている。DolbyではLossy(圧縮)コーデックとしてDDとDD+、ロスレスコーデックとしてMLPを次世代光ディスクなどに提案している。

 次世代の光ディスクBlu-ray DiscやHD DVDでもMLPの採用が予定されているが、DVDオーディオから大きく拡張されている部分が多いという。

 まず、チャンネル数については、従来の6chから8chに拡張。サブストリームも1つ追加され、最大ビットレートは9.6Mbpsから18Mbpsまで拡張されている。また、オーディオ専用ディスクであるDVDオーディオと異なり、次世代ディスクでは映像コンテンツにも対応し、ドルビーデジタルと同様のダイナミックレンジコントロールや、ダイアローグノーマライゼーション機能も追加される。

 なお、DVDオーディオ向けMLP(FBBStream)とはフォーマットシンクが変更されるため、DVDオーディオ用のMLPデコーダでは、新MLP(FBAStream)を再生できない。新MLP用デコーダでDVDオーディオ用MLPの再生は可能。

新・旧MLPの違い 新・旧MLPの互換性

MLPビットストリームの扱い

 将来的にはサブストリームの拡張により、8ch以上のチャンネル数拡大やビットレートの向上も見込まれるという。また、DD+と同様にMLPビットストリームがS/PDIFから出力されることはなく、次世代光ディスクプレーヤーからの出力はHDMIが予定されている。対応AVアンプの発売は「DD+とほぼ同時期」とのことで、2006年末から2007年頃に市場投入されそうだ。

 なお、白柳氏によれば、「ドルビーデジタルがデファクト的な位置づけ。DD+は放送局や高音質ディスク、5.1ch以上のコンテンツなどでの使用を予定。5~10年後にDD+デコーダが普及したら、その時にはDD+に切り替わるのかもしれない」という。MLPについては、「次世代ディスクの高音質プレミアム盤用」と定義している。

 なお、次世代ディスク用MLPについては、「新しい名前を検討している」とのことで、9月上旬に正式発表の見込みという。


■ 高い互換性と拡張性を備えたDTS HD

DTS CANADAのRick Beaton氏

 DTSの次世代コーデック「DTS HD」については、DTS CANADAのRick Beaton Managing Directorが解説した。

 Beaton氏は、次世代オーディオに求められる特徴として、高音質とより多くのチャンネル数、動的なコンテンツやダウンロードコンテンツとディスクコンテンツのインタラクティブ性、スケーラビリティなどをキーワードとして紹介。DTS HDがそれらの要求を満たすことをアピールした。

 DTS HDでは、従来のDTS/DTS-ES/DTS 96/24と同様に、DTS製品との互換性を有したコアストリーム「DTS CORE」を中心としながら、拡張ストリームの追加により、機能を強化したフォーマット。次世代光ディスクでは7.1chの利用が予定され、以下の新機能が追加されている。

  • 最大2,048チャンネルまでの拡張性
  • 1.5Mbps以上の高ビットレート
  • ロスレスモード
  • スケーラブルな低ビットレート特性

DTS HD Losslessの特徴

 HD DVDとBlu-ray Discは、いずれもDTSが必須コーデックになっており、DTS HDはオプショナル規格となる。DTS HDではDD+と同様に、複数音声のミキシング再生も可能で、オリジナルの音声とともに、コメンタリをかぶせて再生する。

 DTS HDの中核となる、最大1.5Mbpsのコアストリームに加え、4つの拡張ストリームを利用可能で、ひとつの拡張ストリームにつき8つのオーディオアセットを格納できる。

 コアストリームに従来のDTSストリームを収録し、拡張ストリームにDTSロスレスを収録することで、DTS HD非対応のAVアンプでも通常のDTSを再生するため、下位互換性を維持できる。また、ロスレスのみのストリームも可能となっている。

 7.1chのストリームには、5.1ch/2chのダウンミックスも含まれており、ローコストなプレーヤーなどでは、ダウンミックスを再生する。なお、DTS HDビットストリームのデコードには対応のAVアンプが必要となるが、S/PDIF出力は出来ず、HDMIでの出力が予定されている。

 DTS HDには通信向けのロービットレートモード(LBR)も用意されており、サンプリング周波数は8~96kHz、チャンネル数は最大32、サンプリングレートは16/24bit、ビットレートは24kbps~192kbpsが基本仕様となる。

 最大の特徴はFit to Streamと呼ばれる技術。最初にLBRでエンコードしたデータをサーバーから送出する際に、機器や帯域にあわせてビットレートを調整できる機能で、例えば携帯電話向けは24kbps、衛星ラジオ向けに64kbpsなど配信先のビットレートが異なる場合でも、1つのLBRの元データから配信先にあわせたビットレートでの配信が行なえるという。

DTS HD Low Bit Rateの特徴 1つのエンコードデータから、帯域や機器にあわせたビットレートで配信できる

□AES日本支部のホームページ
http://www.aes-japan.org/index-j.html

(2005年7月13日)

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


00
00  AV Watchホームページ  00
00

Copyright (c) 2005 Impress Corporation, an Impress Group company. All rights reserved.