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音楽関連7団体がiPodなどへの私的録音補償金適用を要望
-文化庁の結論は先送り


JASRAC吉田茂理事長

7月28日開催


 社団法人日本音楽著作権協会(JASRAC)、社団法人日本芸能実演家団体協議会、社団法人日本レコード協会など音楽関係7団体は、iPodなどのデジタルオーディオプレーヤーを私的録音補償金適用の政令指定化を求める声明を発表した。

 28日に文化庁が文化審議会著作権分科会法制問題小委員会を開催。iPodなどのHDD内蔵型録音機器などについて、MDなどと同様の私的録音補償金制度の対象とする政令指定について方向性が示される予定だった。しかし、今回の小委員会では結論が出ず、先送りされた。

 そのため、今回の会見では関連団体からの意見の表明するに留まっており。iPodなどへの政令指定を強く求める姿勢を再度強調した。

 私的録音録画補償金は、MDや音楽用CD-R/RW、録画用DVD-R/RWなどのメディアや、MDプレーヤーなど私的複製を前提とした機器に対して課金されているが、HDDやフラッシュメモリなどを記録媒体とするデジタルオーディオプレーヤーについては、政令指定の対象になっていない。

 そのため、権利者団体などはデジタルプレーヤーへの指定拡大を訴えてきていたが、一方JEITA(社団法人電子情報技術産業協会)や機器メーカーなどは適用拡大に反対。デジタルコンテンツの登場以前の制度であることや、補償金配分方法の不透明さなどを指摘する声も上がっており、小委員会での検討結果が注目されていた。

 JASRACの吉田茂理事は、私的複製が認められているのは、「個人的にまたは家庭内などの零細的な使用だから。複製権を制限する場合には、ベルヌ条約で“当該著作物の通常使用を妨げず、かつ、その著作者の正当な利益を不当に害しないこと”と規定しており、この考え方に則って私的録音録画補償金制度がある」と制度の意義を説明。

 しかし、「制度により補償される著作者の利益がHDD内蔵、フラッシュメモリ内蔵型機器の利用拡大により大きく損なわれている」という。その理由として吉田氏は「大容量メモリやHDDに大量に私的録音を行なうことは“零細な使用”ではなく、到底著作権制限の可能な範囲に収まる量ではない」と説明。

 「それでは、我が国としても国際条約違反との誹りを免れず、私的複製の制限規定を廃止することも含め、抜本的見直しを迫れられる恐れがある。また、この制度に代わり速やかに実現可能な具体案も提案されていない」と述べ、制度の維持を訴えた。さらに、「文化面での悪影響や著作権者の経済的損失が拡大する前に、速やかにこれらの機器や記録媒体を私的録音補償金対象機器、媒体に政令指定すべき」とアピールした。

 私的複製については、著作権法第30条1項で、「個人的にまたは家庭内その他これ時準ずる限られた範囲内において使用することを目的とするとき」に限り無許諾の複製を認めているとされている。一方、ベルヌ条約パリ改正条約第9条では、私的複製が、「当該著作物の通常利用を妨げず、かつ、その権利者の正当な利益を不当に害しないことを条件とする」と規定しており、この条件に基づき、著作権法30条2項の私的録音録画補償金制度を定めている。

 関連団体では、iPodなどに必要な政令指定を行なわないことはベルヌ条約や、WIPO著作権条約第10条などに反し、私的複製を認めた「著作権法第30条1項の規定の廃止などの抜本的見直しを我が国が迫られることになる」と考えているという。そのため、引き続き、政令指定を強く申し入れていく方針としている。

芸団協 椎名和夫理事

 また、日本芸能実演家団体協議会の理事で編曲家の椎名和夫氏は、iPodなどの機器が「音楽ライブラリを持ち出すことをコンセプトに開発されていることは明らか。私的録音は年々拡大しており、著作者の利益が失われている」とアピール。

 さらに、DRMシステムがあれば補償金制度は不要との指摘には「家庭内まで高度に管理にされた環境が真に理想的であるのか、文化的な側面からも議論が行われるべき。また、DRMのコストは社会が負うもの。コストやいつ、どのような技術を採用していくかなど総合的に評価する必要がある」と説明した。また、「利益者の分配が不透明」という意見には、自らのアーティストとしての意見として「一定の存在感がある制度」と認識しているという。

 なお、当初はデジタルオーディオプレーヤーのみならず、PCやデータ用CD-R/RWなどについても政令指定を求めていく方針だったが、「当面はデジタルプレーヤーへの適用を第一に訴えていく」という。

 また、料率については、「ドイツの例では一装置で約350円。フランスは容量に応じて適用しており、最低で1,095円、最大の20GBで2,795円となっている。日本での料率などは政令指定を受けてから検討するが、日本でも容量に応じた補償金額の設定を考えている(JASRAC泉川理事)」と説明した。

□JASRACのホームページ
http://www.jasrac.or.jp/
□RIAJのホームページ
http://www.riaj.or.jp/
□芸団協のホームページ
http://www.geidankyo.or.jp/

(2005年7月28日)

[AV Watch編集部/usuda@impress.co.jp]


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